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2007.11.25
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~講談社選書メチエ、1994年~

 何度か紹介している池上先生の著作です。賭博、暴力、社交―この三つの言葉は、中世の遊びの性格を示すキーワードです。
 なお、本書は、2003年、ちくま学芸文庫より、『遊びの中世史』と改題されて出版されています(文庫版は未見)。
 本書の構成は、次の通りです。

ーーー
プロローグ

第一部 遊びの宇宙
 第一章 子供の遊び

 第三章 遊びのプロフェッショナル
 第四章 動物遊び

第二部 遊びと社会
 第五章 習俗のなかの遊び
 第六章 労働と余暇―遊びの誕生
 第七章 遊びと社会関係
 第八章 横溢する遊びの精神

エピローグ


参考文献
あとがき

ーーー

 第一部で、中世の具体的な「遊び」を多く紹介し、第二部で、それらが中世ヨーロッパの社会の中でどのような意味をもったか、考察を進めます。もちろん、話としては第二部が重要ですね。

 読みながらいくつか付箋を貼ったので、そこからいくつか紹介していきます。
 子供の遊びの中に、「誰が黒い人を怖がるか」遊びというのが言及されているのですが、これは気になる名前ですね。「泥警ごっこ」も挙げられています。私が子供の頃は、「ケードロ」といっていましたが、「泥警ごっこ」というのが一般的なのでしょうか??
 それから、「禁じられた遊びたち」という節で紹介されている、「輪回し」も面白かったです。樽のタガを利用して、手や棒で倒れないようにして押しすすめて早さを競うゲームですが、野原や広場だけでなく、街路でも遊んでいたようです。というんで、1456年、オランダのドルトレヒトの都市条例は、街路での輪回し競争を禁じています。そうとうテンション高いですね。


 ここで、ゲームの第二段階がはじまります。はじめに鬼と決められていた人が、輪の中に入り、誰が棒きれを持っているか決めるのですね。当たっていればその鬼の勝ちで、鬼が交代するのですが、「間違えていたら、棒きれを持っていた者が鬼に一発食らわせることができる」のだとか。なんというか、バラエティー番組なんかでこんな風にぶつゲームをしていたら、私はあまり好ましく思わないのですが、歴史の話の中で出てきたらかなりテンション上がります。

 また、騎士の「遊び」としては、なんといっても騎馬試合ですね。これは、集団で戦うトーナメント(トゥルノワ)と、一対一の、一騎打ち(ジュット)に分けられます。いずれも、その中で命を失うことも多かったとか。
 ちょっと私が専門に勉強したことを付け加えると、説教師は、トーナメントに7大罪を結びつけて、これを非難しました。また、教会も、12世紀―トーナメントがはじまったのと同じ世紀ですね―には、トーナメントで命を失った死者を、教会の墓地に埋葬することを拒む決定を繰り返しています。もっとも、えてして聖職者は「遊び」に批判的な見解を示すものですが…。
 それはとまれ、私が思ったのは、死に対する態度として、トーナメントで亡くなった人物は、どのように考えられたのかな、ということです。なにかしら研究もあるかと思うのですが…。

 さて、タイトルを象徴的に示すのが、居酒屋の事例かと思ったので、書いておきます。私が、宮廷身分に限らない話の方が好きなこともありますが。
 居酒屋には、身分をとわず、多くの人々が集まります。一種の社交の場ですね。そこで、たとえばサイコロ遊びをする。お金がなくなっても、服やなんやらを賭けて、とことん遊んだとか。賭博ですね。そんな中で、ちょっとそれはイカサマじゃろーが、違うわ、といって、激しいケンカが起こることもある。暴力ですね。
 これに限らず、遊びには、賭博・暴力・社交という性格があったといいます。

 参考文献目録に掲げている日本語文献については、その著書の性格についての一言コメントがついていて、とても便利です。

*ちくま学芸文庫『遊びの中世史』の画像はこちら。





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Last updated  2008.07.12 18:05:15
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のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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