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2008.10.06
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刺青された男

~角川文庫、1977年~

 横溝さんの10の短編を収録した作品集です。全体的に面白い短編が多くて楽しめました。
 では、それぞれの内容紹介と感想を。

ーーー
「神楽太夫」 おじについてキノコ狩りに出かけた私が出会った不思議な男。男は私に、この地の神楽について話をする。昔、神楽の太夫たちのあいだで殺人事件が起こったというのだ。
 いわゆる、顔のない死体ものの作品です。こうしてみると、横溝さんがこのテーマに力を注いでいたことがよく分かります。

「靨(えくぼ)」 私は数年ぶりにその宿を訪れた。蓑浦家のお嬢さん―浄美の夫が7年前に殺害されてから、宿は客をとらなくなったとのことだったが、宿に困っていた私は泊めてもらえることになった。そして、宿の女将から、その事件の話を聞くことになる。
 電車の友に読んでいたのですが、ラストあたりでは泣きそうになりました。悲しい物語ですが、素敵な作品だと思います。

「刺青された男」
 これはミステリ的要素はほとんどありません。…が、ぐいぐい読ませられました。

「明治の殺人」 謙三は、娘が結婚を希望している男の人柄を認めながらも、その結婚を許すことはできなかった。自分が、その男の父親を殺したから…。死期が近づいた彼は、親しい医師に娘と男の結婚に関する決断を一任する。
 こちらも、「靨」と並んで好きな作品です。謎の提示も魅力的ですが、なにより綺麗な物語です。「靨」と同じく、電車の中で泣きそうになった作品。

「蝋の首」 火事の起きた家に残っていた二つの焼死体。不審なことに、男女の遺体は少しももがいたような跡がなかった。医学者が二つの顔の復元を試みたとき、意外な事実が浮かび上がる。

「かめれおん」 学校横町で起こった殺人事件。現場付近で見られたレインコートの男は誰なのか…。
 こちらは、パズル的要素の強い作品だと思います。二人の主要人物の間で推理合戦が展開されるのも興味深いです。そして、ラストの一行が余韻を残して、素敵でした。

「探偵小説」 東北の地で起こった殺人事件を題材に、探偵作家が物語を展開する。その話を聞きながら、二人の友人はその話の不十分な点を指摘したり、物語をさらに広げたりする。
 語り手の軽快な語り口も楽しい作品です。

「花粉」 隣組で親しくしている沢村さんに、女優殺害の嫌疑がかかった。美穂子夫人は自ら探偵となって、事件の真相を暴こうとする。
 論理性に重点が置かれた探偵小説です。こちらも面白かったです。金田一さんも事件を解決する段階において悲しみを感じる方ですが、身近な事件に乗り出した美穂子さんの悲しみも大きく、読了後は切ないような気分になります。

「アトリエの殺人」 アトリエの中で、画家が殺された。そのモデルをつとめていた女性と、画家の友人の男性が現場を訪れ、男は事件の真相を暴く。 こちらも、ラストの一行が余韻を残します。

「女写真師」
ーーー

 上でも書きましたが、「靨」「明治の殺人」「花粉」あたりがお気に入りです。
 戦後すぐ…『本陣殺人事件』や『蝶々殺人事件』を執筆している頃の作品群らしいですが、どれも良かったです。
(2008/10/03読了)


*表紙画像は、横溝正史エンサイクロペディアさまからいただきました。





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Last updated  2008.10.06 19:11:10
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