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2009.08.11
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~講談社ノベルス、2009年~

 カンナシリーズ第4弾です。もはや殺人事件もなく、いままでのシリーズにあるような、一般的なミステリと歴史上の謎解きのリンクというかたちはとっていません。
 第1作で盗まれた社伝をめぐり、今度は鴨志田甲斐さんたちは岩手に向かいます。そこで、社伝を奪おうとする勢力との戦いもあり、手に汗握るシーンもしばしばです。
 登場人物たちの意外な役回りも次第に明らかになってきて、シリーズもどんどん佳境にはいってきた感じです。
 さて、今回の歴史上の謎は、アテルイと坂上田村麻呂をめぐる謎です。坂上田村麻呂の勢力に対して長年抵抗を続けられたアテルイが、なぜ降伏したのか。40年にも及ぶ戦いの末にアテルイは降伏したとされるわけですが、その過程の記録が一切ないのはなぜか。まつろわぬ人々を降伏させたという偉業であれば、坂上田村麻呂の戦いを称える記述が正史に残っていてもおかしくないのに…。
 …などなど、魅力的な謎がもりだくさんです。
 にしても、『QED』や『カンナ』のシリーズを読んでいると、大和朝廷はじめ、日本の中央勢力がいかに醜かったか、と感じずにいられません。欧米人がアメリカ大陸やオーストラリアで先住民を迫害したのと同様、日本の中央政権も(同一の島の上とはいえ)ある地域(九州や東北など)の先住民たちを「鬼」などと呼んで迫害していたということを、忘れてはいけないんだろうと思います。もちろん、高田さんが作品の中で示されている解釈は、あくまで歴史を考えるうえでの一つの解釈にすぎないのでしょうし、私はそもそも日本史に疎いので、どの学説を評価すべきというスタンスをとれる能力もありません。ただ、高田さんの作品に示される解釈は、説得力があると思うのです。

 新刊でノベルスを買ったのはなんだかずいぶん久しぶりのような気がします。


(2009/08/08読了)





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Last updated  2009.11.15 18:12:52
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