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2009.08.12
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E・ル=ロワ=ラデュリ(樺山紘一他訳)『新しい歴史―歴史人類学への道―〔新版〕』
Le territoire de l'hitorien (tome I et II), Edition Gallimard, tome I (1973) tome II (1978))
~藤原書店、1991年~

 本書は、エマニュエル・ル・ロワ・ラデュリの方法論に関する論集『歴史家の領域』からの抄訳です。新版にあたっての感懐でも、全訳を断念せざるをえなかったのが残念とありますが、まさに残念です…。ただし、その背景には、本書の初版が1980年で、当時はいわゆるアナール学派の研究も十分に紹介されていなかったこと、そして本書はル・ロワ・ラデュリの著作の中で最初に邦訳されたことがあります。まずはアナール学派およびその代表的研究者である彼の著作を日本に紹介するにあたり、抄訳もやむをえない手段だったのだろうと思います。
 本書の構成は以下のとおりです。

ーーー
アナール派がふくむ毒―新版にあたっての感懐―(樺山紘一)

動かざる歴史
数量化革命への道―高等研究学院第六セクションの研究―
人口動態と社会―ワーテルローからコリトンへ―

 人間のいない歴史
 雨と晴の歴史
社会史における事件と構造―シュヌアリの場合―
農村文明
近代技術と農村風俗
新しい「死」の歴史―ショニュ、ルブラン、ヴォヴェル―
危機と歴史家

訳者あとがき
ーーー

 実は流し読みの部分もあるので、十分な紹介はできないのですが…。

 特に興味深く読んだのは、「動かざる歴史」「気候 人間のいない歴史」「農村文明」の3編です。


 面白いのは、細菌という要因です。ヨーロッパの拡大(12-13世紀)とほぼ同時期、東方ではモンゴル帝国が成立し、領土を西へと拡大していきます。そして、東西の交流が活発化するなかで、それまでヨーロッパに知られていなかった病気が入ってきます。それが、ペストです。そして病気(細菌)は、ヨーロッパ人がアメリカへと進出した際、その大陸で「無差別殺戮」を引き起こすことになります。
 この章は、1節1節が短く、話題も興味深く、読みやすかったです。

「気候 人間のいない歴史」は、 『気候の歴史』 でも紹介した気候史の成果や、さらなる方法や問題関心を整理し、提起する論考となっています。

「農村文明」は、その標題とおり、通史的な農村の変化にくわえ、農村のなかの諸文化・制度などを整理した論考です。その構成は、次のとおりです。

 農村文明の性格の概観としては、家族のあり方、経済、農民たちの反乱や農民たちの文化など、こちらも興味深い話題が多いです。
「動かざる歴史」同様、それぞれの節が短く、読みやすいです。

 と、ごく一部にかぎった感想ですが、今回通読することができて良かったです。たしかに抄訳であることは残念ですが、それでもこの邦訳書はいろんなところで註に引かれていたり言及されていたりして、気になっていたので。

(2009/08/08読了)





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Last updated  2009.08.12 06:44:04
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Comments

のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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