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2009.01.17
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双仮面

~角川文庫、1981年6版(1977初版)~

 昭和12年(1937年)~昭和14年(1939年)に書かれた、由利先生シリーズの3つの短編が収録されています(表題作は中編といった方が良いかもしれません)。
 それでは、それぞれの内容紹介と感想を。

ーーー
「双仮面」 ダイヤを飾った黄金の船の置物―パーティーの中でそれを公開する雨宮万蔵は、不安に襲われていた。折しも世間は、一種の紳士怪盗とでもいうべき、風流騎士の話題でもちきりだった。金持ちのもとで盗みをはたらき、その証拠に一輪の薔薇を残していくという風流騎士に、その船が狙われるのではないか…。
 しかし事件は、彼の不安以上に恐ろしい展開をする。パーティーの当日、雨宮氏の二人の孫、千晶と恭助が見張りの番を交代したときに部屋を訪れた氏は、船のケースに汚れがあるのに気付く。それは小さな薔薇の絵だった。そして恭助は、雨宮氏を刺し殺してしまう。恭助の逃亡劇の後、さらに意外な事実が分かる。パーティーのために用意されていたくす玉の中に、恭助が閉じこめられていたのだった…。

「鸚鵡を飼う女」 ある雨の夜、新聞記者・三津木俊助は、怪しい格好の人物と遭遇する。慌てて逃げていった人物を忘れようとするのもつかの間、彼は事件に巻き込まれることになる。ある家の前にとめられていた俥。男が、その家に入っていった男に依頼されて押してきたというその中には、女性の死体があった。さらに家の中では、別の男が殺されていた。
 女が買っていた鸚鵡の言葉は、何を意味するのか…。

「盲目の犬」
ーーー

 解説の中島河太郎さんも書かれていることですが、この頃の作品は論理性重視というよりもサスペンスの赴きが強いです。なので、ジュヴナイル風の文体にはちょっと戸惑うところもあります。けれどもそこは横溝さん、意外性のある真相が用意されています。
「双仮面」の結末は、横溝作品にしては珍しく後味が悪いです。金田一シリーズにもいくつか後味の悪い結末の作品がありますが、えてして最後はほっとする作品が多いのを考えると、珍しい部類といえるのではないでしょうか。
 ところで、同じく表題作に登場する「風流騎士」から、以前読んだ 『憑かれた女』 所収の「幽霊騎手」を連想せずにいられませんでした。 ○○騎手というのが、一種のはやりだったのでしょうか…?
 併録された二編はいずれも動物が重要な役割を果たしていて、どちらも面白かったです。

※表紙画像は、横溝正史エンサイクロペディアさまからいただきました。
(2009/01/12読了)





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Last updated  2009.01.17 15:50:36
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