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オーセンティック・バーでも提供されることの多い自家製の「漬け込み酒」。実は何でもかんでも好き勝手に造れる訳ではなく、一応、法的な規制が厳然と存在します。バー業界のプロでも意外と知らないこうした日本国内での法的ルールについて、(以前にも一度書きましたが)改めて最新情報も含めてまとめてみました。ご参考になれば幸いです。 ◆2008年に自家製造のお酒の規制が緩和 バーUKでは、4種の自家製造の酒(しょうがを漬け込んだウオッカ、7種類のスパイスを漬け込んだラム、ザクロを漬け込んだカルバドス、レモンピールを漬け込んだリモンチェロ<ベースはスピリタス>)をお客様に提供していることはご承知の通りですが、友人やお客様から「それって、法律的に問題ないの?」と聞かれることが時々あります。 日本国内では、お酒を製造・販売(提供)するには酒類製造免許が必要です。お酒のメーカーが業として行う「果実や穀物などの原料から酒類を製造する行為」だけではなく、バーや飲食店等がお酒に様々な材料や他のお酒等を混ぜ合わせる「混和」という作業も、法的にはお酒の製造(新たなお酒を造っている)と同じ扱いを受けます。そして、アルコール分1%以上のお酒はすべて課税されます。 従って、バーや飲食店が無許可で自家製のお酒を造って提供するのは、基本、違法行為です。違反した場合は、酒税法第54条《無免許製造の罪》の規定に該当し、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます(単なる無許可販売の場合は1年以下の懲役又は50万円以下の罰金=同法第56条)。 しかし現実には、許可を得ることなく自家製の果実酒等を提供している飲食店は、昔からありました。様々な果実やスパイス、ハーブ、コーヒー豆、茶葉等を漬け込んだ自家製のお酒を「店の名物」にしているバーも少なくありませんでした。厳密に言えば、2008年の法改正までは、こうしたバーや飲食店等での「製造・提供行為」は限りなく「違法」行為でした。 国税庁もこれ以上「違法状態」を放置できないと考えたのか、それとも実態に合わせて少し制限を緩和すべきと考えたのか、2008年<平成20年>に租税特別措置法(酒税関係)が改正され、特例措置(例外規定)が設けられました。それは「客等に提供するため酒類に他の物品を混和する場合等、一定の要件を満たせば、例外的に酒類の製造に該当しないこととし、免許や納税等が不要となる」という特例です。 この結果、例えば「焼酎で作る梅酒」「しょうがを漬け込んだウオッカ」「ウオッカにレモンを漬け込んだリモンチェッロ」等は、酒類免許がなくても、バーや飲食店は法的な裏付けを持って堂々と製造し、提供することが可能になりました。 一方、個人が自分で飲むために造る酒(例えばよくある梅酒づくり等)は、かなり昔からとくに法的な規制はなく、旧酒税法(1940年<昭和15年>施行)でも禁止する規定はありませんでした。すなわち、個人の場合は事実上「黙認」状態でしたが、1953年<昭和28年>に施行された新・酒税法で初めて、「消費者が自ら消費するために酒類(蒸留酒類)に他の物品を混和する場合は新たに酒類を製造したとは見なさない」とする特例措置(酒税法43条11項)ができ、めでたく法的にも認められることになりました。 ◆使用が禁止されている穀物や果実に注意 このバーや飲食店等を念頭に置いた租税特別措置法の特例措置についてもう少し詳しく説明しましょう。適用対象は「酒場、料理店等、酒類を専ら自己の営業場において飲用に供する業」であり、具体的には、下記のようないくつかの条件を満たす必要があります。(1)酒場、料理店等が自己の営業場内において飲用に供することが目的であること(2)飲用に供する営業場内において混和を行うこと(3)一定の蒸留酒類とその他の物品の混和であること ※酒場や料理店等が客に提供するために混和する場合だけでなく、消費者(個人)が自ら消費するため(又は他の消費者の求めに応じて)混和する場合も、この「特例措置」と同様の規制を受けます。 また、使用できる酒類と物品の範囲は、以下の通り指定されています(この規定は個人が自分で飲むために造る場合も順守する義務があります)。(1)混和後、アルコール分1度以上の発酵がないもの(2)蒸留酒類でアルコール分が20度以上のもので、かつ、酒税が課税済みのもの(具体的には連続式蒸留焼酎、単式蒸留焼酎、ウイスキー、ブランデー、スピリッツ<ウオッカ、ジン、ラム、テキーラ等>、原料用アルコール)(3)蒸留酒類に混和する際は、以下に示す禁止物品以外のものを使用すること (イ)米、麦、あわ、とうもろこし、こうりゃん、きび、ひえ若しくはでんぷん、又はこれらの麹 (ロ)ぶどう(やまぶどうを含む)=【末尾注1】ご参考 (ハ)アミノ酸若しくはその塩類、ビタミン類、核酸分解物若しくはその塩類、有機酸若しくはその塩類、無機塩類、色素、香料、又は酒類のかす (ニ)酒類(※国税当局に問い合わせたところ、「蒸留酒、醸造酒を問わず、ベースの蒸留酒と同一の酒類以外の市販の全ての酒類を指す」とのこと) ※なおこの特例措置は、前記のように店内での飲食時に提供する場合に限られ、お土産として販売するなどの客への譲り渡しは出来ません(個人が自宅で造る場合も、同居の家族や親しい友人等に無償で提供することはできますが、販売することは出来ません)。 ◆蒸留酒はOK、醸造酒はダメ 以上のように、例えばバーや飲食店等でよく見かける梅酒は、「蒸留酒である焼酎やウオッカ等(アルコール度数20度以上)に漬け込む」のはOKですが、日本酒は「醸造酒であり、通常アルコール度数も20度未満」ですから、二重の意味でNGです(まれに、度数20度以上の日本酒も存在しますが、バーや飲食店で提供する場合は「蒸留酒」しか使えないのでやはりダメです)。 また、梅酒に自然な甘さを出したいからと言って、氷砂糖の代わりに「麹」を使うのも「(3)の(イ)に抵触する」ため、当然NGです。また、ぶどう類を原料にして自家製ワインのようなものを提供すれば、ベースが醸造酒・蒸留酒等に関係なく、完全に違法行為となります。 さらに、年間に自家製造できる量の上限も、営業場ごとに1年間(4月1日から翌年3月31日の間)に1キロリットル以内と決められています(バーUKの場合は、4種類全部合わせても、たぶん月間で最大2~3リットルくらいなので、全然大丈夫です)。なお、この特例措置を受ける場合は、所管の税務署に特例適用の申告書を提出しなければならないとされています(バーUKも一応、申告書を提出しております)=【末尾注2】ご参考。 ◆「自家製サングリア」の提供は基本NG 気をつけなければいけないのが「自家製サングリア」です。サングリアとは「ワインにフルーツやスパイスを漬け込んだワインカクテル」のこと。アルコール度数も低く、フルーティで、お酒が苦手な女性にも飲みやすいので、「自家製サングリア」を食前酒やカクテルとして提供するバーや飲食店も少なくありません(私も何軒か知っています)。 しかし、ベースがワイン(醸造酒)なので前述した条件の「ベースが蒸留酒」にも「20度以上」というルールにも引っかかり、事前に漬け込むことが一般的なサングリアは、場合によっては「発酵」も起こるので、租税特別措置法の特例措置は適用されません。許可なく製造・提供すれば違法で、刑事罰(前述)が科せられます。 従って、現在の日本国内では、基本、サングリアの提供はNG(違法行為)です。プロのバーテンダーの人でも、この規定を知らない人を時々見かけますので、本当に注意が必要です(ただし、サングリアを公然と、あるいは内緒で提供していたというバーが国税当局に摘発されたという話は、個人的には過去聞いたことはありませんが…)。 なお、お客様が飲む直前にワインにフルーツを入れて提供するような場合については、「店舗内で消費(飲む)の直前に酒類を混和した場合(例えばカクテルのようなドリンク)は、そもそも酒類の製造に当たらない」という特例措置と同等に扱われるため、まったく問題ありません。 ◆目に余る行為でない限り、現実には「黙認」 くどいようですが、日本国内でお酒を製造するには、(そこがバーであろうとなかろうと)酒類製造免許(酒造免許)の取得が義務づけられています。なので免許を取れば、店内で自家製のビールやワイン、そしてサングリアを製造・提供することも法的には可能です=【末尾注3】ご参考。 しかし免許取得には、管轄税務署より「経営状況」「製造技術能力」「製造設備」等の審査、免許を受けた後も1年間の最低製造数量を満たしているか等の審査があります。製造しようとするお酒の種類ごと、また製造所(店舗)ごとに免許が必要です。普通のバーや飲食店等が独自で取得するのはかなり高いハードルがあり、そう簡単ではありません。 現状では、「自家製サングリア」を提供するバーや飲食店は時々見かけますが、それはかなりの部分で「グレーな行為」だと思われます。だが、国税当局は「年間通して常時、公然と一定量を提供したり、お土産で販売したりする」ような目に余る行為でもない限り、事実上「黙認」している状況です(いちいち摘発する手間も大変だからでしょう)。 個人的には、年に1~2度くらいの特別なイベント時なら、事前に申請すれば例外的に自家製サングリアの提供を認めてほしいと強く思います。しかし現状では、何かのきっかけで国税当局が厳しく規制してくることも十分考えられますので、まぁ基本的には、バーでは手を出さない方がいいと考えています。サングリアに近いアルコール・ドリンクを提供したい場合、前述したように、飲む直前にワインにオレンジやレモン、ライムなどのフルーツを加えるしかありません。 ここまで書いてきたことの要点(大事なポイント)をまとめておきますと、バーで提供できる自家製のお酒は、(1)20度以上の蒸留酒を使うこと(2)ぶどう類以外の材料を使うこと(米などの穀物類や麹もダメ)(3)店内で作り店内だけで提供すること(持ち帰り販売はダメ) ということです。この3つだけは常に頭に入れておきましょう。 ◆その場でつくるカクテルはOK では、バーの花形である「カクテル(Cocktail)」はどうでしょうか? バーでのカクテルは通常、お客様の注文を受けてその場でつくられ、飲む直前に提供されます。1953年に成立した酒税法には「消費の直前に酒類と他の物品(酒類を含む)を混和した場合は、前項の規定(新たに酒類を造ったものとみなす)は適用しない」(第43条10項)という例外規定があり、2008年の租税特別措置法の改正でも、この例外規定は受け継がれています。 従って、その場で作ったカクテルを提供することは全く問題ありません。提供の直前につくるカクテルなら、フルーツなどを混ぜても「発酵」することはあり得ないからです。また、店舗前のテラス、ベンチ等は、客がその場で短時間で消費する前提であれば、店舗内と同じ扱いとなります。ただし、店舗内・店舗前に関係なく、自家製酒や作ったカクテル等を容器に詰めたりして販売する(無償譲渡することも含む)などの行為は、「無免許製造」となるのでできません。 なお、個人が自宅においてカクテルを飲む直前につくる場合、家庭内で消費する限りは家族や来訪した友人にも自由に提供できますが、(別の場所に住む)他人の委託を受けてつくったりすると「違法」になるので注意が必要です(当然、販売行為もNGです)。 ◆「期限付酒類小売り免許」も一時制度化されたが… ちなみに、国税庁は2020年4月、コロナ禍で苦しむ飲食業を支援するため、バーや飲食店等が6カ月の期限付きで酒類の持ち帰り販売ができる「期限付酒類小売業免許」を新設しました(現在ではこの制度は終了)。昨年は、この「期限付小売業免許」を取得して、ウイスキー等を量り売りするバーもあちこちで目立っていました。 加えて、国税庁が「カクテルの材料となる複数の酒類や果実等を、それぞれ別の容器に入れて、いわゆる”カクテルセット”として販売することも、期限付酒類小売業免許を取得すれば可能」という見解を示したことを受けて、カクテルの持ち帰り販売(材料別に密閉容器等に詰めての販売)をするバーも登場しました。 ミクソロジストとしてバー業界でも著名なバーテンダー、南雲主于三(なぐも・しゅうぞう)氏は「期限付免許」を取得したうえで、自らの店舗で持ち帰り用のオリジナル・カクテルセットを販売されました。その後は、酒類製造免許を持つ会社とタイアップして、完成品の瓶詰めオリジナル・カクテルの販売(通販がメイン)も始められました。その南雲氏の体験談はとても参考になります(出典:食品産業新聞社ニュースWEB → https://www.ssnp.co.jp/news/liquor/2020/04/2020-0413-1634-14.html)。 ◆出来たこと・出来なかったこと ご参考までに、「期限付酒類小売業免許」で出来たこと・出来なかったことや許可要件等を少し紹介してみます。(1)瓶(ボトル)や缶のままでの販売は可能(※この場合の瓶や缶とはウイスキーやビール、ジン等の未開栓の商品を指す)。(2)来店時にその場で酒類を詰める量り売りも可。量り売りの場合、容器は客側が用意することが前提(店側が容器を用意する場合、容器代の伝票は別にすること)(3)来店前にウイスキー等の酒類を詰めておく「詰め替え販売」は、詰め替えをする2日前に所轄の税務署に届け出をすれば可能。(4)カクテルなどをプラカップに入れて蓋をして販売することはできない。(※ただし、事前にカクテルを材料別に密封容器に詰めておく「詰め替え販売」は、(3)と同様、事前に所轄の税務署に「詰め替え届」を出していれば可能)=【末尾注4】ご参考。(5)量り売りの場合はラベル表示は不要だが、詰め替えはラベルが必要。(6)2都道府県内にまたがる配送は不可。(7)酒税法10条(酒類製造・販売免許を得るための人的・資格要件)に違反していないこと。(8)新規取引先から購入したものは販売不可。既存の取引先からの酒類に限り、販売が可能。 ◆「期限付免許」は2021年3月末で終了 前述したように、期限付免許での「詰め替え届」が出ていれば、カクテルを材料別に密閉容器にボトリングまたは真空パックにしてセット販売することが出来ました。南雲氏は例えば、ジン、カンパリ、ベルモットを密閉容器に詰めて、オレンジピールと一緒にして「ネグローニ・セット」として販売。お客様も自宅で手軽に、プロ並み(に近い?)のカクテルが楽しめたのです。 南雲氏は当時、「小売と同じことをしても価値はない。バーにしかできない売り方が付加価値となります。例えば、ウイスキーのフライト(飲み比べ)セット、自家製燻製とウイスキーのマリアージュセット、クラフトジンとライムとトニックのジントニックセットなど、可能性は無限大です」と大きな夢を描いていました。素晴らしい取り組みだと思いました。 しかし、国税庁はこの「期限付酒類小売業免許」を2度の期限延長を経た後、今年(2021年)3月末を持って終了(廃止)してしまいました。4月以降も継続を希望する場合は、通常の「酒類小売業免許」を申請するように告知しています。コロナ禍がここまで長引くとは思わなかったということもありますが、せっかくの「期限付免許」はコロナ禍が収束するまでは存続させてほしかったし、一方的に終了してしまった同庁の姿勢はとても残念に思います。 その後も南雲氏は、日本国内のバーで、カクテルのデリバリー販売、テイクアウト販売が常時認められることを目指し、様々な団体やバーテンダーと連携して、国税庁への働きかける活動を精力的に続けられています。ぜひ応援していきたいと思っています。 ◆出張バーテンダーの扱いは? 時々見かける(そして、私自身もたまに依頼される)出張バーテンダーっていう営業は、出張先で用意された酒や材料を使ってカクテル等つくる場合においては、法律的な縛りはまったくありません(出張料理人・シェフも同じ条件ならば合法的な行為と見なされます)。厳密に言えば、食中毒を起こさないように注意する程度です。 ただし、出張先(店舗外)で提供するカクテルを、事前に作り置きして容器に詰めていくことはできません。租税特別措置法では、「当該営業場以外の場所において消費されることを予知して(事前に)混和した場合、特例措置にいう『消費の直前に混和した』こととはならず、無許可の酒類製造に相当する」とされています。 要するにバーにおいてのカクテルは原則として、「自らの店の中でつくって提供すること」「注文の都度つくること(作り置きすることはNG)」「注文した人が飲むこと」の3つの条件を満たす必要があり、出張先においても「(出張先は)自らの店と同じ扱いになる」ことも含め、この3条件を守らなければなりません。 以上、長々と書いてきました。2020年1月以降長く続くコロナ禍で、バーを含む飲食店は、非科学的なアルコール規制のために、苦境に立たされています。しかし、ピンチはチャンスでもあります。我々バーテンダーは、コロナ禍が収束した暁に、バー空間で味わうお酒の楽しさをお客様に実感してもらえるように、関係する諸法律には誠実に向き合いながら、より一層の創意と工夫を加えて新しい自家製酒やカクテルを提供していこうではありませんか。【注1】他の果物は混和してもいいのに、なぜ、ぶどう類だけは禁止になっている理由について国税庁は説明していませんが、おそらくは(正式の免許を受けて醸造している)国内のワイン農家の保護という観点があるのではないかと考えられています。【注2】特例適用申告書については、店で少量の自家製酒を不定期に提供している何人かのバーのマスターに聞いてみましたが、実際、個人営業の店で申告書を出しているところはそう多くないようです。現実には、少量で不定期ならば、国税当局も事実上「黙認」しているようですが、私は、妙な疑いをかけられるのも嫌なので、一応、法律に従って申告しています。 【注3】アルコール度数1%未満であればビールやワインを醸造するのに許可は必要はありません。市販の自家製ビール(またはワイン)製造キットがこれに当たります。なお、店内に簡易で小型の蒸留器を置いているバーを見かけることがたまにありますが、無許可でアルコール度数1%以上の蒸留酒を造る行為は「違法」になるのでご注意ください。【注4】南雲氏との2020年4月の一問一答で、国税庁酒税課は「カクテルは、仕様がグラスやカップ、プラカップ等で直後に飲むことを前提としている容器であれば(店舗内での)提供」と答える一方で、「結果として客側が持ち帰ったとしても、直ちに販売と言うのは難しい」との見解も示し、蓋のない容器での「テイクアウト」も事実上容認していました。しかし、期限付免許が終了した現在、カクテルの「テイクアウト」販売は残念ながら再びNGになっています。【おことわり&お願い】この記事は、バーにおける「自家製漬け込み酒」等について、現時点での酒税法、租税特別措置法上の一般的なルールや法的見解等をまとめたものですが、個別具体的な行為や問題についての適法性まで保証するものではありません。個別のケースにおける疑問や法的な問題、取扱いについては、バーや飲食店等の所在地を所管する税務署や保健所にご相談ください(※ご参考:酒税やお酒の免許についての相談窓口 → 国税庁ホームページ掲載リンク)
2021/06/04
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きょう2日の新聞報道(毎日新聞WEB版)によれば、海賊版サイト「漫画村」(2018年4月閉鎖)に人気漫画を無断掲載したなどとして、サイト運営者とされ、著作権法違反などに問われた星野路実(ろみ)被告(29)の判決が2日、福岡地裁であり、神原浩裁判長は懲役3年、罰金1000万円、追徴金6257万円(求刑・懲役4年6月、罰金1000万円、追徴金6257万円)の有罪判決を言い渡したとのことです。 起訴状によると、星野被告は既に有罪判決を受けた他の仲間らと共謀し17年5月、人気漫画「ONE PIECE(ワンピース)」と「キングダム」の画像データをインターネットを利用する不特定多数が見られるように公開し、作者の著作権や出版元の出版権を侵害。16~17年にはサイトの広告収入を含む計6257万円を広告代理店に海外口座などへ送金させ、不正な利益を隠すなどしたとしています。 弁護側は、漫画村は他のサイトが不正に公開した画像を利用者に仲介した形が主で同法違反に当たらず、利益も不正に得ていないと反論していました。 **************************** 懲役3年(実刑)、罰金1000万円、追徴金6257万円。著作権法違反の意外と厳しい刑事罰、あまりにも大きな代償です。SNS全盛のインターネット社会に警鐘を鳴らしているのかもしれません。 私も過去に何度か、自分の記事を勝手にコピペされたことがあります。相手に抗議したことも、抗議しなかったこともありますが、原作者のオリジナリティ(=著作権)の大切さを忘れ、「軽い気持ちで」コピペすると、場合によったら凄い代償を払うことになるということを、自戒も込めて胸に刻みたいと思います。
2021/06/02
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私は2012年9月26日付の記事(リンクはこちら)で、SNS上の画像・写真の引用問題について記しました。その後、2018年と2019年に著作権法の改正がありました(2018年の改正は、主に環太平洋11カ国との「TTP協定」締結に伴うものです)。 今回遅まきながらですが、主な改正点を紹介するとともに、改正内容に合わせて前回の記事内容を追記・修正し、私たちがSNS上で「画像・写真を引用する場合」の注意点を、改めて紹介してみたいと思います(今回の追記・修正部分については、赤字で記しました)。【おことわり】前回同様の言い訳ですが、この記事は、あくまでSNS上での「画像の引用」ルールについて、現時点での著作権法上の一般的なルールや法的見解、マナー等をまとめたものです。しかし、私は法律の専門家ではありません。個別具体的問題についての対応・見解まで保証するものではありません。具体的なトラブルについては、私は一切の責任を負えませんので、疑問点等は文化庁や法律専門家にお尋ねください。なお、用語や解釈の間違い等のご指摘は歓迎いたします。→ arkwez@gmail.com まで宜しくお願いいたします)。 ◆改正・著作権法などの概要 改正著作権法は、2018年5月18日に成立し、2019年1月1日から施行されました。今回の改正は「デジタル・ネットワーク技術の進展により、新たに生まれる著作物の利用ニーズに的確に対応するため、著作権者の許諾を受ける必要がある行為の範囲を見直し、IT・情報関連産業、教育、障がい者、美術館等におけるアーカイブの利活用に関わる著作物の利用をより円滑に行えるようにする」のが狙いです。 具体的には、(1)一定の条件をクリアすれば、著作権者の許諾を得ないでも自由に利用できる範囲が広がった(2)IT技術開発・情報処理目的や検索エンジン(GoogleやYahoo等)のための著作物の利用は許諾がなくても可能に(3)授業などで教師が他人の著作物を用いて作成した教材を生徒に随時送信する行為も、公衆送信補償金の支払いで著作権者の許諾なく可能に(4)美術館などが収蔵・展示作品をデジタル化し、ネットワーク上で閲覧させる場合、許諾なく行えるようになりました。 また、ほぼ同時に、(5)TTP整備法を反映した改正(2018年6月9日成立、12月30日施行)も行われ、従来、作者の死後50年だった著作権保護期間は、米国の要請によって70年に延長され(末尾【注1】ご参照)、(6)海賊版の販売・送信行為への非親告罪化(著作権者の告訴がなくても起訴可能に)も導入されました。 ※(3)の補償金については、2020年4月からは年間1回のみの支払いで済む「ワンストップ補償金」制度が創設されました。この改正によって、オンライン授業における教材作成での規制や負担が大きく軽減されました(2020年度に関しては無料でしたが、2021年度から支払いが義務化されました)。「補償金」の料金体系や金額は以下の通りです。 ・学校種別の年間包括料金(公衆送信回数は無制限) 公衆送信を受ける園児・児童・生徒・学生1人当たりの額=大学720円/ 高校420円/ 中学校180円/小学校120円/ 幼稚園60円(※社会教育施設、公開講座等については、30人を定員とする1講座・講習を1回の授業として、授業ごとに300円) ・公衆送信の都度支払う場合の料金=1回・1人当たり10円(対象となる著作物、実演、レコード、放送、有線放送ごとに)。 ※「補償金」の支払い窓口・管理・著作権者への分配等は文科省から指定を受けた「一般社団法人:授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)」が担当します。料金等については3年ごとに見直しを行い、必要な措置を講じるとのことです。 ◆画像引用も基本は文章と同じだが… まず、基本的なことですが、写真やイラスト、絵画なども含むSNS上の画像についても、前回も紹介した「公正な引用のための要件」が適用されます。著作権法32条の「公正な慣行に合致し、報道・批評・研究など目的上、正当な範囲内で、定められ要件を満たしていれば、著作権者の了解なしに引用して利用できる」というのが前提です。 では、画像の合法的な引用・利用の基本要件はどうなるかですが、画像・写真の引用についても基本的に、「文章の引用」の場合と同じルールです。 (1)引用先は既に公表された画像であること (2)「公正な慣行」に合致すること =「公正な慣行」の定義は示されていませんが、判例等では、以下の(3)(4)(5)の要件がこれに当たるとしているケースが多いそうです。 (3)自分の著作物と、引用する画像との「主従関係」が明確であること =あくまで自分の文章が「主」で、引用された画像は「従」でなければなりません。「主」か「従」かは、著作物の目的・趣旨や引用した画像の大きさ、補足的なものとして使っているか等がポイントです。従って、小さな画像でもそれが「主」であれば違法となることもあります。 (4)引用する画像が、自分の著作物と明確に区別されていること(明瞭区別性) (5)引用する必然性があること(その引用が著作物の目的や構成上、必要・不可欠である) (6)出典・出所が明示されていること(著作権法48条) (7)画像に勝手な変更を加えないこと(加工したりしない) (8)引用しすぎないこと(過剰な枚数を引用したり、引用した画像のスペースが本文よりも大きいのは違法とみなされるおそれがあります) (9)報道・批評・研究などのための「正当な範囲内」であること(著作権法32条) ※(2)と(9)については、今回の法改正で追加された概念ではなく、旧法から存在した基準ですが、基本要件に含めている法律専門サイトが多いので、今回私も追加しました。 なお、「報道・批評・研究などのための『正当な範囲内』」という要件については、改正著作権法でも明確な定義は示されていません。唯一、判例で「社会通念に照らして合理的な範囲内のものであることが必要であり、具体的には、他人の著作物を利用する側の利用の目的のほか、その方法や態様、利用される著作物の種類や性質、当該著作物の著作権者に及ぼす影響の有無・程度などが総合的に考慮されなければならない」と示されている程度です(大阪地裁・2013年7月16日判決)。 すなわち、「引用に必然性・必要性があって、引用の分量や引用個所が適切であり、引用部分が明確に区別されている」などの条件を満たす必要があるのは当然だと思われます。 ◆出版社等の「禁止規定」は合法か、違法か 私たち個人がネット上で一番よく画像を「引用・利用」するケースとしては、(1)本や雑誌の表紙(2)CDやレコードのジャケット(3)映画のポスターや1シーン(4)市販商品の外観(5)ネット・オークションでの商品――などが代表的なものではないかと思います。このうち(5)については現在は原則、無条件の引用・利用が合法化されています。 (1)~(4)については、著作権法32条を守り、9要件をクリアすれば、誰でも合法的に引用・利用できるはずです。ところが、例えば出版社のHPにはよく、画像に関して以下のような禁止事項が列挙されています。表向きは、著作権者の許諾なしに一切の画像の使用はまかりならんという姿勢です。 ・出版物の装丁の画像の全体または一部を掲載することはできません ・キャラクターの画像および写真等の全体または一部を掲載することはできません ・ホームページの画像の全体または一部を転載することはできません ・法人企業のHPであっても、許可なく転載することはできません ・非営利であっても、個人サイトでの転載は「私的利用」にはなりません ・著作権侵害が行われた場合には法的手段をとることもありますので、ご注意ください 私も、Blogで時々、本の批評やCD、映画の感想など紹介しているので、本やCDジャケットや映画の1シーンの画像を借りることはあります。出典・引用元は可能な限り明示するようにしています。こうした利用は、著作権法32条に言う「公正な慣行に合致し、報道、批評、研究など目的上、正当な」という要件に当てはまり、合法的な利用です。 ここで疑問がわきます。「著作権法では正当な目的であって、主従関係を明確にして、引用元もきっちり明示すれば、画像の『引用』はできると認めている。こんな禁止規定自体が著作権法違反じゃないのか」という疑問です。そこで、法律専門サイト等でさらに調べたうえで、専門家の意見も少し聞いてみました。 ◆現実的には、出版社等は「黙認」姿勢 結論から言うと、文章の引用についてはこれまで判例がいくつもあって、様々な具体的ルールや指針がかなり周知されているのですが、画像については、争われた裁判(判例)がまだ少なく、違法か違法でないのかの基準が曖昧なままになっています。 知的財産や著作権法に詳しい杉浦健二弁護士は「一般的には、引用要件には法文上の明確な基準があった方がいいという意見もあるが、過度に明確化すると、インターネット等を中心とした利用形態の多様化に法律が付いていけず、弾力的な運用がしづらくなるため、引用要件にはある程度の“あそび”がある、現在の程度が望ましいと考えている」と記しています(出典:STORIA法律事務所Blog) 近年唯一、画像の無断使用で争われたとも言える有名な裁判に「脱ゴーマニズム宣言事件」(小林よしのり氏vs上杉聡氏)というのがあります。この裁判では漫画の引用問題が争点でしたが、1999年8月に東京地裁が出した判決「批評の対象を明確にするためには、絵も引用する必要があることを認める」「引用の要件を満たす限りは、引用が必要最小限であることまでは要求されない」(1999年8月31日)が現時点では数少ない判例です(参考:Wikipedia「脱ゴーマニズム宣言事件」)。 しかしながら、出版社はこうした判決が出た後も、禁止規定は撤回・変更していません。禁止規定は「任意規定であるから合法」という学説がある一方で、「このような規定自体が著作権法違反だ」という法律家もいます。法的見解が分かれる中、現実には、日本だけでも個人のHPやBlogで膨大な数の画像が引用・利用されています。 出版社やレコード会社等はいちいち告発したりせず、黙認しているのが現状です(おそらく、訴えたあげく不利な判例が出て、自分で自分の首を絞めるのが怖いというのもあるのでしょう)。現実には、個人やNPOのHP、Blogのように非営利目的であればあまり目くじらは立てないという姿勢だと思いますが、私たちはやはり、節度ある引用・利用に徹したいと思います(ちなみに、著作権侵害した場合の刑罰は、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金という結構重いものなので、くれぐれも安易な画像利用・引用には十分気を付けたいところです)。 ◆1、2枚の画像引用なら、まず問題なし 今回、法律関係者に直接尋ねたり、著作権問題を取り上げた法律事務所のWEBページの解説を調べたりしたところ、結論として、少なくとも以下のようなことは言えるかと思います。 ・SNS上の画像引用についても、冒頭にも挙げた、正当な引用のための「9つの要件」は最低限満たさなければならない。報道、批評、研究その他引用の目的上正当な範囲内であれば、原則として問題はないが、「正当な目的」と「正当な範囲内であること」が大事(単なる日常雑記のような文章に、権利者が存在する必然性もない画像を勝手にアップするのは避けるべきである)。 ・静止画については、「要件を満たしていれば、引用が正当な範囲内に収まる可能性が高い」(斉藤博『著作権法』236頁、2000年、有斐閣刊)というのが学界の多数説。音楽評論や映画評論で1、2枚の画像をコピーして載せるのはセーフ。しかし、「必然性もないのに、例えば、自分のブログのトップにミッキー・マウスの画像をコピーして載せるというのは危ない」とのこと(とくに、ディズニー社は著作権、商標権にうるさいことで有名なので要注意)。 ・引用する画像の色合い等を、画像ソフトを用いて改変してはならない(唯一、画像のサイズ拡大、縮小は認められている)。 ・「出所の明示は合理的な態様で」というのが法の規定。著作権者名があればベストだが、不詳であれば、出典WEBサイトのURLを明記することが望ましい。いずれにしろ、企業の公式HPならともかく、個人の私的なBlogに静止画を少し載せるくらいなら訴えられることはまずないだろう。 ・ただし、この問題に関しての最高裁判決はなく、下級審判決例も、上記の要件のそれぞれに対するウエイトのかけ方が異なるので、難しい面がある。そもそも、「公正」とか「正当」とか、必ずしも利用者にわかりにくい基準で、裁判になってみなければ、それに反しているかどうか結論は出せない。おそらくそのような現状からして、新聞社、出版社などの権利者側からは、原則に戻って、許諾がいるというように警告を発しているのだと思う。 ・著作権法の引用要件を明らかに満たしている場合は、利用者は権利者に事前に許諾をとる必要はない。権利者が「利用を認めます」と回答してくれる可能性は低く、かさねて許諾まで取りにいくメリットは皆無で、かえってリスクが高い行為になる(「ダメ」と言われた場合、身動きがとれなくなる)=上記STORIA法律事務所Blogより。 ◆画像転載が合法化されているもの なお、SNS上での画像の引用・利用が(条件付で)自由に認められているものもあります。例えば、以下のようなものです。 ・ネット・オークションに添える商品説明の写真掲載=インターネット・オークション等で売買する際、商品を確認するという必要性から、2009年の著作権法改正で、条件付き(著作権法施行令等で定めた大きさや精度等を遵守)でその画像を著作権者の許諾なく掲載することが合法化されました。今回の法改正ではさらに、美術品や写真の販売の際にも、カタログ等の図面として許諾なく掲載することが同様に可能となりました。 ・情報検索サービスを実施するために著作物の複製すること ・障がい者の教育・福祉活動等ために著作物を複製すること ・画素数を落とした画像、サムネイル(縮小)画像の利用 ※Amazonなどは「アフィリエイト」(【注2】)契約をすれば、画像を無料で利用できるというサービスをしていますが、私は利用していません。 ◆引用・掲載してはいけない画像とは 自分が撮った画像でもSNS上に掲載できないものもあります。例えば以下のようなもの――。 ・被写体から許可を得ていない画像(知らない人の顔がはっきりわかる状態で写り込んでいたら、肖像権の侵害だと言われるおそれがあります。モザイクをかけるなど個人を特定できないようにしてください。 ただし、友人らとの飲み会での写真なら許容範囲でしょう。いまどき、あなたがSNSをしていることを参加者が知っていて、携帯やデジカメで写真をとれば、参加者も「彼(彼女)のページに載るんだな」と了承したものとみなされるでしょうから)。 ・タレントなど著名人が写った画像(街でたまたま有名人を見かけて撮った写真を掲載すれば、場合によっては、「パブリシティ権」(【注3】)を侵害したと言われる可能性があります。店で女性と一緒のところを盗み撮りなどした画像なら、プライバシー侵害と言われる可能性もあります。 ・他人の著作物を撮った画像(滅多にないとは思いますが、著作権のある創作物を直接写真に撮ってSNS上に掲載すれば、著作権侵害と言われる可能性があるそうです)。 ・公序良俗に反する画像(これは当然ですね) ◆基本は自分の撮影にこだわりたい 私は基本的に、可能な限り、自分のSNS上では自分のカメラで撮影した画像を使うことにしています。自分の撮影を原則にしているのは、オリジナリティにこだわりたいことに加えて、リスク(転載を巡るトラブル)を減らしたいからです。 SNS上で無用なトラブルを招かないためには、安易に他のサイトから画像をコピーしてこないこと、そして引用・転載する場合でも、ルールやマナーをきちんと守ることが何よりも大切だと思います。私自身も現在、自戒の気持ちを込めて過去のBlogのページなどで使った画像について、順次、著作権法違反がないか再点検しています。必要な場合は、少なくとも「引用元」をきっちり明示したいと思っています。 【注1】1967年以前に著作者が死亡している場合: 著作者が亡くなったのが1967年以前であれば、2018年12月30日の改正著作権法施行以前に50年の保護期間(1968年1月から起算)が終了しているため、70年には延長されません(1967年に亡くなった芸術家で言えば、例えば、山本周五郎<作家>、壷井栄<作家>ら)。 なお、著作者が亡くなった後、著作権継承者がいなければ、原則として著作者死亡時点で著作権は消滅します。 【注2】アフィリエイト(Affiliate) 「成功報酬型広告」とも言われ、例えばHPやBlogである企業の商品の広告スペースを提供し、その広告を通じて商品が購入されたら、その企業や販売する店舗からHPやBlogの管理者(運営者)に成功報酬が支払われるという広告またはその形態を指す用語(出典:Wikipedia、All About「アフィリエイトとは?」 → http://allabout.co.jp/gm/gc/22964 ) 【注3】パブリシティ権 人に備わっている「顧客吸引力を中核とする経済的な価値」を保護する権利のこと(出典:Wikipedia、はてなキーワード → http://d.hatena.ne.jp/keyword/ ) 【御礼】この一文を書くにあたって、主に下記のWeb ページ上の解説やデータ、Q&Aから貴重な情報や示唆をいただきました。この場を借りて関係の皆様には心から御礼申し上げるとともに、そのページ(出典元)を紹介しておきます。 ・文化庁HP(著作権問題Q&A)→ https://chosakuken.bunka.go.jp/naruhodo/ ・「画像や情報の引用について 専門家Q&A」→ https://profile.allabout.co.jp/ask/q-46093 ・「画像の引用・転載に関する著作権について(Yahoo知恵袋)」→ https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/ ・「ネット時代の著作権(大塚商会)」→ https://qqweb.jp/QQW/STATICS/it/pc_howto/200911.html ・「HPやサイトで著作権違反にならない方法」→ https://nanapi.jp/15604 ・「著作権法上合法な引用の条件」→ https://puple.noblog.net/blog/a/10056206.html ・「ネット・Webサイトでの著作権」 → https://uguisu.skr.jp/html/kenri1.html ・「画像の著作権侵害を回避するために最低限理解しておくポイント」(東京スタートアップ法律事務所HP)→ https://tsl-magazine.com/category05/image-copyright-infringement ・「著作権が自由に使える場合」(公益社団法人・著作権情報センター)→ https://www.cric.or.jp/qa/ ・「著作権法の引用要件を満たしているのに、かさねて許諾を得る必要があるのか」(STORIA法律事務所Blog)→ https://storialaw.jp/blog/6114 ・「著作物・著作権をめぐるルール改正(解説)」(GVA法律事務所HP)→ https://gvalaw.jp/6253 ・「著作権を侵害せずに文章や画像を引用・転載する方法」(ベリーベスト法律事務所HP)→ https://best-legal.jp/copyright-quotation-4942 ・「著作権保護期間、50年から70年に延長。一部非親告罪化も」(Watch Impress)→ https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1152341.html【おことわり】この日記は、画像「引用」のルールについて、現時点での著作権法上の一般的なルールや法的見解、マナー等をまとめたものですが、個別具体的問題についての対応・見解まで保証するものではありません。具体的な疑問やトラブルについては文化庁や法律専門家にお尋ねください。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2020/06/20
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新聞やテレビではまだあまり詳しく、また大きく報じられていませんが、今回大筋合意したTPPで、著作権関連の条項が、米国の思惑通り、酷い内容になっているようです。 例えば、著作権の保護期間は従来の50年を70年に延長する、故意による著作権侵害は非親告罪とする(現在は親告罪)など、心配した通りの決着です。他にもネット上での著作権侵害防止関連の条項もあるようですが、その影響は詳しい内容が不明なので不透明なままです。 過去の芸術作品は人類共通の財産であり、後世の人間が先人達の作品を幅広く利用できなければなりません。新たな文化も芸術も、すべてが無から生まれる訳ではありません。商業作品への摸倣(パクリ)は論外ですが、過去の先人の作品からインスピレーションやヒントを得て生まれる作品だって多いのです。 保護期間の70年への延長については、世界中の様々な芸術分野の、数多くのアーチストが「自由な創造活動の妨げとなり、大企業が得をするだけ」と反対の声を上げていたそうですが、豪や韓国も追随するなど、残念ながら、米国の圧力にどの国の政府も抵抗できなかったようです。 この結果、例えば、従来は作者•演者の死後または公表後50年で、安価に商品化できていたDVDやCD(音楽ライブ等)もさらに20年も待たなければならなくなります(映画は、米国の圧力による2003年の法改正ですでに、従来の発表後50年が70年に延長されています)。 また、非親告罪化によって、著作者からの告発・告訴がなくても、捜査機関が独自に事件化することが可能となります。この結果、捜査機関が別の目的のために事件化し、安易に家宅捜索(時には軽微な違反で逮捕も)するのでは等の懸念を指摘する声も出ています。 この問題は、うらんかんろとしても引き続き注視していきたいと思っています。【追記】TTP協定締結にともない、改正著作権法は2018年12月30日に施行され、著作権の保護期間は従来の著作者の死後(または作品公表から)「50年」から「70年」に延長されました。また、海賊版の販売・送信行為等は非親告罪化され、著作権者の告訴がなくても起訴できることになりました。
2015/10/07
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今回は、皆さんが意外と知らないことをお伝えしようと思います。 原画を購入したからと言って、それを自由に店のグッズには使えません。原画を購入することは絵の「所有権」を得たというだけで、「原画の著作権」は、あくまで作者または著作権継承者にあります。作者や著作権継承者の承認なく、店のグッズ(ポストカード、名刺、コースター、グラス、チラシ、看板、ポスターなど)の二次的著作物は、勝手に作ることはできません。 著作権は現在、日本では原則、作者の没後50年間(または作品公表後50年)、法的に保護されています(TTP協定締結に伴い、改正著作権法が2018年12月30日に施行され、保護期間の「50年」は「70年」に延長されました)。 なので、勝手に店のグッズをつくると著作権侵害であり、違法行為となります。営利を目的とした販売商品に許可なく使うと重い罪に問われます(著作権侵害は10年以下の懲役または1000万円の罰金です)。 こうしたことは著作権の「基本のキ」なのですが、そうしたことを、よく理解していない経営者も少なくありません。時々、購入した絵(原画)を使って絵葉書やコースターを作ったり、CDジャケットの表紙にしたりする飲食店のオーナーがいますが、著作権者(または著作権継承者)の許諾なく勝手にやれば違法行為となります。 店のグッズを作ったり、商品に使用する場合、本来なら、著作権者に許諾料や使用料を支払うのが日本国内の法的ルールです(「うちは作者にOKをもらっているから」というのは、あくまで著作権者が好意で容認しているに過ぎません)。 飲食の経営者は、まず法律をよく理解して守ってほしいと思います。著作権者の許可は、必ず得るようにしてほしいです。そして、もし営利で使用するなら、できれば適正な使用料を作者または著作権継承者に支払ってあげてほしいです。芸術家の権利を大切にしてほしいと、心から願います。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2013/08/28
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※この記事は、2012年10月にアップされたものですが、今回、2018年の日本の著作権法改正を反映させて、以下の記述内容を少し修正いたしました。 私は法律の専門家でも何でもありませんが、ブログをやっていることもあり、不本意なトラブルを招かないように、著作権問題、名誉毀損問題などには普段から強い関心を持っていて、専門家(弁護士、大学の法学担当教官ら)の意見・見解も時々伺っています。 先日のことですが、ふと、素朴な疑問が浮かびました。「ミッキー・マウスって、1920年代に誕生したから、もう著作権の保護期間は終わってるんじゃないのか?」と。そこで、とりあえず、自分で調べてみることにしました(もし間違い等があったら、ご指摘ください。修正いたします)。 ◆外国の著作物は、日本国内で日本の著作権法が適用されるのか 最初に、基本的な知識や事実、データを10点ほどおさえておきたいと思います。 1.他国の著作物であっても、日本国内では、日本の現行著作権法(1971年1月1日施行、直近の改正は2018年&2019年)が適用されます。 2.日本の著作権法での保護期間は従来、「著作者の死後50年間、または法人・団体名義の著作物は公表後50年間」となっていました(ただし映画だけは2003年の法改正で「公表後70年」になりました)。しかし、「TTP協定」署名に伴う2018年12月30日成立の法改正で、保護期間は著作者の死後「70年間」に、また映画以外の著作物も「70年」に延長されました。 (※ただし、1953年以前発表の映画の保護期間は「公表後50年」のままです。また、2018年12月29日以前に、著作権が消滅しているものについては延長されていません。ちなみに旧著作権法<1899年~1970年。以下「旧法」と略>では「発表後または著作者の死後38年」でした)。 3.太平洋戦争時の旧連合国(英米仏カナダなど)の作品の著作権は、「戦時加算」としてさらに保護期間がさらに10年加算されます(第二次大戦中、日本が著作権保護に十分に取り組んでいなかったことが理由とのこと)。 4.ミッキー・マウスが初めて登場したのは、1928年製作・発表の映画「蒸気船ウィリー」です。 5.著作権の開始年の数え方は、「著作物の発表または著作者の死亡が公表された翌年を1年目する」となっています。 6.改正著作権法の規定を適用すれば、1953年以前に発表された「蒸気船」のミッキー・マウスの日本国内における著作権は、ディズニー社の作品であるという前提に立てば、発表翌年の1929年(始期)+70年(保護期間)+10年(戦時加算)で、2009年に消滅しています(法律専門家の間ではこの見解が多数派とのことです)。 一方、「蒸気船」でのミッキーがもしウォルト・ディズニー個人名義の創作物であるという前提に立てば、著作権の保護期間は、ディズニー没年の翌年1968年(始期)+70年+10年で、2048年で消滅ということになります。 7.現行法の附則には、「旧法による著作権の存続期間の満了日が、新法による著作権満了よりも後であれば、旧法の存続期間を優先する」となっていますが、旧法で計算すれば、映画が法人(ディズニー社)名義の場合、1928年(旧法では発表年が始期)+38年(旧法の保護期間)+10年(戦時加算)で、1976年に著作権は消滅しています。 もしディズニー個人名義ならば、1967年(旧法では死亡時の年が始期)+38年+10年で、2015年に著作権が消滅ということで、現行法を適用した方が保護期間が長い(2048年)ので、この規定はあまり意味を持ちません。 8.もちろん、ここでいう著作権とは「蒸気船ウィリー」に登場したミッキーに関するもので、現在よく知られているアニメのミッキーや、ディズニーランドで子どもに愛想を振りまいているミッキーは、少し顔が違うため、後年に公表されたミッキーは別の著作物という考え方が一般的です。 9.米国の著作権法は1998年に延長法が成立し、保護期間がそれまでより20年間長くなりました。原則、著作者の死後70年間に、法人の場合は発表後95年間となりました。その結果ミッキー・マウスの米国内での著作権も、最大2024年まで延長されることになりました。 10.ディズニー社は、ミッキー・マウスの国内著作権についての日本国内の専門家からの問い合わせに対して、現時点では「著作権に関しては一切お答えしない」との立場です。 ◆日本国内の著作権が切れたらどうなるのか 2009年に日本国内でのミッキー・マウスの著作権保護期間が切れたのかどうかについて、ディズニー社は今なお公式見解を出していません(出典:Wikipedia)。しかし結論として、Webで何人かの法律専門家の見解を読む限り、少なくとも1929年に公開された映画のミッキーは現時点では、保護期間は終了しているという意見が多数派です。 そして、たとえどんなに長くても、ディズニー没後60年の2027年には「蒸気船」のミッキーの著作権は消滅します。 その時には、ミニー・マウスも含めてパブリック・ドメイン(公共の物)になり、原則、誰でもブログなどで自由に使えるようになります。 ただし、気をつけないといけないのは、その後に誕生した顔が少し違うミッキー・マウスについては、まだ法人としてのディズニー社が、今なお著作権を持っていると考えられます。権利保護に関しては周到なディズニー社ですから、マイナー・チェンジを繰り返し、その都度創作の時点を延長、延長している可能性もあります。著作権が切れている初期のミッキーを真似た芸術作品をつくったつもりでも、「似ているから違法だ」と訴えられるおそれがあります。 また、いかがわしいアダルト・サイトがミッキーやミニーをキャラクターに使えば、「著作者人格権」(【注1】)の侵害として訴えられるでしょう。注意すべきことは、著作権は切れたとしても、商標権は、登録者が更新し続ければ半永久的に維持されることです。自分の会社の商品にミッキーの絵を描いて勝手に販売すれば、必ず商標権侵害で訴えられます。場合によっては巨額の賠償を請求されます。 ディズニー社は現在でも、個人がブログなどで私的に使用・利用する分についてはあまり目くじらは立てない方針のようですが、営利目的で使おうものなら、きっと厳しいクレームが来るのは間違いありません。営利目的での利用は基本NGと考えておいて方が無難です。 ◆著作権はどこまで保護されるべきか 米国では、ディズニーという巨大資本の圧力で、議会が著作権法の保護期間を二度(1976年、1998年)にわたる延長しました。いずれもミッキー・マウスの著作権が切れる直前に延命を図ったようなものだったので、“ミッキー・マウス保護法”と揶揄されました。98年の延長には、「自由な芸術活動よりも企業の利益を優先させるもの」と米国内からも大きな批判が巻き起こり、2002年には違憲訴訟も起きましたが、連邦最高裁は2003年、7対2の多数決でこの著作権延長を合憲と判断しました。 「著作権は一定期間保護されるべきだ」という考え方にほぼ全員が賛成すると思います。しかし、その期間が長すぎることについては、作家や音楽家の中からも、著作権が特定の団体、個人に独占されてしまうと、クリエイティブな創作活動にかえってマイナス面が大きいと反対する声も多いのです。 言うまでもありませんが、小説や映画、音楽などあらゆる芸術は、過去の古典や名作など蓄積の上に、新たなヒントを得ながら創作活動をしていると言っても過言ではありません。過去の創作物は一定期間が過ぎれば、人類共通の財産として、自由に活用できなければ、新たな創作物は生まれてこないでしょう。そういう意味でも、保護期間はできるだけ短い方がいいと思います。 ◆TPP参加問題を巡る米国からの圧力 新聞やテレビがあまり報じないのですが、米国は今、日本政府に対して「TTP(環太平洋戦略的経済連携協定)に参加したいのなら、著作権の保護期間を米国と同じ70年、95年にしろ!」と要求してきています。2003年の法改正で映画の保護期間が70年に延長されたのも、実は米国からの圧力があったのが背景でした。 現行の50年を70年へ延長することについては、国内には反対意見が数多くあります。「古い芸術作品の流通・販売が阻害され、ビジネスが成り立たなくなる」「新たな創作活動への障害にもなる」「インターネット時代にこれ以上の保護は必要ない」「著作権を持つ大企業、大資本が得をするだけで、一般大衆の利益にならない」等々。 しかし、すでにTTP協定に参加した国のなかには、韓国、オーストラリアなど米国の要求(圧力)に屈して70年に延長した国も少なくないということです。日本は米国の圧力に屈せず、現行の50年を死守してほしいと願うのは僕だけではないでしょう。【追記】残念ながら、前述した通り、2018年12月の著作権法改正で、保護期間は「70年」に延長されてしまいました。 ◆余談ですが… 最後に一つ、Web専門サイト「著作権講座」さんから拾った興味深い余談を紹介します――。日本で有名な人気キャラクターたちも、いつの日か著作権の保護期間が切れます(商標権は更新し続ける限り存続しますが…)。キティちゃんは2044年に(1974年に「サンリオ」名義で発表後70年)、サザエさんは2062年に(作者・長谷川町子さん没後70年)、ドラえもんは2066年(作者・藤子・F・不二雄氏没後70年)に、それぞれ著作権が消滅します(出典:著作権講座=http://www.geocities.jp/shun_disney7/club1.html)。ほかにも鉄腕アトムは2060年に著作権消滅(作者・手塚治虫氏没後70年)。 個人的には、こうした日本国民に広く愛されているキャラクターたちは、著作権が消滅したからと言っても、そのイメージが汚されることのないような何らかの仕組みができることを祈ってやみません。 【注1】著作者人格権 著作者の人格的な利益について保護しようとする権利。具体的には、公表権(著作物を公表するかしないか決定できる権利)、氏名表示権(実名かペンネームを著作物に表示するかしないか決定できる権利)、同一性維持権(無断で著作物を修正・変更されない権利)の3つがある。「一身専属性の権利」で他人には譲渡できない(著作権法18条~20条、59~60条、116条、119条第五項)。(出典:知的財産用語辞典= http://www.weblio.jp/content/ ほか) 【御礼】この稿を書くにあたって、以下の専門サイトから貴重な情報や多大な示唆を数多くいただきました。この場をかりて、著者、編者の皆様に御礼申し上げるとともに、参考にした専門サイトを紹介しておきたいと思います。 ・「著作権講座」→ http://www.geocities.jp/shun_disney7/club1.html ・「見えない道場本舗」→ http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20080509/p4 ・「米国最新IT事情」→ http://itpro.nikkeibp.co.jp/members/ITPro/USIT/20021012/1/ ・「米連邦最高裁、合憲と判断:WIRED ARCHIVES」→ http://wired.jp/archives/2003/01/17/ ・「アメリカの著作権延長法について」→ http://homepage3.nifty.com/machina/c/c0004.html ・「著作権延長法」「著作権の保護期間」→ http://ja.wikipedia.org/wiki ・「知的財産用語辞典」 → http://www.weblio.jp/content/ ・ 文化庁HP「TTP協定の締結に伴う著作権法の改正」→ https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/kantaiheiyo_hokaisei/ ・「著作権が自由に使える場合」(公益社団法人・著作権情報センター)→ https://www.cric.or.jp/qa/ ・「著作物・著作権をめぐるルール改正(解説)」(GVA法律事務所HP)→ https://gvalaw.jp/6253 ・「著作権保護期間、50年から70年に延長。一部非親告罪化も」(Watch Impress)→ https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1152341.htmlこちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2012/10/06
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【2018年&2019年の著作権法改正を反映させた改訂版を2020年6月20日付でアップしております。現時点では改訂版の方をお読みください】★「改訂版」はこちら → 2020年6月20日の日記
2012/09/26
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◆意外と知らないSNS上の「引用」ルール(2018年&2019年の法改正内容を反映させて、本文を修正致しました) 以前の日記(2009年7月9日)で、「知っていますか?ブログでお店を紹介する際のルール」という一文を書きました。当時はまだ、Blog全盛時代で、その後、MIXI、Twitterが登場し、今ではfacebookやLINEがSNS(ソーシャル・ネットワーク・システム)の主流になりつつあります。個人的には、どのSNSにもそれぞれ長所・利点があると思っています(使い勝手はさまざまですが…)。 さて、今や私たちの生活の中にどっぷり入り込んできたSNSですが、「他のサイトや他人の日記から引用・利用する場合のルール」について、意外と正確に知らないことが多いのに気づきました。私の友人の中には、「ネットの世界では、他のサイトやBlogなどからの引用・利用はまったく自由」「SNSの日記は著作権法の保護の対象外なんだろ」と勘違いしている人もいました。 当然ながら、インターネットの世界でも、法的ルールや一般的なマナーが存在します。こうしたルールやマナーを守ることで、ネット上での思わぬトラブルを防ぐことができて、「著作権侵害だ!」と訴えられるリスクも回避できると思います。 良い機会なので、僕自身もこれまでやや曖昧な理解でしかなかったSNS上での「引用・利用」問題について、自戒も込めて整理してみたいと思います。本稿は少々長くなりますが、絶対に知っておいて損はないと思いますので、ぜひ最後までお付き合いください(僕は法律の専門家ではないので、もし記述に間違い等がありましたら、ご指摘していただければ幸いです)。 ◆公正な引用ための要件 まず、日本では著作権法32条で、「公正な慣行に合致し、報道・批評・研究など目的上、正当な範囲内で、定められた要件を満たしていれば、著作権者の了解なしに引用して利用できる」とされています。そして、そのための要件が具体的に定められています。そしてもう一つ。必ず知っておかねばならないのは、日本ではSNS上の日記も、他の文学作品、音楽、映画、絵画、写真などと同様に著作権法の保護対象として認められているということです。 では、合法的な引用・利用の要件とはどのようなものかですが、インターネットの法律専門サイト等では、「公正な引用のための要件」として、以下のようによく紹介されます。これは文化庁が、1980年3月の最高裁の判例(有名な「パロディー写真事件判決」=マッド・アマノ氏vs白川義員氏)等にもとづいて、「著作物から引用する際の注意指針」として公表している「4要件」(下記の2~5)がベースになっています(文化庁のHP→ http://www.bunka.go.jp/chosakuken/ )。 (1)引用先は公表された著作物であること (2)「公正な慣行」に合致すること(「公正な慣行」の定義は示されていませんが、判例等では以下の(3)(4)(5)の要件がこれに当たるとしているケースが多いそうです) (3)引用する必然性があること(その引用が文章の目的や構成上、必要・不可欠である) (4)引用部分に「」(かぎかっこ)をつけるなど、自分の著作物と引用部分が明確に区別されていること(引用であることが明確であれば、「」が必要でない場合もあります) (5)自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(あくまで自分の文章が「主」で、引用された文章は「従」でなければなりません。「主」か「従」かは、引用の量ではなく、書き方やその作品の趣旨・目的がポイントです。ごくわずかでも違法となることもあります) (6)出典・出所が明示されていること(著作権法48条)(出所を明示せずに、自分の文章か他人の文章かを明確に区別せず、自分自身が書いたように見せかけるのはいわゆる「盗用」で、「引用」でも「転載」でもありません)。 (7)勝手な変更を加えないこと(書き換えたり、つぎはぎしたりしない) (8)引用しすぎないこと(量的にも、引用部分の方が本文より短いことが必要です。1~4の条件を守っても、大量に引用・転載すれば、「無断転載」となり、違法となります。一般的には、「引用部分はその文章全体の約10%以下、多くとも20%までが望ましい」と言われています) (9)報道・批評・研究などのための「正当な範囲内」であること(末尾【注1】ご参照) 合法的な引用とみなされるためには、以上の9要件をすべてクリアする必要があります(言い方を換えれば、この9要件をクリアしていれば、Web上でも印刷物でも、自由に引用できます)。この9要件は、文章(言語著作物)に限らず、音楽、映画、写真、絵画・彫刻・漫画などの美術作品、芸術的な建築物、地図、舞踊の振付などさまざまな著作物に適用されます(著作権法10条1項)。(※なお、画像の引用要件については、文章とまったく同じとはいきません。画像の引用問題については稿を改めて考察してみたいと思います)。 世界中のパソコンやスマホとつながっているSNSの世界では、自分のページに掲載した瞬間に、それは「私的利用」ではなく、不特定多数への発信行為=「公衆送信」とみなされるので、細心の注意が必要です。 以上の要件を守らず、故意に違法な引用・利用をして違反に問われ、万一、刑事事件にでもなれば最悪、「10年以下の懲役または1000万円以下の罰金」(著作権法119条)という重い罰則が科せられますので、「これくらいはいいだろう」と軽く思わない方が賢明です(ただし、故意でなく過失であった場合は、刑事罰は適用されません)。 ◆許可・了解なしで引用できる場合や対象 著作権法の実際の運用では、「公正かつ正当な目的であれば、相手の許可・了解なく無料で引用・利用ができる」ものもあります。その具体例として、以下のようなものを挙げています(もちろん、まったくの無条件ではありませんし、出所の明示は原則必要です)。 ・報道・ニュース記事(ただし事実の伝達にすぎない記事、例えば火事、交通事故、人事異動、死亡記事などに限られ、それ以外の記事は引用の度合いによっては違法になります)。 ・保護期間の切れた著作物(日本では作者の死後70年経過、または著作物の発表後70年が経過)※従来の保護期間は「50年」でしたが、2018年の法改正で「70年」に延長されました。(末尾【注2】ご参照) ・家庭内、友人間の私的使用(ただし、SNS上で文章や写真を引用・転載することは「私的使用」とはみなされていません。不特定多数に発信し、アクセスされるからです。また、違法なものと知りながら画像や音楽をダウンロードすれば違法となり、刑事罰の対象となります) ・学校内における利用(教科書や試験問題、校内放送等)対面授業あるいは対面授業と同時に行うオンライン授業での著作物の利用では、従来から、著作権者の許諾は不要となっていましたが、2019年の法改正ではさらに、対面授業と同時のタイミングでないオンライン授業等で著作物を利活用する際にも、一定の補償金を管理団体に支払うことで、著作権者の許諾が不要となりました。 ・ネットオークションに添付する商品写真(2009年の法改正で正式に認められるようになりました) ・美術館・博物館などによる利用= 従来から一定条件下での収蔵作品の複製は認められていましたが、2019年の法改正では、美術館・博物館・図書館などが収蔵作品をネットワーク上で閲覧させる行為や、美術品や写真などの販売のためのカタログ掲載も、著作権者の許諾なしに利用可能となりました。 ・「検索エンジンサービス」(Google、Yahooなど)における利用、および「思想または感情の享受を目的としない利用」(例えば、IT技術開発の過程やAIによる情報解析など)= 2019年の法改正で、一定の条件下で著作権者の許諾なく利用可に 【その他】 法令・条例・判決/国や地方公共団体の行政資料、報告書 / 屋外広告・建築物 / 画素数を落とすなどした絵画、写真画像(※1928年の発表後70年以上が経過しているミッキー・マウスの著作権はどうなのかとよく話題になりますが、この問題は後日、このブログ上で改めて取り上げたいと思います)。 ちなみに、引用という形ではなく、著作物をほぼそっくり真似た場合はどうか。著作権法には具体的な規定はありませんが、法律専門サイトによれば、「引用部分がゼロでも、真似(酷似)しすぎた結果、相手に不利益を与えた場合は、民法709条(不法行為による損害賠償)によって、賠償を請求されるおそれ」があります。やはり過度に真似るのはリスクが大きいということになります。 ◆著作権法で保護されていないもの 一方、著作権法では原則、保護されていないものもあります。例えば、車や家電などの大量生産の工業製品、衣服のデザイン、料理やカクテルなどのレシピ、店舗名(ただし商標登録で保護されている場合あり)や外観、車や家電の外観(特許をとっていれば別ですが)、ランキング、新聞の見出しなどです。 レシピなどは「私がこんなに苦労して考案したのに…」と不満に思う方も多いかと思いますが、現行法上では残念ながらこうなっています(ただし、レシピを書いた本の写真を勝手に転載したり、文章を丸写しすれば、これは著作権法違反です) 車や家電など工業製品や衣服、ジュエリー等のデザインは、著作権法の代わりに意匠法という法律で保護されています。著作権法と違うのは、著作権は創作時点で自然発生するのに対して、意匠権は申請し、認可されないと発生しない点です。登録が認められれば20年間保護されます。また、商品名や店舗名は商標法という法律で守られています。申請して登録し、更新すれば半永久的に認められます(ただし、意匠権も商標登録も独創性がないものは申請しても却下されますし、そもそも登録できない名前<国名や地名、すでに定着している普通名詞、ありふれた人名など>もあります)。 ◆ルールやマナーを守ることが大切 なお、著作権法違反は親告罪なので、原則として、告訴がない限り捜査当局は動きません。実際、SNSの世界では、相手を法的に訴える労力や時間、費用を考えたらバカバカしいので、刑事告訴にまで至るのはきわめて稀なケースでしょう。また、警察もそこまでヒマではないから、もし次々告訴があったとしても、個人間の著作権侵害をいちいち立件はしないでしょう。 警察が立件しないからと言って、違法な「引用・転載・利用」は、道義的にも許されるものではありません。悪気なく、何気なく引用・利用したとしても、違法であれば民事裁判で損害賠償を求められる可能性はあります。合法の範囲内であっても「かなりの量を引用・利用する」場合は、可能な限り、引用元に事前の了解をもらっておくのが、Webと言えども「大人のマナー」だと僕は思います。 なお、現行著作権法では、引用明示義務違反、死後の人格的利益の侵害など一部は非親告罪となっているので、告訴がなくても悪質なものは摘発される可能性はありますので、とくに気をつけたいものです。2018年の法改正ではさらに、海賊版を販売・ネット送信する行為も非親告罪化されました。 結論として、安易にコピペ(コピー&ペースト)せずに、ルールやマナーをきちんと守った引用・利用に徹することが何よりも大切です。僕自身もこれからも自戒しながら気を付けたいと思いますが、無用なトラブルを招かないように、みんながこうしたルールやマナーを守って、SNSを気持ちよい空間にしていきたいものです。【注1】「報道・批評・研究などのための『正当な範囲内』」という要件については、改正著作権法(2019年施行)でも明確な定義は示されていません。 唯一、判例で「社会通念に照らして合理的な範囲内のものであることが必要であり、具体的には、他人の著作物を利用する側の利用の目的のほか、その方法や態様、利用される著作物の種類や性質、当該著作物の著作権者に及ぼす影響の有無・程度などが総合考慮されなければならない」と示されている程度です(大阪地裁・2013年7月16日判決)。 すなわち、「引用に必然性・必要性があって、引用の分量や引用個所が適切であり、引用部分が明確に区別されている」などの条件を満たす必要があるのは当然だと思われます。【注2】著作者が亡くなったのが1967年末以前であれば、2018年12月30日の改正著作権法施行以前に50年の保護期間(1968年1月から起算)が終了しているため、70年には延長されません(1967年に亡くなった芸術家で言えば、例えば、山本周五郎<作家>、壷井栄<作家>ら)。 なお、著作者が亡くなった後、著作権継承者がいなければ、原則として著作者死亡時点で著作権は消滅します。 【御礼】この一文を書くにあたって、主に下記のWeb ページ上の解説やデータ、Q&Aから貴重な情報や示唆をいただきました。この場を借りて著者・編者の皆様には心から御礼申し上げるとともに、そのページ(出典元)を紹介しておきます。・「著作権法ガイド(無料引用のルール)」→ https://homepage1.nifty.com/samito/copyright2.htm・「はじめての著作権法講座」→ https://www.cric.or.jp/hajime/hajime7.html・「ニコニコ大百科:著作権法とは」→ http://dic.nicovideo.jp・「サイトポリシー:著作権について(朝日新聞デジタル)」 → https://www.asahi.com/policy/copyright.html・「知的財産法実務解説」→ https://www.saegusa-pat.co.jp/copyright/cr_02_1.html・「コンピュータ用語学び塾」→ https://blog.goo.ne.jp/yougo-school/e/・「SNSにおいて著作権侵害・肖像権侵害問題は生じるのか?」 → https://www.ys-law.jp/article/13284717.html・「ニュースな待合室」 → https://informatics.cocolog-nifty.com/news/2008/03/mixi_3d40.html ・「著作権が自由に使える場合」(公益社団法人・著作権情報センター)→ https://www.cric.or.jp/qa/ ・「著作権法の引用要件を満たしているのに、かさねて許諾を得る必要があるのか」(STORIA法律事務所Blog)→ https://storialaw.jp/blog/6114 ・「著作物・著作権をめぐるルール改正(解説)」(GVA法律事務所HP)→ https://gvalaw.jp/6253 ・「著作権を侵害せずに文章や画像を引用・転載する方法」(ベリーベスト法律事務所HP)→ https://best-legal.jp/copyright-quotation-4942 ・「著作権保護期間、50年から70年に延長。一部非親告罪化も」(Watch Impress)→ https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1152341.html 【おことわり】この日記は「引用」のルールについて、現時点での著作権法上の一般的なルールや法的見解、マナー等をまとめたものですが、個別具体的問題についての対応・見解まで保証するものではありません。具体的な疑問やトラブルについては文化庁や法律専門家にお尋ねください。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2012/09/20
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ブログでお店のことを書く際の法律上の注意点について、友人でもある弁護士のやまうちんさんがお忙しい中、私の度重なる質問に、法律家として的確な助言を下さいました。この場を借りて心から感謝いたします。 せっかくなので、頂いた貴重な助言に、その後私が改めて確認した(学んだ)名誉毀損罪等の一般的・基礎知識を参考にしながら、自戒を込めて自分なりにポイントを整理してみました。ブログなどSNSをされている方には、きっと参考になると思いますし、かつ常に頭の片隅に覚えておかねばならない大切なルールだと思います。 (※やまうちんさん、もし小生の理解・解釈が間違っていたら、ご指摘くださいませ。他にも、この辺りの法律に詳しい方がいらっしゃれば、よろしくお願いいたします)。1.訪れたお店を感想等を了解なくネット上で書いてよいのか? 店側の了解を取る必要はありません。私たちは公権力との関係では、「表現の自由」(憲法第21条)を有しています。私人の間においても、書きたいことを書くに際して了解を取らないといけないような義務などはありません。感想、意見、論評の程度であれば、まず何の問題もありません。「世間に出て自分の顔と名前で商売をしながら、『了解もなく書いてくれるな』と言うのは不合理」というのが法律解釈上の多数意見です。 ただし(※この段落は私の意見です)、了解なく書いたことを後に店側が知って、「了解なしに書くのは違法行為」という間違った認識を持っていた場合はトラブルことになります。しかし、もし好意的な紹介内容なら、書かれて困るという店はほとんどないでしょう。私もそういうクレームは過去一度も受けていません。そのためにも、普段から馴染みの店とは良好な信頼関係を保ち、旅先で初めて訪れた店には好印象を与えておくことも大切でしょう。2.書いた内容で問題になるケースは? 書いた内容が、誹謗中傷であったり、ことさらに他人の名誉やプライバシーを侵害するものであったり、虚偽の事実によって営業を妨害するようなものであったりした場合は、民事上または刑事上の責任を問われるのは当然です(侮辱罪、名誉毀損罪、偽計業務妨害罪等)。 しばしば問題になる「名誉毀損」の場合、名誉毀損罪が成立するのは、「公然と」「事実を摘示し」「他人の社会的評価が害される危険を生じさせる(た)」場合です。「公然と」とは「不特定多数に知れ渡る状態にした」ということで、ネット上に書いたり、本を出したりする行為等がこれに当たります。また、「事実を摘示」の「事実」とは「虚偽の事実」か「真実」かは問われないということです(※「摘示(てきし)」とはあまり耳慣れない言葉ですが、法律用語としては「要点をかいつまんで示すこと」「あばくこと」を意味するとか)。 ただし、(1)事実の公益性(2)目的の公共性(3)事実の真実性の証明――の3つの要件を満たせば違法性は免れ、罪には問われません(「違法性阻却事由の規定」=刑法230条第2項)。例えば、「A議員は万引きした」とネット上で書くと、たとえ事実であっても(通常であれば)「名誉毀損」の要件が成立すると思われるかもしれませんが、A議員は公人であるために、当然「公共性」「公益性」があるので書いても罪には問われません。言い方を変えれば、「公共性」「公益性」があれば相手が一般人であったとしても、「名誉毀損」は成立しません。 なお、侮辱罪、名誉毀損罪は親告罪なので、「被害を受けた」という告訴がなければ訴追されません。 【追記】たとえ店(相手)を匿名で表記し、内容的にも名誉毀損は成立しない、違法性がない論評・感想・意見であっても、(1)書かれた店(相手)の名前が、たとえごく一部の人にであっても推定できる場合で、かつ(2)店側が不快感を持つような内容が含まれている場合(批判的なことを書いている場合は当然といえば当然ですが…)は、トラブる可能性があります。店側から修正要求などのクレームが来た場合は、弁護士さんに相談することも必要ですが、裁判で争う手間や労力を考えれば、当事者間で直接話し合って解決するしかないでしょう。3.特定の店(BAR等)を論評したり、批判したりすることに公共性・公益性があるのか? まず、その文章が「名誉毀損的な内容でない」「あくまで事実や真実を書いている」ということが前提です。そのうえで、そのお店を論評することの「公共性」「公益性」を考える必要があります。 「公共性」とは、そのテーマや問題が他の人(お客さん)にも関係あるのかがポイントです。貴方とそのお店(マスター)との個人的な関係のなかでの話なら、微妙です。論評した問題が他の人にも影響を及ぼす可能性があることが必要です。 「公益性」とは、単なる悪口や腹いせ、個人攻撃ではなく、例えば、「この店は他のお客さんにも同じことをやっているかもしれないから、注意を呼びかけたい」という正当な目的がなければなりません。 有名シェフ(マスター)や有名人が経営するようなお店なら、当然、「公共性」「公益性」がある訳ですが、たとえ有名人でない人が営んでるお店でも、常連さんが多くいる場合は「公共性」がありますし、ネット上や出版物上でそのお店について感想・意見を述べたり、論評したりすることにも当然「公益性」があると言えます。4.その論評・批判において、相手を匿名にした場合は? 名誉毀損は「公然性」が必要ですから、実名をさらさなければ原則として名誉毀損は成立しません。しかし、その内容に本人の特定につながるようなデータが含まれておれば、「公然性」が認められ、論評内容によっては名誉毀損になるケースもあります。 批判的な論評を公表する場合に、「公共性」や「公益性」に100%自信が持てなければ、実名は出さない方がいいと私は考えていますので、ブログでも、本でも批判的な記述の際は、原則として相手は「匿名」にしています。5.ブログで書いたお店の訪問記・感想を、(1)本にして個人的なルートで無料で配る場合、(2)本にして個人ルートで販売する場合、(3)本にして一般書店ルートで販売する場合--のいずれも店側の「了解をとる」必要はあるのか? 上記3種の配布方法はいずれも、ブログ(ネット)上で書く場合と同じ考え方で、原則として「了解を取る」必要はありません。 ただし、内容に名誉毀損的なことが書いてあれば問題になるのは言うまでもありません。配布規模の違いはあれ、ブログと同様に不特定多数の読者を想定している以上、ネットでも、個人出版でも、書店販売でも、名誉毀損(罪)や侮辱(罪)は成立します。 言わずもがなですが、「了解を取る必要がない」のは、憲法第21条で認められている「表現の自由」が故であって、不特定多数の読者を想定していることが理由ではありません。 6.BARで撮った店内の風景(バック・バー等)や、お酒(ボトルやカクテル)の写真を、了解なくブログまたは本で公開(使用)するのは法的に問題ないのか? 違法性はありません(=やまうちんさんは「個人的な見解、解釈」と断っておられます)。自宅の中など、他人が出入りすることを前提としない場所は、プライバシー空間ということで、それを写して公開すればプライバシー侵害になります。名誉棄損罪という犯罪はありますが、プライバシー侵害罪という犯罪はないので(どこかの条例くらいには引っかかるかも知れませんが)、民事上の精神的苦痛に対する賠償の問題となります。 しかし、BARは、いちおうは開かれた場であり、プライバシー空間ではないので、撮影と公開は、違法とはなりません。これはあくまでマナーのレベルの問題です。仮に、店舗入り口に「撮影禁止」と掲げておけば、そこに来る客はその「条件」を承諾したことになり、一種の「契約」が発生して、撮影・公開してはならない義務を負うと解することもできます(寺社仏閣などにはこれが多いです)が、さすがにBARでそういう無粋な看板を掲げるようなところはないでしょう。7.BARで撮ったマスターの顔が写った写真(あるいはたまたま撮ったら写っていた写真)を、了解なくブログまたは本で公開(使用)するのは法的に問題ないのか? 人の容貌となってくると微妙です。公権力との関係では、国民は「みだりに容貌を撮影されない」という憲法上の権利を有します。根拠は「個人の尊重・尊厳」を規定した憲法13条で、幸福追求権にこれが含まれると最高裁も認めています。 しかし、私人の間においては、撮影・公開を禁止するような直接的な根拠規定は何もありません。結局、一般的な話に戻って、ことさらに当人に不快感、不安感を与えるような態様で撮影・公開したとすれば、プライバシーや人格権の侵害を根拠にして民事上の責任が発生します。また、写真とともにその人を誹謗中傷するようなことを書き加えれば、名誉毀損や侮辱罪といった刑法上の問題が発生します。あとはマナーの問題に委ねられます。こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】
2009/07/09
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