Accel

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June 19, 2010
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 先ほどまで明るい朝日に包まれていた川辺が不意に、薄暗く覆われた。
 上方で流れる風によって、大きな雲が運ばれ、太陽の光を遮ったのだ。
 遠くの山並みは相変わらず明るく見えるのに、川辺に集まった男たちの居る一帯は不安定な薄墨の流れに晒されている様だった。

 ブナンに集められた男たちの一行は、そのブナンの手によって一人ひとりが最後の挨拶を受けていた。
 そして、レンハーが一人、残っていたのである。
 そのレンハーは・・・なぜか困ったような笑いを辺りに見せた。
「さあ、行け、行け」
 茶色がかった黒い髪のビュッツが、レンハーの背を押した。

 レンハーが、あまり気が乗らない様子で川に入って行く。

 これまで、ぼんやりとその様子を見ていたカンが、いきなり走り出した!
 無論、川の中腹、レンハーに向けてである!


 すらっ

 金髪の青年は、自らの腰に治めていた剣を抜くと、右手を大きく振って、その剣を飛ばした!

「・・・・」
 ブナンによって川に落とされ、川辺で火にあたっていた男達は・・・
 唖然とした。
 カンの放った剣は、レンハーの首をすっぱりと胴体から切り離し、川に落ちて行った。

 ダバッ
 その後、レンハーの体は・・・
 音を立てて、川に、倒れ込んだ。



 思わず、エグゾがカンの近くに駆け寄った。
 ブナンが、川から上がって来る。
 唇を噛みしめ、両手の拳はキリキリと握られていた。


「どういう事なんだ!
 これは!」


「ブナン!
 あんたもだ、答えてくれ!
 一体どうしたんだ!」
 ジューロとビュッツも、血相を変えて二人に詰め寄る。


 カンは、やや上を向いて、はっきりと言った。
「レンハーは・・・
 赤の手先だ・・・・」

「な・・・
 なに・・・」
 男達は・・・
 目をやや泳がせ、みな、驚愕した。

「な、なんだって?
 赤の手先?」
 ビュッツが泡を食って言う。


 カンは、ようやく緩んだロジーの手をどかしもせずに、そのままの姿勢で言った。
「おかしいと思わなかったか?
 あのハーギーに行ってくれと言ったのは確かにブナンだ。
 だが、帰って来たレンハーの様子は、ここで一緒だった時のあいつと、同じだったと、思うか??」

「・・・・」
 しっかとしたカンの言葉を聞き、仲間達は・・・段々、怒りの顔色が不安の相へ変わってきた。

「しかし、実は、確証はない・・・
 もしかしたら、本当は、仲間だったのかもしれない・・・
 だから、俺は間違っていたのかもしれない」
 カンは、ちらり、とブナンを見た。

「ブナンは悪くないのだ。
 俺が表立つと、まずいから、立役者を頼んだのだ・・・」

 ブナンは、カンの視線を受けると”ニルロゼの剣”を、中で2回転させ、言い放った。
「そうとも。
 あいつが、手先になったかどうかなど、誰もわからない。
 だが俺は、カンに一杯喰わされた。
 だから、だまされる俺も悪いってわけさ」
「ブナン!」
 カンは、思わず大男の方へ向き直った。

「違う!
 あんたは悪くない・・俺が先入観を植え付けたから・・・」


 ここまで来て、エグゾが呆れた声をだした。
「で、確証もなく仲間を斬った、と。
 それじゃあ、この俺も、斬られてもおかしくないな」
 そしてカンの方に歩み出る。
「どうだ?
 そういう事にならないか?」

 エグゾの肩に・・ジューロが手を置いた。
「いや。
 レンハーは、赤の手先だ」
 エグゾは今度はジューロに叫んだ!
「なぜ判る!」

 ジューロは、ブナンの持つ、ニルロゼの剣に指を刺した。
「あれは、ニルロゼの剣ではない」

「なに?!」
 エグゾ、ロジー、ビュッツが声を出した。



「よくよく見れば、判る。
 幅が広いし、”使った跡”がない」
 ジューロは、ブナンの方に行き、”ニルロゼの剣”を受け取った。
「ニルロゼの剣は、もう少し幅が狭いし、もう少し弧を描いている。
 これは、違う剣だ・・・」
 ジューロは深い緑の瞳を剣に落とすと、美しい剣の腹に、指をあてがった。


 ロジーが・・・こぼすように言った。
「・・・違う剣?
 それが、レンハーが手先だと判る理由なのか???」
 ジューロは頷いた。
「勿論だ。
 お前ら、ニルロゼの剣を、きちんと見たことがないだろう?
 だから、この剣を、あいつの剣だと思った・・・
 だか、俺はあいつの剣を知っている。
 これは、違う」

 エグゾが・・・カンを穴を開くほど見つめた。
「・・・・
 レンハーは・・・・
 ニルロゼの剣を知らなかったというのか・・・」

 カンが、頷いた。
「そうだ。
 あいつは、ニルロゼの剣をきちんと知らないはずだ。
 ニルロゼの剣は、だれもが興味を持つ・・・
 だが、細部までは知らない」


 カンは、ジューロを見て笑った。
「だから、途中でお前が気が付いて、違う剣だと言ったらどうしようかと、冷や冷やしたよ!」
 エグゾが、まだムスッとしながら言った。
「だが、ニルロゼの剣に興味を持たないという理由で、赤の手先と言い切れない・・」

 カンは、ジューロから剣を受け取った。
「いや、かならず持つ・・・」
 カンは、瞳を細めた。
「赤は、ニルロゼが斬ったのだから・・・」



 びゅう・・・
 冷たい風が男たちの間を吹いて行った。

「エグゾ。
 お前の言うとおり、あまり、確証がないまま、仲間を斬った。
 俺の勝手な判断なんだ。
 俺を斬れ」

 エグゾはカンを見据えていたが・・・
 震える右手を、下ろした。
「自害する勇気がない奴を斬るくらい、俺は廃れていないな」
 エグゾは吐き捨てた。

「で、ビュッツ、ロジーはどうだ?
 この裏切り者を、斬るか?」
 エグゾの言葉を受けた他の二人も、黙っていた。


「カン・・・
 この剣は、なんだ、一体・・・」
 エグゾは、再度歯を鳴らして言った。
「すごく似ている・・・
 レンハーを騙すために作ったのか?
 だとするには、よくできすぎている・・・」

 カンが、答える前に、ジューロが言った。
「なに、どうせ、ニルロゼが、東の鍛冶から貰ったんだ」
「なんだと?」
 エグゾを見ずに、ジューロが笑った。
「考えて見ろよ。
 ニルロゼはいつも、二日の時間を赤から貰っていた。
 その時間を使って鍛冶の所へ行っていたんだろう?
 だが、今回はあいつ、たしか五日くらい、時間をかけている。
 見たこともない、カンという男のために剣をくれと、必死に鍛冶に食いついていたんだろうよ」
 ハッと笑い、エグゾはカンを見た。

 ブナンが、ゆっくりと二人の間に割り入って、カンに剣を手渡した。
 ブナンが言った。
「みんな。
 よく考えるんだ。
 最初、レンハーは、なんと言った?
 ハーギーが”燃え続けている”と言ったはずだ。
 なのに今日になって、燃えていないところもある、と言った」
 ブナンは、一際高い声で言った。
「そして、あいつは”必死になって”逃げてきた、と言ったはずだ。
 なのに今日になって、残りのハーギーに追われるのが怖くて、なかなか出られなかった、と言い出した」
「・・・」
 男達が静かになった。
「どうして話が食い違ったか、判るかな?」
 ズシリと厚みのあるブナンの言葉に、誰も答えられない。

 ブナンは、じっくりと言った。
「昨日、カンは、ニルロゼに言われたそうだ。
 ハーギーは燃えていない、大人も出てこない、とな・・・」
 はっ、とエグゾの顔色が変わった。
「・・・話が違っているわけか・・・」
 ブナンが頷いた。
「その通りだ・・・」


 カンは、剣を抜いた。
「その話。
 あいつのでっちあげだろうよ・・・」
 剣に朝の光が反射した。
「ジューロの言うとおり、あいつは・・・
 見たこともない、カンという男のために剣をくれと、ずっと鍛冶のところにいたに違いない。
 あいつの作り話さ、ハーギーのことは・・・」

 ブナンが話を引き継いだ。
「ニルロゼが、カンを試してみたのよ・・・
 わざと、違う話を出して、レンハーをどうするのか、な・・・」

 ブナンは、分厚い腰に両手をあて、脇の青年に言った。
「あんな子供に試されるとは、ずいぶん堕ちたものだな、カン」
 ジューロが横から言った。
「カンに騙されるブナンはどうなるんだか?」
「おお、これは痛い痛い・・・」
 くっくっく、とブナンは笑った。


「エグゾ、ロジー、ビュッツ、まだ、不満はあるかもしれないが、俺の顔を立ててくれ。
 俺が信頼している男だ、間違いないだろう・・・」

 エグゾが、ケッと応えた。
「ブナンに勝てる訳がない。
 そんな勝負は、受けないね・・・」






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Last updated  June 19, 2010 08:11:29 PM
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月夜見猫 @ 愛するケーナさまあはあと! おはようございます☆ >いつも本当にあり…
月夜見猫 @ オスン6757さん おはようございます。 >いつもありがと…
月夜見猫 @ もぷしーさん★ おはようございます。 >今まだうろうろと…
風とケーナ @ Re:「フィギアスケート選手を応援しよう!」(02/18) 月夜見猫さま、こんばんは♪ いつも本当に…
オスン6757 @ Re:「フィギアスケート選手を応援しよう!」(02/18) おはようございます。 いつもありがとう…

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