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2010.10.08
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カテゴリ: 歴史箱
白山菊理姫は、多くの謎に包まれた神です。記紀神話でも、『日本書紀』に一度出てくるだけで、『古事記』にはいっさい登場しません。それに『日本書紀』に出てくるといっても、イザナギ、イザナミの神話の一書(別伝)として、何の説明もなく唐突に現われます。

イザナギは、死んだ妻のイザナミを黄泉(よみ)の国まで追いかけて行くのですが、見てはならないイザナミの姿を見たために、揉め事になってしまうんですね。
イザナギとイザナミが泉(よもつ)平坂(ひらさか)で言い争いになったときのことは次のように書かれています。

伊奘諾(いざなぎの)尊(みこと)がいわれるのに、「はじめあなたを悲しみ慕ったのは、私が弱虫だった」と。このとき泉(よも)守(つち)道者(もりびと)が申し上げていうのに、「伊奘冉(いざなみの)尊(みこと)のお言葉がありまして、『私はあなたともう国を生みました。どうして更にこの上生むことを求めましょうか。私はこの国にとどまって、ご一緒には参りません』と」このとき菊理媛(くくりひめの)神(かみ)が申し上げられることがあった。伊奘諾尊はこれをお聞きになり、ほめられた。ただし自ら黄泉(よみ)の国を見られた。これが不祥であった。それでそのけがらわしいものをすすぎ洗おうと思って、出かけて阿波の水門(みと)と速吸(はやすい)名門(なと)をごらんになった。ところがこの二つの海峡は、潮流がはなはだ速かった。それで橘の小門(おと)(日向)に帰られて、払いすすぎをなさった。

菊理姫について記されているのはこれだけです。日本書紀の編纂者にとってはよほど都合の悪い言葉だったとみられ、おそらくは「検閲」され、「菊理媛神」がこのとき何と言ったのかは皆目検討がつきませんね。ただ菊理媛神は、イザナギとイザナミの夫婦喧嘩を仲裁してしまうぐらいですから、かなり上位の神ではないかとの説もあります。

文献などの資料がほとんどないため菊理姫に関する定説はありませんが、古代東北アジアのシャーマンの系統ではないかとの説が有力です。民俗学者の中山太郎は、菊理媛神こそ「幽冥の境にある魂の言を、この世の人に伝える霊媒者」であり、日本最初の巫女ではなかったかとしています。鳥の羽根や翼を付けたシャーマンだったのでしょうか。そうならば、白山伊勢ラインがなぜ鳥ラインなのかも説明できそうです。

古代アジアのツングース系民族の「白山部」という氏族の中で生まれた「白頭山信仰」や「太白山信仰」が海を渡ったとの説もあります。菊理姫のククリとは「結ぶ」の意味で、天と地、男女、恋人、夫婦の不和、対人関係のトラブルの解消に大きな御利益があるとされていますが、「くくる」は「水くくる」で禊の意との解釈もあります。

ネパール語の「ククリ」(刀)と関係があるのではないかとの指摘もあります。『日本書紀』垂仁紀に、新羅の王子、天之(あめの)日(ひ)矛(ほこ)が渡来、帰化した記録が残っていることから、天之日矛の出身地である朝鮮半島の聖山「太白山」になぞらえたのではないかとの説もあります。また、「白」は東北地方の「オシラサマ」(一説に火事や地震など不吉な事が起こる前兆を知らせる神様)信仰にも通じることから、シャーマン的な山岳信仰と結びついていたことも考えられますね。やはり、菊理姫が巫女的な存在であったことを示しているのかもしれません。

この白山神社が非農耕民系の村に多いことにも触れておきましょう。つまり、農耕民系の弥生人ではなく縄文人の信仰と深く結びついていることが推察されるわけですね。神道家の金井南龍(故人)が『神々の黙示録』(徳間書店)の中で「天皇家が白山一族を滅ぼして奴隷にした」と指摘しているように、現在白山神社がある場所に住み、白山を信仰していた非農耕民系の人々は、ちょうど両面宿儺の伝説と同じように「逆賊」として、大和朝廷に滅ばされて奴隷にされたのではないかとも思えてきます。そして原日本人(石器時代から縄文時代後期までに日本に渡来、もしくはすでに住んでいた人々)の歴史は改ざんされ、もしくは抹殺されたのではないでしょうか。


(続く)





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最終更新日  2010.10.08 20:50:10
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