Accel

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December 26, 2013
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 白い世界だ・・・
 また、今日も。
 わたしは、来ていた、てきとうの世界に。

 これまで、数度となく、人世に行き・・
 人々の嘆きの言葉を受けてきた。
 この世に神はもはやおらっしゃらぬ。と・・・

 そして、わたしの見る彼らの世界もまた、神の無い世界をまさに描いたようなものだった。
 不気味なものに、ある者はさらわれ
 あるものは たべられ

 あるものは にくしんをうしない


 かみ・・・
 てきとうの、神よ。

 わたしが、今仕えている・・・
 この、白い光の世界の神・・・

 魂を導く神・・・

 てきとうの神の目に、人の世界はどう映っているのだろう。


 神は
 人の世に
 直接かかわれないのか
 わたしが、戒の力を

 いざなった。

 戒・・・



 わたしは、瞳を細めた。
 しかし、見えるのは、ただ白くたなびく景色だ。

 下か?
 全くわからないが

 なんとなく、上、かな、などと、思ってみる。


 戒の根源を見つけたのだ。
 あとは、そこを潰すのみだ。
 ・・・
 みつけた以上は
 根こそぎ、消滅させてみせる。
 わたしのすべてをかけても


 わたしは、ただ、白い風にふかれていた。


「?」
 先ほど、てきとうの神と相対し
 これから、人界に戻ろうと思っていた。
 また、光が、近づいてくるようだ。

「・・・ちいさき神。
 あなたですか」
 わたしは、少しだけ、うんざりして、小さい光に見入った。

 どうも、このごろ、このちいさい神に・・・
 わたしは、勝手ながら、恐れを抱いていた。
 いや、違う・・
 自分を恐れていたのだ。
 この神に魅かれていく自分に・・・


「戒のちからが、どれほどか、わかりませぬ。
 ですが、全力で挑むのみ」
 わたしは、光から目をそらして、できるだけ離れるようにした。

   ウーーー・・・

 ちいさい神が、ちいさく言っている・・・・

「ちいさき神。
 では、わたしは参ります」

   ウーよ・・・

「・・・・」
 わたしは、目を瞑って、人界に戻るよう、精神を集中させた。

   ほんとうに
   おおいなるかみの
   ちからは
   いらないのですね

「いりません!」
 叫んだ!

   ・・・

 はやく、はやく、
 この世界を後に・・・

   では・・・
   なにかのときはわたしの・・・

 「・・・??」
 ちいさき神の言葉を最後まで聞かずに・・・
 わたしの意識が、魂が・・・・
 人界へと、向かっていく。

 白い色から
 だんだんと
 沢山の色にいろどられ


 わたしは、人界に戻った。




 水色を基調とした、美しい部屋で・・・
 じっくりと鏡に見入っている人物が居た。

 いつもは髪は頭の上に結っているが、今日は結ぶのも面倒な気分だった。
 くせのある波がかかった髪は、あちこちに跳ねていて・・・
 なんだか、冴えない顔が、ますますみすぼらしい感じさえする。

 扉が、叩かれている。
「どうぞ」
 やや、怒った声で、その人物は言った。
「お待たせしました、姫!
 ただいま、戻りました!!!!」
 爽やかで透き通るような、優しい声が響いてきた。
 しかし、やや、緊張しているようである。

「まあ・・・ビアル・・・」
 髪をバサバサにしたまま、姫、は振り返った。
 美しい少年ビアル。
 そして、あまり美しい、とは言いがたいナイーザッツの姫、リュベナ。
 そして・・・
「リュベナ。
 馬、ありがとう!
 とても助かったよ!」
 ビアルの後ろから、ひょい、と入ってくる、背の高い少年ニルロゼ。

 なんとも不思議な組み合わせの3人は、姫の美しい部屋の、美しい机に少年達が二人並んで座った。
 そしてビアルの向かいに姫が座って・・・いきなり、姫から変な言葉が飛び出した。

「ところでニルロゼ。
 探して来てとお願いしたものは、持ってきてくれたのかしら・・・・」
「え?」
 蜂蜜色の瞳の少年は、首を傾げた。
 なんのことだろう?



 ナーダのところから帰ったニルロゼは、城に、これまでにない、なにかの力の持ち主の雰囲気を感じ、やる気満々であったが、いざ城の内部に入ると、あの雰囲気が嘘のように消え去ってしまっていた。
 後で探してみせる、と思いつつも、最も怖かったのは、リュベナの事だった。
 リュベナが、「どっちの部屋にいるか」が、ひじょおおおおおおおおおに、心配であったのである!

 そして、リュベナは・・・・
 水色の部屋に、居た。

 その事は、ビアルもとても安堵している、ように、見える。

 だが、ちょっと今日のリュベナは、水色だが・・・
 ・・・・
 びみょーに、”赤っぽい”ような、気も、しないでも、ない。

「お願いしたもの」
 って、なに?
 と、言う前に、ビアルがニルロゼの膝を抓って言った。
「はい、お持ちしました」
 にこり、と美しく笑っている!

 び・び・びあるううううう!!!!!
 な、なに考えてんだ!
 つか、なにを持って来たってんだ!!!!

 青くなって汗をかくニルロゼなどおかまいなし、ビアルは、外套の裏から、なにかを取り出した。
 薄い木の板である。
 ビアルがそれを上下に二つに分けると、中に白い花・・・
 それは押し花にしてあった。

 姫は、ビアルからそれを受け取ると、ニルロゼに瞳を向けた。
「そうそう。
 これよ。
 本当にわたくしの気持ちがよく判っているのね・・・
 じゃあ、ニルロゼ。
 あなたに、褒美に、あの馬を、あげます」
「は!?・・・っ」
 最後に小さく悲鳴を上げるニルロゼ。
 また、ビアルに抓られた。
「よかったですね、ニルロゼ」
 ビアルは、恐ろしいほどに美しい笑顔で言った。


 ”功績者”とゆっくり話をして下さい、と、ビアルは部屋を出てしまった。
 ニルロゼは、なにがなんだかさっぱり判らなかった。
 だが・・・どうやら、姫が・・・
 あの馬を、自分にくれたのだ、というのは、段々わかってきた。

 探して来て?
 なんて、言われただろうか?

 俺は、俺が探したいものがあると言ったはずで、逆のことは言われていない。

 そしたら、姫が馬を貸してくれた
 なのに?

 馬を・・・?


 そしてやっとハッとした。
 そういえば、ビアルは・・・
 王や、姫や、町の人から、”なにも受け取っていない”のだ。

 だから、今まで、姫は・・・
 ビアルにやりたくても、やれなかった・・・・

 だが、”俺に”なら?

 なにも受け取らないビアルにやれないが、俺になら・・・

 ・・・・


 ニルロゼは、茶を入れている姫の後姿を見ていた。
 今日は髪を結んでいないんだな、と、ちらり、と、思った。



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Last updated  December 26, 2013 06:59:56 PM
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月夜見猫 @ 愛するケーナさまあはあと! おはようございます☆ >いつも本当にあり…
月夜見猫 @ オスン6757さん おはようございます。 >いつもありがと…
月夜見猫 @ もぷしーさん★ おはようございます。 >今まだうろうろと…
風とケーナ @ Re:「フィギアスケート選手を応援しよう!」(02/18) 月夜見猫さま、こんばんは♪ いつも本当に…
オスン6757 @ Re:「フィギアスケート選手を応援しよう!」(02/18) おはようございます。 いつもありがとう…

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