仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2005.11.24
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カテゴリ: 教育
 前回、学校給食の「いただきます」について書きましたが、もう1題。同じく学校給食の「いただきます」に関してなのですが、話の重点が変わります。「合掌」について、です。

 平成14年12月15日に秋田市で、「第5回一日中央教育審議会」が開催されました。教育基本法の見直しなどについて意見発表がされているのですが、岩手県で小学校の教頭をされている畠山さんという方が、次のような発言をされています(文部科学省HPからODAZUMA Journal要約)。
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 宗教に関する教育をより重視する方向で見直すべきである。特定の宗派でない、宗教的な情操の涵養や生命に対する畏敬の念の育成は、人格の形成に欠かせないが、現状の学校教育ではおろそかにされている。教育基本法第9条の第1項(宗教について教える必要性)がおそろかにされ、第2項(特定の宗教のための教育の禁止)が全ての宗教教育を禁じていると過大に受けとめられているのが実態。
 例えば、給食前に合掌して「いただきます」と唱和していた富山県の小・中学校では、保護者から「合掌という言葉は宗教的な色彩があり、強制されるのは苦痛」という指摘を受け結局合掌を取りやめ、平成8年以降は、「気をつけ。いただきます」に変えたという。
(他に、近畿地方では多くの小学校が伊勢神宮を修学旅行のコースに入れていたのが激減した、ゆとりの時間に家庭で神棚、仏壇、墓地を清掃し、花を献じるよう指導した校長に教育委員会は中止の指導を行った、などの紹介があり、)伝統、文化の尊重の視点からも残念なことだ。
(なお、発言の後「宗教教育」の語義について中教審委員とやりとりあり。)
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 政教分離や「宗教教育」については色々言いたいこともあるのですが、グッと我慢して、ここは「合掌」を宗教教育を理由に廃止したという点に注目したいと思います。



 憲法20条の解釈論で行けば、「目的効果基準」を採用することとなり、合掌の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進または圧迫、干渉になる場合には、違法(違憲)ということになるでしょう。私個人としては、軽く合掌する程度は、現在の感覚として宗教的意義は薄く世俗的な生活の一部なのであって、公立幼稚園のクリスマス会(サンタ登場、キャンドルサービス)の方がよっぽど宗教的だと思います。

 ちなみに、我が家の2人の娘たちに給食の時間の「いただきます」の際に、どうしているか(合掌するかどうか)確認してみましたら、小学校3年(公立)の姉も、保育所(公立)の5歳の妹も、いずれも手を合わせるしぐさをしてくれました。
 もっとも、「いただきます」を発声するときに軽く両手を合わせる感じのようです。日常生活でも通常こんなものでしょう。

 富山の例で言えば、給食前の合掌のさせ方に通常の生活を明らかにはみ出したものがある、例えば一斉号令で黙祷させる、時間が長くある程度の苦行と感じられる、などならば、目的効果基準のテストに照らしても問題にもなりえるでしょう。また、浄土真宗の強い土地柄で、何らかの社会的な要因があるのかも知れません。

 いずれにしても、異論が出るようではまともな指導ができないという配慮で、こうなったのでしょう。
 教育上の現実的配慮としては、妥当な対応かも知れません。個人的には教育委員会に毅然として欲しいとも思いますし、後味はよくありません。しかし、学校教育の枠内だけに押し込めた議論に終始するのも、また間違いでしょう。
 「合掌有害論」は特殊な一例なのかも知れませんが、皆が自然に合意し依拠する揺るぎない考え方や所作(大げさに言えば文化とか伝統)というものが崩れているのだろうか、と思ってしまいます。





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最終更新日  2005.11.25 00:11:03
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