2015年05月19日
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独自の「正義」を貫く「ヒーロー」を描く
アウトロー
JACK REACHER


■監督 クリストファー・マッカリー
■出演 トム・クルーズ/ ロザムンド・パイク/ リチャード・ジェンキンス
    デヴィッド・オイェロウォ/ ヴェルナー・ヘルツォークス


- INTRO -
□■■
「ヒーロー」を語る時は
「正義」に付いて語る事を避けて通る事は 出来ない訳ですが

例えば
日本でも人気の海外アクション・ドラマ『24 -TWENTY FOUR-』での
悪を叩きのめす為には法をも無視するジャック・バウアーの活躍には

「ヒロイズム」を感じても「正義」に付いて疑問が残る様に
行為の帰結の評価のみでは語り切れ無いものがあります


又、「正義」に付いての考察は 日本でも2010年にベストセラーになった
ハーバード大学教授の哲学者 マイケル・サンデル著
『これからの「正義」の話をしよう』が話題になり
大きく取り上げられた事がありましたが

その中の「殺人に正義はあるか否か」という項目では

5人の人物を救う為に1人を犠牲にする場合の
行動の帰結によって決まるケースや

犠牲になったのが当事者で無かったり
第三者の独断によっての行為の場合 など

多数の要求は少数の要求に勝るという定理のみでは論破出来無い様な
「正義」について語られていても「ヒロイズム」とは別の所にあると言った

行為の帰結よりも 行為の本質が問題になるケースが語られ

これだけでも「正義」の価値基準が絶対的なものでは無く
相対的な価値観上に成り立っているものという事が分かり

「正義」と「ヒロイズム」には
共に単独で成立する 価値基準を持つ原理でもある事が 見て取れます



■□■
マイケル・サンデル教授の著作本がベストセラーになると言うのも

実際にアメリカが攻撃された「911同時多発テロ事件」以降の世界の
急激に激変した世相において

情勢が変わると同時に効力を失う様な価値感を持った中で
目的を見失い模索する現代人にとって

新たな価値基準に基づく世論の需要という印象がありますが

「正義」について考える事は
価値基準が常に変化する社会において 正解の無い決断を迫られる時に
哲学、論理について考える事にも繋がる様です


一方で「ヒロイズム」の様に
行為に称賛を得るものがあるのか否かという
帰結の是非を求める価値基準を持つものの場合は

相対的な価値観上に成り立ちながら
極めて民主的な価値基準に則った判断で選出される
規範的概念 とも呼べる側面を持った原理でもある様です☆



■■□
道徳心と照らしあわせた時にこれらの価値基準が揺れると
多くの場合 人は懐疑的となり 世の中への批判へと物事が進む様ですが

ここでは「ヒロイズム」と「正義」の価値基準のみに着目している為
懐疑主義やイデオロギーにまで思考を進めるのは主旨と異なり
論旨の枝葉を拡げる様な事はしませんが


「正義」と「ヒロイズム」を同線状に捉えて
問題の解決の糸口としての価値を求めるよりは

ジャック・バウアーが非を全力で認める様に

答えの無い問題の存在を自覚しそれが何処へ向かうのかを 自分の目で捉え
安易なグローバリゼーションに陥らない様な

自分が所属する社会が世界に対してどの位置に占めているのか
認識を高める事を促し 他の社会を認め共に歩む姿勢を持つ指針として

「ヒロイズム」と「正義」の価値基準に着目する事が
より意義のある事の様に 思われます☆


□□□

という訳で今回は

本作のマッカリー監督とは
この夏公開を控えた『M:I5』で再びタッグを組んだ
トム・クルーズが主演する サスペンス・アクション

『アウトロー』をご紹介します



- STORY -
ある日、ピッツバーグ近郊で男女5人が犠牲となる無差別殺人事件が発生
現場に残された証拠から、元米軍スナイパーのジェームズ・バーが逮捕され
事件はスピード解決したかに思われた
ところが警察の尋問にバーは黙秘を続け、“ジャック・リーチャーを呼べ”と謎のメモを残した後
護送中に瀕死の重傷を負ってしまう
やがて警察のもとにやって来たリーチャーは
事件の背後に危険な陰謀の臭いをかぎ取るのだったが…。(allcinema)


- 解説 -

本作は 英国の作家リー・チャイルドのベストセラーシリーズの
ハリウッド・スタートム・クルーズ主演による 鳴り物入りの映像化で

リアルで生々しい格闘シーンや 理に適った戦術的銃撃戦に
トムも自ら行ったカーチェイス・シーンなど

アクション映画としての見所が満載になった作品ながらも
『M:I』的ハリウッド・エンタメ系のド派手な演出は鳴りを潜め

主人公ジャック・リーチャーを中心にした
それを取り巻く人物達の行動に視点を定めて

何者にも屈せず恐れ知らずな主人公の行動に潜む真意と
謎に包まれた闇を浮かび上がらせるという

トム・クルーズの新境地を開いた 玄人向けなサスペンス映画です


■□■■
無差別テロの実行犯と違う人物が逮捕される事で
始めから冤罪だと分かる導入や
中途なタイミングで 黒幕のボスが登場したりと

ミステリー作品ながらも犯人当て要素は無く

主人公リーチャーにしても 何者にも屈せず 法にも囚われ無い
目的を達成する為に手段を選ばないという行動理念に付いて

「強固な信念」という他は一切触れないで

昔の西部劇「ヒーロー」の様な
人間離れして やられないという「凄腕な謎の流れ者」として
主人公の人間性が見えて来ない
設定上の実態の無い人物の様に描いていますが


方法は問わず、正義を行う事のみを目的とした
常人離れした執念にも近い実行力の裏に潜む

闇の様な凄みを描く事に集中した脚色の意図がある様に思われ

法では裁け無い悪を葬る正義の執行人という立ち位置にある
どんな場合も行動にブレが無い無敵の謎の男リーチャーを

2転3転する物語の「くさび」として中央に添える事で

物語が進むに連れて 共演の人物達の印象が徐々に変化を帯び
実像が炙り出される と言う構成によって

「ヒーロー」そのものにスポットを当てずに
相対的な枠組みで 無敵の「ヒーロー」像を浮かび上がらせ

かつての西部劇の様なストレートさを体現した
21世紀のエンタテイメント作品と言える意欲作に仕上がった様に感じました


一方で、

2億ドルもの収益を得たブロックバスター級作品ではありましたが
誰もが想像する様な未曾有のハリウッド的カタルシスを感じる
映画では無いという印象から

トム・クルーズのカリスマ性によって成功したという
玄人好みの一般ウケしない犯罪スリラー映画という評価にも繋がった様でした



■■□■
本作の脚色は『ユージュアル・サスペクツ』で
アカデミー脚本賞を受賞したクリストファー・マッカリー監督によるもので

冒頭では狙撃犯がスコープを覗く目線の画面と
狙撃の犯行のみで 犯人の思考を表現し

トム・クルーズ演じる謎めいた主人公にも多くを語らせず
行動で思考を表現させ

助演のキャストには饒舌なセリフ回しで事件の片鱗を語らせながら
多くを描か無い造りに徹し

物語の全容と奥行きを 想像させながら
映画全体に漂う闇の深さを象徴させるという

有機的にミステリーを体感させる狙いで描かれた脚本という印象があります


一方で、
主人公が何者でどういう人間なのかというプロットは一切無く
作品に感情移入が出来き無いという大きな難点があるのですが

監督のコメントに

街に現れた風来坊が悪漢を退治して去って行く
西部劇の謎のヒーロの様に描いたとある様に

ある種のチープさは承知の上での 大胆な方針だった様で

描かれる舞台をリアルで緻密なものにして
主人公の人間像よりも 行動の思考を表現する演出に徹し

悪を追い詰める執念を浮かび上がらせる事で

主人公が抱く「正義」感を
巨大で揺るぎ無いものとして表現する方に 狙いがあった様に思わました


■■■□
ネット社会以降 社会のルールが相対的評価に変わり
表題を満たす事無く トップが取れる様になってからは
競争が純化へ向かう環境へと変化し

資本主義の論理が 収益では無く 成績や出世に転化すると言った
その様な知的層で上層部が占められた社会では

情勢が変わると同時に効力を失う価値基準で占められているが為に

リーマン・ショックの様な事件が起こるべきして起こる様な
社会の問題がある訳ですが


独自の価値観を持ち既成の概念に囚われ無く、法にすら縛られない
ある種 目的に対して手段を選ば無い冷徹な人物が「ヒーロー」として描かれる
この様な作品が登場するのも

脆弱な価値基準で占められた迷える社会に置いて
言わば時代の要求とも言えるものでもあり


本作で描かれる悪人の1人がエリート層の末路であるというのも
社会の 病理を感じさせるものとして

本作が一般よりも批評家筋で評価が分かれたというのも
ある意味頷けるものがあり

この様なタッチの「ヒーロー」作品を認められるか否かという
社会の度量を測る分水嶺を見る様な

非常に興味深いものを感じる作品でもある様に思いました☆




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コレが出た時タイトルをパクった
本が出たのだけれど
内容がガチの場合
マイナスですよねえ~w


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最終更新日  2015年05月19日 18時46分48秒
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