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2009.09.12
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~講談社文庫、1995年~

 タイトルどおり、自動車から(日本)社会、さらには日本人論を分析する一冊です。もちろん、欧米などについても、その歴史や国民性が論じられていきます。
 本書の構成を掲げておきます。

ーーー
プロローグ

第一章 江戸論
 江戸の交通
 都民未だ江戸人説

第二章 高級論
 抽象絵画を産み落したもの
 ハードトップ高級車とは何か
 蕩尽と浄土
 インフィニティQ45
 欧州車の高級
 ドイツの走る城
 日英米の高級車、乗車比較
第三章 ジャポニズム論
 アール・ヌーヴォーと吊り目
 アール・デコ

 王の目
 即刻改善すべき東京の問題点
 歩道橋と看板
第五章 自動車行政論
 改善すべき首都圏の交通行政

 即刻改善すべき劣悪な救急態勢
第六章 日本車に捧ぐ
 大衆車の栄光
 地球製の日本車
 FSXに見る、ジャパンテクノロジーの意味
第七章 平成
 平成の印象
 頂上という不安定な場所
第八章 閑話休題
 大海原のドライヴ
 オートバイ
終章 自動車進化論
 自動車進化論

エピローグ 雨に濡れる人々

解説 日本車―この複雑なるものよ!(家村浩明)
ーーー

 私は運転はできますが、いろんな車それぞれの性能や恰好についてはもちろん、車の名前も知りません。名前は聞いたことがあっても、見ても分からないのです。
 そんなわけで、第二章と第八章(こちらはクルーザーとオートバイについてですが、車よりもっと知りませんし興味がありません)はピンとこないところが多かったですが、しかし本書は自動車そのものについて形がどうの性能がどうのと論じるというよりも、その社会的背景もからめて論じられているので、おおむね興味深く読みました。

 なお、本書での道路事情への批判や提言は、小説ですが『都市のトパーズ2007』にも反映されています。日本語特有の性質からみる日本人論も、いろんなところで繰り返されていますし、あまりの毒舌に若干辟易もしますが、しかし悲しいかな、日本人の多くはまだまだ島田荘司さんが批判される要素をもっているように思います。

 あらためて書きますと、日本語は尊敬語、丁寧語がしっかりしている分、雑な、横柄な言葉遣いも充実(?)しています。当然、地位が高く、あるいは年齢が高いと、横柄な言葉遣いが許されるようになります。ところが、初対面の人には、どういう言葉遣いをすれば良いのか。たとえばA社のaさんとB社のbさんが出会います。名刺交換で、aさんが部長、bさんが課長なら、aさんはぞんざいな言葉が許されることになります。「日本人はぞんざいな言葉を自分に行使されるのが嫌いであり、一方ぞんざいな言葉を口にしたい欲求を病的なレベルで強く抱くにいたっている」と、島田さんは言います。先のように、相手にどういう言葉遣いで接して良いか、というクイズに、日本人はすぐに解答を出し、自身の言動を決定しなければなりません。「いずれにしてもこのクイズに関する解答は、どの国においてもただひとつしかない。そんな判断はとても不可能であるから、いっさいを棚あげして対等の会話を行うべきなのである」。ところが日本人は、そうはならないのですね。
 その他、日本人は、自分より目下の者には説教したくなるという習性を持っていたり、(主に正しいと信じて行動して)目立つ者を非難し、また年をとって威張る権利を得た人々の者で慢性的にストレスをためこむことになるなど、なんとも悲しい状況にあります。

 さて、私も日本語人である以上、こうした日本語の性質による日本人の悪しき部分をもっているかと思います。常に心がけてはいるのですが…。そんな私が大切にしている言葉は、「われ以外みな我が師」。吉川英治さんの言葉だそうですが、こう思えば(そしてそれは事実だと思っています)、誰に対しても謙虚になれるのではないか、と思います。
 たとえば、私は高校生より年上ではあります。けれど私は柔道も剣道もできませんし、あるいは物理学や化学も詳しくないので、それらを練習し、学んでいる高校生たちは、(もし私が剣道や柔道したり、あるいは物理を勉強したくなったりしたら)私の師になりえます。もっと幼い子どもたちも、今の私は失ってしまった感性を持っていることでしょうし、きっと彼ら彼女らの言動は、私を学ばせてくれるでしょう。
 今後どれだけ年をとっても、こうした考え方を失いたくないと思います。島田さんが批判されている、不快な威張り屋にだけはなりたくないものです。

 …と、日本人論(あるいは日本語人論)について、特に考えさせられながら読みましたが、その他自動車に関する行政の不備・腐敗についても、興味深く読みました。

(2009/09/09読了)





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Last updated  2009.09.12 07:31:20
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