2005年07月21日
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カテゴリ: BALLET
R・HATTER
2005年7月21日 東京 五反田 ゆうぽうと簡易保険ホール

服部君はやっぱ天才。

1部の「藪の中」、すばらしかった。昨年の「盤上の敵」で人々を驚愕させた服部の、日本公演的には次作ということで大変なプレッシャーがあったと思うが、見事でした。

2部「R・HATTER」はとても奇妙な感じで違和感があった。

とにかくサーシャとウルバン、すばらしかった。

「藪の中」で強盗(ウルヴァン)と夫(リアブコ)が対決するシーン。鬼気迫る振付とダンス、そこに「ニジンスキー」でも見せていた驚異的に美しいジャンプ、「若者と死」のように空中に斜めに飛んで床に落ちるという。

このシーンはほんとにすごい。

2部でやはりサーシャとウルバンが2人で踊るシーンがあるのだが、もう圧巻。舞台上で、「幻想白鳥」のようなコサック・ダンスを2人で繰り広げ、あげくはマネージュ、エレインも加わって、ピルエット、フェッテ!



別の意味で服部君もすごいダンスだった~

ピルエットしながらスケートの選手のように背中をそらすのだ。ふつうこんなでは回れない。数々の驚異的な身のこなし。服部ならでは。

※ネタバレ注意。

第1部 藪の中

夫、妻、強盗の役がそれぞれ3人ずつ。最初自己紹介のように一人一人にピンスポが当たる。素早く入れ替わっていく。

9人が並んで踊る。3人は同じ役なんだよとわからせている。一番前は夫がリアブコ、女がミンラー、強盗がウルバン。彼らは後ろのキャラクター、自分の分身がひょこっと前に顔を出そうとすると押し込めている。

グループに分かれてそれぞれ踊り始める。
夫は煩悶しているダンス。自分の口を手で塞ぎ、その手を懐に入れる。衣裳は上着は短いが、上は着物風で懐があるのだ。
自分の手のひらで自分の顔を覆う。見たくないでも見てしまうという表現か、指を1本1本ずらしてその隙間からじっと見ている。
表情は緊張に満ちている。
また自分の口をあんぐりあけて手を入れようとしたり。



さて物語は始まる。

強盗(3人)が、舞台の客席のすぐ前に腰掛けて、だるそうにしている。暑くてたまらねえな…

夫と妻がやってくる。二人ずつ並んで、サーシャが手前に止まり、ほかの2組もずれてとどまる。強盗は女に興味を持つ。

強盗は夫に甘言を弄し、藪の中に宝があるとだまして連れて行く。舞台の奥に入っていく夫。夫たちは手を伸ばす。女はいかないでと引き止めるが、夫は強盗の意のままに操られている。これがおもしろくて、いわゆる忍術のように、手を強盗がはっとかざすとその通りに操り人形になる夫。
力関係では完全に負けている。



強盗は妻をかどわかそうとする。妻は縛られた夫からナイフを取ってきて、抵抗する。しかし男の力にかなうはずもない。ここはヴァリエーションがあったが、妻はかなわないと知ると自害しようとするが強盗がナイフを叩き落す。

強盗は妻を犯す。これは舞台上では表現されず、強盗があらあらしく上着をぬがせるところで暗転。
ライトがつくと、行為が終わって女たちは床に寝ている。強盗(ウルバン)はもう用はないと、去ろうとする。
強盗(パルミジャーノ)は夫をいたぶっている。強盗の夫に対する態度もそれぞれ異なる。

ここから3組の様子が著しく異なり始める。

一組目。

妻(ステファニー・ミンラー)は強盗(イヴァン・ウルヴァン)を愛しているかのようにまとわりつく。強盗はもうどうでもいい女にしつこくされて迷惑している。
あんたを愛してるのよ。でも、2人の男に愛されるのは恥辱。あんたがあいつを殺してくれないとあんたと愛しあえないわ。決闘して。

ここはミンラーとジョンストンがそれぞれの強盗と踊る。ブシェーは床に倒れたままだ。強盗と踊る妻は強盗に魅かれている、もしくは魅かれているふりをしている妻だ。

妻(ステファニー・ミンラー)は夫(アレクサンドル・リアブコ)の縄をほどく。

夫は目の前で妻を陵辱された怒りで強盗に殴りかかる。ここがすごいダンス。音楽がドラマチックになり、リアブコがウルバンに怒りに燃えてとびかかる。空間を切り裂くような高い美しいジャンプ。体を斜めにまっすぐに伸ばした形。なんともすごい美しいパドドゥが繰り広げられる。真横の180度ジャンプ。
最初の方は夫のほうが優勢に見える。

しかしほかの強盗役の2人(ロリス・ボナニ)(ステファノ・パルミジャーノ)も加勢して、夫は首を絞められて殺されてしまう。

原作では女はとっくに逃げ去っているわけだが、そのへんの感じはよくわからなかった。

二組目。

妻(エレン・ブシェー)と夫(ヨハン・ステグリ)は愛し合っているため、夫はこの恥辱に耐えられない。それに妻が強盗との情事で悦びを感じていたように思えてならない。
ステグリはぜったいエレインと目を合わせようとしない。妻は恥辱でいっぱいになる。ここはすごく悲しい。もう彼の心を取り戻すことは出来ない。夫は妻の手にナイフを持たせると自分を殺すように頼む。ほかの2人の妻が手を添える。夫は静かに死ぬ。妻も死のうとするが、死に切れない。

ナイフをかざして、ほかの2人の妻が手伝うのだが、エレインはナイフを最後の瞬間に激しく放り投げる。2回見たが2回とも舞台の端まで飛んでってびっくりした。すぐにナイフを拾う3人。
上手に退場する3人。

三組目。
妻(ゲイレン・ジョンストン)はとんでもないやつで、強盗に夫を始末させようとするが、断られると、縛られてる夫(服部有吉)を殺そうとする。強盗(ステファノ・パルミジャーノ)はそれはいくらなんでもひどいんじゃない、と妻の手からナイフを落とす。
解放された夫は、ソロを踊る。
服部ワールドが展開する。彼の自分自身への振付はほかの人は誰も踊れないだろう。「誰ピカ」でもほとんど即興で、舞台とはまったく違う踊りを踊っていたし、これはものすごいことです。コレオグラファーでこれだけオリジナルで踊れるのは、ニジンスキーとかそういうレベルではないかな。

夫は屈辱感で自害する。いかにも日本的な自害ですね。

そして3人の死体が横たわる中、幕が下りる。ここからが(割愛)


第2部

1、おしゃれ娘 (宝塚歌劇団)

 酒場のようなところで踊る男女。

2、買い物ブギ(全員)

3、バラのルムバ(宝塚歌劇団)

4、夜のプラットホーム(蘭寿とむ、大石裕香)

5、胸の振り子(服部有吉 大石裕香)

6、ラッパと娘(ゲイレン・ジョンストン、ステファニー・ミンラー)

 ハンブルクの女性ダンサーのダンス。ステファニー・ミンラーがはじけててすごい。彼女は感情表現が豊かで見ていて楽しくなる。ほんとに場末のキャバレーの姉ちゃんだった。自分のスカートをめくって嬌声をあげて笑いを取っていた。サイコー。

7、センチメンタル・ダイナ(宝塚歌劇団)

8、東京カチンカ娘(リアブコ、ウルバン、ブシェー)

 リアブコとウルヴァンのデュエット。コサックダンス。
音楽が始まると、それまで酒をかっくらっていた黒いシャツに黒いズボンの男(リアブコ)と派手な緑のシャツの男(ウルヴァン)が2人、前に出てくる。リアブコはタバコを吸って捨てて足で踏むマイムをする。実際には吸ってない。そして、お先にどうぞとウルヴァンに促す。ウルバンはコサックダンス風の踊りをぱっと踊ってみせる。リアブコはまったく同じ踊りを繰り返す。そして二人で華麗に踊りだす。ダイナミックなのだ。みなあっけに取られていたと思う。
なんつー美しいのだ。ロシア風のステップがほんとにすてき。楽しそうに踊っているのがさらにすばらしい。サーシャは飛んで回って床をバン!と手で叩く。かっこいい! あげくのはてにマネージュ、ぶんぶん。いいのかなあ、ノイマイヤー作品ではこんないすてきなサービスはありませんよ。
今度はエレインを連れてきて中央でフェッテ・アントゥールナン、それからリアブコがアラスゴンドでフェッテ。うわ~~ん。続いてウルヴァンがピルエットぐるぐるぐる、回って締め! ブラヴィイイイ!

9.山寺の和尚さん(服部有吉、ヨハン・ステグリ、ステファノ・パルミジャーノ、ロリス・ボナニ)

服部、ヨハン、ステファノ、ロリスの4人の椅子を使ったファニーなダンス。椅子を取り上げられるステファノ。笑い。
ヨハンのマネージュがすばらしく速くて美しい。ヨハン、かっこいい~ ピンクのシャツで派手です。似合う!
やはり3人で同じことしていてもひときわ優雅で美しくダイナミックで若々しい。「眠り」の時もよかったもの~。

10、ヘイヘイブギー(全員)

11.蘇州夜曲 (服部有吉)

 服部のソロ。

12 全員のあいさつ
  バーレッスンのようなグラン・プリエが見られる。ファニーで可愛い。
  ちゃめっけたっぷりにジュテするステファーノとヨハン。サーシャがカーテンコールでもおおまじめで、ノイマイヤーの舞台と同じ、プリンシパルの表情でやっていておかしかった(空気読め)。そんな不器用なとこも好きよん。ウルヴァンなんて空気読みすぎで、笑いっぱなしで、ノイマイヤー作品と態度が違いすぎるぞよ。

13 服部のソロ。
  最後に天国のおじいちゃんにもあいさつする服部。

14 カーテンコール

 このすべてを演出・振付した服部さん、ほんとにすごい! お疲れさまでした。また来年も待ってますよ~ 





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最終更新日  2005年07月23日 15時07分01秒


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