マックス・ウェーバー(尾高邦雄訳)『職業としての学問』
~岩波文庫、 1980
年改訳~
Max Weber, Wissenschaft als Beruf
, 1919
『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』などの著作で有名なマックス・ウェーバー (1864-1920)
1919
年1月にミュンヘン大学で行った講演です。
訳者による分かりやすい解説も踏まえてメモをしておくと、本書の内容は大きく3つに分かれます。
第一は「職業としての学問の外面的事情」で、職を得たり昇進したりするには僥倖を待つほかないということや、評価基準として学生聴講生の多さがあるものの、ある教師のもとへ学生が多く集まる要因は声の調子やその人の気質など外面的な事柄にあるということなどが指摘されます。
第二は「学問を職業とする者の心構え」で、「自己を滅しておのれの課題に専心する人こそ、かえってその仕事の価値の増大とともにその名を高める結果となるであろう」 (28-29
頁 )
と述べ、一方で売名を目的とする態度を批判します。また、「自分の仕事が…いつか時代遅れになる」ことにこそ「学問的業績の意義は存在する」 (29-30
頁 )
とし、「学問上の「達成」はつねに新しい「問題提出」を意味する。それは他の仕事によって「打ち破られ」、時代遅れとなることをみずから欲するのである」と強調しています。
第三は「学問の職分と価値」で、ここでは、古代ギリシャからニーチェまでの学問観を概観した上で、やや乱暴にいえば、ある学問の意義はその学問自体が立証することはできない、と述べます(たとえば、「ある文化現象が興味あることかどうかを「学問的」に立証することはできない」 (47
頁 )
といいます)。次いで、教室では、教師個人の党派的立場を明らかにすべきではなく、それは政治的な集会などでなされるべきという立場を明らかにします。これを、「予言者や扇動家は教室の縁談に立つべき人ではない」 (50
頁 )
とも言っています。
以上、簡単なメモとなりましたが、印象的な議論の流れであり、興味深く読みました。
(2025.07.17 読了 )
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