草加の爺の親世代へ対するボヤキ

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2018年09月04日
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第 三百三十二 回 目

 落語の演題に「堪忍袋」というものがあります。江戸時代の長屋で夫婦喧嘩の絶えない熊五郎と

その妻がいた。長屋の大家さんが仲裁に入り、中国の故事を語って聞かせる。

 何を言われても怒らない男がいた。変に思った仲間が彼を料理屋に呼び出して、相手を罵倒してみるが

それでも男は怒らずに、ニコニコと笑った後に、「ちょっと用事があるので、これで失礼します」と言っ

て家に帰ってしまう。仲間は「さては家で下男か誰かに八つ当たりをしているな」と訝しがって、男の

家に押し掛ける。出迎えた男は大きな水甕を指さし、「ムシャクシャすることがあると、この中に

叫んでぶちまけ、蓋をして閉じ込めてしまうのだ」と明かす。

 それから「あれは偉い人間だ」と評判になり、出世をしたそうだ。お前さんたちも、例えば袋をひと



締めて置き夫婦円満を図りなさいと、教えた。落語の『堪忍袋』はこの後まだまだ続くのですが、「物

言わぬは腹膨れる業」と諺にも言われています。音読の段階でも、現実では決してなりたくない悪党に

なり切って全部発散し、精神の健全化を図るのは非常に賢いやり方でありましょう。


 例えば、シェークスピアの『マクベス』から、主君を弑逆する簒奪者・マクベスとして、


 マクベス「やってしまって、それで事が済むものなら、早くやってしまったほうがよい。暗殺の一網

で万事が片付き、引き揚げた手元に大きな宝が残るなら、この一撃がすべてで、それだけで終わりになる

ものなら…。王が今ここにいるのは二重の信頼からだ。まず、おれは身内で臣下だ、いずれにしろ、そん

な事はやりっこない、それに、今夜は主人役、逆意を抱いて近寄る者を防ぐ役目。それがみずから匕首

を振りかざすなど、もってのほかだ。そればかりか、主君のダンカンは生まれながらに穏和な君徳の持

主、王として一点、非の打ちどころがない。おれの野心だけが勝手に跳びはねたがる、跳び乗ったはよい

が、鞍ごしに向こう側に落ちるのが、関の山か――」



 マクベス「どうした、何かあったのか?」

 夫人「お食事はもうすぐ御済みです、何故、中途でお立ちなさいました?」

 マクベス「捜しておいでだったか」

 夫人「それを御存知なくて」

 マクベス「もう、やめにしよう。王は栄進を計ってくれたのだ、おかげで、上下(しょうか)の気受け



 夫人「では、今まで身につけていらした望みは、ただ酒の上の事とでも?その後で一眠りして、いま

眼が覚めてみると、さっきは平然と見据えられたものが、今度はちらと垣間(かいま)見ただけで、ぞっ

として気が沈むとおっしゃる? 解りました、私への愛情もそんな頼りのないものなのでしょう」

 マクベス「お願いだ。黙っていてくれ、男に相応しいことなら、何でもやってのけよう。それも度が

過ぎれば、もう男ではない、人間ではない」

 夫人「それなら、この企みをお打明けになった時は、どんな獣に唆(そそのか)されたとおっしゃいま

す? 大胆に打明けられた方こそ、真の男。それ以上の事をやってのければ、ますます男らしゅうおなり

の筈。私は子供に乳を飲ませたことがある、自分の乳を吸われる愛おしさは知っています ― でも、

その気になれば、笑みかけてくるその子の柔らかい歯茎から乳首をひったくり、脳みそを抉(えぐ)り出

しても見せましょう。さっきの貴男の様に、一旦こうと誓ったからには」

 マクベス「もし、遣り損なったら?」

 夫人「やりそこなう? 勇気を絞り出すのです、遣り損なうものですか。王が眠ったら、ええ、どうせ

今夜は旅の疲れでぐっすり寝込んでしまうでしょう。二人のお附きは大丈夫、葡萄酒をどんどん勧めて

酔い潰してやる。脳髄の番人、記憶の正体は朦朧となり、理性の器も蒸留器同然。挙句の果てには、べろ

べろに酔って豚のように眠りこけてしまう、そうなれば護衛のないダンカン、二人でどうにでも出来ま

しょう? 大逆の罪も、そのやくざ頭のお附きに擦(なす)りつけてやったらよい、どうしてそれが出来

ないと?」

 マクベス「男の子ばかり産むがよい。その恐れを知らぬ気性では、男しか産めまい。それなら、酔いつ

ぶれた二人に血を塗りつけておく。短剣も奴らのを使う。そうすれば、人の目にもそいつらの仕業と見え

ぬでもあるまい?」

 夫人「誰がそれを疑います? こちらは王の死を歎き、大声に騒ぎ立てているのに?」

 マクベス「よし、腹を決めた、体内の力を振り絞って、この恐ろしい仕事に立ち向かうぞ。さ、奥へ、

そしらぬふりで、あたりを欺くのだ、偽りの心は、偽りの顔で隠すしかない」

         ( 中 略 )

 マクベス夫人、右手の戸口から登場。手にコップを持っている。

 夫人「二人を酔わせた酒が、私を強くした。それで二人は静かになったが、私の心は火と燃える。

(間)お聴き! 黙って。あれは梟(ふくろう)、不吉な夜番、鋭い声で、陰にこもった夜の挨拶。そう

だ、いま、あのひとが。戸は開けてある。二人の護衛は酒に飲まれて高いびき、己の任務を笑い飛ばし

て。あの寝酒には薬が。今頃は、二人のなかで、死と生とがもみ合って、互いに鎬(しのぎ)を削って

いよう」

 マクベス「(奥で)誰だ、其処に居るのは? やい、動くな!」

 夫人「どうしよう!目を醒ましたのでは。やりそこなったのかも知れない。手を下して、仕遂げなかっ

たら、それこそ身の破滅。お聴き! あいつたちの短剣は、あすこに出しておいた、見つからぬはずは

ない。あの時の寝顔が死んだ父に似てさえいなかったら、自分でやってしまったのでけれど。(振り向い

て階段の方へ行こうとし、戸口に姿を現したマクベスを見る。両手に血がついている。二本の短剣を左手

にひとつかみにして、よろめくように出て来る)あなた!」

 マクベス「(声を低めて)やってしまった……音がしなかったか?」

 夫人「梟の鳴く声が、それから蟋蟀(こおろぎ)の音と。何か声をおだしになったのでは?」

 マクベス「いつ?」

 夫人「今しがた」

マクベス「降りて来るときにか?」

 夫人「ええ」

 マクベス「あれを! (二人、じっと聴き耳をたてる)次の間に寝ているのは誰だ?」

 夫人「王の息子です」

 マクベス「この情けないざま。(右手をさしだす)」

 夫人「たわいのないことをおっしゃる、情けないなどと」

 マクベス「どこかで声がしたようだった、もう眠りはないぞ!マクベスが眠りを殺してしまった、と」

 夫人「どうなさったのです」

 マクベス「もう眠りはないぞ!、その声が城の中にこだましていた」

 夫人「誰がそんなことを? さ、早くその手から罪のしるしを洗い落して。どうしてその短剣を持って

いらしたのです? あの部屋においておかなければなりません、返していらっしゃい、そして、あの二人

の護衛に血を塗りつけてくるのです」

 マクベス「もう行くのは厭だ。自分のやったことを考えただけで、ぞっとする、それをもう一度見るな

どと、とても出来ない」

 夫人「腑甲斐の無い! 短剣をおよこしなさい。眠っている人間や死人は人形同然。子供ででもなけれ

ば、誰が絵に描いた悪魔をこわがるものですか。血を流していたら、その血で護衛の顔を化粧してやる、

どうしても二人の仕業と見せかけなければ。(上の部屋へとあがって行く。外から門を叩く音が聞こえて

来る)」

 マクベス「あの戸を叩く音は、どこだ? どうしたというのだ、音のするたびに、びくびくしている?

何ということだ、この手は? ああ! 今にも自分の眼玉をくりぬきそうな! 大海の水を傾けても、

この血をきれいに洗い流せはしまい? ええ、だめだ、のたうつ波も、この手を浸せば、紅(くれない)

一色、緑の大海原もたちまち朱(あけ)と染まろう」

     マクベス夫人が戻って来る。戸を閉めて近寄る。

 夫人「私の手も、同じ色に、でも、心臓の色は蒼褪めてはいない、あなたの様に。(戸を叩く音)

南の戸を叩いている。戻りましょう、部屋へ。ちょっと水をかければ、きれいに消えてしまう、何もか

も。訣もないこと! 勇気をどこかへ置き忘れておいでらしい。(戸を叩く音)そら!また叩いている。

さ、夜着を御召しになって、誰かに起こされても、ずっと寝ずにいたと感づかれないように、そんな、何

かに心を奪われているような様子は禁物、元気をお出しになって」

 マクベス「自分のやったことを憶い出すくらいなら、何も知らずに心を奪われていたほうがましだ。

(戸を叩く音)ああ、その音でダンカンを起こして呉れ! 頼む、そうしてくれ、出来るものなら!」

  二人、退場する。


 以上、天才の手になる傑作の一部抜粋ですが、心を集中すれば誰にでも簡単にカタルシス効果は実感で

きる筈ですが、参考までに 中村保男 の解説を御紹介しておきましょう。

  ―― 終わりに、この劇の門を叩く音について、シェイクスピア批評史上で最も有名なエッセイのひ

とつがド・クインシーによって書かれているので、その要点を紹介して置こう。王を殺したことでマクベ

ス夫妻は悪魔と化し、人間の通常世界が遠のき、舞台には魔の世界が現出している。そこへ突如、悪夢か

ら目覚めよとばかり強く、門を叩く音が響きわたる。この音と共に「悪魔の世界へ人間の世界が逆流し、

生命が再び鼓動を始めるのだ。そして、人間の世界が蘇生したということこそ、これまでの中絶期間、

恐るべき暗黒の世界をひしひしと痛感させるものなのだ。無論、このような解説より、先ずは実地に

『マクベス』を舞台で見て、この門を叩く音の素晴らしい劇的効果を、腹にずっしりこたえるようなその

重みを、わが耳で確かめてみることである。ずっしり腹の底に響き渡るような重厚なノックの音、それを

現実に聞いたなら、そのとき読者は驚くにちがいない。冷水を浴びて全身がわななくような感覚に襲われ

るにちがいない。頭と心ばかりか、目と耳で、面前に起こっていることを受け止める事、演劇の醍醐味は

まさにそこにある。

 次は、がらりと調子を変えて、甘くセンチメンタルな気分など、ちょっとした陶酔の世界に浸るのもま

た一興というもの―。詞:松井五郎  唄:ビリー・バンバン、坂本冬美


               「 また君に恋してる 」

朝露が招く 光を浴びて はじめてのように ふれる頬 / てのひらに伝う 君の寝息に

 過ぎて来た時が 報われる / いつか風が 散らした花も 季節巡り 色をつけるよ /

 また君に恋してる いままでよりも深く また君を好きになれる 心から / 若かっただけで

許された罪 残った傷にも 陽が滲む / 幸せの意味に 戸惑うときも ふたりは気持ちを

 つないでた / いつか雨に 失くした空も 涙ふけば 虹も架かるよ / 

 また君に恋してる いままでよりも深く まだ君を好きになれる 心から /

 また君を恋してる いままでよりも深く また君を好きになれる 心から

 その時々の気持ちと気分で、様々な自分を、時にはなりたくはない悪党に、また時にはちょっとした

恋する者の情緒に存分にのめり込んでみる。そして、ゼロの状態になった「健康な心」で日常と言う

現実に全力で対処する。そこから、輝かしい未来が生まれ出て来る事を、信じて!





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最終更新日  2018年09月04日 14時37分23秒
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