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2016.12.28
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ジョルジュ・デュビー(篠田勝英訳)『中世の結婚―騎士・女性・司祭―』
( Le checalier, la femme et le pretre. Le mariage dans la France feodale , Hachette, 1981 )
~新評論、1984年~

 ジョルジュ・デュビィの非常に有名な著作のひとつです。
 本書の構成は次のとおりです。

―――
日本語版への序文

第1章 国王フィリップの結婚

十一世紀
第3章 ブールヒャルトによる結婚
第4章 ロベール敬虔王
第5章 君主と騎士
第6章 異端者たち
一一〇〇年前後
第7章 聖人伝・聖女伝
第8章 ギベール・ド・ノジャン
第9章 イヴ・ド・シャルトル
十二世紀
第10章 王家の内部で

第12章 アンボワーズ諸侯
第13章 ギーヌ伯家
結語

原註
訳者あとがき

―――

 本書は、主に11-12世紀に、「キリスト教に強化されたヨーロッパで、人々はどのように結婚したか」という問題を提起し(40頁)、史料によりながらその実態を描きます。

 結婚には、主に遺産相続に関する世俗的な面と、性的活動への態度といった宗教的な面のふたつの面があるといいます(41頁。さらに118頁では「性のモラル」「社会のモラル」と表現されています)。それを示す「聖職者のモラル・戦士のモラル」という標題をもつ第2章は、聖書や初期教父たちの結婚観や、カロリング期の戦士の結婚の状況を描き、本論の前史を示しています。

 以下、簡単に興味深かった点をメモしておきます。

 第3章は、ヴォルムス司教ブールヒャルトの『教令集』に見られる結婚観を分析します。なおこの史料に関する詳細な分析と抄訳は、 野口洋二『中世ヨーロッパの教会と民衆の世界―ブルカルドゥスの贖罪規定をつうじて―』(早稲田大学出版部、2009年) で読むことができます。

 第5章では世俗的な結婚の役割として、それが「同盟を結ぶ手段」であったことが強調されます。また、騎士階級の結婚のあり方に変化が起こっていた1020年代頃、異端の運動が起こっていたことを指摘し、異端の主張する結婚観を分析する第6章も興味深いです。

 第8章では、従来司祭が教会人の役割が小さかった結婚の儀式の中に、教会人が参加するようになったことが指摘され、またその儀式の流れが紹介されています(247-249頁)。

 第11章は、民衆に結婚生活のあるべき姿を語る説教、より効果的にメッセージを伝えるための劇(『アダム劇』の事例)、聖職者アンドレ・ル・シャプランが著した宮廷風連雷の技法書『恋愛論』といった作品を取り上げ、12世紀後半の結婚や恋愛の姿を描きます。

 第12、13章は、2つの家系を取り上げ、そこで行われた具体的な結婚の様子を詳述していきます。

 内容自体も興味深いのですが、本書のもうひとつの魅力は、詳細な訳注にあると思います。専門用語や言及される人物の説明にとどまらず、デュビィが明記していない典拠の補足までも丁寧にされています。

 かつて一部は読んでいましたが、ざっとでも通読できたのは今回が初めてです。すべて理解できたとはいえませんが、良い読書体験でした。

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Last updated  2016.12.28 22:19:05
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