'73年4月にリリースされた『Ooh La La』は商業的には成功したものの、内容的にはどこか散漫なアルバムだった。 その直後に、ベーシストにしてメイン・ソングライターのひとりだったロニー・レインが脱退する。 フェイセズの成功はロッドの声による所が大きかったのかもしれないが、ロニーの個性もグループには欠かせないものだった。
フェイセズは、日本人ベーシスト山内テツを迎えて活動を続けるも、その後に関しては尻すぼみ。 '74年に出されたライヴ盤『Coast to Coast: Overture and Beginners』も、グループ名の表記は「ロッド・スチュワート&フェイセズ」となっていた。 内容の方も半分以上がロッドのソロ作からの選曲となっており、ロッドのアルバムだかフェイセズのアルバムだかよく分からないという具合だ(笑 '75年、グループは自然消滅的な形で解散を表明。 末期のライヴにはキース・リチャーズをゲストに迎えるなど、ロン・ウッドの"その後"もしっかり暗示されていたのでした。
'73年にリリースされた「Pool Hall Richard(玉突きリチャード)」は、オリジナル・アルバム未収録のシングル。 ロニー・レイン脱退後に録音された、ゴキゲンなロックンロール・ナンバーだ。 作者はロッドとロン・ウッドのふたり。全英8位まで上がるヒットを記録している。 ストーンズを思わせるリフがとても印象的だが、小粒なメロディは"佳作以上名曲未満"といった感じでいかにもフェイセズらしい。 陽気でルーズな演奏は彼らならではの楽しさがある。 ロッドのしゃがれ声はスウィング感抜群で、近年の小手先だけで歌う歌唱なんぞよりよほどいい。 イアン・マクレガンの踊るようなピアノを聴くと、思わず酒が飲みたくなる。 ロン・ウッドの大味なコーラス、ケニー・ジョーンズのズンドコしたドラムもタマらんです。
フェイセズの音楽にはストーンズのような大物感はなかったが、"極上のロックン・ロール"とよぶにふさわしいフィーリングがあった。 ピークを過ぎた時期の作品である「Pool Hall Richard」にも、それは充分にあらわれていると思う。 どうってことのない曲かもしれませんが、僕はコレが結構好きなのです
また、この当時のグループは来日公演もおこなっており、「Pool Hall Richard」はフェイセズの来日記念シングルとしても発売された。 サッカー好きで知られるロッドは、武道館のステージでもサッカーボールを客席に向かって豪快に蹴り、皆をおおいに沸かせたという。 フェイセズはおろかロッドのステージもまともに見たことのない僕だが、この曲を聴くたびになぜかその時の光景が頭に浮かんでくるのである。
「Pool Hall Richard」を聴くにはここをクリック! キース・リチャーズとの共演ステージはこちら。