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2011.12.31
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~ちくま新書、1998年~

 西洋史に関する面白そうな著書(『聖母マリア』『「弱い父」ヨセフ』など)を多数執筆されている、竹下節子さんによる『ローマ法王』を紹介します。
 本書の構成は次のとおりです。

ーーー
序章  ローマ法王とはだれか
第一章 ローマ法王のホームグラウンド
第二章 ローマ法王とヨーロッパの誕生
第三章 ローマ法王の盛衰

終章  二一世紀のローマ法王

あとがき
注と参考文献
歴代法王表
ーーー

 本書では、「法王」という呼称で統一されていますが、この記事では、教皇と表記します。
 マスコミなどでも「法王」という呼称がしばしば使われているので、日本人にはおそらくなじみがよりなじみのある「法王」で統一されていると思いますが、日本カトリックの正式ホームページでも「教皇」の呼称を使うようにお願いされていること、西洋中世史を勉強するなかでは「教皇」の呼称を用いるのが基本なので、私は教皇と表記していきます。

 …さて。

 本書は、まず教皇庁の日常を紹介したうえで、通史的に歴代教皇の役割を見た後に、本書執筆当時の教皇だったヨハネ=パウロ二世の意義を詳しく紹介する、という構成になっています。

 序章では、教皇庁が、過去のカトリック教会の非を認める「謝罪外交」を展開していること、そしてその背景が指摘されます。
 普通の国家なら、ナショナリズムや賠償金の絡みから、謝罪をするにも多くの思惑がつきまといます。

 ヴァティカン市国は国ではありますが、このように非常に特殊な性質を持っているという面と、キリスト教の教義の面からのこの説明は、とても興味深く、勉強になりました。

 第一章では、ヴァティカン市国の構成(軍隊など)、教皇の一日などが紹介されます。なかでも特に、女性職員の境遇について紹介している項が興味深かったです。

 第二章・第三章で、通史的に歴代教皇の役割をみていきます。
 本当に、いろんな人がいるなぁ、と思います。レオ大教皇やグレゴリウス大教皇など、「大教皇」と呼ばれる教皇や、グレゴリウス七世のように教会改革に尽力した教皇もいれば、「既婚婦人と同衾している時に急死した」ヨハネ12世(私は、この人が、高校生の頃、不倫相手の旦那に殴られて死んだと聞いたように記憶しています)や、教皇になった途端に人がかわり、気に入らない枢機卿を罵倒したウルバヌス6世のような人もいる…。

 そして、1978年に教皇に選出されたヨハネ=パウロ二世の意義について、第四章で詳しく論じられます。

 ロシアの影響が強かったポーランドですが、カトリック教徒が多い国。その自由化のなかで、ヨハネ=パウロ二世も尽力したといいます。
 また、ヨハネ=パウロ二世が、とても精力的に諸外国を訪問したということも、勉強になりました。

 終章は、感動的な言葉で締めくくられます。

 久々の再読。勉強になる一冊でした。

※2005年にヨハネ=パウロ二世が亡くなった後、ベネディクト16世が教皇となっています。





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Last updated  2011.12.31 16:47:40
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Comments

のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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