『未熟なボクら ―もう一つのNARUTO-ナルト物語― 』
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第67話「孤独の本当の意味を」
地面にペタンと座り湖面を見ていたサクラは、静かにふりむく。サスケだということは、感じていた。ただ、本当に旅支度をして現れた現実を見て、ドキリとした。
「……」
サスケは、黙って湖面の水をすくい、口を付ける。
「サスケくん。今日は、いいお天気だね」
サクラは、笑う。その表情を崩さぬまま……。
「どこへ……行くの?」
かすかに震える声を、必死で抑える。
サスケは黙ったまま、湖のほとりに座り、水面を眺める。
「サスケくんは最近、いつもどこか苦しそうだった。笑ってるときでさえ……」
背中合わせに座るサスケに語っているのだろうが、それはどこか独り言のようにも感じる。
「仲間のことなんかどうでもいいって言うサスケくん」
サクラは足下の花を、手でそっと愛でる。
「それでも仲間が大切なサスケくん」
サクラは花を愛で続ける。
「それがホントのサスケくんだって、ちゃんと分かってる」
サクラは立ち上がると、サスケの横に座り直す。
「何に……追いつめられているの?」
サスケの心を壊さないように、傷つけたりしないように、優しく優しく包み込むように、サクラはたずねる。
『何に……追いつめられているの?』
サクラの言葉は、サスケを、紅い月の夜へ引き戻す。
七歳の自分から、なにもかもを奪った兄。ただ一つ残していったものは、復讐という闇の道。
それでも、十二歳で新しい道が出来た。それはサスケにはとてもまぶしく、涙が出るほど幸せな……輝く未来。
けれど……。
「オレは、復讐のためだけに生きてきた。七歳のあの日、そう誓った」
サクラは、自分の膝にのせた手をぎゅっとにぎる。
「このままここにいたら、オレは目的を見失う」
「でも……サスケくん本当は望んでいないんでしょう?」
サクラは身を乗り出す。
「仲間とともに生きる道。復讐を遂げて死ぬ道。二つのはざまで、確かに揺れた。けれどオレは結局、復讐の道を選んだ」
「……復讐を遂げて……死ぬ……の……?」
「復讐を遂げるためなら、命などいらない」
サクラは、悲しそうに笑う。
「サスケくんは、夢ちゃんに似てるね。初めて夢ちゃんに会ったときからそう思った。命なんてどうでもいいと思ってる、冷めた目……生きる事への執着がうすい……でも夢ちゃんは生きることを選んだ!」
「アイツとオレは違う」
立ち上がりかけたサスケを、サクラはぎゅっと抱きしめ――サスケの肩に涙を落とした。
「……サクラ」
「だって……サスケくんが泣いているから……」
涙など、流してはいないサスケ。けれど、心の奥できっと泣いているサスケが、サクラにはよく分かる。
「サスケくんが好き」
サスケの耳元でささやいたサクラの告白は、あまりに切なく。ぽろぽろ落ちた涙が地面に吸い込まれていくように、その声もまた湖畔の静寂の中に消えていった。サクラの身体は、サスケにぎゅっと抱きしめられる。
夢と、同じ。また、夢なのかと思った。声がでないから。体が動かないから。サスケは離れていく。ありがとう、は、心の声だった。
「……って聞いたな」
「えっ?」
ハッと現実に引き戻されるサクラ。
「大切な仲間って言ってくれたのは嘘だったのかと、そう聞いたな」
『ナルトや私のこと、大切な仲間って言ってくれたの……嘘だったの?』
「嘘じゃない」
サスケは背を向ける。
「嘘じゃないが……仲間以上に特別だった」
「サ――」
サスケは、シュッと姿を消した。
「……スケ……くん……」
サクラは一瞬前までサスケがいた場所を、ぼんやり見つめる。サスケが、いない。胸にぽっかり穴が空いたように。その空いた部分が、サスケを求めて――求めて、求めて――孤独の本当の意味を、生まれて初めて知る。
「サスケくんっ!」
サクラは追いかける。どこまでも追いかける。涙があとからあとからあふれて。もう届かないと知りながら、必死で息を吸い込みながら。
けれど、サクラの手がサスケに届くことはなかった。
日が沈み、サスケは森の中で夜を明かす。ナルトに会うことはなかった。
ナルト『次回は……カカシ先生、サスケのこと頼むってばよ』
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ハロウィンイラスト るろうに剣心 October 29, 2012
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