のぽねこミステリ館

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2009.07.15
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~創元推理文庫、2009年~

「本格書店ミステリ」といわれる、大崎梢さんのデビュー作です。駅ビル6階、成風堂書店の店員、木下杏子さんと同店アルバイトの多絵さんが活躍する、5編の短編が収録されています。方向としては、いわゆる「日常の謎」もののミステリということになります。
 まずは、それぞれについて簡単に内容紹介を書いた上で、感想を。

ーーー
「パンダは囁く」 一人暮らしの老人から、本を探してほしいと依頼された男が成風堂を訪れた。老人の言葉をメモしてきたというが、そのメモには「あのじゅうさにーち」「いいよんさんわん」、まるで暗号のような言葉が書き留められていた…。

「標野にて 君が袖振る」 お得意のお客様の娘が成風堂を訪れた。母親が、成風堂で本を買ってから、行方不明になってしまったというのだ。手掛かりになるレシートには、母のイメージにはそぐわないコミックの文字があった。さらに調べると、それは『あさきゆめみし』だという。20年前に亡くなった彼女の弟(母にとって一人息子)も、生前『あさきゆめみし』を読んでいたというが…。

「配達あかずきん」 博美が配達に行った先の美容院で、トラブルが起こっていた。届けた雑誌を楽しみにしていたお客が開くと、そこにはその女性を中傷する言葉が添えられた盗み撮り写真が入っていたのだった。そのトラブルから一週間、今度は博美が何者かに階段から突き落とされてしまう。

「六冊目のメッセージ」 入院中、お見舞いに成風堂の店員がすすめてくれたという本をもらっていたという女性が訪れた。彼女が入院中に届けられた五冊の本。しかし、成風堂書店の店員で、それらの五冊を選んだ人はいない。はたして、誰が彼女のために本をすすめていたのか。

「ディスプレイ・リプレイ」
ーーー

「パンダは囁く」の冒頭から、物語に引き込まれました。そして同作品の謎解きのシーンでは、「あ、そうか!」と気持ちよい驚きを味わえました。分かってみればしょうもないとか、なんだそんなことか、と思うようなミステリもありますが、本作では純粋に「なるほどなぁ」と思いました。
 その他の作品も、素敵な恋愛があったり、ひたむきな思いに胸をうたれたり、ひどい行為に胸を痛めたりしながら、それでもどの作品もさわやかに読むことができました。

 実は私、本好きなのみならず、一時は書店員として働いていたことがありました。なので、杏子さんや多絵さんたちの仕事ぶりが描かれた本作を読みながら、懐かしく思ったり、そうそうと頷いたりしていました。
 特に、「めったに本屋に来ない人ほど、曖昧なタイトルでなんとかなると思っているのよ」という言葉には深く頷きました。そうなんです。たとえば、もしもネットで気になる本があって、行きつけの本屋にその本があるかどうか電話で確認されたいときは、ISBNのコードを教えてもらえると店員はすごく助かります。ISBNが分からないときは、著者名、書名、出版社など、情報があるほど書店員が探すのが楽なのは言うまでもありません。無茶な聞き方をしながら、店員がすぐにその本を見つけられない(あるいは思い浮かべられない)ときに立腹されるお客様も中にはいらっしゃいますが…。逆に、少ない情報から(もちろんお客様に関連する事柄をおたずねしながら)、その本を探しあてることができたときはまた格別な喜びがあります。

 と、ちょっと思い出話も書いてみましたが、とても楽しい一冊でした。

※本作は漫画化もされているようです。珍しくコミックも読んでみたいと思っています。

(2009/07/11読了)





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Last updated  2009.07.15 06:49:01
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