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2020.11.23

夜中の薔薇：向田邦子エッセイ集

テーマ：読書(9632)

カテゴリ：読書

夜中の薔薇 ■

向田邦子の代表的エッセイ集であり、時を超えて愛され続ける珠玉のロングセラーでもある本書。
「野中の薔薇」を「夜中の薔薇」と聞き違えていた人のエピソード から自由な連想がはじまる表題作ほか、それぞれ短いながら著者特有の語り口が魅力的なエッセイが50あまり。
言葉のこと、家族のこと、生活のこと、酒のこと、仕事のこと…向田邦子を形づくる諸々の要素が軽やかに浮かんでは消え、その文章の世界に読者はゆっくりと遊ぶことができるでしょう。
同じ講談社文庫の『眠る盃』と対をなして愛される作品ですが、著者最後のエッセイ集であることを思うと、いっそうその優雅な知性と不思議な暖かみを持つ独特の魅力が胸に残ります。

　向田邦子脚本のテレビドラマは、大好きで、沢山見たけれど、本を読んだのは初めて。

暮らしの中の小さな出来事を向田邦子独特の目線で描いて、どのエッセイもよかった。

中でも私が一番気に入ったのが、 「手袋をさがす」 。

　気に入った手袋が見つからなくて、風邪をひくまでやせ我慢を通した二十二の冬以来、「いまだに何かを探している」・・・「手袋をさがす」

向田邦子は、美人で才能豊かな人だった。
しかし、彼女は結婚をすることなく、50歳を少し過ぎて、突然、飛行機事故で、この世を去った。

彼女ほどの人ならば、モテただろう。
しかし、手袋を妥協できなかったように、彼女は、結婚を、人生を妥協できなかった。