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2005.06.06
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カテゴリ: 米外交史
▼密談
 ジャック・アンダーソンによると、ケネディが暗殺された翌日、新しく大統領に就任したリンドン・ジョンソンとジョン・マコーンCIA長官が極秘に緊急会談した。その場でマコーンは、CIAによるマフィアを利用したカストロ暗殺計画(メモ4参照)が失敗したことや、オズワルドが暗殺の2ヶ月前にメキシコシティのキューバ領事館を訪ねていたことをジョンソンに話した。そして米国の暗殺計画に怒ったカストロが、オズワルドか、ケネディの政策に反感を抱き寝返ったマフィアを使ってケネディに報復したように思えると話したというのだ。

 マコーンはさらに「もしこのことを国民が知ったら、国民は激怒し、カストロに制裁を加えろと叫ぶだろう。また、もしカストロに対して報復したら、既に1年前にキューバからのミサイル撤去という政治的屈辱(メモ5参照)を経験しているソ連の二キータ・フルシチョフ第一書記(首相)は、クレムリンで非常に難しい立場に立たされる。つまり、今ここでキューバに軍隊を派遣しようものなら、フルシチョフはもう妥協しないだろう。核のボタンを押すことになるかもしれない。だから大統領。私のアドバイスは、カストロの件は伏せておくことです」とジョンソンに伝えた。

 ジャック・アンダーソンの説明は続いた。この会合の後、ジョンソンはエドガー・フーバーFBI長官を呼び、ケネディ暗殺の捜査に当たっては、カストロは事件に関係ないことを前提に進めるよう命令した。ジョンソンは、これは米ソによる核戦争を防ぐためだと説明、フーバーはこれに従った。このため、FBIは、カストロと暗殺を結びつけるような情報は極力排除、オズワルド単独犯行という結論が出るような捜査結果のみを意図的に委員会に報告した。
(続く)

(メモ4=カストロ暗殺計画)
 現在公表されているCIAによるカストロ暗殺計画は、60年8月まで遡る。CIAのリチャード・ビッセル計画局次長が部下のシェフィールド・エドワーズ安全保障担当部長にマフィアを使ったカストロ暗殺計画を打診したのが始まりだ。ビッセルとエドワーズは、ボツリヌス菌を染み込ませた葉巻をカストロに吸わせることを考案したり、マフィアに対して、カストロ暗殺に成功した者には15万ドルの報償を与えると約束したりしている。61年4月のピッグス湾事件の失敗で、一時は暗殺計画も中断したかに思われたが、その後もCIA側の担当者が替わりながら、マフィアを介在するカストロ暗殺計画は継続。カストロの食事に毒を入れる計画やマフィアの暗殺団をキューバに送り込む計画などが実施されたが、いずれも失敗している。

(メモ5=ミサイル危機)
 いわゆるキューバを舞台にした1962年10月のミサイル危機のこと。キューバ危機ともいう。10月22日、ソ連がキューバに中距離ミサイル基地を建設していることを空中偵察で知ったケネディ大統領は、ソ連に撤去を要求。艦艇183隻、軍用機1190機を動員してキューバを海上封鎖すると同時に、西半球に対するキューバからのミサイル攻撃は、ソ連の米国への攻撃と同じとみなし、ただちに報復攻撃をするという態勢をとったため、緊張が一挙に高まり、一時は米ソ核戦争に突入する可能性のある危険な状態になった。国連緊急安全保障理事会での交渉や非公式の会談を通じて、ケネディはフルシチョフにキューバ不侵攻を約束し、フルシチョフは同月28日、ミサイル撤去を発表、核戦争の危機は回避された。この結果、米国ではケネディの勇敢な決断力が地球の危機を救ったとして、ケネディの株が上がる一方、ソ連では核戦力と海軍力の立ち後れが再確認され、64年10月のフルシチョフ失脚の遠因になったとされている。





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最終更新日  2005.06.06 10:35:37
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