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2008.09.07
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テーマ: 洋楽(3407)
カテゴリ: ビートルズ

「ビートルズのアルバムから何か一枚」 と言われたらコレを挙げる人も多いのではないだろうか。

四人の個性がよく出た作りであり聴き所満載といえる内容だが、本作の評価を決定づけているのはB面の2/3を占める "メドレー" だろう。
そのメドレーに関しては興味深い事実がある。
ポールはそれについて「うまくいったと思う」と言っているのに対して、ジョンは 「あれはジャンク(ガラクタ)を集めただけ」 と発言しているのである。
この正反対ともいえる、ふたりの評価の違いは面白い。
そして、僕はこのふたつのコメントの両方に「なるほど」と思えるのだ。



「あんたは金をくれない」という一節からはじまる、アップル(ビートルズが起こした会社)の財政難を嘆いた歌だ。
時間にして4分2秒の曲だが、これ自体が ひとつのメドレー形式 となっており、バラード→ブギウギ風味のロック→ブルース・ロック風という具合にわりと目まぐるしく展開していく。
この楽曲構成は、後のソロ作「Uncle Albert~Adminal Halsey」や「Band On The Run」にも引き継がれる、彼 十八番の作風 だ。

ここで特筆すべきは、 弾き語り風のバラード部分 だろう。
ピアノによる物悲しい響き、じめやかなポールの歌唱、マイナー調を使ったメロディの美しさは絶品。
多重録音のヴォーカルで「...your funny paper」と歌われる部分などは鳥肌が立ちそうだ。
"バラードのポール"と言われる彼の作品中でも、 トップ・クラスに位置するもの だと自分は思う。
1分7秒
こんないい曲をメドレーの一部として放りこむなんて、 ポールどんだけだよ!?
---というのが今も昔も変わらぬ感想だ(笑

かと思いきや、メドレー後半のポール作品「Carry That Weight」でもこのフレーズが顔を出すという仕掛け。
ポールもやはり もったいない
よいメロディを活用し、構成の妙も見せつけるという、ひと粒で二度おいしいメドレー技ですな。

一方、1:08あたりから飛び出すブギウギ風演奏は、 やや唐突 な感じがして、どうも違和感を払えない。
歌い方がまったく違う上に曲自体の出来もポールにしては 凡庸 で、前パートからのつながりも考えると若干チグハグな印象。
それでも、ジョンやジョージも加えた ウーアー・コーラス などはなかなかにグっとくる。
後ろで鳴る鐘の音もなんだか耳に残りますね。

第三パートも楽曲の出来は可もなく不可もなくといったところか。
ただし、ハードにうなる演奏はそれなりにカッコよく、 ジョージ・ハリスンの弾くギター・リフ も強い印象を残す。
ジョージらしい旋律を持つこのリフは、彼が前年にエリック・クラプトンと共作した 「Badge」(←クリームの曲) のそれを元にしたもの。
このリフもまた「Carry That Weight」で再度顔を出している。

「1-2-3-4-5-6-7 いい子はみんな天国に行ける」 と繰り返すラストも意味深で好きだ。
曲がフェイド・アウトするのと同時に聞こえてくる 虫の声 は、ポールが自宅で録音したもの。
次に控えるジョンの「Sun King」につなげるためのSEだが、これも雰囲気作りにひと役かっている。
そして、それは同時に、XTCの'86年の傑作 『Skylarking』 へもつながっていくのである。


圧倒的な評価をものにした"アビイロード・メドレー"だが、結論を言うならコレは(よく言われるように) 70%くらいポールとジョージ・マーティンの作品 だろう。
実際、メドレーの幹を支えているのはポールの楽曲だ。
ジョンの曲は、メドレーの一部としてだから聴けるものの、彼の作品としては はっきり言って弱い
ポールの活躍が目立つこれをジョンが面白く思ったはずもないだろう。
自作に対するクールな評価とポールへの 嫉妬心 が、先述の辛辣な発言を生んだといったらどうだろうか。

一方のポールは、このメドレーを 「僕らの最高傑作のひとつ」 とまで言っている。
もっとも、細部のつながりがうまくいってない部分はあるし、小奇麗で"出来すぎ"な印象があるのも事実だ(ジョンが嫌がる理由はこの辺もあるのだろう)。
それでも、ここにある 緊張感 カタルシス は何物にも代えがたい。
ビートルズの"有終の美"として確かにこれ以上のものはないだろう。
シャレとも別れの挨拶ともとれる「The End」には、言いようのない淋しさが漂っている。

ポールは90年代以降のライヴで「Golden Slumbers~Carry That Weight~The End」をたびたび演奏し、ファンを喜ばせている。
エリック・クラプトン、フィル・コリンズ、マーク・ノップラー、そしてジョージ・マーティンを迎えたロイヤル・アルバート・ホールでのライヴ('97年)は涙モノでした。

「You Never Give Me Your Money」を聴くには ここ をクリック!
豪華メンバーによる「Golden Slumbers~Carry That Weight~The End」のライヴ・バージョンは こちら





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Last updated  2008.09.07 02:07:58 コメント(10) | コメントを書く


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