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2007.10.09
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テーマ: いい言葉(573)
カテゴリ: 文学・芸術
バラとしての生き方

孤高

恋を貫いて死ぬか、それとも愛してもいない男と結婚するか、と迫られたハーミア。アセンズ(アテネ)の公爵シーシアスは、そのようなハーミアに、親に従うように迫ります。
その場面です。

THESEUS
Either to die the death or to abjure
For ever the society of men.
Therefore, fair Hermia, question your desires;
Know of your youth, examine well your blood,
Whether, if you yield not to your father's choice,
You can endure the livery of a nun,

To live a barren sister all your life,
Chanting faint hymns to the cold fruitless moon.

die the deathで、「死刑に処せられる」の意。abjureは絶つ。the society of menは「男性との交際」というような意味でしょうか。親に逆らった場合にも二者択一があり、死刑か、それとも一生涯、男を寄せ付けないか、の二つがあると言っていますね。
その上で、5行目のwhether以下に書かれていることに耐えられるかどうか、自分自身に尋ねてみよ、とハーミアに問いかけます。

6行目のliveryは制服、ここでは尼僧の着る墨色の服のことです。
7行目のfor ayeは、2行目のfor everと同じ意味で「永遠に」。cloister は修道院、mew’dは mewedのことで「閉じ込められた」、shadyと併せ「「薄暗い修道院の庵室に閉じ込められて」という意味になります。
訳は以下のようになります。

シーシアス
死刑になるか、それとも一生涯、男との交わりを絶つかだ。
だからハーミアよ、よく自分の気持ちに聞いてみるがよい。
お前はまだ若い。情熱の血がたぎっているではないか。

永久に薄暗い修道院の庵室に閉じこもり、
冷たくつれない月に向かって、か細い声で賛美歌を歌いながら、
生涯、子を産まぬ尼僧の人生を送ることになるのだ。
そのような人生を耐えることができるのか、よく考えてみよ。

シーシアスはさらに畳み掛けます。


To undergo such maiden pilgrimage;
But earthlier happy is the rose distill'd.
Than that which withering on the virgin thorn
Grows, lives and dies in single blessedness.

thriceは「3度の」「3倍の」という意味ですが、thrice-blessedで「非常に祝福された(恵まれた)」となります。thrice-blessedとtheyの間にareを補って読むと意味がわかりやすいですね。that以下はtheyを説明しています。master は克服する。so は「かくのごとく」、つまり先に描写したような尼僧の生活のことを差しています。bloodは情熱とか欲情という意味になるでしょう。

3行目のearthlierはearthly(世俗的な)の比較形です。より世俗的な幸せである、という意味ですね。何がかというと、the rose distill'dで、「蒸留されたバラの花」。つまり、バラエキス(香水)を抽出するために蒸留器にかけられたバラのほうが、世俗的にはより幸せである、となります。何よりも幸せなのかというと、that which以下のバラであると言っています。4行目のvirginには、人の手が入っていないという意味が込められていますね。live in single blessednessは慣用句で「気楽な独身生活を送る」の意。

訳は次のとおりです。

そのように情欲を抑え、処女のまま清らかに人生の旅路をまっとうする者は、大いに祝福される。
しかし、世俗的な見方をすれば、人に摘み取られることなく、ただ独り気楽な生の中で成長し、生きて、死んでいくバラに比べたら、摘み取られてエキスを抽出されたバラのほうが幸せなのだ。

かなり大胆な言い分ですね。人知れず野生の中で咲く孤高のバラよりも、愛でられるために、人間に手折られてエキスにされたバラのほうが幸せだと主張しています。あなたなら、どちらのバラを選ぶでしょうか。

ハーミアは次のように答えます。

HERMIA
So will I grow, so live, so die, my lord,
Ere I will my virgin patent up
Unto his lordship, whose unwished yoke
My soul consents not to give sovereignty.

2行目のereはrather thanと同じ意味。I would die ere I would beg(物乞いをするぐらいなら、むしろ死にたい)のように使います。patentは特許(権利)を与える。二行目は目的語と動詞の順番が入れ替わっています。I will patent my virgin up unto~(私の処女の特権をすべて~に与える)とすれば、わかりますね。upは動詞を強めて「すっかり~する」。3行目his lordshipは貴族に対する尊称ですから、殿方とでも訳しておきます。

ハーミア
いっそのこと、そのように成長し、生きて、死にたいと願っております、公爵様。私の魂が支配権を与えようと思わないような、望みもしない絆を結ぼうとする殿方に、私の処女を捧げるぐらいなら。

潔いですね。一切の迷いはないようです。ハーミアは孤高のバラを選びましたね。

実はこの部分、『真夏の夜の夢』の第一幕第一場、まさに最初のシーンなのです。いきなりハーミアに突きつけられた二者択一。ハーミアはどちらを選択するのかと、観客を一気に劇の中の物語に引きずり込みます。

このように二者択一には、かなりの劇的効果があります。シェークスピアの常套手段ですね。

ところでこの手法、文学の世界で使われる分には一向に構わないのですが、政治の世界で使われると非常に厄介です。ブッシュ米大統領は「われわれの側につくか、テロリストの側につくか」と扇動し、米国民と世界を戦争へと巻き込みました。私などは「どっちがテロリストの側だ」と、思わず突っ込みを入れたくなってしまいましたが、多くの人はあの戦争をテロとの戦いだと本当に信じてしまったようです。日本にも同じような政治家がいましたね。
二者択一は、物語をわかりやすくして観客を引き込みますが、とくに政治の世界で使われた場合は注意するに越したことはありません。

最後に一口豆知識。結婚式の披露宴でよく使われる『』は、メンデルスゾーンがこの『真夏の夜の夢』のフィナーレの結婚式ために19世紀に作曲したものです。そう、物語の結末はハッピーエンドでした。
(続く)





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最終更新日  2007.10.09 11:55:19
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バラの写真  
孤高の姿から、コンスエロを思い浮かべました。

シェークスピアの物語は、舞台で観ることがあっても、じっくりと読んだことがない気がします。いつかまとめ読みしたいなぁと思っていましたが、バラシリーズでお勉強して、馴染んでからにします(笑) (2007.10.09 13:55:22)

ふむふむ・・・・。  
katagiri41  さん
ブッシュが言うように「テロ」は単純でないかもしれません・・・・・。9・11テロがブッシュを始め、アメリカ政府の捏造!?という説もあり、ボクも半信半疑ですがありえない事ではない!と考えています。
(^-^)そんな事関係なく、のに咲く「薔薇」は美しいですネ♪^^ (2007.10.09 16:25:29)

Re:バラの写真(10/09)  
白山菊理姫  さん
ヤンチャリカ☆358さん
こんばんは。

>孤高の姿から、コンスエロを思い浮かべました。

コンスエロの目から見たサン=テグジュペリも面白いですね。フランスのインテリ社交界で苦労したコンスエロが選んだ道も、「孤高」だったのでしょう。

>シェークスピアの物語は、舞台で観ることがあっても、じっくりと読んだことがない気がします。いつかまとめ読みしたいなぁと思っていましたが、バラシリーズでお勉強して、馴染んでからにします(笑)

気楽にお読みいただき、何かヒントをつかんでいただければと思います。原文で読むのが一番面白いですが、訳文を読んで、気に入ったところだけ原文を読むという読み方もありますね。 (2007.10.09 21:55:27)

Re:ふむふむ・・・・。(10/09)  
白山菊理姫  さん
katagiri41さん
こんばんは。

>ブッシュが言うように「テロ」は単純でないかもしれません・・・・・。9・11テロがブッシュを始め、アメリカ政府の捏造!?という説もあり、ボクも半信半疑ですがありえない事ではない!と考えています。

陰謀説が真実であったとしても、私はまったく驚きませんが、仮に陰謀でないにしても、ブッシュは9・11を利用して、見事に戦争を世界中にばら撒きました。まさにアメリカ軍需産業の思う壺です。彼らは中東を一大マーケット、つまり一触即発の火薬庫にしたくてしょうがないのです。

そのために恐怖を作り出し、人々を支配・統治しようとしていますね。日本がそれに追随するのは、本当に愚かなことです。

>(^-^)そんな事関係なく、のに咲く「薔薇」は美しいですネ♪^^

人間の愚かな行いを知ったら、野に咲くバラにも笑われてしまいます。人類はもしかしたら、バラ以下かもしれませんね。 (2007.10.09 22:03:00)

『真夏の夜の夢』  
furafuran  さん
白山菊理姫さん、こんばんは。

このお話は、シェークスピアの中では、どちらかというと好きなものの1つです。

何冊か読んでいる中で、どちらかを選ぶということが、理解しがたいものもあり、選ばせる側の人柄を理解できないものもあります。

いつまで経っても武器がなくならない世の中なのは、扇動する者と、扇動される者がいるからで、舞台や本の中では実害はありませんが、現実の世では、裏側まで見るという事を個人でする必要がありますね。

今日出かけた書店に、題はきっと少し違いますが、内容的には「世界地図で見る争いが起きる理由」のようなB5サイズの1,2巻があり、少し立ち読みしましたが、なぜ争いがなくならないかを書かれると、辛くなりました。



(2007.10.10 00:04:03)

Re:薔薇シリーズ18(10/09)  
ほわいと さん
白山菊理姫さん、こんにちは。

本当に格調高いブログですね。いつも感謝しながら楽しませて頂いております。

9日、名古屋市千種区本山の「いまじん」書店より、「ムー」11月号を求めてまいりました。目次を見て、お名前を確認させて頂き、ワクワクしながら即、レジへ、これからゆっくりお勉強させて頂きます。 (2007.10.10 01:00:28)

Re:『真夏の夜の夢』(10/09)  
白山菊理姫  さん
furafuranさん
おはようございます。

>このお話は、シェークスピアの中では、どちらかというと好きなものの1つです。

野外劇場で観れば、ますます雰囲気が出る劇ですね。まさにお盆の夜に上演するといいかもしれません。

>何冊か読んでいる中で、どちらかを選ぶということが、理解しがたいものもあり、選ばせる側の人柄を理解できないものもあります。

変な作品もありますね。私がいちばん好きなのは、あのおどろおどろしい『マクベス』です。

>いつまで経っても武器がなくならない世の中なのは、扇動する者と、扇動される者がいるからで、舞台や本の中では実害はありませんが、現実の世では、裏側まで見るという事を個人でする必要がありますね。

最近は9・11が米政府の陰謀であったとの説に傾きつつあります。最初はまさかそこまではしないだろうと思ったのですが、その後の状況を見ると、やっていたとしても不思議はないですね。自国の大統領であるケネディを国家権力を使って抹殺するぐらいですから。

>なぜ争いがなくならないかを書かれると、辛くなりました。

本当に人類は愚行を繰り返しますね。マイケル・ムーアの映画の中で、あるロックミュージシャンが「米政府は恐怖で国民をコントロールしている」という趣旨の発言をしていたと記憶しています。恐怖で不安を煽り、戦争に駆り立てるという手口を、よく言い当てているなと思いました。 (2007.10.10 08:45:04)

Re[1]:薔薇シリーズ18(10/09)  
白山菊理姫  さん
ほわいとさん
おはようございます。

>本当に格調高いブログですね。いつも感謝しながら楽しませて頂いております。

文字が多いブログになってしまいました。読むのが大変ですよね。いつもお付き合いいただき、ありがとうございます。

>9日、名古屋市千種区本山の「いまじん」書店より、「ムー」11月号を求めてまいりました。目次を見て、お名前を確認させて頂き、ワクワクしながら即、レジへ、これからゆっくりお勉強させて頂きます。

お勉強などとおっしゃらずに、気軽にお読みください。ヤンチャリカさんは恐る恐る読んでいるそうですが、それが正しい読み方だと思います(笑)。

実は私も、よほどいい写真や記事がないかぎり、「ムー」は読みません。でも、世界の最新不思議情報や本の紹介は非常に役に立っています。 (2007.10.10 08:55:14)

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