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2009.09.26
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ジャクリーヌ・ド・ブルゴワン(池上俊一監訳/南條郁子訳)『暦の歴史』
~創元社、2001年~
(Jacqueline de Bourgoing, Le calendrier, maitre du temps? , Gallimard, 2000)

 「知の再発見」双書の1冊です。初期から現在までの暦の性格や制度的発展を明快に概観しています。
 本書の構成は以下のとおりです。

ーーー
日本語版監修者序文

第1章 暦の誕生
第2章 ユリウス暦から教会暦へ
第3章 計測の道具


資料篇―時のものさしの物語―
1 暮らしと暦
2 時を変える
3 風刺カレンダー
4 世紀と千年紀

おもなキリスト教典礼

INDEX
出典(図版)
参考文献
ーーー

 学生時分に一度メモを取りながら通読したことがありますが、今回も通読のうえレジュメを作っておきました。暦のことは雑学のネタ的にも面白いですし(たとえば、なぜOctober―オクトパス[タコ]にもうかがえますが、オクトは8を意味します―が10月なのか)、西洋中世を勉強するうえで教会暦(復活祭や謝肉祭がいつ頃なのか)は基本的な事項でもあります(基本的なのに身についていなかったので、今回あらためて自分用にまとめた表も作りました)。



 第2章が私にはもっとも重要な章です。

 上に書いた雑学的知識も、ここで正しく得られます(なお、月の名前はラテン語ではなく英語表記としておきます)。
 というのが、7月のJuly(ユリウス・カエサル)、8月のAugust(アウグストゥス)という二人のローマ時代の偉人の名が暦に組み込まれたことによって、本来の8月Octoberが10月にずれこんだ…と私は思っていたのですが、それは違ったのです(本書を読んだことがあるにもかかわらずです…)。
 もともと、Februaryは、ローマの旧暦では一年の最後の月でした。March(軍神マルスの月)が、1月だったのですね。ところが、いまでいう1月から6月(JanuaryからJune)には、神々の名が割り当てられました(Januaryは前後に顔のあるヤヌスの月、 Februaryは浄めの月、Marchは軍神マルス、Aprilはギリシアでいうアフロディーテ、Mayは生長の女神マイア、Juneは結婚や出産の神ユノ)。ところが、いまでいう7月以降には、旧暦の1月(March)を起点とした番号が残されました。なので、たとえばOctoberはMarchを起点とすれば8番目の月(oct=8)なのですが、 Januaryが1月になったために、そこから数えて10番目の月となったのです。7月と8月にそれぞれ偉人の名が付されたのは、Octoberがすでに今でいう10月にずれてからのこと。というんで、上記の私の誤解が判明したのでした。
 ちなみに、いまの2月が旧暦で12月だったというのはどうもピンときませんが、それは2月、3月など番号を訳語として考えているからで、あくまでFebruaryはFebruaryとして考えれば分かりやすいのかな、と思いました。もともと、Februaryは一年の最後の月でした(なので、閏年の調整はFebruaryに行われるとのことです)。それが、Januaryを年始としようと変わったために、一年の2番目の月になったのです。1月、2月という番号で月を考えると分かりにくい部分もありますが、たとえば西洋中世でも、年始は地方によってばらばらだったそうです。

 気になるのは、今で言う1月から6月に、神々の名が付されたのはいつの頃か、ということ。Octoberなどは番号が割り当てられている以上、旧暦では1~6月にも番号が割り当てられていたのでしょうか。そこまでのことは本書には書かれていなかったので、関心事のひとつとして気に留めておきたいと思います。

 教会暦の整理もとてもありがたいです。なお、万聖節(一年それぞれの日はなんらかの聖人を記念する日となっていますが、暦に入りきらなかった全ての聖人を記念する日。11月1日)と万霊節(10世紀に制定された、すべての死者を記念する日)には当然言及があるものの、こんにち大人気(?)のイベントであるハロウィン(万聖節前夜)にはふれられていませんでした。私はハロウィンの意味がよく分かっていなかったので、こういう本で確認したかったのですが、結局Wikipediaの「ハロウィン」の記事を参照した次第です。

 それから、今日のいわゆる西暦であるグレゴリオ暦の制定の過程も割合詳しく書いてあり、興味深いです。

 そんなこんなで、図版が多くてすらっと読める「知の再発見」双書の1冊ですが、じっくりと味わえる(そして基礎的な知識が得られる)貴重な文献です。特に西洋史に興味がある方は読んでおいて損はないと思います。

 なお、西洋(中世)の暦については、次の文献もとても参考になります。
高山博/池上俊一編『西洋中世学入門』東京大学出版会、2005年、池上俊一「暦学」81-90頁およびアペンディクス第2部I「暦」352-354頁。
 池上先生の記事「暦学」はかなり専門的な部分もあり、十分に理解しきれていないのですが、アペンディクスの方は主要な祝日や聖人祝日の一覧表をかかげていて、とても便利です。

(2009/09/22読了)





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Last updated  2009.09.26 07:39:02
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のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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