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東野圭吾のミステリーを映画化した「白夜行」を見てきました。 封切り初日、渋谷HUMAXシネマの初回午前10時20分の上映は4割くらいの入り。土曜の朝とはいえ、渋谷で封切り初日でこれって、テレビドラマ化されているものの映画化作品としては、寂しい。 密室となった廃ビルの中で質屋の主人桐原洋介(吉瀬良太)が凶器で背中から一突きにされ殺害された。洋介の妻(戸田恵子)は店員松浦(田中哲治)と不倫を続け夫婦関係は冷え切り、洋介は質屋の常連客の西本文代の下に足繁く通っていた。捜査が続く中、西本文代の恋人として浮上した寺崎が事故死し、そのポケットには洋介のライターがあり、次いで西本文代が自殺し、警察は被疑者死亡で捜査を打ち切るが笹垣刑事(船越英一郎)は納得できず、ひとり調査を続ける。事件当時10歳だった洋介の息子亮司(少年時代今井悠貴、高校生以降高良健吾)は母の元を出て行方不明となり、西本文代の娘雪穂(少女時代福本史織、高校生以降堀北真希)は遠縁の親戚の養女となり唐沢雪穂として新たな人生を歩んでいた。しかし、雪穂の周囲では、雪穂と対立する女性がレイプされ、雪穂につきまとう男が死体で発見される事件が続いていた・・・というお話。 被害者の息子と被疑者の娘の不可解な絆というテーマですが、もちろんミステリーですから単純にそういう話ではなくより複雑な要素を孕んで、子ども時代に負わされたあまりに深い傷と負い目が呪縛する2人の運命というような展開です。 雪穂の子役の新人の、あどけなさと大人びた視線の交差する危うい美しさが、後々わかる真相の残酷さを際立たせています。堀北真希のお嬢さん然としつつ時折見せる冷たい表情の演技が光っているのも、子役時代の印象が残ることが土台となっているように思えました。 しかし・・・雪穂の境遇には涙しますが、唐沢家の養女となって特に不自由なく生活する中で雪穂の心は戻らなかったのか、心が失われて(他人の)不幸に対して感覚がマヒしたとしても、他人の不幸に無関心になるというレベルを超えて他人を攻撃することへのためらいが失われるところにまではいくつものステップがあるはずですが、なぜ雪穂がここまでに至ったのか、今ひとつストンとは落ちませんでした。 同時に、いかに過去が重くても、亮司がいつまでも従い続けるのかも、今ひとつ納得できませんでした。 映画化でいろいろと説明を端折っている部分のためでしょうけど、雪穂の冷酷さなり攻撃性の継続や亮司の行動の他にも、あれだけ自信満々で嫌みな男だった部長がなぜ雪穂と結婚するや毒気を抜かれて引きこもってしまったのかとか、薬剤師の死の場面とか、雪穂が身籠もったはずの子どもはとか、見ていて不可解さの残るシーンが見られます。 昭和の頃の映像の古いイメージはよく表現されていたように思えます。当時実際に流行った「聖子ちゃんカット」が、今見せられるとずいぶん異様に感じるのは、ちょっとショックでした。
2011年01月29日
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癌で余命1年と宣告された妻のために毎日1話の小説を書き続けたSF作家眉村卓の実話を映画化した「僕と妻の1778の物語」を見てきました。 封切り2週目土曜日、パルコ調布キネマの午前10時10分の上映は1割程度の入り。封切り最初の週末、相棒2(時計文字の2が機種依存文字で楽天ブログにはねられました)を蹴落とし、ソーシャルネットワークも抑えて堂々の興行成績1位を獲得した本作も土曜日朝はこの程度というところでしょう。 ロボットオタクというかキッチュなロボット玩具オタクのSE作家牧村朔太郎(草なぎ剛:漢字で書くと機種依存文字で楽天ブログにはねられました。そのため以下「つよぽん」)は、高校時代からのつきあいの銀行員の節子(竹内結子)と幸せな結婚生活を送っていた。ある日、腹痛があり、これはおめでたかと病院に行った節子は、虫垂炎の疑いで緊急手術を受け、その結果大腸癌が方々に転移していることがわかり、朔太郎は担当医から節子の余命は1年、5年生存率はゼロと宣告される。節子には必ず治ると知らせた朔太郎は、家事を手伝うこともできないと痛感し、医師に笑いは免疫力を高めることもあると言われたことから節子のために1日1話笑える小説を書くと決意する。朔太郎の小説を毎日読み続け、抗がん剤治療を受け続けて、節子は1年どころか4年を超えて生き続け、行けなかった新婚旅行の代わりに北海道に出かけるが・・・というお話。 基本的に泣かせる話なんですが、そして竹内結子の表情での表現や台詞で、きちんと泣かせてはくれるのですが、浮世離れしたSF作家の設定のためではありましょうが、つよぽんメインの場面が現実感・シリアス感を外してくれて、まっすぐに入り込みにくい。その外し方がいいんだという評価もあるのかも知れませんが、私は、主として竹内結子の表情で見せている映画かなと思いました。 笑える小説を書いているはずなんですが、出てくる話は、どちらかというと、笑えるというよりはどこか切ないエピソードが多い。特に第50話(朔太郎が旧型ロボットを守ろうとするが、新型ロボットに攻撃されてほとんど壊滅する話)なんて笑いようがないし、1人残った旧型ロボットとサヨナラする場面なんて、癌で闘病中の妻のためという設定で書くか? 毎日1話ずつ書き続けてたら、1002話目の時は、作家なら当然、僕はついにシェヘラザードを超えたって感慨を持つはずですが、そういうお話は出てきません。癌と闘う妻にそういうおちゃらけた話は・・・ということなら、つよぽんメインの場面のおちゃらけは何だって思いますけど。 癌で闘病中の妻のために毎日1話ずつ小説を書き続けるって、美談だとは思うんですが、小説を書くために別室にこもったりアイディアを拾うために外出したりで、長時間その妻を一人で放置するのってどうなんでしょう。特に終盤で、僕が寝ている間に妻に何かあったらと思うと眠れないという朔太郎。そういいながら病室の妻から離れて食堂で小説を書いたり廊下で考えてるのはなぜ? 3年以上も抗がん剤治療を受けていて髪が全然抜けない節子とか、臨終シーンでなぜか竹内結子の腹部に心臓マッサージをしている主治医(胸を触るなって言われたんでしょうかね)とか、いろいろ不思議な場面はありますが、全体としてリアル感が少ない映画だからまぁ仕方ないですかね。 でも、原稿用紙に手書きで毎日小説を書き続けるというコンセプトの映画で、日々書かれる作品の筆跡と、最終回に朔太郎が書く文字の筆跡が全然違うの、白けるなぁ。最終回も書いている手だけで顔は写ってなかったけど、最終回だけはつよぽんが自筆で書こうとしたということでしょうか。それなら登場する原稿は全部書くくらいの手間をかけて欲しい。
2011年01月22日
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事故で弟を死なせて悲嘆に暮れる青年の再起を描いた青春映画「君がくれた未来」を見てきました。 封切り3週目土曜日、新宿武蔵野館の午前11時45分からの上映は4割くらいの入り。観客層は中高年がやや多数派ですが、若い女性2人連れやカップルもちらほら。 シングルマザーに育てられた高校生チャーリー・セント・クラウド(ザック・エフロン)は、ヨットでは無敵の成績を収め、スタンフォード大学の奨学金も得て、大学進学を待つばかりだった。慕い合う11歳の弟のサム(チャーリー・ターハン)が離ればなれになることを寂しがるのを見て、チャーリーはサムと大学進学まで毎日必ず夕方の大砲を合図に野球の練習をしようと約束する。卒業パーティーの日、寂しがるサムを乗せて車でパーティーに向かう途中、2人は交通事故に遭い、チャーリーは心臓が停止したが救急救命士フロリオ(レイ・リオッタ)に奇跡的に助けられて蘇生する。しかし、サムは帰らぬ人となった。サムの葬儀の日、グローブを棺に入れることを拒んで森に駆け込んだチャーリーの前に、サムが現れ、毎日夕方に森で野球の練習を続けることを約束する。チャーリーはサムとの約束を果たすために進学せずにサムが埋葬された墓地の管理人となって毎日夕方森でサムとの交流を続けていた。5年が経ったある日、ハイスクールの同級生だったテス(アマンダ・クルー)が、世界一周レースに出場するために戻ってきた。チャーリーはテスに心を惹かれ、ヨットの改良についてアドバイスする。嵐の夜、ヨットのテストのために航海に出たテスが行方不明となり・・・というお話。 仲のよかった年の離れた弟を、自分が車を運転していて死なせてしまったチャーリーの喪失感、自責の念と、そこからの再起がテーマで、またそこが見どころのシンプルな作品です。このシンプルなストーリーで泣いたり感動できればOK、複雑な展開が好きな人には物足りないということになるでしょう。 チャーリーの視点で描かれるチャーリーが主人公の映画ですが、サムの生きているときの愛くるしさと寂寥感、ゴーストになった後にチャーリーがテスに惹かれていくときに見せる哀感の表現がすごくいい。ゴーストの登場する非現実性を、その演技でカヴァーしている感じです。 サムがゴーストなのかチャーリーの想像なのかについて、公式サイトでは監督の言葉として「サムは魂なのか、それとも、チャーリーの想像の一部なのか? 私は、両方の可能性を考えた。恐ろしい事故でチャーリーは精神状態がおかしくなってしまったのか、サムが本当に見えるのかはわからない。映画を観た人たちがそれぞれに異なる見方をするだろう。」としています。しかし、この映画ではサム以外にもチャーリーの友人だった死んだ軍人や、さらには死んでいない人が(生き霊または幽体離脱した魂として)チャーリーの前に現れているわけで、チャーリーの喪失感や自責の念からの想像・幻覚という解釈は無理だと思います。 どうでもいいんですが、テスが乗るヨットのセイルに書かれているロゴが「CS」なのはなぜでしょう。Tess Carrollだと「TC」のはずで、CSだとチャーリー(Charlie)とサム(Sam:Samuel)かと錯覚してしまいます。
2011年01月08日
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