渡辺節夫『王権と国家―ヨーロッパ近代の中世的起源―』
~東京大学出版会、 2026
年~
著者の渡辺節夫先生は青山学院大学名誉教授で、中世フランスの政治史がご専門です。
渡辺節夫『フランスの中世社会―王と貴族たちの軌跡―』吉川弘文館、 2006
年
と対をなす1冊とのことです。
本書の構成は次のとおりです。
―――
序言
1 西欧中世王権とレーン制
2 皇帝権と王権
3 王の基本的諸権力
4 王宮と中央統治機構の発展
5 聖俗諸侯層と王権
6 地方統治機構の発展
7 中世国家とネイション概念
結語
主要参考文献目録
索引
―――
第1章は、レーン制(封主の封臣に対する保護義務・後者の前者に対する勤務義務と、封主の封臣に対する封 (fief)
授与に伴う物権的関係の相互に因果連関的に統合されることにより成立した統一的制度)について、通史的かつ、時代ごとにフランス、イギリス、ドイツなど各国の状況を見ていきます。
第2章では、私は不勉強で、そもそも「皇帝」の位置づけを理解していなかったことに気付かされましたが、要は王権の上位にある「皇帝」の地位と、(フランス)王権が同等であることを主張していく過程が描かれるものとして読みました。(たとえば、3節は「王はその王国内における皇帝である」という法諺を標題としています。)
第3章は、属地的な慣習法が、やがて王に従属する過程や、裁判権と王の関係など、標題どおり王の諸権力の諸相を見ます。
第4章は、中央統治機構の諸役職や、顧問会などについてみていき、第5章はさらに、中央権力と聖俗諸侯との関係をみていきます。とりわけ、シャンパーニュ伯との関係、モンフォール=モンモランシー家系との関係を論じる第5章第3節・第4節では、「概論的性格」 (iv
頁 )
のある本書の中でも、各論的な議論が展開されます。
第6章は、地方統治について。地方統治をする役人や、令状の意義、都市との関係などが論じられます。
政治史・法制史的な議論が主となる本書において、ネイション意識を論じる第7章はやや異色のような印象もありますが、私は最も興味深く読みました。第1節ではネイション意識に関する先行研究をたどり、第2節はフランスにおけるネイション意識とアイデンティティ―について史料に即しながら論じます。武勲詩にみるネイション意識を論じる第3節、カペー王権とシャルルマーニュとの連続性を強調する言説を分析する第4節もたいへん興味深いです。
以上、不勉強ながら、簡単ですが本書の概観をしてみました。
上にも引用しましたが、本書は「概論的性格」であるため、注は付されておらず、巻末の参考文献目録は外国語文献のみの列挙(2頁のみ)となっています。序言において、本書の元となる論文が列挙されており、そこまで辿れば典拠も明らかになるとはいえ、本書が「概論的性格」の1冊であるならば、本書を出発点として発展するために、邦語文献も掲載されていると良かったと思われます(ないものねだりかもしれませんが)。
私は政治史の分野はとにかく不勉強なので、概論的性格の本書も十分に理解できたとは言えませんが、『フランスの中世社会―王と貴族たちの軌跡―』と合わせて、適宜勉強していきたいと思います。
(2026.09.06 読了 )
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