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2009.08.20
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芙蓉屋敷の秘密

~角川文庫、1978年~

 横溝正史さんの初期の短編(表題作は著者初の本格長編)を集めた作品集です。表題作を含め、全部で8編の作品が収録されています。
 それでは、それぞれの内容紹介と感想を。

ーーー
「富籤紳士」下宿を追い出され、友人のもとに身を寄せたものの、友人にも逃げられた並河三郎。彼のことを妙に気に入ってくれる向かいのおかみさんのところに身を寄せたが、そこでおかみさんから奇妙な依頼をもちかけられる。めいっぱいおしゃれして、一緒に街を歩いて欲しいというのだった。はたしてその意図は…。

「生首事件」質屋を営む人の好い和泉屋総兵衛のもとに、女の生首が届けられた。女の身元が分かると、総兵衛が世話をしていた男が、有力な容疑者とされるが、しかしその男にははっきりしたアリバイがあった。

「幽霊嬢(ミス・ゆうれい)」映画監督・山野茂のもとに届いた奇妙な手紙。それは、彼の映画に俊夫役として出演した人物が女性ではないか、そして高貴な家の令嬢ではないか…というのだった。そして、映画に携わった人物の前に、俊夫役の人物が現れ…。

「寄せ木細工の家」女優が寝台の天蓋に押しつぶされた事件の背景には、寄せ木細工の家を作った男の存在があった。



「三本の毛髪」二人の学生が、教授が自宅の二階で襲われているのを目撃する。二人が教授の家にたどり着いたとき、階段から転げ落ちてきた教授。しかし二階にいたはずの犯人は、姿を消していた…。

「芙蓉屋敷の秘密」元舞台女優の白鳥芙蓉が、自宅で殺害された。死亡推定時刻より前に、邸宅周辺にばらまかれていた宝石。死亡推定時刻より前に彼女を殺したという女。現場に残された帽子。死後、死体に羽織らされた着物…。いくつもの奇妙な要素が錯綜する事件を、素人探偵の都築欣哉が解決する。

「腕環」恋人のために腕環を買った小説家の青木は、友人で新聞記者の橋場と再会する。二人でカフェーにいるとき、その腕環に興味をもった女がいるが、彼女こそ、橋場が手がけた正当防衛事件の当事者だった。そして腕環に彫られたその彼女の名前…。橋場と青木は、事件の真相に迫る。
ーーー

 やっぱり、横溝さんは語り口がうまいなぁと思いながら楽しく読みました。
 ユーモア風味のある「富籤紳士」は、しかしラストで独特の感動をもたらします。「舜吉の綱渡り」も基本は穏やかな物語ですが、こちらもラストにはやられました。
「三本の毛髪」は、解説でも言われているように犯人の指摘は唐突ですが、しかしトリックの解明が興味深い一編。
 表題作「芙蓉屋敷の秘密」は、冒頭でも書きましたが、横溝さん初の本格長編ということで、面白かったです。内容紹介でも書きましたが、事件の周囲にいくつも興味深い謎がちりばめられていて、魅力的な探偵小説でした。
 などなど、面白い1冊です。

※表紙画像は横溝正史エンサイクロペディアさまからいただきました。

(2009/08/15読了)





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Last updated  2009.08.20 06:46:06
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