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2005.03.15

ぼくのセーラー服

(8)

カテゴリ：その他雑記

　今日で中学を卒業してからちょうど１５年たったのだと思い出しました。セーラー服を着て毎日戦い続けながら中学時代後半を過ごした私にとって、卒業には特別な思いがありました。

　中学２年の夏、父の仕事の関係で４年を過ごしたドイツから帰国しました。普通のパターンだと「帰国子女はいじめられるから」という理由で帰国子女学級のある私立中学に編入させるご両親が多いのですが、私の両親は「普通の世の中を見たほうがよい」という理由で私を地元の公立中学に転入させました。

　転入して１週間も経たないうちに、中３の先輩３人に「生意気だ」とののしられ、木刀で脅されながら女子トイレに連れて行かれて、いわゆる「リンチ」を受けました。私はふつうに過ごしていたのですが、皆の目には「帰国子女」の行動は吊るし上げに値するものだったようです。そしてクラスメイト達は報復を恐れて、転校生を見殺しにしました。この事件は偶然トイレの前を見回っていた先生に発見されて、先生達立会いの下に公式に「仲直り」の会談がもたれました。私の両親も先生達と話し合いを持ちました。

　けれども、私にとって苦痛だったのはこのリンチ事件そのものではなかったのです。事件の直後、私は担任に訴えました。
「私を見殺しにしたようなクラスでこれ以上過ごすなんていやだ」
「私は普通に振舞っているのに、なんで変な目でみられなくちゃいけないの？」
　私が質問を並べると、担任はつらそうでした。彼は言いました。
「教壇に立ってるとな、４０人近くの生徒の顔が見えるねん。その中でお前はやっぱり目立ってしまうんや」
「・・・・・・」

何て言うかな、もしクラスで平和に過ごそうと思うんやったらお前ももっと
目立たへんように『要領よく』ふるまうことができたらええって思うんんやけど・・・」
私はかっとなりました。
「それって要するに、私の個性を殺せっていうことでしょ！？
そういうふうにしたら、私は私じゃなくなるじゃないですか！？」
　私の言葉に悲しそうな顔をした先生の顔を見て、１３歳の私は「ああ、先生も大変だな」と思いました。

　私は自分であり続ける為に、ひとりで戦うことを選びました。
　授業中には冷たい視線を浴びながらも、手を挙げてハキハキと発言し、困難な数式を使いこなし、帰国子女の発音で英文を読みました。クラスメイトのほとんどとは口をきいてくれませんでした。田舎の中学だったので、珍しい帰国子女に対する羨望・妬み・好奇といった視線を毎日感じました。しかし、私は自分を殺してまで「おトイレ一緒友達」を作ろうとは思いませんでした。
　登校拒否は絶対にせず戦い続ける、と決めていてもつらい日もありました。両親に「あんな学校はもういやだ」と泣きわめき、夜中の１時頃まで話し合ったこともたびたびでした。朝起きて制服に袖を通すとき、「ああ、今日も戦いが始まるのか」と思いました。

　セーラー服は私の戦闘服だったのです。

　中学卒業は誰にでもできることだけれど、私にとっては勝ち取ったものでした。
　大人になってしまった今も、時々あの頃のことを思い出します。

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