Accel

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March 8, 2010
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 ンサージを殺してしまってから・・・今まで、なにも感覚がないような状態だったニルロゼであるが、彼の全く思いもよらない形でナーダと再会を果たしていた。
 ナーダは既に死んでいると思っていただけに、、驚きと戸惑い、そしてえもいえぬ感情が一気に押し寄せ、急な事で少年の心は気持ちの整理ができていなかった。
 なんでだろう?
 なにがあったんだ?
 どうしたんだ?

 そういった事で頭が一杯で、ナーダに言われるまま、食べ物を詰め込んでいたというありさまである。
 しかしそれでも、体の中に温かいものが満たされた感じがし、少年はふう、と吐息を吐いた。

 その顔を見て、ナーダが笑いかけて来た。
「やっと、柔らかい顔になったわね」


「煩いな・・・。
 俺はさ、どうしたらいいのか判らないんだよ・・・。
 俺はなんのために闘ってきたんだよ・・・
 大事な人まで斬ってしまって・・・」


 ニルロゼの表情がみるまに曇り、若々しい顔の眉毛や目つき、口元があっという間に厳しい形を結ぶ。
 ナーダは構わずに、ゆっくり、彼に寄りかかると、語りかけた。
「それは・・・。
 ハーギーをぶっこわす、
 ために・・・
 闘ってきた、
 んじゃなかったの・・・」




 ニルロゼは、寄りかかる女性を退けようとはしなかった。

 以前、牢で・・・こうして、ナーダと二人で過ごした時とは・・
 また、違う感覚があった。
 今日は、赤が、居ないからだろうか。



 ナーダの考えていることが、自分の中に入って来るような・・・
 そんな、ゆるやかな波に包まれているような、気がする。
 この感じは、嫌ではなかった。



 ニルロゼは、自分の背中に寄りかかっているナーダに、肩越しで問いかけた。
「なあ・・・
 子供ができたって?
 だから、君は余興に出ないで済んだのか?」

 ナーダは向こうで大きく頷いた。
「そうよ。
 私が子供を産めば、ハーギーの子供が増えるからね・・・」

 ニルロゼが、ふっと、険しい顔になる。
「そうか・・・
 君が死ぬと、ハーギーが減るからなのか・・・」
niru-na2.jpg

 ナーダはニルロゼから一旦離れ、彼の前に回った。
 そして、少年の瞳を覗きこみ、彼の肩に両手を置いた。
「その通りよ」

 ナーダは、ニルロゼを見据え、どことなく力を込めたような雰囲気で言った。
「ハーギーがハーギーを生んでいく・・・
 だからハーギーは減らないのよ・・・。
 ニルロゼ、
 いつまでも、こんなところに居ないで!
 もう秋の時期が来るじゃないの・・・。
 あなたが、あなたが居ないで、誰がハーギーをぶっこわすの?
 あなた、あなたがいなくても、皆が一致すればどうにかなると思うの?」


 やや厳しく言われ、少年ニルロゼは瞳を伏せて下を向いた。
 ナーダの耳によく届く声が、続く。
「違うわ。
 誰かが欠ければ、ダメなのよ・・・
 あなたが、こんな体たらくじゃ、ダメじゃないの」


 ナーダは、ゆっくり、少年に体を近づけて来た。
「ねえ、ちょっとは大きくなってきたのよ。
 触ってみる?」

 ニルロゼはナーダに手を握られた。
「?」
 ニルロゼは、素朴な疑問の顔のままだ。
 特に彼は抵抗もせず、ナーダの手に引かれるままに任せていると、彼女のお腹に、手をあてがわれた。

「これは?」
 ナーダのお腹を触ったニルロゼは、思わず首も唇も前に出して疑問符を投げかけるしかない。


 ナーダがクックと、肩を笑わせ、輝くような笑顔で言った。
「だから、これが子供なんだってば」

 ニルロゼはしかめっ面になり、ナーダの顔を見ながら何度も首を左右に振った。
「・・・これが?」


 そんなニルロゼの様子を、ナーダは、はあ、と溜息をつきながら見るしかない。
「ああ、あなたは、本当に、なにも知らないのねえ・・・
 子供っていうのは、女性の、お腹の中にできるのよ」

 そう言われ、ニルロゼはきょとんとするだけである。
「あ、そ、そうなの」

 ナーダはやや腰を浮かせ、キッと眉毛を上げて言った。
「そうなのじゃないのよ!
 あんたは・・・・もーーーー。
 なんなら、作り方を教えるっ!?」

 思わずニルロゼも腰を浮かせている。
 まさに、腰が浮いている、という状況である。
「あ、いや、知らなくていい、いい、です・・・」


 ナーダはとうとう仁王立ちになり、キリっと言い放った!
「いいですじゃない、この朴念仁!!!」

 ニルロゼは、両手を前に突き出し、情けなくもナーダに恐れなしているようである。
「いや、俺は、その、ハーギーを増やすつもりないから・・・わ、わーー」

「逃げるな!」


「わーーー勘弁してくれ!
 俺は闘う以外は・・・」

「どうしてそんなに嫌がるか~、
 あ、いたたた」

「あ、どうした」
 狭い部屋で追いかけごっこが行われていたが、急にそれも終わった。
 ナーダが座り込んだのだ。
 ニルロゼは慌てて彼女に駆け寄った。
「大丈夫?」

 ナーダは少年に苦笑を見せた。
「馬鹿ねえ、あなたは。
 でも・・・女のこと、色々知っておいた方がいいわよ。
 今後のためにも、ね」
 やや顔色が青いナーダが心配になったニルロゼは、彼女を横にさせた。


「今後、ってなあ・・・
 女の事なんて、知ってどうするのよ・・・」

「どうって?」
 ナーダは両の手を伸ばすと、目の前の少年の頬を挟んだ。
「誰かを好きになるって・・・
 とても、素敵なことなのよ・・・」

「は、はあ・・・」

「はあ!じゃないの!
 前にも言ったでしょ!
 わたしあなたが好きなの!」


「ええ?
 えっと、えっと・・・うーーーん・・・」

「ああ・・だめだこりゃ・・・・」


 ナーダは流石にがっくりしてしまった。
 この少年、色恋には、無縁なのかもしれない。

 情けなすぎるわ・・・・
 なんでこんなチビ好きになったのかしら。
 チビったって、背だけはおっきいけど!
 もう、嫌になるわ・・・


「ねえ、ニルロゼ・・
 床じゃ、寒いのよ。
 あなたに寄りかからせて」
 ナーダは少し体を起き上がらせ、また少年の背にもたれかかった。

 しばらく・・・二人は、そのまま無言だった。


「ねえ・・・」
 ナーダが言った。

「なんでも、できちゃうのよ・・・」

 ナーダの言いだした事は、突拍子もない、言葉だった。

「なんでも?
 なにが?」
 ニルロゼが、ナーダと反対側を向きながら言った。
 どうも、自分は”女”は、苦手みたいだ。


「好きになると、なんでも、できるのよ・・・」

 ニルロゼは、首を捻った。
 なんでも?


「なんでも、よ。
 なんだって、できるわ・・・
 例えば、今日みたいに、”赤”がいない日を、知ることもできたわ・・・
 そして、ここに来たわ・・・」

「・・・」
 ニルロゼは、自分にもたれ掛かる女性の言わんとする事に、やや、戸惑った。


「あなたに遭う為に・・・」
「・・・」

 ニルロゼは、なんだか、背中がむず痒くなった。
 実際に、肩を掻きながら、しかし、なんと応えてよいやら、判らない。



「もっとすごいこともできちゃうのよ・・・」

「・・・?」

「命も惜しくないわ」
 ナーダのその言葉に、流石のニルロゼも、ビクリとした。


「以前・・・
 あなたに逢いに、牢に行ったでしょう・・・
 なぜ・・・行ったか・・・知っている?」

 ニルロゼは、眉毛をしかめながら、答えた。
「そ、そりゃ・・・余興に出るから?
 その前に、俺に遭いたかったって・・・?
 君が言ってたじゃないか」


 ナーダは細い腕を少年の体に回し、唇を笑わせて言った。
「馬鹿ね・・・」

 やや、間が開いた。


「あなたに遭うため・・・
 そのために・・・
 余興に出ることにしたのよ。
 順番は逆よ・・・」

 ニルロゼの背に、女性は顔をうずめて来た。
「いずれ・・・
 死ぬことが・・・
 判っていたわ。
 富豪に買われて・・・
 ”赤”に、目をつけられたのよ。
 他に買われた子も、念入りに、殺されたらしいわ」
 ナーダは一旦言葉を切った。

「余興があるって聞いたから・・・
 だから”赤”に申し出たのよ。
 余興に出るって・・・
 そのかわりに・・・
 好みの男の傍で過ごしたいって・・・」


 彼女が言葉を閉ざしてから、どのぐらい・・・
 時間が経ったか・・・

 やっと、少年が・・・
 言った。
「・・・よく・・・
 わからないよ・・・。
 なんでだ?
 どうしてそんなことを・・・」

 ナーダは、また、溜息をついた。
「だから、あなたは、”女性を知らなすぎる”のよ・・・。
 好きな人のためなら、
 なんでも、
 するわ。
 さっきも言ったでしょう。
 命でもなんでも惜しくないわ・・・」

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Last updated  March 8, 2010 08:48:53 PM
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月夜見猫 @ 愛するケーナさまあはあと! おはようございます☆ >いつも本当にあり…
月夜見猫 @ オスン6757さん おはようございます。 >いつもありがと…
月夜見猫 @ もぷしーさん★ おはようございます。 >今まだうろうろと…
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