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2010.02.22
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(島田荘司『島田荘司全集I』南雲堂、2006年、5-333頁)

 島田荘司さんのデビュー作です。最初は1981年に刊行されていますので、もう30年近く前の著作ということになりますね。しかし、決して色あせることのない名作だと思います。
 すでに、所有している島田さんの作品の大部分については記事を書いていますが、このように再読していく中でも、あらためて記事を書いていきたいと思います。
 まずは内容紹介を簡単に書いた上で、あらためて感想を。

ーーー
1936年(昭和11年)、東京。
 梅沢家で、40年もの間日本中を悩ませることになる奇怪な事件が起こった。
 まず、当主である梅沢平吉が、密室状態のアトリエの中で殺されているのが発見された。事件のあった夜は雪が降っており、アトリエの周辺には女物の靴と男物の靴の、二種類の足跡が残されていた。ドアは、スライド式の鍵だけでなく、錠前もつけられていたという。

 そして、その後日本中を震撼されるアゾート殺人事件が起こる。梅沢平吉の手記には、一枝を除く六人の娘たちから、それぞれ体の一部をとり、完全な女アゾートを作るという計画が記されていた。その手記のとおりに体を切断された六つの死体が、日本中に遺棄されていた。そして、手記に記された、アゾートの作られた場と思われる場からは、しかしアゾートは見つからないままだった。
   *
1979年(昭和54年)4月、東京→京都→東京。
 1979年4月、御手洗潔の占星術教室に、一人の女性が来訪した。飯田と名乗る彼女は、父の竹越文一郎が残した手記を持ってきていた。その手記には、1936年の「占星術殺人」にまつわる告白が綴られていた。
 後日、飯田の兄の、竹越刑事が訪れ、手記を返してほしいという。警察では、手記を近いうちに公開せざるをえない。そこで御手洗は、1週間以内に事件を解決することを条件に、手記を公開しないよう約束させる。御手洗と、記録者の石岡和己は、京都に行き、事件の再検討を進めていく。
ーーー

 アゾート殺人という大きな柱のトリックはもちろんですが、密室殺人や一枝殺人にまつわる謎も興味深く、そして途中で挿入される手記の内容も解決の道筋と同時にあらたな疑問点を提示し、最後までわくわくしながら読めました。もう何度目かの再読ですが、何度読んでも面白いですね。
 そしてあらためて思ったのは、すでに日本人の性質への批判が散りばめられていること。きわめて残念なことに、この作品が発表されてから30年経つ今も、本作でなされている批判は、大部分の日本人に通じてしまうのですね(私にも通じるところがあると思います、気をつけなければ…)。

 読むたびに、面白く思う、あるいは興味深く感じる部分が変わったり、新たな発見があったりするものですが、今回はある二人が今川焼きを食べるシーンが心に残りました。

   *

 最近は仕事の方も忙しく(不本意ながら、ふたたび体調を崩す有様でした)、しばらく小説が読めていませんでした。2月に入って、小説を読んだのは本作が初めてなのです。細々と、西洋史関連の文献は読んでいるのですが…。


(2010/02/21読了)





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Last updated  2010.02.22 06:54:02
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