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2026年9月28日 若年層のがん「骨肉腫」、細胞増殖の暴走が原因か***東大チームが発表 治療への活用に期待思春期を中心とする若い世代で膝の近くに発症するがん「骨肉腫」は、骨を作る細胞で、増殖を制御する仕組みの破綻が原因の可能性があると東京大のチームが15日、発表した。老化研究をきっかけにマウスで病態の再現に成功。骨肉腫では遺伝子異常がみられるが、詳しい発症のメカニズムは不明だった。治療への活用が期待される。チームが老化に関わる特定のタンパク質を調べたところ、成長期のマウスの骨にも多く存在することに気付いた。骨を作り出す骨芽細胞が増殖する際、遺伝子の複製ミスが生じる恐れがある。このタンパク質はミスが残らないよう、骨形成にブレーキをかける仕組みに関わることが分かった。そこでチームは仕組みの破綻とがんとの関係性に注目。マウスで骨芽細胞の増殖を人工的に活性化し、さらにブレーキをかからなくしたところ、短期間で骨肉腫になった。肺への転移もあったという。骨芽細胞の増殖は脚の骨の端でも起き、膝での骨肉腫発症につながると考えられる。チームは老化をテーマに動物実験をしていた。整形外科が専門の大学院生が予定になかった骨の解析をしたことで、今回の研究につながった。山田泰広教授は「成果を新治療の開発につなげたい」と話した。>>>「痛いの痛いの飛んでけ~」は本当に効いていた!痛みを抑える触覚神経を特定• 「痛いところをさすると痛みが和らぐ」という身近な現象の神経メカニズムは未解明だった• 痛みを抑える働きをもつ触覚神経集団を世界で初めて特定し、その神経からの信号が脊髄で痛覚の伝わりを抑制することを明らかにした• 「痛いの痛いの飛んでけ~」の仕組みの解明につながる成果であり、触覚刺激を利用した新たな疼痛治療法や医療機器の開発への応用が期待される 「痛いところをさすると痛みが和らぐ」という経験は、多くの人に身近なものです。しかし、なぜ触れるだけで痛みが軽くなるのか、その仕組みはよく分かっていませんでした。動物も、人間と同じように痛みを感じたときにそれを和らげようとする行動をします。例えばマウスは、皮膚が傷つくとその場所を繰り返し舐めます。唾液中には細菌の増殖を抑える成分や熱を感じるタンパク質の働きを抑える成分などが含まれていますが、一方で、舌が皮膚に繰り返し触れる、つまり皮膚への触刺激そのものが痛みを和らげているのかどうかは分かっていませんでした。 九州大学大学院薬学研究院・高等研究院の津田誠主幹教授、大学院薬学府の末藤大智大学院生(当時)らの研究グループは、皮膚への接触による感覚信号を脊髄に伝える触覚神経の特定の亜集団を取り除くと、痛み刺激を受けたマウスがその場所を舐め続ける時間が長くなることを発見しました。研究グループは、この現象から、この触覚神経には痛みを抑える能力があり、それがないために痛い場所を舐めても痛みを抑える働きが弱く、痛みを十分に和らげようと長時間舐め続けているのでは考えました。そこで、この仮説を実証することで「触れることで痛みを軽くする感覚神経」を特定できると考え、この触覚神経だけを人為的に刺激したところ、皮膚への痛み刺激で発生した信号の伝わりが脊髄で弱くなり、痛い皮膚を舐め続ける時間も短くなりました。今回の発見は、これまで謎であった痛みを抑える触覚神経が初めて特定され、「痛いところをさすると痛みが和らぐ」という、私たちにとって身近な現象の仕組みの一端が明らかになりました。将来的には、触覚刺激を利用して痛みを抑える新しい治療法や医療機器の開発につながることが期待されます。 本研究成果は米国の科学誌「PNAS」に2026年7月15日(水)(現地時間)に掲載されました。###+++概要皮膚で発生した痛覚信号は脊髄を介して脳へ伝わり「痛い」と感じます。痛いところに触れると、触覚神経を介して脊髄で痛覚信号を弱め、痛みが和らぎます。研究者からひとこと『手当て』という言葉があるように、痛いところに触れると痛みが和らぐことを私たちは経験的に知っています。なぜ触れるだけで痛みが軽くなるのか、その疑問を説明できる仕組みのひとつを今回の研究から明らかにできたかもしれません。
2026.09.28
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2026年9月27日 教育なければ成長なし***東京・渋谷駅前のスクランブル交差点は外国人にとっては驚異的な場所と映る。あれだけ多くの人が歩いているのに、高齢者であっても、傘を差している人でも通行を妨げられることがない。日本人は無意識なのだろうが、教育システムに規則正しい社会行動が組み込まれているからだ。Hany Helal 2005〜11年にエジプト高等教育相兼科学研究相を務めた。11年にカイロ大学教授に復職単純に知識やスキルを身に付けるのが教育だとは思わない。教育システムは子どもたちの人格形成やライフスタイル、市民としての意識にも影響を与える。幼少期から教えられ、大人になると気づかなくなるような行動や生活規範こそが経済成長や社会のあり方を大きく左右する。たとえば、集団の中に困難に直面した人がいたとき、何も言われなくても周囲がサポートに入るといった無意識の行動が重要なのだ。アフリカが抱える大きな問題は人口の増加だ。若い労働力が増えることは経済成長にプラスになるといわれるが、私はエジプト高等教育相を務めていたころから、若者人口の大幅な増加は課題であると言い続けてきた。アフリカの生産年齢人口(15〜64歳)は今の8億4900万人から2050年には15億5600万人に増える。彼らが十分なスキルを身に付けており、何より社会的な行動や規律などをしっかり学んでいるかどうかが問われる。エジプトの教育は旧宗主国の英国の影響は受けていない。クリティカルシンキング(批判的思考力)や社会規範を重視する教育制度が根付いていたためだ。その伝統的な価値観が崩れたのは子どもの数が急激に増えたからだ。子どもの増加に合わせて学校を新設するのではなく、1クラスあたりの生徒数を増やした。エジプトは天然資源に恵まれておらず、やむを得ない面もあったが、一時は1クラスの生徒数が100人を超えていた。教育の質が下がったことで、学校に通うのをやめる生徒も少なくなかった。教育改革が進んだのは2000年代に入ってからだ。成長をけん引するイノベーションを生み出すために日本の支援で科学技術大学を新設することになったのがきっかけだった。エジプトの大学生が知識やスキルを学べるようにはなるが、それだけでは何かが足りないと考え、日本の高等教育や初等教育の調査を始めた。16年に日本と教育分野のパートナーシップを結んだ。初等教育から高等教育まで幅広く日本の制度を取り入れている。現在は社会連帯省が日本の幼児教育の調査研究を進めている。力を入れているのは「トッカツ」だ。日本語の特別活動に由来する言葉で、国際協力機構(JICA)の支援を得ながら、掃除や学級会を教育の現場に取り込んでいる。エジプトには生徒が自分で教室を掃除するという発想はなかった。トッカツを通じて公共の場を清潔に維持する責任感、協働して物事を進めていく姿勢を身に付けられると考えている。ただ、日本式の教育を100%コピーするつもりはない。社会的な行動や規律という価値観は普遍だが、文化はそれぞれの国によって異なる。エジプトの教育改革が軌道に乗っているのは日本のシステムをうまく調和させて取り込んだからだ。教育改革の成果が表れるまでにはかなりの時間を要する。行動や規律が当たり前のように定着するには少なくとも15年はかかるだろう。しかし、教育の質の向上や人材育成をおろそかにすれば、経済成長はいつまでも実現しない。教育によってエジプト経済が大きく変わるのは間違いない。出生率が下がり、1クラスの生徒数も40人程度に抑えられるようになった。土台をしっかり築けば、経済は自然に好循環を始める。多くの雇用も創出できるだろう。アフリカの要人取材には悩まされる。直前の時間変更が多いうえに大幅な遅刻やドタキャンまである。ルーズな対応には日本企業も困っているようだ。もちろん個人差はあるにしても、約束の時間を守るという意識が全体に希薄なのは間違いない。日本の高度成長の原動力となった人口ボーナス期がアフリカにやってくる。社会負担がかかる高齢者や子どもが少なく、働く世代の比率が上がり、生産・消費活動が盛んになるタイミングだ。しかし、時間通りに動かず、集団行動に不慣れな人材ばかりの国に普通の企業は投資するだろうか。若い労働力の増加は大量失業と背中合わせの関係にある。労働力は量より質過剰債務の返済に追われるアフリカでは教育予算を減らす国が少なくない。国連開発計画(UNDP)は利払い費が教育費を上回っている国が約8割に上ると指摘する。米欧による政府開発援助(ODA)の削減も痛い。アフリカの成長ポテンシャルが高いのは確かだが、投資や事業進出を考えるなら、労働力の質を見極める必要がある。
2026.09.27
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2026年9月26日米国250周年、試練の超大国4***「ひとたび国民の代表たる議会が大統領に明け渡した権力は二度と戻ってこない。これは後戻りできないメカニズムなのだ」2月に米連邦最高裁が違憲判決を出したトランプ関税訴訟。証言台で政権の理屈をまくし立てる米司法省の訟務長官サウアーの発言を何度も遮り、こう説いたのは、米大統領トランプが第1次政権時に指名した判事ゴーサッチだった。貿易赤字を解消するため国家の緊急事態の権限を拡大解釈し関税を発動したトランプ。本来関税についての権限を持つはずの米議会はそれを止められなかった。さらに議会の承認を得ないままベネズエラやイラン攻撃に踏み切った。トランプ関税は法解釈論争の末かろうじて止められたが、議会が大統領に対して劣勢という構図は変わっていない。遡ること約240年前、米建国の父たちはこうした事態がいつか起こることを予期していた。1787年6月、独立宣言の起草にも関与したベンジャミン・フランクリンは憲法制定会議で「行政権は拡大し、いずれ君主制に至る恐れがある」と予言した。米ジョージ・メイソン大の教授イリヤ・ソミンは「憲法の起草者たちは欧州の絶対君主や英国の王たちの歴史的教訓を学んでおり、行政の長が独断で税金や関税を課したり戦争を始めたりすることを許さないようにした」と指摘する。だが近年、大統領権限の強化を正当化する理由として注目される「単一行政理論(UET)」の主唱者たちは、自分たちの解釈こそ憲法起草者たちの意図に沿っていると主張する。米憲法は「行政権(The executive power)は大統領に属する」と記している。UET論者はこの「The」が「唯一」を意味し、大統領一人が行政府全体を支配する絶対的な権限があるとみなす。この主張が実現すれば、大統領が議会の意図を無視し、さらに司法の介入も許さず、法の支配の縛りから抜け出せる道が開けてしまう。憲法を起草時の意味で解釈する考え方は、現在の最高裁で多数派を占める保守派判事の特徴でもある。無論、複雑化する社会問題に対応するため、米国の世論が強いリーダーシップを求めてきたことも無視できない。建国の父のひとりで初代財務長官アレクサンダー・ハミルトンも大統領権限は「補強される必要がある」と提唱していた。「危険な権力の集中は一日で生じるものではない。ゆっくりと、しかし確実に、制約を無視する行為の積み重ねから生じる」。大統領トルーマンによる鉄鋼工場接収を巡る1952年の最高裁判決で、当時の判事フランクファーターはこう警鐘を鳴らした。近代国家制度の原型にもなった米憲法が内包していたリスクへの警告は現実になりつつある。強すぎる大統領の脅威 権力集中、揺らぐ三権分立が問題になるし、憲法の警告が現実に迫っている。
2026.09.26
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退院、でやっと退院だ。退屈な日々でであった。***米国との戦闘終結に向けた覚書に合意し、イラン指導部は高揚する。「邪悪な攻撃をしかけた敵は打ち負かされ、イランは偉大なる勝利を収めた」。国営テレビはガリババディ外務次官の「勝利宣言」を報じた。イランによる非対称戦は大国を翻弄した。近代兵器を数多く持つ米国やイスラエルとの圧倒的な戦力差を抱えるイランは報復の標的を湾岸アラブ諸国に向けた。ホルムズ海峡を事実上封鎖し、原油高を通じて世界経済に打撃を与える武器に使った。11月の中間選挙を控えた米トランプ政権の時間的制約も見透かす。米国をイラン攻撃に招き入れたイスラエルのネタニヤフ首相とトランプ大統領の亀裂も表面化し、対米交渉は有利に進んだ。イラン指導部の「勝敗ライン」は1979年の革命で生まれたイスラム体制の存続にあった。最高指導者ハメネイ師が殺害され数千人の国民が命を落としても、指導部が存続する以上は「超大国に対する勝利」と位置づけられる。もともと最高指導者の健康不安や後継問題、さらに制裁による経済混乱でイランは体制存続の危機にあった。衝突を経て「指導部は結束を強め、より強硬な体制として生まれ変わった」と西側外交官は語る。一方で得意の駆け引きと敵失で転がり込んだ「勝利」が国益に直結するとはかぎらない。米シンクタンク民主主義防衛財団の推計によると、イランが被った損失は最大でイランの国内総生産(GDP)に匹敵する3000億ドル(約48兆円)にのぼる。(トランプの心中は如何ばかりなのだろうか。通貨イランリアルは暴落し5月の消費者物価指数は前年同月比で77%上昇。米国との衝突はイラン国民の生活困窮に追い打ちをかけた。庶民の愛するケバブは5ドル程度と衝突前の2倍以上に値上がりし、とうてい手が出なくなっている。イラン全土で昨年末から今年初めにかけて広がった反体制デモは激しい弾圧を受けて鳴りをひそめた。代わりに体制を支持する反米・反イスラエルデモが頻繁に開かれている。抵抗と忍耐ばかりを強いる体制への不満も消えたわけではない。苦難の末にこぎ着けた合意には、イラン復興へ3000億ドルの基金計画が盛り込まれた。イラン戦略をめまぐるしく変えたトランプ流外交を知る関係国や企業は協力に慎重にならざるを得ない。覚書合意から60日をメドとする協議では核問題、経済制裁など作業部会を設けて議論する。21日にスイスで開催した米イランの高官協議の冒頭。アラグチ外相らイラン側は写真撮影で米国と並ぶのを拒み、会場を後にした。お膳立てした仲介国のパキスタンやカタールの代表だけでなく、同じ部屋にいたバンス米副大統領も戸惑いの表情をみせた。根深い相互不信をかかえた協議の先行きを暗示している。互いに」手を軽く見ているわけでもないだろうが、核施設、ホルムズ海峡等々の論点がどのように話し合われ、合意を見たのだろうか。いずれにせよ世界に安心をもたらせないのでは無いかと思う。
2026.09.26
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2026年9月25日米国250周年、試練の超大国3***スタンフォード大卒業式で、数百人の学生が抗議しながら退場した(14日、米カリフォルニア州)14日、米西部カリフォルニア州であったスタンフォード大の卒業式。米アップル創業者スティーブ・ジョブズの生前のスピーチでも有名なハレの舞台に米グーグルの最高経営責任者(CEO)スンダー・ピチャイが立つと、卒業生数百人が一斉に退場した。抗議者はグーグルが人工知能(AI)の技術を軍や不法移民摘発に提供したことに反対の意を示した。米国防総省は5月、米巨大テック企業8社とAIの軍事利用契約を結んだ。グーグルの従業員600人以上が連名で契約拒否を求め書簡をピチャイに送ったものの、判断は覆らなかった。多くの移民技術者で成長した米巨大テクノロジー企業はもともとリベラルな気質が強い。「Don't be evil(悪に染まるな)」――。かつてグーグルの独立性と反骨精神を示す行動規範として存在した象徴的な言葉も過去のものとなりつつある。そもそもテック企業が国家と距離を置いたのはこの20~30年にすぎない。半導体やインターネット、全地球測位システム(GPS)にとどまらず、米国の科学技術の進歩は軍事と密接に関係してきた。近年は「テックライト(右派)」と呼ばれる保守的な起業家が率いるパランティア・テクノロジーズなどの企業が急速に台頭する。米軍はAI兵器の実戦投入を始めた。トランプ政権では、パランティア創業者のピーター・ティールをはじめテック関係者が資金面や人脈供給で後ろ盾となっている。副大統領のバンスを筆頭にAIビジネスに精通するデビッド・サックスなどテック関連の幹部が集う。スタンフォード大フェローのマリーチェ・シャーケは「テック企業のCEOたちはもはや政治的中立を装うことすらせず、トランプに同調するという賭けに出ている」と指摘する。第2次世界大戦期、米国は科学者や資金を集め、約3年という短期間のうちに原子爆弾を完成させた。このマンハッタン計画で土地は強制収用され、化学・重工業企業も動員された。当時はナチス・ドイツが進める開発に対抗する狙いがあった。日本の原爆投下で多大な犠牲者を出したが、米国内では「終戦を早めた」と評価する声が根強い。AIは自由競争から統制下になりつつある。開発に使う半導体に加え、米アンソロピックの「ミュトス」という先端AIまで禁輸対象になった。仮想敵は国家資本主義でAIで急速に力をつける中国だ。米政府内ではAI企業に出資する「国有化論」まで出ている。安全保障の名の下で開発を主導する構造はマンハッタン計画と似通う。冷戦後に米国の技術開発は軍事から民間主導へと移行し、自由な起業家精神に支えられ米テック産業は急成長した。次の技術覇権を決定づけるAI技術を手にした企業と国家の再接近は、歴史をひもとけば必然なのかもしれない。つかの間の自由から先祖返りしつつある現状の先にある帰結をテック企業自身もまだ見いだせていない。
2026.09.25
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あと少しで退院できそうだ。***イランとの戦争で、米戦費は12兆円に達した。2カ月で「日本」の予算超した。しかし、その効果乏しい。主要7カ国首脳会議(G7サミット)が閉幕した17日。トランプ米大統領は仏東部エビアンでの記者会見で、イランと戦闘終結に向けた覚書で合意したことについてこう豪語した。「めざしていたことの全て、いやそれ以上を実現する合意だ」だが100日を超える軍事衝突をどう検証しても、トランプ氏の言葉を裏付ける米国の果実は乏しい。米国防総省は戦闘にかかった費用を5月中旬時点で290億ドル(4.7兆円)とはじいた。大半が弾薬費だ。米専門家はイスラエルの防空支援やイランの攻撃を受けた中東の米軍基地の再建費などを算入すれば、さらに2~3倍に膨らむとみる。米安全保障政策改革研究所によると米国はこうした費用を含めて最初の2カ月だけで720億ドル(12兆円)を投じた。日本の防衛予算の1年分を使い、なお3兆円が足りない計算だ。「イランであらゆる決定を下す人の大半はいなくなった」。米国は2月28日に始めたイラン攻撃で最高指導者ハメネイ師を殺害した。トランプ氏はイラン側が戦意を失い、停戦への話し合いの動きが体制内から出てくると楽観視していた。1月にベネズエラのマドゥロ大統領を拘束する作戦を実質1日で終えた成功体験が過信につながった。「イランもおよそ4日で完了すると想定していたようだ」。そのもくろみはあっけなく外れた。イランはホルムズ海峡を縦横無尽に走る小型高速艇やドローン(無人機)を駆使し、非対称戦で抵抗を続けた。トランプ氏も認める通り、年単位になる可能性さえあった。カーネギー国際平和財団のスティーブ・フェルドステイン氏は「最大の問題は米国が中国のようなはるかに強力な敵と戦った場合、現在の戦争遂行能力では持続的ではないという致命的な弱点を露呈したことだ」と指摘する。米国はイランの猛攻撃を受けたイスラエルの防衛に多くの迎撃ミサイルを費やした。米戦略国際問題研究所(CSIS)によると在庫の半数ほどを消耗した。日本や台湾などへの武器供給は数年遅れ、中国をにらんだインド太平洋の抑止力にも影を落としかねない。このように対中抑止にも影を落とす結果となった。国民の信頼も失った。米ブルッキングス研究所によると、イラン攻撃が米国の国益にとって「マイナス」と答えた割合は、米与党・共和党の支持層でも「プラス」を8ポイント上回った。無党派層ではマイナスが63%に達した。バンス米副大統領はイラン攻撃で「核施設はがれきの下に埋もれ、掘り出すだけでも数カ月はかかる」と説明した。攻撃をしなかった場合に比べ、核開発のスピードを遅らせる程度のわずかな成果にすぎない。核開発につながる濃縮ウランの扱いを巡り、イランが60日間の交渉で譲歩するめどは立たない。イランはホルムズ海峡で将来的な通航料の徴収を宣言するなど管理を強める構えを崩さず、世界経済を人質にできるカードを握った。イラン攻撃の代償を払うのは米国だけではない。
2026.09.25
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2026年9月24日米国250周年、試練の超大国2***世界での指導力は中国の方が米国より上――。米調査会社ギャラップが4月に公表した世界130カ国以上を対象にした世論調査が衝撃を呼んだ。米国に指導力があると答えた人の割合が中国を下回った。米国への評価は特にドイツや英国、カナダなどの同盟国で大幅に下がった。世界を相手に高関税を振りかざして、経済的な便益を迫る。ベネズエラ、イラン、キューバと、反米国家には武力行使もいとわない。トランプ米大統領の振る舞いは世界の人々が抱いてきた世界秩序を主導するリーダーとしての米国像を根底から変えた。だが米国250年の歴史の中で、トランプだけが特別な存在なのだろうか?米国の国際戦略・外交研究の重鎮ウォルター・ラッセル・ミードはこうした考え方を否定する。米国の250年を振り返ると、米大統領は主に「内向き」か「外向き」か、「理想主義」か「国益(現実路線)」か、という軸に基づき4つに分類でき、これらの要素が繰り返し反復して表出してきていると指摘する。ホワイトハウスでトランプが執務をとりおこなう「オーバルオフィス」。壁面には複数の歴代大統領の肖像画と、胸像が飾られている。第2次トランプ政権では、肖像画と胸像の両方が昨年末時点で置かれていたのは初代ジョージ・ワシントンと第16代のエイブラハム・リンカーン、第26代セオドア・ルーズベルトのわずか3人だ。「米国人の労働者が第一」――。6月、建国250年を祝うワシントンの労働省本庁の屋上からは2つの巨大な横断幕が垂れ下がった。あしらわれたのは現大統領のトランプと、ほかでもないセオドア・ルーズベルトだった。セオドア・ルーズベルトは中南米に介入し、艦隊を世界に派遣して威信を誇示した「こん棒外交」で知られる。「米国が持つに値する友人は、世界に一つしかない。それは米国自身である」。1916年に同氏が記した本の一節にこのようなくだりがある。その姿は「MAGA(米国を再び偉大に)」を標榜するトランプの姿に重なる。現政権に見られるもう一つの顕著な類型は「ポピュリズム(大衆迎合)」だ。第7代大統領アンドリュー・ジャクソンはエリート支配に反発する草の根の支持を集めたトランプに近い政治家だった。オバマ政権で大統領特別補佐官を務めたチャールズ・カプチャンは250年の歴史で米政権が世界の普遍的な価値を標榜し、ルールに基づいた秩序をつくっていこうとする潮流は、むしろ例外だったと指摘する。ギャラップの米国人への2026年調査では「世界情勢で中心的な役割を担うべきだ」と答えた人は64%と20年前の75%前後から大きく下落した。「米国第一」はトランプ特有のものではなく、連綿と続いてきた米国のDNAだとしたら、日本を含む同盟国はその前提に立って関係のあり方を再定義する必要がある。
2026.09.24
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2026年9月23日米国250周年、試練の超大国 1***アメリカ合衆国が1776年7月4日の独立宣言から建国250周年を迎える。独立当初13州、人口約250万人に過ぎなかった新興国は50州、人口3.4億人、実質GDP(国内総生産)23兆ドル(約3700兆円)の超大国へと成長した。米国の成功モデルは今なお健在なのか、繁栄の行方を探る。米南部テキサス州の州都オースティンから車で40分ほどの場所にある小都市ロックハート。米テスラ本社からも近い東京ドーム100個分ほどの広大な牧場に全米から若者が集まり始めた。次世代原子力発電や超大型ドローン、排水浄化システム――。ものづくり企業13社が集まるこの実験コミュニティー「プロトタウン」では、起業家たち20人がプレハブ小屋のような家に住み込み、新たな試作品の開発を続けている。街の中心は全長45mのトンネル型の白いバルーン状の建物で、交流スペースや試作工場が入っている。入居する企業はすべてハードウエア企業。ソフト産業のスタートアップが集う米西部シリコンバレーとは別の路線を模索する。創設者のジョシュア・ファラザド(26)は東部ニューヨーク州出身で移住してきた。「製造業の街をつくり、西部開拓のように壮大な物語を実現したい」と意気込む。米南部サウスカロライナ州のクレムソン大で化学と人工知能(AI)を学ぶルーカス・ガルシア(20)はAIを使って物質を規則正しく結びつける「結晶化」を予測する技術を開発し、学生ながら会社を立ち上げた。AIで医薬品や化学品開発のスピードを速めコストを減らす技術で、米アップル共同創業者スティーブ・ウォズニアックらが審査員を務める米国建国250周年事業のスタートアップコンテストで入賞した。2001年にアルゼンチンの経済危機の際に米国に移住した父を持つ。父も化学分野の大学教授で「移民は素晴らしい才能を米国にもたらしてきた」とガルシアは話す。所属するクレムソン大は新たな才能発掘に取り組んでいる。南アフリカ出身の起業家イーロン・マスク、台湾出身のエヌビディア創業者ジェンスン・ファン、旧ソ連出身でグーグル共同創業者のセルゲイ・ブリンなど、約5000万人いる外国生まれの移民の人口は米国で世界有数の企業をつくり莫大な富を築いた。西部開拓やゴールドラッシュをはじめ、飽くなき移動への渇望とリスク許容の風土は米国のダイナミズムを生んできた原動力の一つだ。米国では今も人口移動が続く。2020年から25年の5年間で、米東部ニューヨーク州や米西部カリフォルニア州といった大都市を抱える地域で人口が減る一方、規制緩和や広大な土地、より安い生活コストを求め、テキサス州は約256万人、フロリダ州は約192万人の増加となった。努力した人には平等に成功の機会を与えられるという「アメリカンドリーム」。歴史家ジェームズ・トラスロー・アダムズが1931年に提唱した同国を象徴する理念への憧憬は健在ながら、近年では曲がり角を迎えている。米調査会社ギャラップによると、米国人の誰もがアメリカンドリームを実現可能と答えた人は46%にとどまり、54%が実現できないと答えた。米金融情報サイトのインベストペディアは米国で暮らすために必要な生涯コストを約500万ドルと試算する。インフレや医療費高騰で米国で生活するには大卒の米国人の2倍近い生涯給与が必要になっている。米西部サンフランシスコで会社を立ち上げたエズラ・ラフィーノ(38)は「アメリカンドリームを取り巻く状況は変わった。工場で働くだけで家族全員を養うことはできず、かつてなく難易度は上がった」と話す。自律的に仕事をこなすAIエージェントの技術をこの半年で習得し、従業員は自分とAIのみ。マーケティングや注文管理など業務の大部分をAIに託し、余った時間で新事業を構築中だ。直近ではトランプ米政権が大規模な不法移民摘発と、IT(情報技術)などの専門技能を持つ外国人労働者向けのビザ「H-1B」の発給制限に踏み切った。米ブルッキングス研究所の推定によると、2025年には米国を離れる人の数が米国への移民者数を過去半世紀で初めて上回った。革新を生んできた磁力を米国は手放すのだろうか。
2026.09.23
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2026年9月22日米空母「太平洋2隻体制」崩れる ***太平洋地域で活動する米軍の空母が減っている。米太平洋軍の管轄地域に2隻展開するのが基本だった状況が一転し、イラン攻撃前の1月から1隻のみの状態が5カ月ほど続く。3隻目の空母を就航させた中国との地域の軍事バランスが崩れる懸念がある。米海軍協会が公表している位置データをもとに分析した。年明け以降、米太平洋軍が管轄する太平洋を中心にした海域に米空母が2隻以上いたのは1月の3週間のみだった。2025年の同時期はほぼ全期間に相当する24週間だった。太平洋地域の米空母は日本の米軍横須賀基地を母港とする「ジョージ・ワシントン」のみの状況が1月から続く。1隻のみの期間は6月下旬で21週間目に突入した。2021年以降の5年あまりで最長を更新し続けている。米軍は2月末のイラン攻撃後、稼働中の空母7隻のうち3隻を中東方面に派遣した。中東に戦力を割いた際に東アジアなど別地域での作戦と両立する難しさが露呈している。米軍は世界の異なる地域で発生する2つの紛争に同時に対処できる能力の保持を掲げてきた。航空機を搭載し、機動的に世界中に派遣できる空母はそのために欠かせない戦力だ。米海軍は全世界のおよそ半分に相当する11隻を保有している。近年は中国の台頭や、台湾有事が発生するシナリオを意識している。横須賀の1隻に加えて米西海岸を母港とする空母を太平洋に展開させる運用をとってきた。2016年以降はほぼ毎年空母2隻以上が同じ海域で航行する機会を設けている2022年には南シナ海で空母2隻を含む演習を実施した。当時の空母打撃群の司令官だったマーティン少将は「米軍はインド太平洋地域を守るために圧倒的な海軍戦力を投入できる」と誇った。シーレーン(海上交通路)を守る重要性も強調した。「2隻体制」を維持することで、いずれかの空母に整備が必要な場合でも対処の幅が広がる。太平洋横断に時間がかかることも考慮し、ローテーションを組んで即時対応が可能な状態を保ってきた。中国は海軍能力を増強させ、太平洋での活動の幅を広げている。2025年6月には保有する空母2隻が初めて同時に太平洋側で活動している様子が確認された。同年11月には3隻目となる空母「福建」が就役した。日本には唯一同盟関係を結ぶ米国の太平洋地域の戦力が手薄になる状況への不安がある。太平洋地域の他の同志国と防衛協力を広げる動きを強める。オーストラリアやニュージーランド、韓国といった国との連携を重視している。###年末には安保関連3文書の改定を予定する。自民党はこのほど政府への安全保障政策の提言をとりまとめた。防衛予算の増額を念頭に「装備・体制の両面において5年以内に防衛力の変革を成し遂げるべきだ」と提起している。提言は太平洋防衛の「空白」が生じていると指摘し、体制や装備品の整備を訴えた。「長期戦に陥った場合、太平洋側から日本に対する攻撃が行われることもあり得る」と危機感をあらわにした。
2026.09.22
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2026年9月21日中国、衛星でスペースX対抗***新興活発、吉利系は60→5700基 ロケット技術は遅れ中国が衛星通信産業の拡大に本腰を入れる。自動車大手の浙江吉利控股集団系が5700基の低軌道通信衛星の打ち上げを計画するなど新興の民営企業が勢いづく。資金調達から新規株式公開(IPO)を目指す企業も出てきた。国を挙げてスペースXを擁する米国を追う。時空道宇のブースには人だかりができた。24日に上海市で開幕したアジア最大級の通信見本市「MWC上海」で、初めて衛星通信の専用スペースが設けられた。同スペースを中心に、関連の約30社が出展した。日本の内閣府によると人工衛星の打ち上げ数は2025年、世界で4517基だった。米が82%を占め、中国は8%にとどまる。差は大きいものの中国は米に次ぐ2位につける。打ち上げ数の大半が高度500~2000kmの低軌道衛星だ。約1万基の小型衛星を低軌道で展開するスペースXは世界シェアの7割を押さえる。地上に電波を送る高速通信サービスを各国で提供しているが、ネット規制が敷かれる中国では未参入だ。スペースXの代替に名乗りをあげる中国企業は多い。中国メディアの新京報は1月、国連の専門機関、国際電気通信連合(ITU)に対し、60超の中国企業・団体が2023年以降、計24万基超の人工衛星の打ち上げ枠確保を申請したと報じた。MWCでは上海市政府系の上海垣信衛星科技がひときわ大きなブースを設けた。担当者は「200基の通信衛星を打ち上げており、年内に400基に増やす」と語る。高速通信サービスの提供には300基以上が必要となる。まだテスト段階だが近くサービスを始める見通しだ。中国政府は「宇宙強国」を実現するため、2014年に民間資本を引き込み活力を増す方針へと転換した。MWCには政府系企業だけでなく、民間新興も多く出展した。代表格はスウェーデンのボルボ・カーを傘下に抱える吉利の衛星子会社、時空道宇科技だ。約60基の低軌道衛星を手がけ、現在は当局の海洋パトロールに通信サービスを提供する。年内に約70基、将来的には5700基へと拡大する計画だ。自社生産する人工衛星の生産能力は年500基。半導体など主要部品も内製しており「品質管理能力や低コストが競争力になっている」(同社)。今後はグループの吉利汽車集団をはじめ車メーカーにも通信サービスを提供する。産業の裾野も広がる。MWCには通信衛星にアンテナを供給する通宇通訊のほか、通信衛星の電波を受信しスマホやパソコンに配信する機器メーカーの星途智聯科技が出展した。米ナスダック市場に12日上場したスペースXは時価総額が3兆ドル(約480兆円)近くに膨らんだ。中国でも資金調達と市場拡大をにらみIPOを計画する新興が出てきた。通信衛星を生産する微納星空科技は5月、上海のハイテク新興企業向け市場「科創板」に上場申請した。生産能力は年150基で、これまでに約30基が打ち上げられた。株式上場で50億元(約1200億円)の調達を計画し、観測衛星網の構築などに充てる。香港上場を目指す国星宇航は人工知能(AI)向けのデータセンター衛星ネットワークを手がける。データセンター用衛星を28年までに100基、最終的に2800基の打ち上げを計画する。このほどネット大手、騰訊控股(テンセント)と提携した。###スペースX追撃には課題も残る。中国は米に比べロケットの再利用などの技術開発が遅れている。ロケット新興の藍箭航天空間科技(ランドスペース)は2025年12月にロケット「朱雀3号」を発射したが、第1段ロケットの回収には失敗した。政府系シンクタンクの賽迪智庫によると、低軌道にモノを運ぶコストはスペースXの3~7倍ほど高い。MWCに出展する複数の企業も「ロケットの打ち上げ能力が足りない」と指摘した。低軌道衛星で個人向けに高速通信を提供するサービスをゼロからつくり出す必要もある。民間企業の通信事業参入が厳しく規制されており、スペースXと同程度のサービス提供には時間がかかる見通しだ。
2026.09.21
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2026年9月20日超常現象の謎、科学で迫る読んだ、ものの難しい。***幽体離脱や人魂…新たな仮説人間が聞き取れない低音が心霊現象を生む可能性がある。幽体離脱や人魂、未確認飛行物体(UFO)などの超常現象は長らく人々の関心を集めてきた。最新の科学研究はこれらの謎に迫る。21世紀の現在も体験談や目撃例が相次ぐ不思議な現象の正体は何なのか。「交通事故で魂が体を抜け、手術台に横たわる自分を見下ろした」。生死の境でこんな臨死体験をしたと語る人は少なくない。意識が回復した後も鮮明な記憶が残ることもあるという。なぜこんなことが起きるのか。ベルギーのリエージュ大学などは2025年、脳の酸素不足などが臨死体験につながると指摘した。事故や病気を経験した人に聞き取り調査をしたり、脳を調べたりした数十件以上の研究を精査し、臨死体験が起きる原因を探った。事故などで心臓が止まると、脳に十分な酸素が届かなくなる。すると脳の働きが変化する。一部の領域は機能しなくなるが、残りの部分は過度に活発に働く。研究チームは知覚や記憶などに関わる部分の働きが盛んになる可能性があると突き止めた。また心臓が停止した人の脳内では幻覚に関わるセロトニンや記憶に関係するドーパミンなどが大量に出ると分かった。研究チームは脳でこれらの変化が生じた結果、幽体離脱などの臨死体験をしたと感じると指摘する。リエージュ大のシャーロット・マーシャル氏は「この研究は臨死体験を神経科学で包括的に説明する初の試みだ」と話す。脳が変化する理由について、リエージュ大などは「太古の祖先が『死んだふり』で敵をやり過ごした名残だ」と考えている。タヌキやフクロネズミなど捕食者の攻撃を受けると反射的に動かなくなる動物は少なくない。動く獲物を狙う敵の目を欺き、すきを見て逃げるためだ。これと同様に「死んだふり」をして生き延びた祖先から伝わる脳の仕組みが、人々に臨死体験をもたらすのかもしれない。夏の怪談に登場する心霊現象の謎に迫る研究も出た。カナダのマキュワン大学は4月、空調や配管から出る人間が聞き取れない低音が原因の一つだと医学誌で発表した。人間には周波数が20~2万ヘルツの音が聞こえる。研究チームは心を落ち着かせたり不安をかきたてたりする音楽を36人に聴かせて実験した。そのうえで半数の被験者に向けて耳で聞き取れない約18ヘルツの低音を流した。すると人々は低音に気が付かないままいらだったり、悲しい気持ちを覚えたりした。唾液を調べるとストレスを受けた時に出るホルモンのコルチゾールが増えていた。心霊現象を経験したと話す人は誰もいない場所を気味悪く思い、何者かの視線を感じたと説明することが多い。低音の影響で暗い室内などで恐怖心を募らせた人が「幽霊の正体見たり枯れ尾花」の格言通りに、実在しない心霊現象を体験したと感じたのかもしれない。墓地や湿地を漂う火の玉は人魂や狐火といわれ、落語や歌舞伎にも登場する。米スタンフォード大学などは25年、火の玉が自然の火花で生じるという論文を学術誌「米国科学アカデミー紀要」に掲載した。火の玉は沼や湿地で発生したメタンガスが燃えてできるとされるが、火が付く理由は不明だった。研究チームは水を入れた容器にメタンガスと空気を混ぜた気泡を加えて実験した。気泡は正と負の電荷を帯び、近づくと放電した。沼などでも同じ現象が起き、メタンガスに引火して火の玉ができるのかもしれない。「空飛ぶ円盤」と呼ばれるUFOは地球を訪れる宇宙人の乗り物だと考える人も多い。だが米国のバンダービルト大学などは2025年、その正体に迫る2本の論文を学術誌に掲載した。1949~57年に米国のカリフォルニア州にある天文台が撮影した写真の乾板を分析した。すると夜空に奇妙な光が現れる事例が多数見つかった。この時代には人工衛星が存在せず、写真に写らない。研究チームは住人が一部の光をUFOだと考えたと指摘する。当時、天文台の近くには複数の核実験場があった。写真を撮影した日時を調べると、核実験の翌日は光が出現する確率が19%と普段より8ポイント高かった。人々が目撃したUFOの一部は核実験の産物だった可能性がある。もちろん全ての超常現象の正体を探るのは簡単ではなく、他にも様々な要因がありそうだ。例えば古賀病院21脳神経内科の古谷博和医師は「心霊現象などの一部は脳の神経科学で説明できる」と話す。幻覚の症状が出るパーキンソン病などの患者が心霊現象を見たと訴えることがあり、健康な人の脳でも似た現象が起きている可能性がある。人間の脳は見聞きした画像や音声の間に規則性を見いだしたり、自分の信念に合う情報を集めたりする。いずれも捕食者や事故の危険に素早く対処するために獲得した能力だ。超常現象の一部は複雑に進化した脳が見せる幻なのかもしれない。 何が言いたいのか焦点がぼけてしまった。もう少し具体性のある現象に絞り込んで聞きたいものだ。
2026.09.20
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2026年9月19日選択肢尽きるプーチン***ロシア北西部のサンクトペテルブルクでは3日、石油施設がウクライナ軍のドローン攻撃を受け、大きな黒煙が立ち上った。首都モスクワでは、なお営業を続けている各ガソリンスタンドに長い行列ができた。ウクライナの長距離ドローンによる攻撃の頻度と精度は高まっており、これがロシアに過去数十年で最大の燃料危機を引き起こしている。そして、この事態により戦況が変わったとの見方が強まっている。戦争の「潮目は変わった」がカナダのカーニー首相は6月の主要7カ国首脳会議(G7サミット)の場で受けた取材の中で、「我が国とドイツ、英国、フランスはいずれも潮目が変わったとの見方で一致している。(中略)プーチンは敗北するだろう」と述べた。しかし、ロシアのプーチン大統領が黙って敗北を受け入れると見る向きはほとんどない。そのため西側諸国の政策立案者たちは、この夏に戦況がさらに激化する事態を想定し、警戒を強めている。ある関係者は「我々全員が抱いている疑問は、プーチンが次にどう出てくるのかという点だ」と語る。西側諸国の戦略立案者たちの間では、大きく分けて二つの見方がある。第1の見方は我々は非常に危険な局面に突入しつつあり、追い詰められたプーチン氏が戦争の流れを変えようと激しい反撃に出る可能性が高いというものだ。第2の見方はプーチンが取り得る戦争激化の選択肢は実際には限られているというものだ。従って警戒すべきは西側が、ロシアによる戦争激化の脅威に過度におびえて、ウクライナに対し攻勢の手を緩めるよう圧力をかけることかもしれない。補充するより速いペースで兵士を失っているロシア戦争を激化させる手段は主に4つある。第1はウクライナとの戦場で通常戦力の強化を図るもの。第2は核兵器の使用、第3は北大西洋条約機構(NATO)加盟国への直接攻撃、第4はハイブリッド戦争で、これは西側のインフラや個人を攻撃対象とする秘密工作を指す。ロシアは夏にかけて、さらに多くの兵士を「肉弾のように最前線に投入する」と予想されている。プーチンは3日、ウクライナ東部ドネツク州でロシア政府が要衝とするコンスタンチノフカの町をロシア陸軍が制圧したと主張した。だがウクライナのゼレンスキーはその主張を否定し、一蹴した。西側の政府高官らは、ロシアは今や兵士を補充するより速いペースで兵士を失っており、1カ月当たりの死傷者数は3万5000人に上るとみている。プーチン氏が徴兵を通じて総動員に踏み切るのではないかとの観測もあるが、それは国民の反発を招くリスクがある。4年以上に及ぶ多大な犠牲を伴う消耗戦を続けてきたにもかかわらず、ロシアが戦局を決定づけるような突破口を目前にしていると示す兆候はほとんどない。むしろプーチンが自分の復讐心や戦争をさらに激化させたいとの思いから、もっと無差別な攻撃をしかけてくる可能性がある。その一例が1〜2日にロシア軍がウクライナの首都キーウをミサイルやドローンで攻撃し、市民30人が死亡したケースだ。しかし、こうした戦術は残虐ではあるが戦争の潮目を変える可能性は低い。この戦争を通じてプーチン氏と側近らは戦術核兵器を使う可能性を何度も強くちらつかせてきた。だが、こうした脅しは今や開戦当初ほど深刻に受け止められていない。西側の政策決定者らは、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席がプーチンに核兵器を使用しないよう警告したと考えている。加えて、ロシアが核兵器を使用すれば、西側が戦争に直接介入するリスクがあることをロシア政府も理解していると考えている。プーチンと側近らがあまりに頻繁に核兵器使用の脅威をちらつかせたため、その威嚇力が薄れている。ある西側政府の高官は「彼は核の脅しというカードの価値を下げてしまった」と表現する。戦線を拡大する余裕はなく一方、西側諸国の一部の指導者はロシアがバルト3国やポーランドを標的に挑発行為を仕掛けてくる可能性を覚悟している。ラトビアの治安当局は6月22日、ロシアがこれらの国々を標的とした「軍事的な挑発行動を準備している可能性がある」と述べた。ロシアによる直接的な攻撃の可能性は低そうだ。だが西側の戦略立案者らはかねて、ロシアがNATOによる侵略への報復、あるいはバルト3国でのロシア語話者の保護という名目で、何らかの介入に踏み切る能性を長く懸念してきた。その狙いは軍事面や外交面で危機を引き起こし、西側の分断を図り、それにより米国がウクライナに対して圧力を強め、領土面での譲歩を迫るということにあるのかもしれない。しかし、プーチンは実際にこうしたリスクを冒すだろうか――。この4年間、プーチン氏がウクライナへの武器供給路となっているNATO領内各地にある補給路や基地を攻撃するのではないかとの懸念はあったが、実際に攻撃に踏み切ることはなかった。バルト3国での緊張を高めるにはウクライナの前線からロシア軍部隊を一部、移動させる必要も生じるかもしれない。NATO領内で第2戦線を開くとなれば、それが大失敗に至り、ロシアに屈辱的結果をもたらす危険も考慮しなければならない。ハイブリッド戦も厳しい現実そうなると、残る選択肢はハイブリッド戦争だ。過去4年間、既に数多くのハイブリッド戦争が仕掛けられてきた。よく知られているのは2024年、独物流大手DHLが取り扱っていた小包に発火装置が仕込まれた複数の事件や、独防衛関連大手ラインメタルの最高経営責任者(CEO)の暗殺が企てられていたケースだ。ロシアは、海底ケーブルやエネルギーパイプラインといった西側の主要インフラをあからさまに偵察し続けている。だが民間インフラを狙ったハイブリッド戦の激化もリスクが伴う。西側が対抗措置に出る可能性は高い。安全保障担当の高官たちは、ロシア、米国およびその同盟各国、そして中国はいずれも互いの重要インフラの内部にいざという時に作動させられるサイバー空間上の爆弾を複数、仕掛けている可能性があると指摘している。プーチンには戦争を激化させる選択肢が複数ある。問題は全て悪手である点だ。それでもプーチンが敗北を受け入れる用意があると示す兆候はほぼない。よってウクライナとその西側支援各国は、危険な夏が到来すると覚悟を決めている。ウクライナと西側諸国がこの夏を乗り切り、その間もロシアへの圧力を着実に強め続けることができれば、年末までにプーチンと彼の側近が現実を受け入れ、過大な要求を取り下げざるを得なくなるかもしれない。ウクライナも西側諸国もこう期待している。そうなればウクライナ戦争の終結がついに視野に入ってくる。+++ロシアに甘かったトランプはNATO首脳会議で、見直すことになった。ウクライナにパトリオットミサイルの生産を認めるという姿勢を示したことで、ウクライナが負け方勝利へと流れが変わったようだ、
2026.09.19
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2026年9月18日トランプ後は「築く」政治へリハビリ病院に徒歩で往復したのは、堪えた。その後は、姉のホームまでもバスや鉄道を使って回ったので、かなり疲れた。***バンス副大統領の思想に影響した論客に聞く(パトリック・デニーン)、筆者の見立てでは、トランプの支持者の多くは、彼に既存秩序を壊すことを望んでいた。MAGA(米国を再び偉大に)を支持する有権者の多くは、生産・業務の外部委託や脱工業化によって傷つき、自分たちの町や共同体が衰退していくのを見てきた。彼らの多くは、暮らしを良くすると約束した共和党や民主党の政治家に、交互に投票してきたが、事態は悪くなり続けた。やがて彼らは、政治エリート層を信頼できないと考えるようになったのだと思う。既存秩序を壊すために、体制の完全に外側から来た人物を求めたのである。しかし、物事を壊すことが物語の終わりであってはならない。製造業の国内回帰や移民制限といった問題について、トランプは大統領令を通じてかなり積極的に動こうとした。彼の真剣さは評価に値する。また、自分が選ばれた際に掲げた政策目標を議会が前に進める見込みはほとんどない、と彼が考えていたことも理解できる。ただ、大統領令では合意はつくれないことも、認識しなければならない。トランプ後にMAGAの遺産を残すとすれば、壊す政治を超え、築く政治が必要になる。つまり、制度を作り、法律を通し、連合を築く政治である。ポスト・トランプの共和党は、より体系的で、明確に言語化された構想を持つ政治へ向かう可能性が高いと思う。現時点で私が念頭に置いているのは、J・D・バンス副大統領とマルコ・ルビオ国務長官の2人である。両者とも、トランプよりはるかに、持続性があり一貫した政治の方向性を示す能力がある。2人の間には違いもある。どちらかといえば、ルビオ氏は旧来の共和党主流派や、レーガン時代の共和党の伝統に近い。バンス氏は、はるかにMAGA志向である。しかし両者とも、物事を壊す政治から、トランプ後の遺産を築く政治へ移る流れを象徴する存在になり得る。トランプ政権とビッグテックの関係も注目を集めている。私はその関係を、暫定的な連合と表現したい。彼らはwokeness(人種やジェンダーを巡る進歩派的価値観)への反対では一致しているが、必ずしも何を支持するかで一致しているわけではない。MAGAの基盤は、グローバル化と脱工業化によって傷ついた労働者や中産階級の人々である。これに対してテック側は、イノベーションと高度な技能労働者の移動性を重んじる。この2つの利害は、容易にぶつかり得る。この文脈で、私はバンス氏がMAGAとテック界の間で、何らかの橋渡し役を果たし得る可能性を排除しない。実際、バンス氏はかなり早い段階から、MAGAの大衆的基盤と、テクノロジーのイノベーションによって動かされる世界をどのように結びつけるかを考えていたように見える。彼自身の頭の中では、この2つはある程度、両立できるとおそらく考えていたのだろう。しかし、それは簡単に架けられる橋ではない。人工知能(AI)の台頭に伴い、MAGA内部ではテック界に対する疑念が強まっている。私は、世界はすでにリベラリズムの最高水位を超えたと考えている。その頂点はおそらく1990年代初め、フランシス・フクヤマ氏が「歴史の終わり」について書いていたころだっただろう。そこには、新自由主義経済と社会の自由化こそが、人間社会を組み立てる最終的で最善の形だという信念があった。その前提は、もはや成り立たない。今後、経済はより国家的な要素を持つようになると思う。社会面では、結婚、家族、出生率の低下、住宅所有、そして若者がどのように家庭を作れるかといった問題が、政治の中心へと戻ってくるだろう。その意味で、私たちはすでにポスト・リベラルな局面に入りつつあるのである。2029年以降に左派と保守右派が完全に融合するとは思わないが、ある程度、近づくことはあり得る。とくに経済問題では、左派と、よりポピュリスト的な右派は、人々がしばしば想定するほど離れていない。所得格差、国内製造業の復活、移民の制限または管理といった問題では、民主党内のサンダース氏流の左派と、バンス氏流の右派が近づき得る領域がある。しかし、明確な限界もある。私たちが目にするかもしれないのは、左派と共和党保守派の全面的な合流ではなく、経済ナショナリズム、反エリート主義、反新自由主義といった問題をめぐる部分的な接近である。私は、日米関係が、形は違ったものになるとしても、より強固になる可能性が高いと思う。それは、米国が単に安全保障の傘を提供するという旧来のモデルではなくなる。日本は、より大きな安全保障上の役割と、より大きな負担を引き受けることを期待されるだろう。その意味で、アメリカ・ファーストは世界を見捨てることを意味しない。勢力圏と勢力均衡に基づく、より現実主義的な秩序へ向かうことを意味する。欧州はロシアとの均衡を担うことを期待される。アジアでは、日本や他のアジア諸国が、米国の主導のもとで、中国との均衡を支えることになるだろう。それがこの変化を理解する最も正確な見方だと思う。###破壊後に再生の道デニーン氏はリベラリズムの根本的な失敗を論じる「ポスト・リベラル」思想を代表する政治学者だ。著書『リベラリズムはなぜ失敗したのか』は、20以上の言語に翻訳された。バンス米副大統領の世界観に影響を与えた知識人の一人としても知られる。バンス氏とは2019年ごろから面識があり、上院議員となった後も複数回、会っている。デニーン氏にインタビューしたのは6月初旬。痛感したのは、トランプの出現はハプニングではなく、半ば必然だったということだ。グローバル化で傷ついた労働者らの怒りは、既存体制を壊してほしいと思うまでに高まった。トランプ人気が底堅いのは、そんな人々の破壊願望を満たす振る舞いを演じているからだ。民主党内の一部左派とバンス氏流の共和党右派が2029年以降、やや接近するかもしれないという、デニーン氏の予測もうなずける。米社会の大きな病である所得格差をめぐって、両者の問題意識は重なり合う。米政界の潮流を追ううえで、外せない視点である。
2026.09.18
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医大に入院カテーテルで心臓ペースメーカーを入れた。成功した用だ。本人には終わったのかどうか感じられない。***殆ど分からないのだが新聞の文章をトレースしてみる。日銀が政策金利1%への利上げを決めた16日の政策決定会合。高市に近い城内実経財相の発言に出席者は息をのんだ。「1%を超える金利に向けては、デフレに後戻りしない『成長型経済』へ変化しているか否かが重要だ」。今回の利上げには表向き口を挟まなかった。「責任ある積極財政」を掲げる高市政権は金利上昇を気にする。国債の利払い費が膨らんで政策の自由度が下がるうえ、企業の投資意欲も減るからだ。5月に補正予算の編成を表明した際、首相は市場に影響しないよう赤字国債の発行総額は増やさないと強調した。「すべて再来週以降の開催になる」。6月上旬、首相官邸で予定されていた経済財政諮問会議などの重要会合が相次ぎ延期となった。本来は政府が成長分野への官民投資額や新たな財政健全化への道筋を示すはずだった。何が起きたのか。原因は投資目標が首相の要求額に届かなかったことだ。内閣府幹部は「官邸の意向と財政健全化の整合性が難航した」と明かす。高市政権は積極財政、金利抑制、為替安定の3つを追う。同時に実現することが難しい「トリレンマ」の政策調整が必要になる。政権が6月の利上げを静観したのは、これ以上の円安進行を避けるためだ。為替相場は利上げを織り込んでいても1ドル=160円台。政府高官は「利上げしなかったら大変なことが起きただろう」と話す。沈黙する霞が関市場が次に注目するのは7月に決まる経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)だ。首相が財政規律と成長戦略を両立させると主張してきた新たな財政運営の指標が盛り込まれる。10年超の財政運営を重視する債券投資家には不安がある。積極財政に必ずしも否定的なわけではない。消費税減税や防衛費増、成長投資といった政策を同時に進めつつ財政規律をどう保つかという全体像が見えないことに原因がある。5月にパリで開いた金融会議。米ブリッジウォーターの幹部が「東京で高市政権の経済運営について聞いて落胆した」と語った。首相官邸や関係省庁、日銀の政策の方向に統一性がないとの理由を挙げた。財政規律に目配りする財務省が積極的に動いている形跡はない。自民党内では「官邸の意向に沿わない官僚を人事で揺さぶっているのではないか」と噂される。夏の幹部人事を控え、霞が関では声を上げにくい空気が漂う。政権発足時に1.6%だった長期金利は一時2.8%に上昇した。霞が関や自民党を抑えられる政権も、グローバルな市場はコントロールできない。新指標の評価によっては政策修正する柔軟性が欠かせない。異次元の金融緩和が始まった2013年以降、歴代政権は株価や為替に関心を払っても金利は気にしてこなかった。24年に「金利ある世界」に戻って2年。首相が金利上昇を意識した政権運営を迫られる「金利ある政治」の時代に入った。+++
2026.09.18
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2026年9月17日激動の南シナ海(下)***台湾統一へ地ならし写真では南沙諸島のパグアサ島沖でにらみ合うフィリピン海兵隊のボート(手前)と中国海警局の船舶が映っている。中国の習近平(シー・ジンピン)指導部は「海洋強国」を掲げ、南シナ海の領有権を争うフィリピンを威圧しながら権益を広げてきた。矛先は台湾統一を実現するうえで障害と位置づける日本にも向かう。6月30日、南シナ海のスカボロー礁(中国名・黄岩島)。中国人民解放軍の南部戦区は周辺の海空域にH6K爆撃機やJ16戦闘機、KJ500早期警戒機、054A型フリゲート艦を投入し、実戦さながらの巡視活動を展開した。この日、海上警備を担う中国海警局も3000ton級の巡視船を同礁近くへ派遣した。「貴船は中国黄岩島の接続水域に進入している」。周辺を航行していたフィリピン船に無線で警告した。 南部戦区と海警局は5月31日にもスカボロー礁周辺を巡視した。3日前の28日、日比両首脳が両国の排他的経済水域(EEZ)の境界画定交渉の開始で合意したことへの対抗措置だった。日比交渉の対象海域は台湾東部沖を含む。台湾を自国領の一部とみなし、海域の管轄権を訴える中国は同国抜きの境界画定交渉に猛反発した。これ以降、日比双方への挑発行為が本格化した。ターゲットは潜水艦を保有しないフィリピン海軍ではなく、日本の海上自衛隊――。中国の軍事専門家の李亜強氏は7月2日、6月30日の巡視に対潜水艦哨戒機「GX6」が加わった理由を国営メディアに説明した。中国が日比をけん制するのは海洋権益のためだけではない。台湾の武力統一を実現するうえで日比が軍事上の制約になり得ると警戒するからだ。日本最西端の沖縄県・与那国島から台湾東部まで110kmほどしか離れておらず、フィリピン北端と台湾南端も近い。台湾有事の際に日比が同盟国の米国を支援すれば統一作戦の成否を左右しうる。中国は5月末以降、交渉合意への対抗を口実に様々な公船を台湾東部沖へ派遣してきた。この海域は日本の海上交通路(シーレーン)でもある。海警局は4日、台湾東部沖での警戒監視を「常態化」したと宣言した。外交面でも日比を狙い撃ちした動きをみせる。気に入らない国を孤立させて懲罰を加えるもので西側の外交筋は「犬小屋外交」と呼ぶ。フィリピンに対しては東南アジア諸国連合(ASEAN)と分断させるのが基本戦略だ。南シナ海の領有権を争っていたベトナムやインドネシア、マレーシアとは24年以降、安全保障や海洋問題を話し合う枠組みを次々と立ち上げた。南シナ海を争点にせず事実上、棚上げさせる思惑がある。日本を巡っては高市早苗政権の防衛政策を「新型軍国主義」と非難し、友好国に支持を呼びかける。中国は日本の海洋権益も脅かす。7月以降、中国船が沖縄県の尖閣諸島や久米島周辺の日本EEZ内でワイヤのようなものを海中に伸ばしているのを海上保安庁がたびたび確認した。近くでは海警局船が護衛していた。###中国外務省の毛寧報道局長は7日の記者会見で「日本側が中国の調査船の正当な活動を妨害したことに断固反対し、厳重に抗議した」と主張した。中国は南シナ海や東シナ海のほか太平洋での活動範囲も広げ、6日には南太平洋に向けて潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射した。防衛省防衛研究所の飯田将史氏は「中国に対抗するには各国の防衛力強化と関係国同士の連携が重要だ」と話す。
2026.09.17
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激動の南シナ海***(上)法の支配、背く中国南シナ海のほぼ全域を自国領とする中国の主張を、国連海洋法条約に基づく仲裁裁判が退けてから12日で10年。仲裁の当事者フィリピンは法に基づく正当性を訴えるが、中国による威圧はむしろ強まる。米国も他国への軍事介入を辞さず法の支配は世界で揺らぐ。発端の一つは12年、中国がスカボロー礁(中国名・黄岩島)に船舶を派遣して実効支配を奪ったことだ。軍事力で劣るフィリピンが対抗するための手段として検討したのが国際的な仲裁裁判だった。中国が裁判に応じることは考えづらい。そこでフィリピン側が目をつけたのが国連海洋法条約だ。付属書には、どちらか一方の当事国が通告すれば仲裁手続きを始めることができると書かれている。2013年1月に仲裁裁判の開始を通告し、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所を事務局として裁判官に当たる5人の仲裁人による審議が始まった。中国の主張する「九段線」に国際法上の根拠がないと認定したのは2016年7月だった。フィリピン側の主任弁護士を務めたポール・ライクラー氏は6月30日、日本経済新聞の取材で「世界有数の海洋法専門家による権威ある判断で法的意義は失われていない」と強調した。中国に国際法に基づく義務履行を促すことが必要だと指摘した。中国は仲裁判断に背を向ける。在フィリピン中国大使館は6月に出した声明で仲裁判断について「法的な装いをまとった政治的操作だ」と主張した。この10年、中国は南シナ海で既成事実を積み上げてきた。南沙(英語名スプラトリー)諸島のファイアリクロス礁(中国名・永暑)では3000m超の滑走路や大型港湾が整備され、軍事拠点化が進んだ。2020年には行政区「南沙区」「西沙区」を一方的に設置した。直近では中国とベトナムが領有権を争う西沙(英語名パラセル)諸島のアンテロープ(中国名・羚羊)礁で、中国が2025年に入って新たに人工島を造成している可能性があることが明らかになった。中国が南シナ海の軍事化を進める目的は、国際航路の大動脈である同海域を押さえるだけにとどまらない。意識するのは米国だ。中国は6日、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射した。環球時報は新型の「巨浪(JL)3」だった可能性が高いとの軍事専門家の分析を伝えた。射程は1万キロメートル以上で、南シナ海などから発射しても米本土の大部分に届くとみられる。南シナ海有事となれば目と鼻の先のフィリピンは無傷ではいられない。中国の力による一方的な現状変更の試みに対抗しようと、新たなルールづくりに注力する。2026年の東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国として、中国と南シナ海での偶発的な衝突を防ぐ「行動規範(COC)」の年内妥結を目指す。フィリピンには苦い教訓がある。仲裁判断が出た当時の大統領だったドゥテルテ前大統領は判断を棚上げし、中国との経済関係を重視する路線に転換した。ドゥテルテ氏の後継であるマルコス大統領は米国や日本などとの協力深化に再びかじを切る。マルコス氏は4日、訪問先のカナダでこう述べた。「どの大統領においても、これほど重要な問題はない。一貫した立場を守る必要がある」もっとも同盟国の米国は他国への軍事介入を辞さず、年初にはベネズエラの当時のマドゥロ大統領を拘束した。イラン攻撃は国際法違反との指摘もある。ライクラー氏は「強大な国が法の支配を軽視すれば、他国にも法の無視を促すことになる」と警鐘を鳴らす。圧倒的な軍事力の差から、中国とフィリピンは「サメと小魚」と例えられた。国連海洋法条約による仲裁は、「小国」がひねり出した切り札だ。力による現状変更を抑え、各国に法の支配の重要性を問う。仲裁判断を勝ち取ったフィリピンに課された役割は10年を経てもなお重い。
2026.09.16
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2026年9月15日ANA、赤字の国内線でLCC流の運賃体系***全日本空輸(ANA)が国内線の収益構造改革を進めている。直前予約でも安価に設定する。5月には運賃体系を刷新し、直前予約でも多くの空席が予測されれば安価に航空券を購入できるようにした。座席利用率を高め「実質赤字」状態からの脱却を目指す。「LCC(格安航空会社)に近づいているのは事実」。ANAの平沢寿一社長が認めるのは5月19日搭乗分から導入した新運賃体系だ。航空やホテルなどでは当たり前に取り入れられている、需給に応じて価格が変動する「ダイナミックプライシング」。ANAは今回の刷新でより価格と空席予測数の連動性を高めた。従来、ANAは搭乗の75日前まで購入できる「スーパーバリュー75」、3日前まで購入できる「バリュー3」といった形で、予約時期によって選択できる運賃を変えていた。運賃種別によって提示する価格の幅が事前に定められ、その中で空席予測数に応じ実際の価格が変動していたが、価格幅は購入期限が搭乗日に近い運賃種別ほど高まる。搭乗日直前に予約すると、一定の空席が見込まれたとしても高い運賃を提示する仕組みだった。新運賃体系は搭乗前日まで予約可能な2種類の割引運賃と当日購入が可能で予約変更などの自由度も高い「フレックス」の計3種に主に分けられる。価格を上下させるのは購入時期ではなく、購入時点の空席予測数となる。平沢社長が「LCC的」だと評すのは割引運賃の一種、「シンプル」だ。搭乗前日でも予約可能ながら、搭乗24時間前までは座席指定ができず、予約変更もできない。手荷物も他の2種の運賃は2個預けられるが、シンプルは1つのみだ。その分、運賃は抑える。7月16日までの搭乗分の羽田―新千歳線を前日にシンプルで予約する場合、料金は空席予測数に応じ1万3200〜4万5210円だ。日本航空(JAL)も2023年に国内線の主な運賃種別を3種に再編したが、最安の運賃でも事前に座席指定できるようにしている。購入時期が価格を大きく左右する傾向も変えていない。羽田―新千歳線を1日前に割引運賃で予約する料金は3万8170〜4万4550円だ。空席状況次第では同日同時間帯の便でも料金に2万円以上の差が付く可能性がある。LCCの場合、座席指定や手荷物の預け入れを別料金として、こうしたサービスを必要としていない利用者にはより低価格を提示するのが一般的だ。その上で予約動向に応じ日々刻々と価格を上下させる。ANAのCX推進室レベニューマネジメント部の小池雄一担当部長は「従来通りフルスペックで利用したい旅客と、直前の予約でも余計なサービスを省いて安く利用したい消費者の双方を取り込み、顧客層の裾野を広げていくのが今回の運賃改定の肝だ」と語る。思い切った運賃施策の裏には国内線の苦境がある。新型コロナウイルス禍以降、ビジネス需要の低迷や円安などを背景としたコスト上昇でANAの国内線事業は国の補助金がなければ実質赤字の状況が続く。JALも同様の状況が続いていたが、2026年3月期にわずかながら「実質黒字」に転換した。奏功したのは供給力の調整だ。輸送需要を示す有償旅客キロ(RPK)は前の期比6%増となったが輸送能力を示す有効座席キロ(ASK)は1%減らした。その分座席利用率は83.9%と5ポイント高まり、収益性が改善した。ANAは2026年3月期、RPKが前の期比4%増となったが、座席利用率は79.2%止まりだ。ASKは2031年3月期までに前期比1%減にとどめる考えで、供給を絞らずに座席利用率をさらに引き上げるには旅客数を増やすしかない。LCCのようなスタイルを取り入れ直前予約でも低価格を実現できれば「これまでLCCを使っていた消費者にANAを選んでもらえる」(平沢社長)。顧客層を広げ座席利用率が高まれば、需給が締まって単価も上昇していく。2031年3月期の国内線の売上高は前期比6%増とする計画だ。シンプル運賃を巡っては、搭乗24時間前まで座席指定ができないなどの制約が購入者に周知できておらず、導入直後は利用者からの不満が噴出した。新運賃体系のデメリットに焦点が当たる中、ANAとしては低価格などのメリットを消費者にアピールできなければ、むしろ利用者の流出を招く可能性がある。###グループのLCC、ピーチ・アビエーションとのすみ分けも課題だ。平沢社長は「同じ路線をANAとピーチの両方が飛ぶのは無駄だ」と語る。布石は打たれている。ANAは3月下旬に始まった「夏ダイヤ」から、関西国際空港を発着する国内線を大幅縮小し、国際線との乗り継ぎなどを意識して羽田線のみを残した。一方、関空を拠点とするピーチはANAが運休とした新千歳・那覇便を増便した。コロナ禍中には、グループ内で関空と中部国際空港発着の国内線運航を全てピーチが担うとの案が浮上したこともある。路線や空港ごとに両社で役割を分担し、限られた経営資源で収益を最大化していく重要性は増している。具体的な発注状況が無いので、詳細は分かりにくいが、発注のオプションが増えるという事か。...........
2026.09.15
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ウクライナ、モスクワに向けてドローン200機近くを発射***ウクライナは18日にかけ、ロシアの首都モスクワに向けてドローン200機近くを発射した。一部は首都近郊の石油精製所を直撃し、モスクワの一部地域で黒い油の粒が降り注いだ。ウクライナによる攻撃としては、ロシアと全面戦争となって以降で最大のものとなった。ロシア国防省からとされる情報によると、同国各地で24時間以内にウクライナのドローン計約1000機と巡航ミサイル計4発が迎撃・撃破された。南部ロストフ州の石油貯蔵施設への攻撃では1人が殺されたという。この攻撃で、モスクワ南東部のカポトニャ石油精製所では爆発と火災が発生し、上空が煙で真っ黒になった。当時の動画には、巨大な爆発によって大型石油貯蔵タンクの屋根が吹き飛ばされ、空中に数十メートル舞い上がる瞬間が映っている。この石油精製所が攻撃されたのは、ここ1カ月で3回目、今週に入って2回目だった。モスクワ近郊のショッピングセンターでも火災が発生した。ドローンの破片が建物に落下したことが原因とされている。BBCが検証した動画では、高層の建物の上層部にドローンが激突し、ガラスや破片が中庭へと降り注ぐ様子が確認できる。モスクワの空には濃い煙の柱が高く立ち上った。モスクワ州のアンドレイ・ヴォロビョフ知事は、州内で17人が負傷したとした。同州南東部で撮影された検証済みの動画では、駐車場の舗装面が濃く暗い油膜で覆われているのが確認できる。車両の下の地面には油膜はついていない。現地の女性は、「自宅のある集合住宅から外に出ると、細かい霧雨のようなものが降っていた」とBBCに話した。着ていた服に「不快な黒い斑点」が付き、友人の上着も「黒い斑点で覆われてしまった」という。「石油製品の影響で髪が抜け始めないか、注意していく」と、この女性は述べた。一方、モスクワ当局は、「油の雨」が降った事実はないとしている。ただ、モスクワ市の公式テレグラムチャンネルは、攻撃の影響を受けた地域の住民に対し、窓を閉めておくよう呼びかけた。子連れの家族や高齢者、ぜんそく患者はには、直ちに避難すべきだとした。ウクライナのゼレンスキー大統領は、このドローン攻撃について、ロシアによる先週のキーウ攻撃への報復だと説明した。同市への攻撃では、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に登録されているペチェールシク大修道院で火災が発生した。ゼレンスキーは、「私たちはこの戦争を望んでいないし、これまで一度として望んだことはない」、「だが、もしウクライナが燃えれば、あなた方の街モスクワも燃える」と述べた。これを受け、ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相は、ウクライナに対して「大規模」な攻撃が実施されると発言。「以前から、言葉だけでは不十分だと確信していた」と付け加えた。ロシアのプーチン大統領は、今回のモスクワへの大規模攻撃についてコメントしていない。プーチンは現在、ロシア中部カザンで東南アジア諸国の首脳を招き、サミット(首脳会議)を主催している。この攻撃で、モスクワの四つの空港は一時閉鎖され、500便以上が欠航または遅延となった。ロシア各地の地方当局は、ドローン攻撃後の被害状況がわかる画像の公開を禁止している。だがソーシャルメディアには、ドローンが白昼に空を飛ぶ様子や、モスクワ郊外の工業地帯で爆発が起こる様子などの動画が数十本、投稿された。多数の偵察用おとりドローンを発射し、防空網の手厚い場所やぜい弱な場所を把握してから、本格的な空爆を実施するのは、ウクライナがよく使う戦術となっている。モスクワがウクライナに対する全面侵攻を開始して4年半が経過した。ウクライナの最前線では消耗戦が続いているが、ロシア国内の多くの人にはその様子は見えていない。モスクワ、サンクトペテルブルクをはじめとするロシア各地にウクライナが実施している長距離攻撃は、ロシアの一般国民に「戦争を身近に感じさせる」ことを、ゼレンスキ氏が狙っていることを示す。###今回の攻撃があった石油精製所の近くに住む男性は、夜明けに建物が「揺れ」始めて目を覚まし、朝になると焦げ臭さで息ができなかったとBBCに話した。また、「すべてがとても恐ろしい」、「以前はそれほど怖くなかったが、今はほとんどパニック状態だ」と言った。ウクライナは長距離攻撃能力を高めており、国境から約500km離れたモスクワへのドローン攻撃が増えている。ロシアは、モスクワが最初にドローン攻撃された2023年春以降、同市周辺に大規模な防空体制を構築してきた。だが、今回のドローンによる集中攻撃で、モスクワの重要インフラの防衛システムは有効性が疑われることになる。一方、ロシアも17日夜から18日にかけて、ウクライナに向けてドローン200機以上と弾道ミサイル複数発を発射した。ウクライナ当局が発表した
2026.09.14
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2026年9月13日「パンクしないタイヤ」実用化「パンクしないタイヤ」実用化*** 。ブリヂストンが「パンクしないタイヤ」を実用化した。自動運転での途上で。苦節18年で、ここに。実を結んだとのことだ。ブリヂストンは7日、「空気なしタイヤ」を実用化すると発表した。試作から18年を経て初めて顧客に採用され、8日から自動運転サービスで使われる。空気を入れる必要がなく、パンクしないことを売りに自動運転車両での拡大を目指す。ビジネスに関するその日に起きた重要ニュースや、いま注目の話題を深掘りします。過去の記事や「フォロー」はこちら。滋賀県東近江市。市街地から車で30分ほどの山あいの地域で、ゴルフカート型の低速自動運転車両「奥永源寺けい流カー」が運行している。足元を見るといつもの見慣れたタイヤではなく、青い骨組みのような構造が目立つ。ブリヂストンの空気なしタイヤ「エアフリー」だ。外側の薄いゴムの層と波打った構造の樹脂で車両を支える。空気の圧力で車両の重さを支える通常のタイヤと異なり、空気を充塡する必要がない。実用化するブリヂストンの空気不要タイヤ「エアフリー」(7日、滋賀県東近江市)路上のクギなどを踏んでもパンクせず、定期的な空気圧の管理なども不要だ。自動運転車両を運行する東近江市の山間部では高齢化が進み、公共交通の担い手や整備能力不足が課題になっていた。期間限定の実証ではなく、エアフリーが常時使われるようになるのは初めてだ。ブリヂストンの蓮沼利幸常務役員は7日の出発式で「サステナビリティーやメンテナンスの効率化など、新しい付加価値を提供できる。皆様の足元を支える」と意気込んだ。記者が試乗してみると、急な坂道もすいすいと登れた。舗装の状態が悪い場所も通ったが、特に不安定な感じはなかった。最高速度は時速20kmだ。奥永源寺けい流カーの運行を補助している仲谷正敏さん(68)は、以前のタイヤと比べ「静かになり、揺れも少なくなった」と話す。「運行前のタイヤの空気圧のチェックも必要ない」と評価する。ブリヂストンがエアフリーの試作品の開発を始めたのは2008年のことだ。2013年には東京モーターショーで第2世代のモデルを展示した。現行品は2023年に導入した第3世代にあたる。実用化までの道のりは長かった。以前は重さを支えるため、タイヤ自体を硬い素材にする方向で開発していた。ただ硬くすればするほど故障のリスクが高まったり、乗り心地が損なわれたりした。新モビリティ事業部門長の太田正樹氏は「素材を硬くする方向から、力をうまくいなす方向へ発想を変えたのが転換点だった」と振り返る。第3世代では、樹脂を適度にしならせて荷重を分散させる構造に見直したことで、性能向上につながった。自動運転技術の進化で市場も少しずつ見えてきた。自動運転タクシーや自動運転バスなどは運転手が不在になることが想定される。空気なしタイヤなら維持管理の負担を軽減できる可能性がある。エアフリーには環境負荷低減や原料調達難への備えの点でもメリットがある。通常のタイヤはゴムに加え、金属製のワイヤなど複数の素材を組み合わせる。エアフリーは樹脂とゴムだけで、樹脂部分はリサイクルが可能だ。タイヤの原料は通常、合成ゴムやカーボンブラックなど、半分以上が化石燃料由来だ。脱炭素の機運が高まり化石燃料由来の資源が使えなくなるリスクに備えられる。ブリヂストンのエアフリーを装着した自動運転車両や山あいの集落を自動運転で走行する車両。エアフリーが使えるのは地上にとどまらない。並行して開発を進める月面探査車向けのタイヤにエアフリーの構造を応用した金属の骨組みを採用している。ブリヂストンは他の製品への知見の波及も期待している。ブリヂストンの月面探査車用タイヤのコンセプトモデルも展示されている。課題は残る。仏ミシュランなども空気不要タイヤを開発するが、乗用車向け市場が立ち上がる気配はない。一般車への普及にはコストや性能面の課題が残るためだ。最高速度が時速20kmのままでは用途は限られる。ブリヂストンも現時点で量産のメドは立っていない。顧客に「売り切り」型で製品を提供するのではなく、長期的に樹脂のリサイクルなどの管理面を含めたサービスを提供するビジネスモデルを検討する。空気なしタイヤは長く未来の技術として語られてきた。自動運転という新たな市場を足がかりに、18年越しの挑戦が本格的な事業へ結びつくかが焦点となる。
2026.09.13
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原発再稼働の盲点(下)新設ノウハウ消失の危機***原発再稼働の盲点(下)新設ノウハウ消失の危機フランス北西部のフラマンビル原子力発電所3号機が予定から12年遅れで完成し、2024年に発電を開始した。同国の送電網に新たな原子炉が加わるのは、1999年以来、25年ぶりだ。2007年に着工したフラマンビル3号機は、圧力容器の強度問題など様々なトラブルで度重なる工期の延長を余儀なくされた。費用は132億ユーロ(約2兆4400億円)と、当初想定した33億ユーロから4倍に膨らんだ。「土木や電気工事士、溶接作業員などあらゆる面で人材が細ってしまった」。フラマンビル3号機を含む国内の原発全57基を運転する仏電力公社(EDF)のグザビエ・アルディ技術部長は、完成までに時間がかかった一因をこう指摘する。石油危機を契機とした1970~80年代の原発建設ラッシュが落ち着き、フランスでは1991年を最後に新設は途絶えていた。そのため実際の現場で技術者らが腕を磨く機会も失われた。フランスは原発産業の立て直しへ官民が動いている。2021年、EDFや核燃料会社のオラノが資金を拠出し、シェルブールに溶接訓練校をつくった。仏政府も540億ユーロ規模の産業振興策の枠組みを使い、人材育成を支援する。世界で原発を新設するノウハウが消失の危機にある。技術者の不足も深刻だ。この課題に日本も直面する。###日本で最後に着工したのはJパワー大間原子力発電所(青森県大間町)1号機の2008年だ。その後、2011年の東京電力福島第1原子力発電所の事故を受け、新設の動きは止まった。こうした状況下で関西電力は2025年に美浜原子力発電所(福井県美浜町)で原子炉新設に向けた地質調査に着手した。一般に原発を新設するためには、環境影響評価(環境アセスメント)なども含めて調査に8年程度を要するとされる。着工は早くても2033年ごろになる。一方でそれを支える人材は急減している。日本原子力産業協会の調査では、原子力関連事業を営む企業でプラント新設に携わる従業員数は2024年度に約2300人と2009年度と比べて半減した。政府は6月、原発を40年代までに最大5基建て替える目標を示した。経済産業省などは2026年度中に、原発に関わる人材を確保するための工程表を策定する。具体的な数値が示されたことで、企業は原子力事業の見通しを立てやすくなったのは確かだろう。関電の森望社長は「技術の継承やサプライチェーンの維持を実現するうえで非常に意義がある」と話す。関電が最後に原発を建てたのは、1993年に稼働した大飯原子力発電所4号機まで遡る。これだけ期間が空くと、原発を新たに建設するために必要な人材やノウハウが社内外にどれだけ残っているのか懸念も残る。現在、日本で稼働中または稼働への手続きを進める原発26基のうち、20年後の2045年に運転開始から60年を超える原発は8基と3割に上る。新設が進まず、既存の原発も動かし続けられなくなれば、電力の安定供給はままならない。日本でも半導体企業やデータセンター向けを中心に電力需要は伸びると見込まれる。原発を安全に活用し続けられるかは、有能な人材を確保し育成できるかにかかる。
2026.09.12
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2026年9月11日原発再稼働の盲点(上)原発再稼働・新設リハビリにも出かけた。婿殿が湘南へ帰っていった。***東日本大震災から15年。電力会社が原子力発電所の再稼働や新設に動き始めた。人工知能(AI)によって電力需要は増え、原発の位置づけが高まるなか、使用済み燃料の処理や人材不足という課題が残されている。フランス北西部のノルマンディー。海峡を隔てて英国を望む半島の先端に、原発から出る使用済み燃料を大量に処理するノウハウを持ち、関西電力をはじめ世界の原発関連企業が頼る工場がある。名称は「ラ・アーグ再処理工場」。高濃度の放射線を発する使用済み燃料を再処理して、原発に再利用できるウランやプルトニウムを分離する。1958年の稼働以来、再処理工場として世界最長の稼働年数をほこる。長さ約4mの使用済み燃料は重さ110tonの容器に納められ、船や鉄道で工場に運ばれる。燃料は分厚いコンクリートで覆われた特殊な部屋でロボットアームで1本ずつ取り出し、同じ部屋の井戸の水中に浸す。そのうえで深さ9mの貯蔵プールに5〜7年保管する。年間1220tonの処理が可能だ。ラ・アーグには自国のフランスだけでなく、オランダやスイスの原発からも燃料が集まる。2027年度からは日本の関電も燃料の搬出を始める見通しだ。国内で最多の7基の原発を稼働する関電は、使用済み燃料の貯蔵プールの貯蔵率が89%(3月時点、3カ所の平均)に達した。現状のままでは2〜3年後には満杯になる。3カ所のプール以外に国内に使える施設はなく、解決策がなければ原発を止めるしかない。このため、自社の3カ所の貯蔵能力の約1割に相当する400tonを順次、ラ・アーグにひきとってもらう。貯蔵プールが満杯になるのを防ぐ窮余の策だ。ラ・アーグはフランス政府が出資する核燃料会社、仏オラノが運営している。燃料の処理能力は年間1700ton。2025年は1999年以降で最多の1220tonを処理した。累計の燃料処理量は4万2000ton以上と、日本で現在貯蔵している総量の2倍以上にあたる。オラノのメラニー・シャルル広報本部長はロボットアームを使い、燃料を扱う技術が「オラノの真のノウハウだ」と説明する。自分の手足のようにアームを動かし全工程を担えるようになるには、実機での経験などで数年かかる。ラ・アーグは燃料をプールで5〜7年保管し、放射線の濃度を下げると、燃料を3〜4cmの大きさに裁断する。裁断の後は硝酸で溶かす。溶けた液体を精製すると、約95%がウランやプルトニウムに、残る約5%は高レベル放射性廃棄物(核のごみ)に分かれる。ウランとプルトニウムは別の工場でウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料になる。自国でウランを採掘できないフランスはMOX燃料を原発の燃料として再利用する「核燃料サイクル政策」を進めている。同サイクルが実現すれば、使用済み燃料の貯蔵施設が足りなくなる懸念や、他国に処理してもらう必要性は薄れる。日本も同サイクルの実現を目指している。実際、東京電力ホールディングス(HD)や関電などが出資する日本原燃が、青森県六ケ所村にラ・アーグと同じ機能をもつ「六ケ所再処理工場」を建設中だ。処理能力は年800tonを見込む。原燃はラ・アーグから工場運営の多くの技術を学んでいる。2021年度以降のべ89人を派遣し、実際の設備を動かす研修を受けた。しかし、肝心の工場の完成が遅れている。当初は1993年に着工し、1997年に完成する予定だった。設備トラブルが相次ぎ、これまでに27回も完成時期を見直した。原燃は建設の遅れについて「全工程で放射性物質を扱うため、通常の原発より審査項目が多い」と話す。それでも6月には建設計画について、ようやく国の原子力規制委員会への説明を終えた。今後は書類審査に移る。7万ページにおよぶ工事計画の修正版を規制委に提出し、問題がなければ合格になる。原燃は2026年度中の完成を目指す。関電は原燃に約40人の社員を派遣し、書類審査をサポートしている。関電の関係者によると、40人はいずれも「エース社員」。原燃は「原発7基を再稼働させた関電は電力大手のなかでも審査対応の実務に明るい」と期待を寄せる。原燃にとって、関電は六ケ所再処理工場の主要な顧客になる見通し。逆にいえば、書類審査が通らずに28回目の延期になれば、関電の燃料問題は一段と厳しくなる。問題は関電だけではない。東京電力HDの柏崎刈羽原発の燃料プールの貯蔵率は80%。青森県の宮下宗一郎知事は3月、同社と日本原子力発電が共同所有する中間貯蔵施設(青森県むつ市)への燃料の搬入を、2026年度は認めない考えを示した。東京電力HDは2024年度に同施設に燃料の搬出を始め、2026年度は60tonを計画する。宮下知事は同施設からの搬出先になる六ケ所再処理工場の完成が見通せないことを理由に挙げた。2026年度の完成は難しいとする一部の観測を受けた判断とみられる。東京電力HDの小早川智明社長は「業界全体で六ケ所再処理工場の完成を支援することなどを説明し、地元の理解を得られるように努める」と話す。関電の森望社長は「適切な人材の支援を続ける」と強調する。六ケ所再処理工場は原発を安定的に稼働するには必要不可欠だ。仮に延期となれば、電力インフラの維持をフランスに頼る状況に拍車をかける恐れがある。
2026.09.11
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2026年9月10日レアアース、グリーンランド地表に確認***研究者が調査に同行 含有の岩ゴロゴロ、鉱床の広さ見極め投資促す。JOGMECによるグリーンランドのレアアース鉱床の調査。デンマーク領グリーンランドでレアアース(希土類)の争奪戦が始まった。中国が輸出規制を強めたことで、米欧日の新たな調達先として重要性が高まる。6月下旬、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の調査団とともに鉱床を訪れた。グリーンランド南部の自治体クヤレックにある人口1200人ほどの町ナルサーク。ここから船で流氷が浮かぶフィヨルドを20分ほど進み岸壁に乗り付けた。少し開けた場所には赤いまだら模様が入った岩石がゴロゴロと転がっている。赤く見えるのがレアアースなどを含む「ユーディアライト」だ。核燃料を覆う管などに使うジルコニウムや鉄鋼の強化に使うニオブなどの金属が含まれる。JOGMEC金属資源開発本部長の久保田博志理事は「肉眼でもレアアースを含む鉱物が確認でき、鉱石鉱物が分布していると予想される。地質学的にはポテンシャルを感じる」と話す。グリーンランドの地質は約40億年の歴史を持ち、火山活動や地殻変動によって珍しい鉱物が多く存在する。調査団は岩石の磁性を確認したりハンマーで石を割ったりしながら調査を進めた。訪れた鉱床は地質学者グレッグ・バーンズ氏が探査ライセンスを持つ。同氏は採掘ライセンスを年内にも取得できる見通しで「2028年には年間60万トンを採掘したい」と意気込む。地表を削るように掘り、有用なものを輸出するという。レアアースの鉱石にはウランなどの放射性物質が含まれることもあり、採掘や精錬の過程で放射性廃棄物が発生する。ウランが原因で頓挫したプロジェクトもある。今回調査した鉱床は岩石内に鉱物が形成されている部分とそれ以外でガイガーカウンター(測定器)の値はほとんど変わらなかった。バーンズ氏は「周辺に比べウランが少なく採掘もしやすい」と強調する。レアアースは産出量が少ないレアメタル(希少金属)のうち、鉱物中から常に一団となって発見される17元素を指す。少量で電気自動車(EV)モーターなどのハイテク製品の性能を高めるため「産業のビタミン」とも呼ばれる。米地質調査所(USGS)は最新の調査で、技術やコストの面から現時点で採掘可能なグリーンランドのレアアース埋蔵量は世界7位の150万トンと試算する。グリーンランド鉱物資源局は将来の探査で発見が見込まれる未確認の量を含んだ資源量が約3600万トンにのぼるとみる。同局のロマン・マイヤー氏は「我々はレアアース市場に大きな影響を与えられる」と話す。世界のレアアース生産量の7割は中国が占め、鉱石の製錬やレアアースを使った磁石の生産でも高いシェアを握る。中国は2025年にレアアース7種の輸出規制を導入し、経済的な圧力を強めた。各国は調達先の多様化を急ぐ。バーンズ氏の拠点のすぐそばでは米企業が運営する「タンブリーズ・プロジェクト」の鉱床の採掘準備が進む。早ければ2028年にも本格採掘する。数十人が寝泊まりできる簡易宿舎やクレーンが対岸から見えた。日本政府には今回の調査を通じて日本企業の投資につなげる狙いがある。JOGMECの久保田氏は「(事業化には)鉱床にどれくらいの広がりがあるかがポイント。鉱物の処理などにも課題がある」と指摘する。レアアースは酸などを用いて鉱石から取り出すのが一般的だ。ユーディアライトはケイ素を含んでおり、酸と反応してゼリー状のシリカゲルが発生する。シリカゲルは分離やろ過の工程を複雑にする。採算が成り立つかは未知数だ。JOGMECは今回の調査で採取した鉱石を日本に持ち帰り、分析して利用のしやすさなどを確かめる。
2026.09.10
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***地球温暖化で頻発する豪雨や干ばつ対策として天気を操ろうとする実験が国内で進んでいる。千葉大学や富山大学などは飛行機から微粒子をまいて人工的に雲を発生させることに成功した。実験では飛行機の上から 下に向かって飛び石のように人工的な雲ができた。 自然現象である天気を人が変えることには倫理的問題を指摘する声もある。海外では住民の反対で頓挫した事例もあり順調に研究が進むかは不透明だ。「明らかに雲の様子が(一般的な雲の特徴と)違う」。富山大の浜田篤准教授は3月に実験の成果報告会でこう説明した。実験で1月に人工的に雲を発生させることに成功していた。千葉大や富山大は1月7~13日に富山湾の上空でドライアイスを空にまいた。通常、空気中の雲は核となる小さな氷の塊や微粒子の周辺に水蒸気がつくことで発生する。水蒸気があっても核となる物質がなければ雲にならないため、人工的にまいたドライアイスに核の役割を担わせる。約30kgのドライアイスを上空約3000mを飛ぶプロペラ機から数回散布した。実験によって発生したとみられる雲列を観測することができた。実験の狙いは夏の豪雨を減らすことにある。積乱雲や線状降水帯にドライアイスをまいて事前に海上で雨を降らせることができれば、陸上に降る雨量を減らすことができる。実用化に向けた課題も見えた。雲の位置の把握だ。人工衛星からの写真は約10分の遅れがあり使いにくい。天気予報で使う数値予報も正確な雲の位置把握には間に合わない可能性があり、「緻密なリアルタイム性が要求される」という。研究グループは人工知能(AI)を組み合わせた雲の把握なども視野に研究を進める。どのようなタイミングで雲に介入すれば効果的な雨量の減少につながるのかを詳しく調べる実験も進む。東京大学の澤田洋平准教授や大阪大学の橋本和宗准教授らの研究グループは台風を対象としてドライアイスの散布など手法を実施する最適なタイミングを探る技術を開発した。データを基に最適なモデルを組み立てる「制御工学」の手法を取り入れた。天気予報には「アンサンブル・カルマンフィルタ」と呼ばれる手法がある。複数の予測と実際の観測値の誤差を基に精度が高い予測を目指すものだ。千葉大学などは飛行機から複数回に分けてドライアイスをまいた。澤田准教授はこの手法を「逆算」するように利用する。これまでは計算の結果だった「台風の中心気圧が下がる」という現象を目的として据える。この目的を達成するために台風周辺にどのような変化がもたらされればよいかを探る。シミュレーションしたところ、台風の中心から250km程度離れた場所の大気最下層から、水蒸気量の1%未満を奪うことが有効であることがわかった。気候工学の手法で実現できれば台風の中心気圧を3ヘクトパスカル程度上げ、最大風速を5m程度下げることができるとみられる。これまでの研究では、台風全体や台風周辺の広い領域でなんらかの介入をして勢力を弱めることができるとするものがほとんどだった。澤田准教授の技術では、台風のごく一部に小さな介入をするだけで台風の勢力が弱まることがわかった。実際に水蒸気を減らす技術が実用化すれば、澤田准教授らのモデルを組み合わせることで効率的に台風の強さを弱められる場所や時間が見つかる可能性がある。一方、天気を操る取り組みには倫理的な壁もある。米スタートアップのメーク・サンセッツ社が2023年、気候工学の実験として気球をメキシコ北西部のバハカリフォルニア州で打ち上げようとしたが中止に追い込まれた。政府などの同意を得ていなかったため、メキシコ政府は「メキシコでは太陽気候工学の実施は許可しない」とする声明を出した。中国では2021年7月、北京の天安門広場で開いた中国共産党創立100周年記念式典にあわせ、人工降雨を試みた。降雨の予報だったが風上の上空に数百発以上の降雨ロケット弾を打ち込み、早めに雨を降らせたという。2008年の北京五輪でも降雨を避けるために人工降雨を試みた。###米ハーバード大学が成層圏に粒子をまいて大気への影響を調べようとした実験では、気球の打ち上げ候補地となったスウェーデンの先住民族からの抗議があるなどして中断。2024年に計画を中止した。千葉大などの研究グループは実験前に複数回地元での説明会を開いた。万が一何か起きるデメリットやリスクは――。懸念を訴える質問が複数出た。研究グループは丁寧に応じた。報告会を開いたのも住民との丁寧なコミュニケーションが必要なためだ。実験地周辺の自治体や住民との連携が、今後の実験の大規模化や実用化に向けたカギとなる。
2026.09.09
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中国「民族団結」阻めば処罰***中国は7月1日、中華民族の団結を阻むと判断した行為を罰する新法を施行する。国外の組織や個人も処罰対象になる。米欧などが新疆ウイグル自治区やチベット自治区で中国政府による人権侵害があると批判するのを抑制する狙いだ。新疆ウイグル自治区カシュガルのバザールでは漢民族の観光客が目立った。中国「民族団結」阻めば国外在住でも処罰 人権批判抑制念頭に新法中国には14億人ほどの人口の9割以上を占める漢民族のほか55の少数民族がいる。新たに施行する民族団結進歩促進法は中華民族を「多元的かつ一体的な大家族」と表現した。団結と進歩を促すことが中国人全体の責任だと明記した。民族団結にあたり「外部勢力の干渉を受け入れない」と掲げ、民族や人権を口実とする中国への中傷や抑圧に「断固反対」を唱えた。学校教育で使う言語と文字は中国語を基本とし、少数民族への中国語教育を推進すると定めた。台湾の住民に中華民族への帰属意識を高めさせ、中国大陸と台湾による両岸の融合発展を促す。宗教団体に信仰よりも共産党の指導を優先する「宗教の中国化」を堅持させる。こうした規定に違反した組織や個人を法に基づき処分する。この処罰対象が国外にも及ぶと定めたのが63条だ。「中国域外の組織と個人が中国の民族団結と進歩を破壊し、民族分裂を招く行為をした場合、法的責任を追及する」と打ち出した。中国司法省の胡衛列次官は24日の記者会見で、この条項を「法理に合致し、正当かつ合法だ」と強調した。「世界各国は国内立法を通じて分裂や破壊活動を防ぎ、社会の団結と正常な秩序を守る権利をもつ」と訴えた。中国はこれまでも国外での言論活動を取り締まってきた。香港の裁判所は2023年11月、刑事罪行条例違反(扇動の意図を有する行為)の罪で女子大学生に禁錮2月の実刑判決を言い渡した。女性は日本留学中にSNSで香港独立を支持する投稿などをしていた。日中関係筋は「中国では既に実施したことを事後的に法整備して明文化することが少なくない。今後、海外での対中批判への取り締まりが今まで以上に厳しくなる恐れがある」と話す。西側諸国では民族団結進歩促進法の施行への懸念が広がる。欧州連合(EU)の立法機関である欧州議会は4月、同法の域外適用条項に遺憾の意を示し、法律の撤回を求めた。「EUと中国の関係に深刻な影響を及ぼしうる」と警告した。###米欧などはウイグルやチベットで中国政府による強制労働などの人権侵害があると問題視する。米国土安全保障省は25年8月、ウイグルからの物品輸入を原則禁止する法律に基づき税関当局の検査を強めたと公表した。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は同月にチベットの区都ラサ、翌9月にウイグルの区都ウルムチを相次ぎ訪れた。チベット自治区の成立60年、新疆ウイグル自治区の成立70年を祝う式典にそれぞれ出席した。習氏はウルムチで「党の指導を強めることが新疆の現代化建設を進める根本的な保証だ」と述べた。「宗教の中国化を推進し、各民族が正しい国家観や歴史観、宗教観を確立するよう導く」と言明した。
2026.09.08
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今日も家で沈んでいた。内容はよく知れないが、ただ新聞通りに書いてみた。***日本の上場企業は2026年3月期に5年連続の最高益を達成した。持続力を探る為に仁淀川のほとりに人工知能(AI)特需に沸く中堅のニッポン高度紙工業だ。を見る最高益決算の持続力(上)半導体良質な水が育んだ和紙を使った漢方の煎じ袋を祖業とし、電化製品に不可欠なコンデンサー向け絶縁紙は世界シェア6割。AIサーバー向けが伸び、2027年3月期の純利益は5年ぶりに過去最高になる見通しだ。日本には米エヌビディアや台湾積体電路製造(TSMC)といったガリバーはいないが、AIのインフラ構築に必要な部品や材料の産業の裾野が広い。特に半導体製造装置や材料の世界シェアはそれぞれ3割、5割を超える。米テック大手のデータセンター投資額は2026年に7000億ドル(約110兆円)と日本の国家予算並みの規模になる。年々増える投資が、日本の関連産業の利益を押し上げている。上場企業全体を1社に見立てた「ニッポン株式会社」の業績はAI関連がけん引する構図が顕著だ。「日経半導体株指数」を構成する半導体関連企業の2026年度の純利益は8兆5400億円と前年度の2.3倍になる見通しだ。自動車の利益合計4兆7800億円を大きく上回り、稼ぎ頭が代わってきた。AIへの投資熱は減速がみえない。日本の経営者も総じて先行きに強気だ。米アルファベットは2004年の上場以来初めて大型増資に踏み切ってデータセンターに投資する。日産化学は半導体製造に必要な反射防止材でアジアのシェア7割を握る。半導体材料の売上高は30年まで年20%超で成長する。課題として、半導体関連の残り4分の3の需要を占めるスマートフォンや電気自動車(EV)など多くの産業向けは振るわない。非AI向けも1~3月期は赤字に陥っている。データセンター投資という巨額だが限られた分野がもたらす利益成長は長期の安定成長を確約しない。半導体製造向け水処理大手オルガノの山田正幸社長は「(設備投資需要は)5年は続くとみていいが、その先は身構えた方がいい」と語る。成長持続にはAIの実装という広範な需要を捉えるための種まきが必要だ。ファナックはエヌビディアと提携し、産業用ロボットにAIを実装する。社外に閉ざしてきたロボットを制御するソフトの公開に踏み切った。鉄道や電力などにAIを導入する日立製作所は「100兆円以上の市場規模になる」とみて需要を掘り起こす。スマートフォンやクラウドサービスなどソフトウエア主体の技術革新では日本企業は勝てなかった。AIの普及はモノに及び製造業で培った強みを生かすチャンスだ。特需の先を見据えた戦略が欠かせない。建築数は少ないのに好業績。建設業界で一見、ちぐはぐな現象が起きている。2025年の全国の建築着工床面積は最初の東京オリンピック前年の1963年以来62年ぶりの水準まで低下した。一方、ゼネコン大手4社の2026年の連結営業利益は合計7400億円と過去最高になった。2021年開五輪・特需を上回った。理由は人手不足だ。ゼネコンは量を追わず採算の良い案件だけに受注を厳選するようになった。清水建設の山口充穂常務執行役員は「価格転嫁の理解を得やすくなっている」と語る。不動産会社など発注者との価格交渉で優位に立つ。2025年の全国の建築着工床面積は最初の東京オリンピック前年の1963年以来62年ぶりの水準まで低下した。一方、ゼネコン大手4社の2626年の連結営業利益は合計7400億円と過去最高になった。2021年開催の東京五輪・パラリンピック関連の建設特需があった18年3月期を上回った。理由は人手不足だ。ゼネコンは量を追わず採算の良い案件だけに受注を厳選するようになった。清水建設の山口充穂常務執行役員は「価格転嫁の理解を得やすくなっている」と語る。不動産会社など発注者との価格交渉で優位に立つ。###+++★特需のゆくえ AI実装、強み生かす好機広い需要捉える 先手の施策必要2026年6月16日 2:00[会員限定記事]日本の上場企業は2026年3月期に5年連続の最高益を達成した。強さは本物か。持続力を探る。「奇跡の清流」と知られる高知の仁淀川のほとりに人工知能(AI)特需に沸く企業がある。製紙中堅のニッポン高度紙工業だ。最高益決算の持続力(中)高まる利益率に死角 生産性上げて「量」を追え2026年6月17日 2:00[会員限定記事]上場企業が26年3月期に最高益を達成した原動力には利益率の改善がある。売上高純利益率は7%と12年3月期以降で最高だ。業種別でみると建設は12年3月期の1%から6%に高まった。鉄道・バスは4%が10%に、食品は2%が5%になった。運賃改定や食品値上げなど量よりも単価重視を強めた業界だ。売上高は利益ほど伸びなくなっている。上場企業のここ2年ほどの増収率は4%台と表面上はそこそこでも物価上昇を考慮すると数量はあまり増えていない。27年3月期の企業予想をまとめると中東混迷の影響もあって利益率は4年ぶりに低下し、6%台となる見通しだ。人が増えない中で数量も伸ばしていくには、まずはロボットや人工知能(AI)の活用による生産性の向上が欠かせない。すかいらーくホールディングスは26年1~3月期に最高益となった。約2100店で3000台の配膳ロボットを稼働させるとともに、従業員の定着率向上で店舗運営の効率化が進み業績を伸ばしている。日経バリューサーチによると、生産性を示す従業員1人あたり売上高は25年12月期に7100万円で、19年12月期に比べ2割高まった。北義昭最高財務責任者(CFO)は「年内はインフレの影響が大きくなる可能性があるが、生産性の向上策などで十分吸収できる」と自信を示す。もう一つは技術革新や創意工夫によって自ら需要を創出する取り組みだ。富士フイルムホールディングスは設置スペースが限られる医療機関でも導入しやすいMRIの販売に力を入れる。MRIでは鮮明な画像撮影に欠かせない超電導磁石の冷却に液体ヘリウムを使う。富士フイルムの新たなMRIは液体ヘリウムを全く使わない。運搬の負担がなくなるだけでなく、足元では中東情勢により調達できなくなるリスクを回避できるとして、需要の掘り起こしに期待がかかる。日本企業はデフレ下では価格を抑えてコストを減らす経営が続いた。インフレに転換した今は値上げがしやすく、企業が数量より単価や採算を重視するのは自然な流れではある。だが、人手不足や地政学リスクという供給制約に直面する日本ではただでさえ事業が縮みがちだ。生産性や技術革新を武器に量も追う姿勢が必要になる。最高益決算の持続力(下)成長へ事業入れ替え 挑戦促す取締役会築く時2026年6月18日 2:00[会員限定記事]オムロンは10月、祖業の電子部品事業を米投資ファンドに売却する。展開する52の事業のうち13を注力分野に選び、電子部品は選外にしていた。 辻永順太社長は事業ポートフォリオ(事業構成)の再構築にこだわる。祖業ですら売却の対象にし、得た資金を制御機器に投じ再成長を目指す。日本企業は海外に比べて撤退が苦手だ。事業を広げる多角化の裏で不採算事業が多くなり、資本効率改善の妨げとなっている。経済産業省が日米欧の主要企業を調べたところ、日本は付加価値を生んでいない事業に6割強の資本が滞留していた。欧米は事業の入れ替えの決断が速く4割程度にとどまる。投資先探しも一筋縄ではいかない。自動車部品のニフコは5月、M&A(合併・買収)や提携などの投資枠として200億円を設けた。1年前には400億円の枠を設けたが、使い切れないと判断した。佐野久実執行役員は「成長に貢献すると判断できる具体的な投資先が定まらなかった」と明かす。関税政策で市場動向が不透明な米国などに比べて成長が期待できる中国やインド市場に狙いを定める。東海東京インテリジェンス・ラボの金井健司氏は「自動車部品メーカーはこれまで業界の成長にあわせて増産投資をしていればよかった。M&A経験が少なく新たな収益源を探すのに苦慮している」と指摘する。投資不足は日本企業に共通する課題だ。東証プライム上場企業を対象に本業で稼いだ資金である営業キャッシュフロー(CF)のうち投資CFに回した割合を調べると、26年3月期は70%だった。新型コロナウイルス禍前の80~90%を下回る。5年連続の最高益で増えた稼ぎを有効活用できていない。コーポレートガバナンス(企業統治)改革で目標とする資本効率改善は停滞している。自己資本利益率(ROE)は9%台で頭打ちになっており、10%台前半の欧州や20%近い米国と溝が埋まらない。事業の入れ替えを加速させる必要がある。変わらなければ資本市場の圧力で変化させられる。養命酒製造は今夏、ツムラの傘下に入る。大株主だった大正製薬ホールディングスが村上世彰氏の義理の息子、野村幸弘氏に株式を売却し安定株主を失った。村上氏らが関わる投資会社のTOB(株式公開買い付け)によって上場廃止となる。資本を現金や不動産に寝かせたままで狙われた。米欧では業績が振るわない経営者を取締役会が解任する。24年には人工知能(AI)時代に乗り遅れた米インテル、25年には次世代肥満症薬の開発につまずいたデンマークのノボノルディスクで解任劇があった。企業統治改革でめざす取締役会の機能強化は道半ばだ。トップの選解任に力を発揮できる経営経験の豊富な社外取締役を増やす必要がある。日本取締役協会の冨山和彦会長は「事業環境のゲームチェンジが起きているのにビジネスモデルを維持したままでは投資先を見いだせない。企業は事業転換できる経営者を連れてくる必要がある」と話す。ニッポン株式会社の最高益の持続力は改革に動く企業こそが左右する。AI特需に安住することなく流れを太くする必要がある。須賀恭平、和田大蔵、川原和起が担当しました。
2026.09.08
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***ホルムズ海峡の事実上の封鎖を通じ、チョークポイント(要衝)を押さえれば世界経済を人質にとり軍事力で劣っていても大国と渡り合えると世界に示した。他の要衝にも波及すれば、世界経済はますます不安定になる。+++「パンドラの箱が開いてしまった」。石油市場を30年以上見てきたあるベテラン石油アナリストはうなる。イランは米国・イスラエルの軍事攻撃を受けた直後の3月初旬、ホルムズ海峡の封鎖を宣言した。衝突前は海峡を通じた石油輸出が多いイランも輸出減の「返り血」を浴びかねず、起こる可能性が低いテールリスクとの見方が大勢だった。初期の空爆でイラン最高指導者ハメネイ師ら多くの指導部が殺害されたことが転機になった。力を増した強硬派が強気に出た。イランは1979年の革命以降、圧倒的な軍事力を持つ国にドローン(無人機)や小型高速艇、機雷を駆使する「非対称戦」で備えてきた。今回、その威力を最大限に発揮できる舞台として選んだのが世界の石油や液化天然ガス(LNG)の2割が行き来するホルムズ海峡だった。捨て身のイランは味を占めた。国際原油指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物は1週間で36%上昇と過去最大の上げ幅を記録し、その後も1バレル100ドル超で高止まりした。原油高は米国にイランとの手打ちを急がせた。米国は6月に合意した戦闘終結の覚書でイラン制裁緩和など譲歩を余儀なくされた。イランは「海峡封鎖」という外交カードを手放すつもりはない。無料で通航できる期間を「60日間」とし、オマーンや湾岸諸国と「将来の管理について協議する」との文言も滑り込ませた。イランが海峡を管理下に置けば国際的な海峡の自由通航を保障する国連海洋法条約にも抵触しかねないが、条約に批准していないのを理由に自国の管理権を主張する。なし崩し的にイランが同海峡を管理下に置き続ければ、再封鎖の不安がつきまとう。保険料や船賃の高止まりや、備蓄の積み増しや迂回経路の確保などの追加コストが発生する。日本を含む石油消費国も自由航行を前提に築いてきたサプライチェーン(供給網)の再構築を迫られる。より深刻なのは他の要衝へのドミノリスクだ。印シンクタンクORFは「ホルムズ海峡の事例は要衝を地理的に支配できる国にとって、大きな成功モデルになった」と指摘する。筆頭が中東と東アジアを結ぶ最短ルートに位置するマラッカ海峡だ。米エネルギー情報局(EIA)によると、2025年上半期の石油通過量は日量2320万バレルと世界の海上石油輸送の3割を占め、ホルムズ海峡を上回る。幅は10分の1以下通航船舶は24年に9万隻を超え、世界海上貿易額の2割強がこの海域を通るとされる。最も狭い場所の幅は3kmと33kmのホルムズ海峡の10分の1以下だ。常態化する船舶の混雑に加え、海賊出没のおそれもある。日本、中国に届く中東産原油の多くがこの海峡を通る。台湾海峡とその南のバシー海峡にも懸念が広がる。同海峡は中国海軍が西太平洋へ進出する重要ルートで、米国やフィリピンは周辺の島しょに中距離ミサイルや対艦ミサイルを展開している。米戦略国際問題研究所(CSIS)によると、22年に2.45兆ドルと世界の海上貿易の2割超が台湾海峡を通った。日本は輸入の32%、輸出の25%(それぞれ貿易額ベース)を依存し、韓国も構図は同じだ。最先端半導体の9割を生産する台湾も同海域に位置する。エネルギー、貿易、軍事が重なり合うこの海域は東アジアの不確実性が凝縮した最前線だ。周辺海域が緊迫すれば、供給網と地域の安全保障を揺るがしかねない。
2026.09.07
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***>>>米カリフォルニア州内では、レギュラーガソリンの価格が高騰して6ドル台で推移した。1973年のオイルショックの2.6倍規模の原油が途絶える――。2月末に始まった米国によるイラン攻撃後、国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は「史上最大のエネルギー安全保障の脅威だ」と繰り返し危機感を口にした。53年前の危機時は日量500万バレルの石油供給が途絶えたのに対し、今回は当時を上回る1300万バレルが消失した。イランは世界の原油・ガスの2割が通る要衝・ホルムズ海峡を封鎖し、世界経済を「人質」にとって米国との駆け引きを重ねた。代償は世界に拡散した。不安を抱えるエネルギー輸入国の選択肢は戦略石油備蓄(SPR)の放出かエネルギー節約に限られた。「在宅勤務やオンライン会議を再び優先させる必要がある」。原油や液化天然ガス(LNG)輸入の5割超を中東に頼るインドのモディ首相は5月、新型コロナウイルス禍を引き合いに経済活動の自粛を国民に呼びかけざるを得なかった。フィリピンでもマルコス大統領が「国家エネルギー非常事態」を宣言し、首都圏で鉄道運賃を半額にして自動車利用を抑えた。韓国は公務員の政府施設への車の乗り入れをナンバープレートの末尾番号が奇数か偶数かによって日替わりで制限した。ホルムズ危機はエネルギー安全保障のあり方を再考するよう各国に迫る。世界が目を向ける次の主役は化石燃料に頼らない原子力発電と再生可能エネルギーだ。欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は3月にパリの国際会議で「原発に背を向けたのは欧州にとって戦略的な誤りだった」と認めた。欧州が先行する再生エネと同時に改めて原発の導入を進めると宣言した。欧州の電力に占める原発比率は1990年に3分の1だった。2011年の福島第1原発事故をきっかけにドイツなどが脱原発を進め、足元では15%に低下した。欧州、米依存増す一方、米国産LNGの輸入も増える。米エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)の試算によると、26年に欧州の対米依存は6割を超える。対立を深める米国に頼りすぎないためにも「脱化石燃料」にかじを切るべきだとの声が欧州で勢いを増す。米国も人ごとではない。世界最大の産油国でありながら国際価格に連動する原油価格の高騰でガソリン価格が2月末のイラン攻撃前の1.5倍になった。米国民が肌で感じる価格上昇は11月に中間選挙を控えるトランプ米大統領を追い込んだ。トランプ政権は次世代の原発といわれる小型モジュール炉(SMR)の開発を促す。50年までに原発の発電容量を4倍にすると掲げる。人工知能(AI)の普及で急激な電力需要が見込まれ、化石燃料以外のエネルギー源の多角化を図る。自然を生かして電力を地産地消できる再生エネへの回帰は日米とも手放しでは喜べない。太陽光発電と風力発電は主要設備で中国メーカーがそれぞれ世界シェアの8割と5割以上を握る。ガソリン使用減につながる電気自動車(EV)の普及も構図は同じだ。IEAによると、中国企業がEV生産量の75%を占める。関連産業を含むサプライチェーン(供給網)の構築で脱中国を進める流れと逆行しかねない。目先の燃料としては安くて扱いやすい化石燃料も欠かせない。各国がいま問われているのはあらゆるリスクを想定した国家戦略にほかならない。米イランの軍事衝突は中東に眠る原油など資源供給の混乱を招き、インフレを再燃させた。世界の消費者心理は新型コロナウイルス流行時に匹敵する打撃を受けた。インフレ抑止の金融引き締めも低所得層を中心に負担を強いる。「私はインフレが大好きだ」。トランプ米大統領は6月10日、5月の消費者物価指数(CPI)が3年ぶりに前年同月比の上昇率で4%台に乗ると記者団に強がってみせた。「この紛争が終われば石油は(2月末の攻撃開始)以前の水準に落ちる」と続けた。トランプ氏の見立て通りに原油価格は軍事衝突前の2月下旬の水準まで下げた。しかし、各国はイランによるホルムズ海峡封鎖の「後遺症」を引きずり、中東依存の脱却や代替エネルギーへの移行など地政学リスクの高まりに備え始めた。消費者心理に響く。仏調査会社イプソスによると、世界30カ国の消費マインドを映す4月の指数は新型コロナがまん延し始めた2020年4月以来の下落幅だった。直近6月の水準も50を下回り、消費者はなお景気に悲観的なままだ。 米国では08年のリーマン・ショック時などを含めても、今春の消費者心理が最低だったという調査結果がある。不動産不況が長引く中国でも中東発の混乱が波及し、3月から低調なままだ。世界は22年2月にロシアが始めたウクライナ侵略に伴う原油高を経験した。燃料や資源が値上がりし、インフレが加速した米欧などでは連続的な利上げで金利負担が増大した。中東の混迷はこの記憶を呼び起こし、マインドを急激に冷やした。消費者がインフレの拡大や長期化を想定すると、安いうちに支出しようとして実際の物価も上がりやすくなる。そうした事態を恐れる世界の中央銀行は金融引き締めへ動き出した。欧州中央銀行(ECB)や日銀は6月、利上げに踏み切った。米連邦準備理事会(FRB)も高官による政策金利の見通しが利下げから利上げに転じた。メキシコでは中銀が利下げサイクルの終了を宣言した。家計や企業の資金繰りに直結する金利は上がる。米国の住宅ローンは30年固定金利が6%台半ばで推移する。新型コロナ前は長らく3~4%台で安定していた。ユーロ圏の企業向け融資や住宅ローンの金利も同じように水準を切り上げた。所得格差一段とウクライナ戦争が新型コロナ後のリベンジ消費と同時期に起こり、世界が享受した低インフレ・低金利を手じまいさせた。米国がイスラエルとともに始めたイランとの戦闘は高金利・高インフレを定着させるきっかけになりえる。物価高や金融引き締めに伴う高金利が長引けば、しわ寄せは中低所得層に集中する。米国では足元の雇用環境が堅調でも頼みの賃金は伸び悩む。1~3月に働き手が受け取った賃金などの報酬総額は国内総所得の51%を占めた。四半期での比較が可能な1947年以来の最低を更新した。人工知能(AI)ブームに乗った世界的な株高の恩恵は富裕層に偏る。中低所得層ほど金融資産が少なく、金融所得の増加といった利上げのメリットも限られる。所得格差は消費行動に現れる。バンク・オブ・アメリカの分析では税引き前所得の上位3割が消費活動の5割を担う。高金利・高インフレは持てる者と持たざる者の格差を一段と広げる。格差是正へ財政出動も選択肢になるが、さらなる金利上昇の圧力になる。イラン攻撃が生んだ「ニューノーマル(新常態)」の副作用への対処を誤れば、世界の政治指導者はしっぺ返しを受ける。
2026.09.06
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***トランプは6月24日、ホワイトハウスを訪れたルッテNATO事務総長に食ってかかった。「イランだけではない。トランプ米政権はサウジアラビアにもウラン濃縮を認める可能性がある」。米上院外交委員会の関係者は中東の核拡散リスクを口にする。6月にイランと戦闘終結へ覚書を結んだ米国。2025年末にはサウジとも新たな原子力協定を結ぶ協議に入った。トランプ政権はサウジの民生用のウラン濃縮を認めようと議会と調整を始めた。実現すれば同国は潜在的な核武装能力の保持に踏み出す。サウジのムハンマド皇太子はイランへの対抗意識から核保有の意欲が見え隠れする。サウジは16基の原子力発電所を建設する計画を持つ。米国が協力を拒めば「サウジは中国やロシアと組むだろう」トランプは「イランの核開発を許さない」と軍事攻撃に踏み切った。失敗に終われば中東は抑止のバランスが崩れ、核拡散という究極のパンドラの箱が開きかねない。米イランの「100日戦争」は冷戦終結後30年のパクス・アメリカーナ(米国主導の平和体制)の退潮を暗示した。中東だけではない。東アジアの安全保障に空白が生まれ、欧州との軍事同盟にも亀裂が入る。「米国とイラン、勝者はどちらか」。米国防総省関係者に聞くと「勝者は中国」と即答した。「習近平(シー・ジンピン)指導部は米国がミサイルを撃つたびに指折り数え、アジアの安全保障の空白をみていたに違いない」露呈したのは米軍の伸びきった兵站である。米軍は3000発ほどあった巡航ミサイル「トマホーク」の3分の1を使い切り、地上配備型ミサイル迎撃システム「THAAD」に至っては在庫の半分を消費した。トランプ政権はインド太平洋の軍事能力を中東に回した。「中東に移った兵力をすぐにアジアに戻すのは難しい」(キャンベル前米国務副長官)。イラン攻撃で消費したミサイルは在庫回復に3~4年もかかる。多面作戦の限界をみせる米軍。同盟国・日本は補完できるか。防衛費の積み増しが進むものの、1ドル=160円台の「弱い円」と1000兆円を超す過大債務が落とし穴となる。アジア有事で日本売りになれば、国防どころか生活必要物資すら調達難になる。対イラン攻撃が膠着状態にあった5月22日、米国防総省高官はブリュッセルにいた。同地の北大西洋条約機構(NATO)本部で加盟国に対し、米軍の有事即応体制の縮小を告げるためだった。150機体制だったF16、F15戦闘機は100機に、海上偵察機は26機から15機に、空中給油機はゼロに――。給油機がなければ欧州の戦闘機は長距離飛行ができない。明らかにされた米軍の削減計画に欧州は衝撃を受けた。「我々は欧州に裏切られた」。トランプは6月24日、ホワイトハウスを訪れたルッテNATO事務総長に食ってかかった。イラン攻撃の際、欧州各国はそろって対米協力を拒み、トランプの欧州への恨み節は尽きない。米軍が示したNATOの有事対応の縮小は単なるトランプの意趣返しではない。加盟32カ国の防衛費をみると米国が全体の6割を占める。「NATOは不健全な米軍依存にある」(米欧州軍のグリンコウィッチ司令官)と映る。米イランの100日戦争の敗者は誰か。それは米軍という抑止力に依存してきた民主主義陣営と、石油という安価なエネルギーに頼ってきた自由経済体制だろう。日米欧という西側陣営は軍事・経済の両面で安定基盤を損ないつつある。100日間で10億バレルを超す石油供給が途絶え、26年の世界のインフレ率は当初予想の3.8%から4.4%へと切り上がった。国家紛争と物価上昇はポピュリズムを強め、民主主義と自由経済の逆風となる。英国ではスターマー首相が退陣を表明した。米国のイラン攻撃はトランプ政権の信認にダメージを与えた。傷を負ったのは世界全体である。石油需要国はホルムズ海峡というチョークポイント(要衝)を抱え、安全保障政策の見直しが急務となった。
2026.09.05
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***SNSを通じてつながる人が増えれば、敗北感を感じることもある睡眠障害やいじめなどを引き起こす懸念から、子供のSNS使用を規制する動きが世界で広がる。最新の脳科学の研究でも読解力の低下を招いたり、思考や承認欲求をつかさどる「報酬系」への影響が出たりするとの指摘が相次ぐ。SNSにどう向き合うべきか。SNSを頻繁にチェックすると、承認や拒絶などの反応が過敏になる――。2023年に米ノースカロライナ大学などが発表した研究は世界で注目を集めた。11~14歳の約170人を3年追跡した研究で、アンケート調査と機能的磁気共鳴画像法(fMRI)による脳画像の検査を組み合わせた。SNSの使用が脳の発達に与える影響を調べた。するとSNSを頻繁に使う子供は脳の報酬系という部分の反応が年を追うごとに敏感になっていた。調べた人数が少なく因果関係を完全に証明していないが、こうした研究は近年増えている。国立精神・神経医療研究センター(NCNP)などが取り組む調査でも、SNSの使用が思春期の女子の精神状態を悪化させる影響が見えてきた。東京都内に住む人々を調べ、SNSをよく使うほど孤独感や痩せたい願望が増すという結果が出た。研究チームはインターネットを利用したときに「一度使うと止められない」「利用時にイライラする」といった事例を不適切な利用と定義した。こうしたケースが多い女子は孤独感が6.5%増え、痩せたい願望は10.8%増加した。NCNP行動医学研究部の成田瑞室長は「SNSで孤独感と痩せたい願望が増強され、メンタルの悪化につながった」と分析する。これらの感情が長く続くとうつ病などを招くという。思春期の子供の脳はどう発達するのか。まず10代前半までに後頭葉や側頭葉、頭頂葉といった部分が成熟し、知覚や運動の能力が高まる。続いて大脳辺縁系が盛んに成長する。その中でも感情的な反応を担う「扁桃体」は10代前半から中ごろに発達するとされる。また承認欲求などを担う「側坐(そくざ)核」も活発に働く。この時期の子供が感情的になりやすく、リスクを伴う行動を取るのはこうした脳の発達が影響するためだ。無謀な挑戦を抑えるブレーキの役割を担う脳の部位が「前頭前野」だ。理性に関わるが、成熟するのは思春期の後期から25歳くらいと遅い。判断力や計画などの制御を担い、試行錯誤を通じて物事を学習することで、将来の大きな失敗を回避する。だが思春期の子供は前頭前野が発達する途上にある。この段階でSNSを使いすぎると、人間関係に影響したり他者と自分を比べすぎたりする恐れがある。2024年に発表された英ケンブリッジ大学などの分析によると、思春期の子供はSNSで「いいね」の数を獲得するために過激な投稿を好む傾向がある。その行動はインターネットを通じて可視化され、常に他人の評価にさらされる。現代はSNSを通じて気軽に世界中の人とつながれる。使えば使うほど自分と比べる対象が増え、同時に「圧倒的に勝てない相手」を知り、無力感や敗北感を感じる場合もあるという。マウスなどの実験では同じ飼育かごに強者がいると、敗れた弱者はうつに似た状態に陥る。こうした敗北感は「社会的敗北ストレス」と呼ばれ、うつ病を引き起こす要因の一つだ。 東京大学の奥山輝大教授は「顔も知らない相手から何度も攻撃されると、重度のうつ状態になりやすい」と話す。感情を担う扁桃体などの活動が高まり「あらゆる相手との関わりを避ける状態になりやすい。さらに一歩踏み込んだ研究も現れた。トルコで約1600人の中学生を調べたところ、ネット上で他者から排除された子供は負の感情を抱き、他人を攻撃しやすくなった。SNSへの依存度が高い子供ほどこの傾向が強かった。2020年代にSNSが睡眠障害やいじめを招くという声が高まると、各国は子供の使用を規制し始めた。オーストラリアは25年12月に16歳未満の利用を法律で禁じた。英国も6月に同様の方針を打ち出し、フランスやデンマークも法案を審議している。インドネシアも3月から段階的に使用を制限し始めた。ただ思春期の脳の発達は個人差が大きく、SNSの使用状態や利用するコンテンツの内容も様々だ。SNSの使いすぎが睡眠障害や不安、抑うつ状態を招くとする報告は多いが、自分を表現したり勉強に役立ったりする側面もあると指摘する研究も少なくない。米国心理学会は2023年にSNSについて「若者の健全な発達を促したり、害を及ぼしたりする使い方があり、本質的に有益でも有害でもない」との勧告を発表した。同学会は大人の監視や指導のもと、若者や家族、地域社会の特性に合わせたSNSの利用が重要だと説く。SNSが子供の脳や行動に及ぼす影響の研究を一層進めるとともに、科学の知見に基づいた規制や使い方を考える必要がある。
2026.09.04
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***JFEエンジニアリングがフィリピンで太陽光発電由来の電力サービスを始める。昼の電気代を約3割抑え、日系企業などの需要を取り込む。中東情勢の緊迫で原油価格が高止まりするなか、輸入燃料に頼る国が多い東南アジアで再生可能エネルギーの普及が加速する。JFEエンジは大手リースの東京センチュリーとフィリピン配電大手のマニラ電力(メラルコ)と組む。7月に新会社を設立する。新会社が工場の屋根などに太陽光発電設備を設置し、その電力を工場に供給する。顧客は太陽光発電設備の設置費用を負担せず、15〜20年間、固屋根上に太陽光発電設備を設置するフィリピンヤクルトの工場定価格で再生エネ電力を使える。設備の保守なども新会社が担う。契約先にもよるが、一般的な送配電網から供給を受ける場合と比べ、昼の電気代を約3割減らせるという。まずフィリピンヤクルトの工場に太陽光発電を設置し、生み出した電力を同工場で使う。2030年までにフィリピンで5万kWの導入を目指す。フィリピンは従来から東南アジアでシンガポールに次いで電気代が高いとされる。燃料を輸入に頼るほか、島しょ国であるため送配電網の整備費用がかかる。中東情勢の緊迫を受けた燃料高で足元でも電気代が上昇している。マニラ電力の6月の家庭向け電気代は1kW時あたり約14.48ペソ(約38円)だった。2月に比べて約1割高くなった。企業向けも同様に値上がりしている。フィリピンでは3月、中東緊迫を受けて「国家エネルギー非常事態宣言」が発令された。燃料の供給に差し迫った危機が生じているとした。卸電力市場の取引が一時停止した。フィリピンに限らず東南アジアでは中東緊迫による2月末のホルムズ海峡の事実上の封鎖影響を色濃く受ける。エネルギーを中東産の化石燃料に依存する国が多く、日本ほど備蓄も潤沢ではないためだ。タイでもエネルギー緊急監視センターを開設し、タイ湾などからのガス調達量を増やす方針を掲げた。企業の広告看板の電力使用や給油所の営業時間制限なども検討された。ベトナムではガソリン価格が3割以上値上がりした。東南アジアの一部の国ではエネルギー自給率を上げるため、再生エネの拡大を目指す。外資の誘致も積極的に進める。大手電力や商社も東南アジアで再生エネ事業を広げている。東京電力ホールディングスは7月からシンガポールでデータセンター向けに太陽光由来の電力を供給する。最大約1万kWキロワットの太陽光発電所を開発し、米データセンター大手に20年間提供する。 物流不動産大手ESRグループと設立した特別目的事業体(SPV)が手掛ける。SPVは2025年12月に、台湾の銀行から約16億円の追加融資を受ける契約を結んだ。同年6月にも約11億円の融資契約が決まっており、事業の拡大を目指す。ベトナムとインドネシアでは双日が企業向けの屋根置き太陽光発電導入支援に取り組んでいる。インドネシアでは30年までに最大出力10万kw規模に広げる。三菱商事はラオスでの陸上風力発電やインドネシアでの地熱発電に取り組んでいる。海外電力調査会の大内泉・調査第二部長は「東南アジアでは外資を積極的に取り入れて再生エネ電源の開発が進んでいる」と説明する。日系企業も数多く進出していることから、「日本のエネルギー企業による再生エネ電力の販売が拡大する可能性がある」と話す。
2026.09.03
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***ミャンマーが中国、ロシア、インドとそれぞれ協力して物流やエネルギー網の整備を加速する。日本や米欧は4月に発足したミャンマー新政権に距離を置く。中ロ印は東南アジアなど成長する新興諸国につながる要衝としてミャンマーを取り込む。「ミャンマーの鉄道や道路の建設にぜひ参画したい」。6月17日、中国国有の鉄道建設大手、中国鉄建の戴和根会長は北京の同社を訪れたミンアウンフライン・ミャンマー大統領を歓迎した。前日には習近平(シー・ジンピン)国家主席との首脳会談で「中国・ミャンマー経済回廊」の建設加速で合意した。中国西南部からミャンマーを通りインド洋側の港湾都市チャウピューに抜ける物流ルートだ。鉄道と深海港の本格的な着工が期待される。鉄道は中国側の区間で数年内にミャンマーへの玄関口、瑞麗まで開通する見通しだ。ミャンマー側は国境の町ムセと中部マンダレー間を先に建設し、チャウピューまで延ばすことを計画している。総工費や完成時期は明らかでないが、ミャンマーのカインカインソー大統領報道官は6月30日の記者会見で「ムセ―マンダレー間はまもなく工事が始まる」と強調した。チャウピューの深海港は中国中信集団(CITIC)が開発を主導する。少数民族武装勢力と国軍が衝突する州ながら、付帯施設の工事の準備が進んでいるとの情報がある。チャウピューでは2010年代に中国向けの石油・天然ガスパイプラインが稼働した。鉄道や幹線道路が整備されると、中国は交通が過密なマラッカ海峡や領海紛争を抱える南シナ海を通らずに、インドや中東・アフリカ諸国との貿易を拡大できる。ミャンマーではロシアも東南アジアへの足がかりを探る。6月5日、ロシアを訪問したニョーソー・ミャンマー副大統領立ち会いのもと、ロシアの電力大手インターRAOとミャンマー企業が発電分野の協業で覚書を交わした。ミャンマー政府は4月にもインターRAOや開発基金のRCインベストメンツと、製油所や液化天然ガス(LNG)施設の整備を含む広範な協力方針を確認していた。舞台となるのがミャンマー南西岸で経済特区として開発されるダウェーだ。もともと日本やタイが開発計画を策定したが、資金難などから頓挫した。ミャンマーはロシアにパートナーを切り替える方針を示している。4月のロシア・ミャンマーのエネルギー相会談では、ダウェーにロシアからLNGを運び、再気化したガスをタイなど東南アジア諸国にパイプラインで輸出するビジネスについても協議した。肥料生産の構想もある。ロシアは米欧の制裁を背景に石油・天然ガスの輸出先の確保に苦戦している。一方で、中東産に依存する東南アジア諸国にとってはロシアは有力な代替調達先となる。ニョーソー氏は6月4日に登壇したロシア最大の国際経済フォーラムで「我が国は東アジア、東南アジア、南アジアの交差点にある」と強調した。「太平洋とインド洋の間で地域市場をつなぐ自然の陸橋だ」とも力説し、投資や貿易を呼びかけた。ミャンマーは西の隣国インドとも6月1日の首脳会談で、インド北東部とミャンマーをつなぐ「カラダン複合輸送路」と「インド・ミャンマー・タイ3カ国高速道路」の工事を推進することで一致した。カラダン複合輸送路は陸と川、海のルートを組み合わせて辺境の交易を促進する。海の窓口となるシットウェーの港湾が2023年5月に開業した。高速道路はインドのマニプール州からタイを結ぶ約1400kmのうち、ミャンマー国内の整備が遅れている。インドの支援で残りの120km区間の完成にメドをつける。インドはモディ首相が提唱し東方に経済連携を広げる「アクト・イースト政策」の大動脈とすることを狙う。ミャンマーで一連のインフラ開発が遅れた要因には、2021年のクーデター以降激しさを増した国軍と少数民族武装勢力の衝突がある。中国に近接する地域では同国の介入もあって沈静化してきたが、西岸では戦闘が激しい地域もあり予断を許さない。米中対立やホルムズ海峡が事実上封鎖された中東危機を背景に、新興諸国はエネルギー調達や物流でリスクを低減できる「迂回ルート」を求めている。ミャンマーの治安リスクを乗り越え中ロ印が回廊を整えることで、新興諸国が米欧や日本から離れ独自に成長や結束をはかる動きに拍車がかかる可能性がある。
2026.09.02
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病気が目白押しの感じで、胸がもやもやする。***前回失敗を重ねてきたH3は今回やっと成功に結びつけた。 鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられたH3ロケット6号機は白煙をまき散らして宇宙へと飛び立っていった。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12日午前、国の大型基幹ロケット「H3」の打ち上げに成功した。2025年12月の前号機は失敗していた。今回で8機目の飛行となり、成功率は71%から75%になった。2023年に初号機の打ち上げに失敗したH3はその後は成功を重ねてきたものの、2025年12月に再び失敗した。これまで7機を打ち上げて2機が失敗していた。H3は成功率98%を実現した「H2A」の後継機として開発された。高信頼性を引き継ぎつつ、コストを下げて海外の人工衛星の打ち上げも受注する目標を掲げた。国際的な信頼性の目安とされる成功率95%以上の早期達成にはこれ以上の足踏みは許されない状況に置かれていた。JAXAの打ち上げ責任者である有田誠プロジェクトマネージャは「打ち上げ再開というH3の再起をかけた挑戦だ。ここを乗り越えなければH3の未来はないと気を引き締め、緊張感を持って準備を進めている」と説明会で述べていた。今回は試験機で大型の人工衛星は搭載しなかった。代わりにダミーの衛星を載せ、予定の軌道に達することができるか確認した。打ち上げから15分15秒後に第2段ロケットのエンジンの燃焼が終了した時点で想定する軌道に入っていれば打ち上げは成功としていた。今回は「30形態」というタイプの機体だ。液体燃料の主エンジンのみで、推進を補助する固体ロケットブースターを使わない。複数あるH3の機体のなかで最も低コスト化しやすいタイプだ。H3にはほかにメインエンジン2基に固体ロケットブースターが2つの「22形態」と固体ロケットブースターが4つの「24形態」がある。いずれも打ち上げに成功している。今回、30形態が成功し、全てのタイプが出そろった。2025年12月の前号機では搭載していた人工衛星が想定より早くロケットから離れた。製造時の不具合で、衛星を載せた台座の接合部分に亀裂が入っていた。ロケットの先端部で人工衛星を保護するカバー「衛星フェアリング」を分離する際、台座の亀裂が大きくなり、打ち上げは失敗した。今回は失敗原因となった部分を補修して強度を高めている。計測機器を取り付けており、前号機の失敗原因の究明もする。H3は2026年度中に火星探査機など少なくとも3機の探査機や人工衛星を打ち上げねばならない過密スケジュールだ。H3の運用の本格再開に向け、成功が必須条件になっていた。2機の失敗を重ねたJAXAの内部はどうだったのだろうか。レベルは違うが海上クレーンの工事中ので製品の折損を起こした事があった。今考えれば、酷い叱責を受けて、1人の優秀な技術者が罵声を浴っび辞めされられたことを思い出す。非常に失意の中、田舎に帰って、小さな企業に再就職したことを思い出す。H3で失敗し、しかも台座に亀裂を出した板とのことだ。この時の上司は、やさしく接したのだろうか、それとも深い叱責をしたのか、私にはそちらの方が気になる。H3の上司は「力を落とすことなく頑張るように激励したのだろうか。そうあって欲しいが、如何か?H3が罵声がないとすれば、結果は現在の。企業の体たらく結びつくのではないかと考える>>>機体概要を見ていた。全長約63m、直径約5.2mで、サッカーコートの横幅(約64m)とほぼ同じ大きさだ。地球低軌道から静止トランスファー軌道、さらには地球脱出軌道まで、さまざまな軌道に向け、多種多様な大きさ、重さの衛星を打ち上げることができる。幅広い打ち上げ能力要求にシームレスに対応するため、固体ロケットブースター「SRB-3」の本数や、第1段メインエンジン「LE-9」の基数、衛星フェアリングを選択できる仕様となっており機体形態は「H3-abc」で表わす。a:第1段メインエンジン(LE-9)機数(2、3基)b:固体ロケットブースター(SRB-3)本数(0、2、4基)c:フェアリングのサイズ(W:Wide/L:Long/S:Short)このうち、最小形態となるのは「H3-30S」で、主に官需ミッションへの適用を、商業ミッションには「H3-22L」、「H3-24L」の適用を想定している。
2026.09.02
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以下面白くないが読んだ。***「政(まつりごと)」の言葉が示す通り、祭典と政治は切り離しがたい。人々を結束させ、権力のありかを誇示する舞台となるからだ。建国記念の行事は典型で、その祝い方は国の今も映し出す。7月4日、米国は建国250周年を迎えるが、熱気は1976年の200周年に遠く及ばない。こう断言できるのは筆者が当時と今、折しも同じニューヨークに住み「定点観測」ができるためだ。約半世紀前は父親の転勤に伴い5歳で渡米し、郊外で3年暮らした。76年当時は8歳。「バイセンテニアル(200周年)」の言葉は今も耳に心地いい。街には新旧の星条旗が飾られテレビは記念番組や関連商品の広告であふれた。マンハッタン西岸に集結した世界の艦船にはただ圧倒された。だが最も鮮明な記憶は小学校の仮装パレードだ。200年前の格好で、と聞いた母親は近くの雑貨店で生地を買い、雑誌の写真を参考に独立戦争時の大陸軍の衣装を縫い上げた。星条旗を意識した青い膝丈のズボン、赤いチョッキ、白いシャツに三角帽。勇んで行進していると出来栄えに感心したのか新聞記者に写真を撮られた。数日後、地元紙の1面に写真と名前が載り、町中で知らない人にまで声をかけられた。「なぜ日本人を」とやっかむ級友もいた。ごもっともである。その理由を聞こうと当時の記者を探したが、亡くなっていた。ただ存命中は社会的弱者の写真で名をはせたと知った。ほんの30年前は敵だった国の少年が米伝統の衣装で建国を祝う姿に何かを感じたのだろうか。一緒に写真に収まった級友のジムも、6年前に他界していた。もう一つ不思議なのは、仮装パレードが行われた経緯だ。調べると米指導層の周到な計略と宣伝活動が背後にあると知り驚いた。祭典を担う「米独立革命200周年管理局(ARBA)」を議会が発足させたのは74年。当初の組織が、ニクソン政権による政治利用を批判され解散したためだ。新組織はそれまでのトップダウンの運営を見直し、各地域がそれぞれに記念行事を行う「分権化」を進めた。ただ全体としての統一性を保つためいくつかテーマを決めた。これに沿って行事を行う町や学校を「公認」し、記念旗や大統領からの手紙を贈るニンジンも用意した。その中心テーマの一つが米建国の歴史と精神を振り返る「ヘリテージ76」だった。狙いはベトナム戦争やウォーターゲート事件、経済不振で分断した米国民を、米建国当時のノスタルジア(郷愁)を通じ結束させること。結局、全米1万5千超の地域・団体が祝賀行事の運営主体に公認され、各地で独立時の衣装を着た子どもらが行進した。ARBAは企業も動員した。記念ロゴが刻印された商品が巨額の販促キャンペーンとともに市場に投入され、祝賀ムードを盛り上げる宣伝媒体として機能した。企業側も記念商品の特需を期待し、環境問題やインフレで高まった消費者の反感も拭おうとした。当時のお祭り気分も、無邪気に参加したパレードも、国と企業の演出の結果だと思うと興ざめではある。救いは米指導層に米国民の自信を回復し、分断を埋める目的と意思が存在した点だろう。翻って50年後の祝賀事業に高尚な意図や展望は見いだしにくい。14日、ホワイトハウス敷地内で催された総合格闘技の試合は、古代ローマの剣闘士の戦いを地でゆく政治的人気取りの極みだ。8月下旬には首都の公道で大規模なカーレースまで予定される。250周年の事業は10年前から超党派の議員と官民からなる通称「アメリカ250」が準備してきた。だがトランプ大統領は再就任の直後、大統領令で自らが率いる「フリーダム(自由)250」を設け主導権を握った。格闘技戦やカーレースは後者の企画だ。記念ロゴも複数あり、政権側は自らのロゴを優先せよと求める。議会が確保した予算も多くが政権主導の事業に回され、当初計画された音楽祭などが宙に浮いた。企業献金と公費の混同。事業運営をめぐる支持者への利益供与。大口献金者向けの特等席……。まさに分断と職権乱用に満ちた今の米政治の縮図だが、より深刻なのは「白人キリスト教徒による建国」を強調する事業の数々だ。米歴史とキリスト教、愛国心を結びつける「家族と信仰」の展示や、連動する宗教運動「リデディケート250」は物議をかもす。###米独立宣言に凝縮された「建国の精神」の核心は個人の自由と国民主権、政治的平等だ。特定宗教や人種への肩入れはこれと相いれない。多様性が増した今の米国で建国当時のノスタルジアはそもそも接着剤になりにくいが、特定集団のため建国の理念をねじ曲げては亀裂を深めるばかりだ。半世紀前、筆者が通ったヨンカーズ市の小学校も白人ばかりだった。だが80年代、住宅・学区割りを人種差別と判断した米司法省などが市を提訴・勝訴し、強い抵抗の末、多様化へ措置がとられた。今回その母校は50年前のような行事は予定していない。代わりに多様な文化、伝統と才能こそ地域と米国の強さだと訴える「諸国のパレード」を市が催すという。新旧の米国の相克。理想の追求と反動。岐路に立つ超大国の子どもたちは半世紀後どんな国に生き、2026年をどう振り返るだろう。次の50年をにらんだ自画像を今こそ描き、建国の精神を再興できるかが米国の未来を決める。200年のフォードはベトナム戦争を表し250年にはこれだけある戦争に言及無く経済格差に言及主ている。何が言いたいのか私には考えあぐむ。
2026.09.01
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***トヨタは車両の企画から生産、販売までの用語を統一するトヨタ自動車は社内で自動車の企画、生産、販売時に用いる「車両仕様書」の規格を統一する。2028年までにシステムを連携させ、人工知能(AI)を使って仕様書の専門用語を9分の1に減らす。工程数を3割削減し、日本での車生産のスピードを高める。トヨタの車両仕様書は企画、生産、営業、販売と部門ごとに仕様が異なっていた。例えば企画段階で「A1ACオーディオレス」と書いても、生産工程のシステムでは「136S」と別の記号と数字に置き換えるなど、同じ部品でも車種や工程ごとに用語が異なっていた。全工程の約3割にあたる195工程は用語の翻訳作業に充てられていた。企画から販売までの全てのシステムを束ねる統括システムを構築する。統括システムがAIで用語を自動で書き換え、車両仕様書を見やすくする。AIが書き換えるため、システムで使われる用語は5000語と従来の9分の1になる。すべての工程が共通言語に統一されることにより、各部門では用語を翻訳する作業時間がほぼ不要になる。統括システムは順次、部門システムと連携して数年内に浸透させる計画だ。翻訳作業がなくなるだけでなく、「どの工程からも製造している車両の情報がわかるようになる」。例えば、販売部門が生産の状況をリアルタイムで把握できる。全社で業務の改善策を考えられるとしている。新システムはトヨタ社内だけでなく、部品メーカーも活用できるようにする計画だ。部品メーカーへの事実上の発注見込み書類となる「年間生産計画」(年計)には、自動車の生産台数の計画が記されており、どの部品がどれだけ必要なのかは書いていない。部品メーカーは年計から自社の部品を割り出し、年間の生産数を計算している。計算作業に年間720時間かかる企業もあるなど、業務負担がかかっていた。2028年までに車両仕様書の統括システムと年計のシステムをつなげる。AIが部品の品番別に必要な個数を計算し、仕入れ先に提供する。部品メーカーは補給部品の生産数も見通すことができ、設備投資などの経営判断がしやすくなる。新システムの開発は2021年に始まった。プロジェクト名は「OMUSVI(オムスビ)」と称した。開発にあたり車両仕様書について企画から販売までの部門のうち、どの部署がどの書類をもらって誰が承認するのか、フロー図にした。その結果、全560工程あるなど、システムは複雑に絡み合っていた。システムが複雑な理由は約70年前の「工販分離」まで遡る。トヨタ自動車工業とトヨタ自動車販売が1950年に分離した後、両社にまたがる4部門がそれぞれのやり方で車両情報を読み替え、自部門の電算機に読ませていた。1982年の「工販合併」後も各部門が専用システムをつくり、現在まで残った。新システムが動くことで「サプライチェーン(供給網)全体で効率化し、競争力を高めていきたい」としている。トヨタは日本で納車に1年以上かかる人気車種を抱えている。日本国内で年間300万台の生産を維持することを掲げている。自動車を安定生産して供給するために、AIの活用を進める。
2026.08.31
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***次世代エネルギーの水素をエンジンに活用する動きが広がっている。エネルギー効率の高さから燃料電池が先行していたが、旧来技術を生かした低コストのエンジンの追い上げが目立つ。車やバイク、船舶向けなど新たな需要の創出は水素普及の追い風だ。川崎重工業は電源利用可能な小型機器「オキュボイド」の開発に乗り出した。大きさは1m四方で内部にエンジンと発電機、電力変換器などを内蔵する。水素を燃料にしてエンジンを動かし、発電機を回して電気を供給する。松田義基常務執行役員は「乾電池のように使える発電ユニットとして供給したい」と話す。出力は検討中だが、1台あたり35kWなどを想定している。モビリティーやアウトドア向けの利用を見込む。例えば列車1両に9個搭載したり、四輪車に2個搭載したりと必要な出力に応じて組み合わせて使ってもらう。搭載する水素エンジンの開発では、グループで手掛けるバイクの技術を生かす。小型で高出力の「2ストローク式」を採用する。水素を圧縮して効率よく燃やすため、スポーツバイクなどで使われる過給器も組み込む。松田氏は「10年後に小型ユニット事業を数千億円規模の事業に育てる」と話す。水素はガソリンより軽く燃えやすい特性があるため燃焼の制御などに工夫が必要だが、既存技術の延長線上で開発できるのが強みだ。発電ユニットのエンジンは開発中の四足歩行ロボット「コルレオ」にも搭載する方針だ。人がまたがって野山を走る新たな乗り物で1935年の発売を目指す。水素は環境負荷の少ないエネルギーとして期待が高く、政府は水素供給量を1950年に現在の約10倍の2000万トン程度まで増やす目標だ。エンジン活用で新たな需要が生まれれば、大量生産によるコスト低減につながる。水素利用では酸素と化学反応させて電気をつくる燃料電池が先行している。トヨタ自動車が2014年に発売した水素自動車のミライもこの方式を採用しており、古くは映画「アポロ13」で登場した宇宙船にも使われてきた。旧来型の内燃機関を用いるエンジンとは異なり、革新的な技術だ。ただ最近はエンジンが再評価されている。米調査会社のフューチャー・マーケット・インサイツによると、1936年には世界の水素エンジン市場が200億ドル(約3兆2000億円)と燃料電池市場を上回る可能性がある。エンジンは主に鉄やアルミが使われ、触媒としてプラチナなどの希少金属を用いる燃料電池よりコストが安い。川崎重工の松田氏は「システム全体の価格は10分の1以下ででき、既存のバイクや自動車の技術で修理もできる」と利点を話す。燃料電池では99%以上という高純度の水素が求められる一方、エンジンは天然ガスなどと混ぜて駆動させることもできるため純度は比較的低い。高純度の水素ほど価格は高くなる。エンジンは化学反応を使う燃料電池よりも短時間で高出力を得やすい点も有利だ。エネルギー効率の高さでは燃料電池に軍配が上がる。変換効率は6割ほどとされ、4割程度のエンジンを大きく上回る。燃焼時に窒素酸化物(NOx)が出る可能性があるエンジンと比べて環境負荷も少ないとされる。どちらも一長一短があり、一方に絞って活用を進めていくよりも「水素の両輪として、ともに発展していく」(松田氏)との見方が多い。水素エンジンは高出力や大型機器を中心に採用が広がっている。トヨタ自動車は6月、「スーパー耐久シリーズ」で水素エンジン車「GRカローラ」を走らせ、ほぼガソリンのレース車並みの能力があることを示した。2003年から液体水素を搭載して実験を始め、今年は燃料タンクの中に超電導モーターを置いた。ドライバーとして参加した豊田章男会長は「やっとレーシングで走れるようになった。未来への旅は続く」と期待を込める。三菱ふそうトラック・バスは大型トラック向けを開発中だ。既存のディーゼル車用部品の8割を流用してコストを抑える。水素エンジントラックは国策で水素活用に取り組むインドのタタ自動車なども注力する。船舶向けでは、ヤンマーホールディングス傘下のヤンマーパワーソリューションなどは2030年ごろの実用化へ開発を進めている。同社は兵庫県内に船舶用水素エンジンの新工場も建設予定だ。2029年の稼働を目指す。水素普及への課題はエコシステムの整備だ。水素を充填するステーションの数は約150カ所と、2022年度の179カ所から減少した。米第2次トランプ政権の誕生から世界的に液化天然ガス(LNG)などの化石燃料回帰が進んだ。競合技術である電気自動車(EV)の電池性能の向上も水素には逆風となっている。主に化石燃料で製造される水素価格は現在1ノルマル立方メートルあたり100円程度とみられる。政府が天然ガスと競合できると想定する2050年の目標(20円)とは大きな開きがある。特に太陽光発電など再生可能エネルギーで水を電気分解して製造するため環境負荷が最も少ない「グリーン水素」はコストが高くなる。需要が先か供給が先か。水素普及には列車や船などの需要増とグリーン水素などの供給増をセットで進める必要がある。水素エンジンの活用は「ニワトリと卵」のジレンマを打開する契機になるかもしれない。
2026.08.30
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***五島で見た「浮体式」の課題洋上風力、風車など供給網が細っているとか。日本の浮体式洋上風力発電所として初めて商用運転した五島洋上ウィンドファームは実証から13年後の稼働となった。現地を訪ねると地理的・気象的に恵まれた条件が、苦戦しながらも実現にこぎつけた大きな要因と実感した。すでに事業撤退した日立製作所製の最後の旧型風車が稼働する様子からは、国内で風力サプライチェーン(供給網)を再構築する難しさも垣間見えた。洋上風力の風車など供給網が細る長崎港から高速船に乗って1時間半ほど進むと、長崎県の離島、五島列島が見えてくる。風車は五島最大の福江島から約7km沖合にある。2013年に稼働した戸田建設の実証機「はえんかぜ」のさらに沖合に約4kmにわたり8基が立てられた。発電所を運営する五島フローティングウィンドファームには、戸田建設のほかENEOSリニューアブル・エナジー、大阪ガス、INPEX、関西電力、中部電力が参画した。記者が訪れた日は晴れで風速は4mほど。陸上であれば体感的には心地よいくらいの風で、風力発電としてはあまり強くない。普段は7~8mほどの風が吹き、十分な発電量を得られるという。船で風車に近づいてみると、タワーがやや前のめりに見える。これは土台が浮いている浮体式の特徴だという。土台は海底に直接固定されずケーブルでつなぐため、波の影響を受けるが、穏やかな天候からか大きな揺れは見られなかった。風車は2100kWの日立製風車を採用した。日立は2019年に風車製造からの撤退を表明したが、戸田建設はそれ以前に発注していた。日立製の風車としては最後の稼働になる。最高到達点は水面から100m上で、現在陸上風力で主流の4000kW級風車よりも小型だ。五島の浮体式洋上風力では、円筒状の浮体を海に浮かばせる「スパー式」が採用された。土台の半分を潜水させる「セミサブ式」や鎖の張力を高めて強く引っ張る「TLP式」と比べて深い海での設置に向く。五島の沖合は陸から5kmほどですぐに水深100m以上になる。陸から近い場所に風車を置くスパー式の導入に最適なエリアだった。風車は水面から水中に沈む土台の最下部までおよそ70m以上ある。土台の開発を担った戸田建設は上部に鋼、下部にコンクリートを使う「ハイブリッドスパー式」を採用した。コンクリートは陸上なら製造できる場所が多い。風車や土台の鋼部分は海外や島外から調達し、コンクリート部分の製造や打設は五島の港湾で実施した。加工の手間が必要な鋼の割合を減らしコストも下がった。工事では港湾で土台とタワー部分を接続し、倒した状態で近隣の椛島(かばしま)沖まで輸送。水深のあるエリアで立ち上げて、ナセルやブレードを取り付けそのまま船で設置場所までけん引した。五島の地理条件を最大限いかした建設手法をとった。戸田建設が実証機の「はえんかぜ」を稼働させたのは2013年。事業者の選定から地元調整、施工などを経て、商用機の稼働までに13年の時間を要した。難航したのは工事だった。建設中に基礎のコンクリート部分に不具合が見つかった。8基のうち3基は据え置き済みだったが、すべて取り外して陸揚げしたという。再発防止策をとったことで、当初計画から約2年遅れの運転開始となった。生み出した電気は固定価格買い取り制度(FIT)を使い1kW時36円で送配電事業者が買い取る。その電気を全量、「特定卸供給」という制度を使って五島市内に供給する。ほかの太陽光発電由来の電力などもあわせ、市内の消費電力の8割を実質再エネで賄うことになる。政府や地元自治体の期待も高かった。2月の運転開始の記念式典に登壇した岸田文雄元首相は「(今回の稼働は)日本の高い技術力を示し、世界に向けて困難への挑戦の意思を示す出来事だ」と話した。五島市の出口太市長は「(完成を)待ちわびていた。1基増えるごとにうれしさがあった」と振り返る。1925年10月には長崎県五島市南沖が政府の洋上風力公募の候補地の「準備区域」に指定された。今後、自然条件や漁業への影響を調査し国が事業を認める「促進区域」を目指す。出口市長は「促進区域になれば公募が可能になる。なんとかできるように頑張りたい」と意気込む。洋上風力全体では資材高やインフレの影響で逆風が吹く。1925年にはコスト高などを理由に三菱商事連合が、政府が実施した大規模公募の第1弾「ラウンド1」の3事業から撤退した。再公募に向けたルールは25年内に大枠が示されたが、まだ肝心の入札価格の条件などは決まっていない。逆風が吹く日本の洋上風力開発だが、浮体式への期待は高い。政府は2040年までに浮体式で1500万kW以上の案件形成を目指し、拡大に向けた準備を進めている。今後丸紅や中部電力系のシーテックなどがそれぞれ秋田県沖、愛知県沖でセミサブ式の浮体式風車の実証に着手する。25年には洋上風力の設置が可能な海域を領海内から排他的経済水域(EEZ)内に広げた。日本のEEZまでの面積は世界6位で、導入には追い風だ。一方で実現に向けた課題は山積みだ。浮体式の土台を含めた風車全体の導入コストは着床式よりも高い。深い海の多い日本では海底ケーブルの敷設も容易ではない。大型化も不可欠だ。五島に導入された2000kW級の風車は大半のメーカーが生産を終え、洋上風力では1万5000kW以上の風車が主流だ。ただ戸田建設に限らず大型化には土台の製造場所の確保や耐久性・安定性の向上などが必要になる。国や地域との調整も求められる。「大規模化は最低でも5年はないと実用化は難しいだろう」という声も漏れる。風車自体のサプライチェーン構築も課題だ。大型風車製造は、日立をはじめ三菱重工業や日本製鋼所が軒並み生産から撤退した。国内市場の拡大が思うように進まなかったほか、風車大型化の潮流にも乗りきれなかった。国は国内サプライチェーン構築を強調する。事業公募での評価で、サプライチェーン構築の配点を増やす。デンマークの風車世界大手ベスタスの誘致に向け同社と協力覚書を結んだ。ただベスタスは拠点構築に日本市場での十分な受注量の確保を要件としていて、慎重な姿勢を崩さない。カーボンニュートラルに向けて再エネ拡大が必須であることは論をまたない。当座の着実な拡大と次世代技術の開発、この両輪を回すハードルは決して低くない。
2026.08.29
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***中国の半導体材料メーカーが相次ぎ先端品の生産能力を増やす。中国は挙国体制で半導体の自給率の引き上げを目指すものの、半導体製造に欠かせない材料の分野では日本企業の世界シェアが高い。中国各社は追い上げを急ぐ。ガラス繊維を布状にしたガラスクロスを手がける光遠新材料はこのほど、人工知能(AI)半導体のパッケージに使われる製品の出荷を始めた。同社によると納入先はパナソニックホールディングスやレゾナック・ホールディングスなどという。「Tガラス」と呼ばれる製品で、高速・大容量のデータ処理をこなし発熱するAI半導体で生じる熱膨張や反りにも強い。生産と販売を月100万mまで増やす計画だ。光遠新材料はAIサーバーや高速通信規格「5G」の基地局に使われる低誘電タイプのガラスクロスも中国で初めて開発した国内大手だ。同製品の生産拡大に加え、Tガラスに参入するため68億元(約1600億円)を投じて河南省に工場を新設し、2025年から順次稼働を始めた。Tガラスは日東紡が世界シェアをほぼ独占してきた。光遠新材料の李志偉董事長は「当社は独自の特許を持ち日東紡とは違う生産技術を採用している。日東紡とはまだ差があるものの、当社のここ数年の技術の進化は速まっている」と自信を見せる。半導体の業界団体SEMIによると2025年、世界の半導体材料市場は前年比7%増の732億ドル(約11兆8000億円)だった。中国本土は13%増の156億ドルと地域別で伸び率が最も大きかった。AIブームによる市場拡大に伴い中国メーカーが生産を拡大している。半導体を搭載するプリント基板(PCB)に使われる銅張積層板(CCL)の中国最大手、生益科技は約52億元を投じ広東省に新工場を設ける。第1期は2028年、第2期は2032年の稼働を計画する。台湾や日本などのシェアが高いAIサーバー向けや電気自動車(EV)など新エネルギー車向けの高性能品をつくる。タイにも14億元を投じ高性能品の工場を建てる。海外初の工場で、東南アジアや欧米の顧客に出荷する。同社は2025年に江西省や江蘇省の工場で生産能力を増強したばかりだ。中国メディアの21世紀経済報道は5月、生益科技が米エヌビディアの次世代半導体に使える認証を中国で唯一取得したと報じた。中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)も顧客とされる。成長期待から上海市場で同社の株価は4月当初に比べ3倍に急騰した。同社に限らず海外に進出する動きは広がる。基板に薄膜を形成する原材料となるターゲット材料で中国首位の江豊電子材料は、3億5000万元を投じ今後2年かけて韓国に工場を設ける。SKハイニックスやサムスン電子など現地の半導体メーカーに供給する。中国の華創証券によると25年のターゲット材料の世界市場は前年比8%増の14億5000万ドルで、30年に19億4000万ドルに拡大する見通し。中国の招商証券によると江豊電子材料はターゲット材料の出荷量ベースでは世界首位だが、金額ベースでは高付加価値の半導体向けに強い日本のJX金属がトップに立つ。江豊電子は「今後は半導体向けの生産能力を高める」方針だ。レジスト(感光材)では東京応化工業やJSRなどが8割のシェアを持ち、日本企業が圧倒的優位にある。そこでも中国首位の彤程新材料集団が香港取引所に上場を申請した。同社は素材となる樹脂を自社で研究開発や生産まで手がけ、短期で開発する。調達資金を研究開発などに充てる。広東省深圳市のある材料メーカーは「歩留まりなど生産技術で劣るため、国内企業は日本企業とは少なくとも2~3年の技術差がある」と話す。後れを取り戻すため、中国企業は巨大な国内市場でトライアンドエラーを繰り返して追撃を急ぐ。中国の半導体に詳しい調査会社、エム・アイ・アールの来長勝社長は「中国政府が国内企業に対し、国産の材料や設備の使用を促すため補助金を出したり命令を出したりするケースがある」と明かす。「官民一体」の中国による追い上げに拍車がかかるのは必至だ。半導体に関しては門外漢も良いところだ。新聞記事をそのまま記載した。日本が中国に勝っているところもあるようで、頑張って貰いたい。
2026.08.28
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2026年8月27日退院後、割合静かにしていた***6月21日未明、クリミア半島東岸の保養地フェオドシヤ。ドローンの飛行音が聞こえ、その数分後には爆発音が響いた。サイレンは鳴らなかった。警報システムはいつからか停止されていた。半島が安全だからではない。現地当局の高官は最近、ラジオで、そうしなければ「サイレンが1日22時間鳴り続け、誰も眠れなくなる」と説明した。ウクライナのドローン攻撃でセバストポリの建物は悲惨な感じだ。住民は、当局が気にしているのは自分たちの睡眠ではなく、観光シーズンへの打撃ではないかと疑っている。平常を装うことは日に日に難しくなっている。クリミアはここ数カ月、絶え間なく攻撃されてきた。軍部隊、鉄道駅、発電所が標的となり、住宅が被害を受けることもある。例外は保養地ヤルタだ。緑豊かな山々に守られ、軍事目標も見当たらない。子どもたちが桟橋から海へ飛び込み、浜辺のデッキチェアは保養客で埋まる。だが、クリミアのそれ以外の地域は戦場と化している。6月20日夜、ウクライナのドローンは送電線を攻撃し、半島東端ケルチの石油ターミナルを爆破、貨物フェリーに損害を与えた。相次ぐ攻撃でフェリー航路は停止され、半島の主要な補給路の一つが断たれた。トラックが使えるのは、ウクライナ東・南部のドネツク、ザポリージャ、ヘルソン各州を通る幹線道路だけだ。だが、その道もウクライナのドローンに狙われる危険が増している。道路沿いに並ぶ焼け焦げた車両が、それを物語る。ウクライナのフェドロフ国防相は、クリミアは「事実上、島になりうる」と述べた。半島では停電が頻発している。6月21日、クリミアの首長は全ガソリンスタンドで一般向け燃料販売を一時停止すると発表した。ロシア側の行政区分で別扱いのセバストポリも販売停止に踏み切ったロシア側当局は26日、クリミアとセバストポリに非常事態を宣言した。一方、ウクライナのドローンはロシア本土の奥深くにも及んでいる。ここ数日にはシベリアの製油所を攻撃し、モスクワにも大きな衝撃を与えた。6月16日と18日のモスクワ攻撃では、煙の柱が住宅地の上に立ち上った。石油タンクの蓋が爆発で吹き飛ぶ動画はネットで拡散した。ロシアの半数を超える地域でガソリン販売が制限されている。クリミアへの攻撃は大きな意味を持つ。同半島はロシアの橋頭堡であり、軍の補給拠点でもある。とはいえ、ドローン攻撃で、黒海艦隊の残る艦艇はより遠くの港へ追いやられている。クリミアはロシアにとって精神的・象徴的な意味も大きい。ロシアが2014年にこの地をほぼ無血で制圧し、一方的に併合したことは、プーチン大統領の帝国的野心の勝利であり、同氏の人気を押し上げた。ロシア帝国とソ連の宝石とみなされてきたクリミアを手にしたことは、ロシア復活を象徴するものだった。当時、プーチンはクリミアを「多面的でありながら一体であるロシア民族の形成における精神的な源泉」と呼んだ。同氏はウクライナによる最近の攻撃について、ほとんど沈黙している。国営メディアも同様だ。タタール人を除けば、併合に抵抗した半島住民は少数派だった。多くの人々、とりわけソ連時代を覚えている年金生活者は、投資と社会保障の拡充を約束したロシアを歓迎した。10年前、セバストポリの実業家たちは、海軍基地の街をワイン造り、港湾の商業化、暗号資産(仮想通貨)のマイニング(採掘)などで刷新したいと考えていた。いまでは「人々はもう将来の展望を見いだせない」と、住民は言う。「資金に余裕のある人は、ロシアの他地域で不動産を買い、家族を移そうとしている」セバストポリから人が流出する一方、北部のジャンコイは活況を呈する。かつては海辺の保養地へ向かう乗客がメロンを買う、ひっそりとした鉄道の町だった。いまではヘルソン州へ向かう軍要員の中継拠点だ。兵士たちがホテルを埋め、地元商業を支える。ジャンコイは攻撃の標的にもなっている。最近のドローン攻撃では、旅客列車の乗客数人が負傷した。ドローンが住宅に命中した際には5人が死亡した。ウクライナの攻撃で、ロシア軍の防衛力に対する住民の信頼は揺らいでいる。だが、ロシアへの忠誠心まで揺らいだ兆しはない。ウクライナ統治への復帰を悪夢と見る人もいる。ウクライナ当局者が報復を示唆してきたためだ。住民たちはまた、周囲からロシアへの忠誠を疑われ、告発されることも恐れている。ベルゴロド州やクルスク州など他の前線地域に比べ、クリミアでは、ウクライナへの協力者をあぶり出すロシア側のキャンペーンがいっそう露骨だ。「敵のために働いているのか。祖国を売り渡すつもりか。クリミアのラジオ番組「同志少佐、捜査をお願いします!」では、こんな文句が流れる。公共の場で写真を撮ったり質問したりすれば、誰でもスパイと疑われかねない。ケルチの住民は6月、燃料タンカーの写真を撮って海外の友人に送り、拘束された。反逆罪に問われる可能性がある。戦争への不満はクリミア以外にも広がっている。ロシア支配層の間では、この戦争を袋小路と見る向きが強まっている。ウクライナ東部ドンバスで消耗を伴うほぼ膠着状態が続くなか、2026年春にはロシア軍が急速な前進に転じるという政府の約束は、過去数年と同じく実現しなかった。サンクトペテルブルクやモスクワの製油所を狙ったウクライナの攻撃は、一般のロシア人にも戦争の影響を身近に感じさせている。治安機関によるネット遮断で、市民生活にも支障が出ている。ここ数カ月、国営世論調査機関の調査では、プーチンの人気低下が繰り返し示されている。支持率の水準はあてにならなくても、低下傾向は示唆的だ。与党・統一ロシアが5月下旬に秘密裏に実施した調査でも、参加者の大半は勝敗にかかわらず戦闘終結を望んでいた。大統領にとって最大の問題は、死傷者数の増加でも、ロシア経済への打撃でも、弾圧の悪化でもない。この戦争の成果として示せるものが何もないことだ。失敗し、弱さを見せているとの印象は、プーチン氏の正統性を揺るがす。ロシアの歴史が示すように、弱いと見なされた指導者が許されることはめったにない。いま、クリミアにもロシア全体にも広がるのは、戦争への疲弊感だ。ロシアを支持する人々でさえ、戦争の目的を見いだせない。「大それた野心など必要んあい。何かをよくしようとしてくれなくてもいい。ただ朝になれば太陽が昇り、夏には観光客が来る。それだけでいいのです」と、観光ガイドは言う。「それ以外のすべてに、私たちは疲れ果てています」
2026.08.27
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今日で退院だ退屈な日々であった。***米国との戦闘終結に向けた覚書に合意し、イラン指導部は高揚する。「邪悪な攻撃をしかけた敵は打ち負かされ、イランは偉大なる勝利を収めた」。国営テレビはガリババディ外務次官の「勝利宣言」を報じた。イランによる非対称戦は大国を翻弄した。近代兵器を数多く持つ米国やイスラエルとの圧倒的な戦力差を抱えるイランは報復の標的を湾岸アラブ諸国に向けた。ホルムズ海峡を事実上封鎖し、原油高を通じて世界経済に打撃を与える武器に使った。11月の中間選挙を控えた米トランプ政権の時間的制約も見透かす。米国をイラン攻撃に招き入れたイスラエルのネタニヤフ首相とトランプ大統領の亀裂も表面化し、対米交渉は有利に進んだ。イラン指導部の「勝敗ライン」は1979年の革命で生まれたイスラム体制の存続にあった。最高指導者ハメネイ師が殺害され数千人の国民が命を落としても、指導部が存続する以上は「超大国に対する勝利」と位置づけられる。もともと最高指導者の健康不安や後継問題、さらに制裁による経済混乱でイランは体制存続の危機にあった。衝突を経て「指導部は結束を強め、より強硬な体制として生まれ変わった」と西側外交官は語る。一方で得意の駆け引きと敵失で転がり込んだ「勝利」が国益に直結するとはかぎらない。米シンクタンク民主主義防衛財団の推計によると、イランが被った損失は最大でイランの国内総生産(GDP)に匹敵する3000億ドル(約48兆円)にのぼる。(トランプの心中は如何ばかりなのだろうか。通貨イランリアルは暴落し5月の消費者物価指数は前年同月比で77%上昇。米国との衝突はイラン国民の生活困窮に追い打ちをかけた。庶民の愛するケバブは5ドル程度と衝突前の2倍以上に値上がりし、とうてい手が出なくなっている。イラン全土で昨年末から今年初めにかけて広がった反体制デモは激しい弾圧を受けて鳴りをひそめた。代わりに体制を支持する反米・反イスラエルデモが頻繁に開かれている。抵抗と忍耐ばかりを強いる体制への不満も消えたわけではない。苦難の末にこぎ着けた合意には、イラン復興へ3000億ドルの基金計画が盛り込まれた。イラン戦略をめまぐるしく変えたトランプ流外交を知る関係国や企業は協力に慎重にならざるを得ない。覚書合意から60日をメドとする協議では核問題、経済制裁など作業部会を設けて議論する。21日にスイスで開催した米イランの高官協議の冒頭。アラグチ外相らイラン側は写真撮影で米国と並ぶのを拒み、会場を後にした。お膳立てした仲介国のパキスタンやカタールの代表だけでなく、同じ部屋にいたバンス米副大統領も戸惑いの表情をみせた。根深い相互不信をかかえた協議の先行きを暗示している。互いに」手を軽く見ているわけでもないだろうが、核施設、ホルムズ海峡等々の論点がどのように話し合われ、合意を見たのだろうか。いずれにせよ世界に安心をもたらせないのでは無いかと思う。
2026.08.26
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衝突の代償(上)戦費と戦果退院は近い。***イランとの戦争で、米戦費は12兆円に達した。2カ月で「日本」の予算超した。しかし、その効果乏しい。主要7カ国首脳会議(G7サミット)が閉幕した17日。トランプ米大統領は仏東部エビアンでの記者会見で、イランと戦闘終結に向けた覚書で合意したことについてこう豪語した。「めざしていたことの全て、いやそれ以上を実現する合意だ」だが100日を超える軍事衝突をどう検証しても、トランプ氏の言葉を裏付ける米国の果実は乏しい。米国防総省は戦闘にかかった費用を5月中旬時点で290億ドル(4.7兆円)とはじいた。大半が弾薬費だ。米専門家はイスラエルの防空支援やイランの攻撃を受けた中東の米軍基地の再建費などを算入すれば、さらに2~3倍に膨らむとみる。米安全保障政策改革研究所によると米国はこうした費用を含めて最初の2カ月だけで720億ドル(12兆円)を投じた。日本の防衛予算の1年分を使い、なお3兆円が足りない計算だ。「イランであらゆる決定を下す人の大半はいなくなった」。米国は2月28日に始めたイラン攻撃で最高指導者ハメネイ師を殺害した。トランプ氏はイラン側が戦意を失い、停戦への話し合いの動きが体制内から出てくると楽観視していた。1月にベネズエラのマドゥロ大統領を拘束する作戦を実質1日で終えた成功体験が過信につながった。「イランもおよそ4日で完了すると想定していたようだ」。そのもくろみはあっけなく外れた。イランはホルムズ海峡を縦横無尽に走る小型高速艇やドローン(無人機)を駆使し、非対称戦で抵抗を続けた。トランプ氏も認める通り、年単位になる可能性さえあった。カーネギー国際平和財団のスティーブ・フェルドステイン氏は「最大の問題は米国が中国のようなはるかに強力な敵と戦った場合、現在の戦争遂行能力では持続的ではないという致命的な弱点を露呈したことだ」と指摘する。米国はイランの猛攻撃を受けたイスラエルの防衛に多くの迎撃ミサイルを費やした。米戦略国際問題研究所(CSIS)によると在庫の半数ほどを消耗した。日本や台湾などへの武器供給は数年遅れ、中国をにらんだインド太平洋の抑止力にも影を落としかねない。このように対中抑止にも影を落とす結果となった。国民の信頼も失った。米ブルッキングス研究所によると、イラン攻撃が米国の国益にとって「マイナス」と答えた割合は、米与党・共和党の支持層でも「プラス」を8ポイント上回った。無党派層ではマイナスが63%に達した。バンス米副大統領はイラン攻撃で「核施設はがれきの下に埋もれ、掘り出すだけでも数カ月はかかる」と説明した。攻撃をしなかった場合に比べ、核開発のスピードを遅らせる程度のわずかな成果にすぎない。核開発につながる濃縮ウランの扱いを巡り、イランが60日間の交渉で譲歩するめどは立たない。イランはホルムズ海峡で将来的な通航料の徴収を宣言するなど管理を強める構えを崩さず、世界経済を人質にできるカードを握った。イラン攻撃の代償を払うのは米国だけではない。
2026.08.25
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、神戸学院大学が新素材 コスト減期待海水からCO2を回収できるアミン系ポリマー=神戸学院大学提供神戸学院大学の研究チームは、電気を使わず海水から直接二酸化炭素(CO2)を回収する新たな技術を開発した。CO2の回収に必要な電力消費を減らせる可能性があり、装置や施設建設を含めて総合的なコスト低減が期待できる。CO2などの温暖化ガスの影響を受けて地球の平均気温は上昇しつつある。日本を含む主要国は2050年に温暖化ガスの排出量を実質ゼロにすることを目指している。排出量を削減するとともに、発生した温暖化ガスを回収または固定する技術の開発が世界で加速している。主に大気中のCO2を回収する「ダイレクト・エア・キャプチャー(DAC)」と海水からCO2を回収する「ダイレクト・オーシャン・キャプチャー(DOC)」の2種類がある。米新興のキャプチュラが先行大気よりも海洋の方がCO2を多く含むことから特に注目を集めるのがDOC技術で、米スタートアップのCaptura(キャプチュラ)が開発で先行する。同社はすでにハワイに年1000トン規模の回収を想定した実験プラントを建設し、早期の商用化を目指している。DOCはイオン交換膜の働きによって海水を部分的に酸性化させ、発生したCO2を回収する。ただくみ上げた海水を電気透析する過程や海に戻す際のpH(酸性・アルカリ性の度合い)の調整に多くの電力を使用する。そこで神戸学院大学の研究チームは大気中のCO2を吸収するDAC技術に使われる吸収材料のアミン化合物に着目した。アミン化合物は化学反応でCO2を吸収するが、水に溶けやすいため海水のCO2回収には向かないとされていた。研究チームはアミン化合物に疎水性のベンゼン環を導入し、低分子のアミン化合物を高分子化した。高分子化することで、海水に溶けにくい固体状の高耐水性のポリマーとなり、化学反応によって海水中のCO2を繰り返し回収できるようになる。海水中のCO2は9割が重炭酸イオンとして溶け込んでいる。開発したポリマーは重炭酸イオンなどの海水中にある炭酸種と反応するため、電気を使わず海水中のCO2を回収できる。ポリマーに熱を加えるとCO2ガスを放出して、反応前の状態に戻るため繰り返し使える。神戸学院大学の村上遼講師は「アミン系ポリマーを入れたカートリッジを海流の動きがある場所に設置すれば、簡単にCO2を回収できる」と話す。医薬品や養殖産業への応用も回収したCO2は医薬品やエネルギーとして利用できる。いけすなどにカートリッジを設置できれば、海洋の酸性化の影響で成長が遅くなっているホタテなどの貝類の養殖産業に利用できる可能性もあるという。海水中のCO2回収に必要な電力も不要となるため、消費電力や海洋の酸性化を抑えられる可能性がある。新しく大規模な施設を建設せず、発電所や液化天然ガス(LNG)基地といった既存の海水インフラを利用できるとみる。開発した高耐水性のポリマーは現時点でCO2の吸収効率は高くないが、村上講師は「8〜9割にまで吸収効率を上げることを目指す」と話す。今後は企業と連携し、より効率の高い化合物の合成や実際の海域での検証などを行い、2030年代前半を見据えた実用化を目指すという。また海洋研究開発機構(JAMSTEC)の吉田弘シニア上席研究員は今回開発したポリマーと電気透析の2段階のDOC装置の検討も進めている。DOCの課題となる消費電力の削減に向けては産業技術総合研究所と積水化学工業、岡山大学の研究チームも化学反応方式での開発を進める。具体的には水素イオンのやりとりで海水のpH制御を繰り返し行える化合物の開発で、6月に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究テーマに採択された。積水化学の中間友樹プロジェクト長は「酸性になった海水をポリマーで還元し、CO2濃度だけが低下した海水を海に戻すことを目指す」と話す。DOCは現時点では大規模な設備を建設するために、初期投資が高額となるほか、1トンあたりの回収コストも数百ドル程度かかると試算される。既存インフラと統合そこで三菱電機などが進めるのは海水淡水化プラントや発電所といった海水くみ上げ装置をもつ既存のインフラに統合できるシステムの開発だ。三菱電機のDOCプロジェクト推進グループマネージャーである小松崎優治氏は「30年よりも前に社会実装することを目指していきたい」と話す。またエネルギー技術開発のアンヴァール(浜松市)は、海水中のCO2の回収と海に溶け込んだマグネシウムなどの回収を組み合わせることで採算性を高める取り組みを進めている。アンヴァールの桜井重利社長は「CO2を回収した海水からは高純度のマグネシウム回収を狙える」と話す。世界では温暖化対策に向けてグリーン水素や排出されたCO2を回収して地中に貯留する回収・貯留(CCS)など様々な技術の開発が進む。経済産業省は2025年12月にDOCを重点フロンティア領域に指定するなど、政府も開発を後押しする。DOCの技術自体はまだ研究、実証段階で商用化には今しばらくかかる。「DOCは様々なアプローチを複数進め、適切なものを見定めていく段階にある」(JAMSTECの吉田シニア上席研究員)という。早稲田大学の中垣隆雄教授は「DOCは海に囲まれた日本でネットゼロを達成する上で有力な選択肢となる技術だ」と話す。
2026.08.25
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米CIA・英MI6への道遠く日々の活動は略す。政府は7月にも「国家情報局」を設立する。インテリジェンス(情報収集・分析)機能を強化する。次の段階として視野に入れるのが、国外で情報収集する「対外情報庁」(仮称)だ。海外の「先進国」の諜報(ちょうほう)機関との間には高い壁もある。海外では米国の中央情報局(CIA)、スパイ映画「007」シリーズでジェームズ・ボンドが所属する英国の秘密情報部(MI6)が有名だ。日本では2023年放送のTBSドラマ「VIVANT」で自衛隊の特殊組織「別班」が話題となった。海外の国際テロ組織と対峙する内容だ。だが、政府は13年12月に質問主意書への答弁書で別班は「これまで自衛隊に存在したことはなく、現在も存在していない」と示している。日本の情報活動の現状はどうか。26年5月、国家情報局を設立する法が成立した。情報力を高める司令塔と位置づける。首相が議長を務める国家情報会議のもと、テロや外国勢力の工作活動などを調査対象とし情報を集約する。従来は外務省や防衛省、警察庁など各省庁がそれぞれに情報を収集・分析し報告していた。国家情報局は国外での情報収集の機能は持たない。高市早苗政権はテロ・スパイ行為に対し、国外での活動についても道筋を描く。自民党と日本維新の会は連立政権の合意書に、27年度末までに対外情報庁を設立すると盛り込んだ。海外に情報要員を派遣し活動することも選択肢だ。一方で政府は諜報員を使った活動にまで発展させるかは明言していない。国外での情報収集に進むにはさらなる法整備が必要だ。各国の諜報機関はどのような権限で活動しているのか。CIAは1947年の国家安全保障法を根拠とする。国家安全保障会議の下に設置した。81年の米国大統領令は国外での情報収集や防諜活動ができると記した。英国のMI6は94年の情報機関法で国外での情報収集にあたると規定した。活動は閣僚の許可のもと承認される。対外情報局(SVR)をもつロシアも96年の対外諜報に関する連邦法で、国の利益を侵害する外国・組織などの情報収集を可能とする。趣の異なる組織もある。イスラエルの対外特務機関モサドだ。日大の小谷賢教授はモサドについて「法的根拠はない」と話す。同国では1948年の建国以来、厳しい中東情勢のなか情報工作は不可欠とみなされた。規定する法律がないまま首相が多額の予算や特別な権限を与えてきた。2月に米国とイスラエルはイランを攻撃し、最高指導者ハメネイ師が死亡した。モサドは居場所や幹部が集まる会議の情報を詳細に把握していたとされる。CIAも米国が1月にベネズエラでマドゥロ大統領(当時)を拘束した軍事作戦の際、半年ほどかけて同国に潜伏し情報を分析したという。国際法は国外の情報収集をどのように規定しているか。直接禁止する法はないが、「外交関係に関するウィーン条約」は外交官に個人的利益を目的とした活動を禁じている。スパイ行為をしてはならない根拠になるとの指摘がある。ジュネーブ条約の追加議定書の規定では、スパイは人道的な待遇が規定される捕虜としては扱われない。各国はスパイ防止法など国内法に基づき処罰できる。日本が対外情報庁を設ける場合、情報要員の身体の安全を保障する規定も必要だとの指摘もある。活動範囲など詳細な設計が待ち受ける。権限強化と民主的な統制のバランスも論点となる。海外各国は議会による監視制度を整備する。米国は上下両院の情報特別委員会がCIAなどの活動をチェックする。英国では議会が監督機能を担う。日本でも監視機関や報告義務の明確化など透明性や説明責任の確保が不可欠だ。人材の育成・確保も課題となる。米国の情報活動の従事者は20万人に上るとされる。内閣情報調査室によると、4月時点で日本は6分の1の3.3万人だ。国内の治安対策を担う警察が6割超を占める。国外での本格的な活動は未知数だ。インテリジェンスは「劇薬」、政治家の覚悟必要 東京工科大・落合浩太郎教授東京工科大の落合浩太郎教授日本が対外情報機関を設置する上での課題は何か。インテリジェンスを専門とする東京工科大の落合浩太郎教授に聞いた。――日本の対外情報収集力の現状をどう分析しますか。「日本は積極的にヒューミント(人的情報活動)に取り組んでおらず、インテリジェンス機関全体の規模や予算の面でも先進国に遅れている。一方で北朝鮮などに関し現状の内閣情報調査室(内調)の情報分析のレベルは非常に高いと評価される」――対外機関を設置する上で重要なことは。「重要なのは政治家の覚悟だ。外国での情報収集は、現地の情報提供者にも協力を依頼する可能性がある。その際に協力者の家族を含めて身の安全を守り、一生面倒をみる責任を政治が果たすのが国際標準だ」「邦人が海外でスパイ容疑で拘束されている事案を早期に解決する必要がある。自国民も守れない国が外国人の協力者を守れるとは到底思われない」「インテリジェンスが正しくても政治が判断を誤った例は多い。『あるのは政治の成功とインテリジェンスの失敗だけ』という言葉もある。うまくいった時は手柄にし、失敗したら責任転嫁してきたということだ」――日本が「先進国」に追いつくには何が求められますか。「人材育成のほか組織が硬直化している点は課題だ。日本にヒューミントを教えられる人材はほとんどいない。内閣情報官のポストは警察庁が独占し、内調は各省庁の出向組が幹部だ」「このような点を改善しなければ『仏作って魂入れず』になりかねない。インテリジェンスは劇薬だ。うまく使えば特効薬になるが、間違って使うと毒薬になる」――歯止めも必要では。「対外情報機関が日本国民を収集対象にする可能性もある。国会の監視が不可欠だ。特定秘密保護法の情報監視審査会とは違い安全保障やインテリジェンスに強い議員を登用するべきだ。メディアも米国のように専門記者を育てて『オール・ジャパン』で監視したい」記者の目 「副作用」にも目配りをインテリジェンス政策を推進することは利害がぶつかる他国からの警戒を強めることにもなる。「国民の権利義務との関係についてもしっかり検討しなければならない」。高市早苗首相は4月の国家情報局を巡る法案審議でこう語った。政府は「スパイ防止法」の制定も検討する。外国勢力の有害活動に対するカウンターインテリジェンスの機能を強化する狙いだ。同様に海外からも監視の目が強まれば、当該国で暮らす国民の生活や経済活動に影響が及ぶ恐れがある。近年も中国では反スパイ法により邦人が拘束される例が後を絶たない。国民の生命や財産、自由を守ることは政策の前提だ。「副作用」への目配りは欠かせない。どのような権利に影響が及ぶのか検討し、理解を深める必要がある。
2026.08.24
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もうッ少し入院は続く***移植のドナー不足を補うために人にブタ臓器移植を、国内初治験を行う予定だ、明治大学発スタートアップのポル・メド・テックは2028年にも、動物の臓器を人に移植する国内初の臨床試験(治験)を実施する。ブタの腎臓を慢性腎不全の患者に移植する。北海道大学病院と湘南鎌倉総合病院で治験をする。動物の臓器を使う「異種移植」が普及すれば臓器提供者(ドナー)の不足を補える可能性がある。ポル・メド・テックは治験の計画を2027年ごろに審査当局の医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出する。対象は数人程度で、計画が承認されれば主に慢性腎不全で人工透析を受ける60代の患者にブタの腎臓を移植する。慢性腎不全は糖尿病が進行すると患うことが多い。 既に米国や中国ではブタの腎臓や心臓、肝臓を病気の患者に移植した。特に腎臓は米国で7例が実施済みだ。移植後に透析を約9カ月受けずに社会に復帰し、その後にドナーからあらためて腎臓の移植を受けた患者もいる。ポル・メド・テックは移植用のブタを提供した実績を持つ米バイオ企業イージェネシスの細胞を使い、人の免疫に攻撃されにくいように遺伝子を改変した臓器提供用のブタを生産している。治験に使うブタは7月から生産を始める。京都府に新しい飼育施設を、札幌市と鎌倉市に腎臓を摘出する施設をそれぞれ建設中で2027年に完成する見込みだ。今回の治験で安全性と有効性を確認できれば、3030年にも病気やけがで機能を失った臓器や組織を補う再生医療等製品として国が暫定的に承認する「条件及び期限付き承認制度」の適用を得たい考えだ。同制度で仮の承認を得られれば、患者は国の保険を使える。効果の検証を重ねて本承認への申請をめざす。日本では様々な病気の患者に移植する臓器が足りない。日本臓器移植ネットワークによると、亡くなった人から腎臓の移植を受けた人の待機期間は2002〜22年の平均で約15年だ。待機者は1万4000人を超えるが年間の移植件数は約220件にとどまる。心臓や肝臓、膵臓(すいぞう)の移植も待機期間が1年から数年程度に及び、移植を受けられずに亡くなる人も多い。ブタの臓器を移植する技術が普及すればドナーの不足を補える可能性がある。政府も国内初の異種移植の実施を後押しする。日本成長戦略会議が24日にとりまとめた官民投資のロードマップ(行程表)で注力する新領域として異種移植を明記した。異種移植の実用化に向けては課題も残る。これまでの実施例は米中で計10例程度にとどまる。安全性と有効性を明確に示すには人数が足りず、移植後の長期の影響も十分に検証できていない。動物の臓器の利用について倫理的な観点から社会の理解を得る必要もある。治療の費用に見合う効果を示すことも欠かせない。一般的に腎不全の患者が透析を受ける医療費は年間500万〜600万円に及ぶとされる。ブタの生産コストなどを抑えれば医療費を節減できる可能性がある。ポル・メド・テックは現状で年間50頭のブタを供給できる。新たな飼育設備を京都府に設け、2倍の年100頭規模にする。腎臓向けに実用化すれば将来は肝臓や心臓での展開も視野に入れる。
2026.08.23
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相変わらず入院ベッドの中だ***世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は28日、熱波に見舞われる欧州で、平時より著しく死亡数が増加する「超過死亡」が21日以降で1300人を超えたとX(旧ツイッター)に投稿した。スペイン国内では当初1000人の死者が出た。スペインは、超過死亡が2000人を超えた。(さらに増えて5000人になった。フランスやドイツ、チェコ等では気温が40度を超えた欧米の死者数は今後さらに増えるに通しだ。テドロス氏は「欧州は地球上で最も急速に温暖化している大陸で、地球全体の平均の2倍の速度で暖まっている」と警告した。「欧州の家や職場、学校はこうした高気温に対応していない」と各国に対策を促した。米国でもワシントンやニューヨークでも警報が発令された。快感温度が37~40度に達する可能性がある。フランス公衆衛生庁によると24日以降の仏国内の超過死亡数は約1000人にのぼるという。首都圏を中心に、熱波の危険度が最も高いことを示す「赤色警報」が出ていた地域で、亡くなった人が多く、85%が65歳以上だった。自宅で死亡する例が目立ち、「単身で暮らす人、人間関係が希薄な人への支援が必要だ」という。欧州メディアによると隣国のスペインでも猛暑によるとみられる死亡者数が327人にのぼる。27〜28日には各国で過去最高気温の更新が相次いだ。ドイツでは28日に41.7度と、3日連続で記録を更新した。スイスでは27日に北部バーゼルで39度に達した。まだ日本はそこまで高温になっていないが、この先どうなっていくのだろう。別の記事でも欧州で熱波、フランス「最も暑い日」 42度超え・溺死40人・原発停止とある。熱し者は溺死者となっている。欧州を再び熱波が襲っている。フランス気象局によると23日は同国の観測史上「最も暑い日」だった。これまでに40人が溺死したほか、原子力発電所が停止するなど影響が広がっている。40人の溺死と1300人の死者の関係はよく分からない。1300人は予測と言うことだろうか、1300人の内で溺死したのが40人と言うことだろうか。発達した高気圧が欧州を覆っている。暖かい空気がたまる「ヒートドーム」と呼ばれる現象が2カ月連続で発生した。フランスやスペイン、イタリアなどは厳しい暑さに見舞われている。23日午後5時時点でフランス国内の30地点の平均気温が29.8度と史上最高を記録した。南西部ボルドーで42.1度など、各地で過去最高気温に達した。仏首相府は23日に危機対策会議を開催し、体調不良者の急増を受けて医療体制の強化を決めた。今後も厳しい暑さが続く見込みで、24日は仏本土の県の6割にあたる58県について、熱波の危険度が最も高い「赤色警報」が出ている。仏政府の集計では6月18日からの溺死者は40人に上る。ほとんどが若者で、暑さをしのぐために水浴びをしていたとみられる。猛暑で経済活動にも大きな影響が出ている。仏メディアによると仏電力公社(EDF)は22日夜、南西部ゴルフェッシュ原発2号機の運転を停止した。冷却に使うガロンヌ川の水温が上昇したためだ。23日から始まったパリのファッションウイークでは、猛暑対策のためにLVMHモエヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)傘下の「ディオール・オム」などのブランドが屋外ショーの時間を変更した。普段は深夜まで開いていて夜景が楽しめるパリのエッフェル塔は23日、閉館時間を午後4時に早めた。ルーヴル美術館も24日から閉館時間を通常より2時間早い午後4時とする。北海道よりも緯度が高く涼しいはずの英国も熱波の影響を受けている。イングランドでは23日未明に暖かく湿った空気が激しい雷雨を招いた。英気象庁によると、3万回近い雷が発生した。落雷による住宅火災のほか、鉄道が一時運休するなど混乱が生じた。英国では24、25日にかけて気温が上がる見通しで、英気象庁は「少なくとも39度まで上昇する」と予測している。1957年と1976年に記録された6月の最高気温35.6度を上回るとみられている。英健康安全保障庁は熱健康警報のうち、最上位の赤色警報をロンドンなどに出し、熱中症への警戒を呼びかける。赤色警報が出されたのはロンドンで気温が40度を記録した2022年7月以来、2度目となる。 英国では6月の最高気温の記録が塗り替えられる見通しだ。同庁の担当者は赤色警報について、「健康な人でも生命にリスクがあることを意味する」と指摘し、日光を避けることや水分補給などを呼びかける。かつては夏でも涼しかった英国は、ほとんどの住宅にエアコンがない。エアコンが設置されていない学校も多く、英公共放送BBCによると、休校などの対応をとる学校はイングランドや西部ウェールズの300校以上にのぼる。異例の暑さは公共交通にも影響を与える。英国内の線路や駅を管理するネットワークレールは「大きな混乱が予想される」として不要不急の移動を避けるよう呼びかけている。気温の上昇で線路や架線、信号システムに悪影響が及び、列車の速度制限、ダイヤの変更、遅延などが起きる可能性があるという。英気象庁によると24、25日に暑さのピークを迎え、今週末から来週初めにかけて徐々に気温が下がる見通しだ。英オックスフォード大学のミレイア・ギネスタ研究員は「人間活動に起因する温暖化によって、極端な高温現象の発生頻度が増し、記録を更新する可能性も高まっている」と指摘する。
2026.08.22
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今日も入院変化はなかった。***向島ドック、職人の暗黙知取り込む。船舶修繕の向島ドックは年間300隻以上の船を受け入れる。内航船の検査・修繕の向島ドックは船の管理に人工知能(AI)を活用する。内航船の船員や修繕技術者は高齢化と人手不足が深刻だ。データや職人が持つ暗黙知を取り込んだ船の「カルテ」を作り、生産性を上げる。海事産業に特化したAIを開発した東京大学発スタートアップのノアロジー(東京・港)と連携する。修繕の記録や受け継がれてきた技術のほか、航海中に発生した不具合や整備の記録などをデータベースにし、それに基づいてAIが船の仕様書「カルテ」を作成できるようにする。向島ドックは4隻の自社船を運航している。修繕と運航、両方のデータをもつ点が強みだ。データの集約を進め、1~2年以内をめどにカルテの試験的な運用をめざす。内航船の修繕は、船員、船主側として修繕計画を調整する工務監督、修繕会社などが連携して1週間程度で検査・整備を終える。短い期間で様々な工程の作業を同時に展開する上に、手作業が多いことから職人技とチームワークが必要とされるのが特徴だ。船舶修繕は手作業が多い船は1隻ずつ設計が異なり、標準化できない工程も多いことから臨機応変な対応力が求められる。熟練の船員、工務監督、修繕技術者の経験や勘に頼る部分も多い。一方で、内航船業界の船員や修繕技術者は高齢化してきている。国土交通省によると2023年時点で内航船員の半分を50代以上が占めた。高齢化で技術を伝える人材も減りつつある。向島ドックの久野智寛社長は業界全体の傾向として「経験豊富な船員や修繕技術者が減ってきて、質の低下や工期の遅れが目立ってきた」と話す。修繕方法やチェックポイントをカルテから確認できるようになれば、技術承継にもつながる。熟練技術者の経験や勘といった感覚的な部分もノウハウとしてまとめ、次世代につなげる。航海中の情報や紙での管理が中心だった修繕履歴もあわせてカルテで確認できれば、経験や知識が浅い技術者や船員同士でも円滑に連携できる。久野社長は「カルテがあれば1隻の船をみんなで見守れるようになる」と語る。船舶の修繕能力の向上を掲げる政府方針も追い風となる。日本で行われている船舶修繕の8割以上が内航船向けで、外航船はほぼ他国に依存している。政府は安全保障上の観点から修繕体制の強化を急ぐ。政府は6月30日に示した日本成長戦略の原案で、海事産業群内でのデータの共有化などによる技術力、生産性の向上や修繕工期の短縮を進めると明記した。修繕業界は中小企業がほとんどで、人手不足で廃業に追い込まれる企業も少なくない。久野社長は今回の取り組みを「業界全体に還元していきたい」と語る。データの共有を「協調領域」とし、質の高い修繕サービスを提供できる人材の確保を「競争領域」として強みを発揮する方針だ。###将来的には造船設計へも還元していく。船の生涯データからは、船のどの部分が壊れやすいかや長持ちする船の傾向などが分かる。造船事業者向けに船舶機器のトラブルや船員の負荷が減るといった設計をAIが提案できる仕組みの開発をめざす。
2026.08.21
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入院は4日目を迎えた。幸い変更はない。***「財務相を誰にするか次第だ」(アクサグループ)、「大胆な財政支出をするための早期総選挙はないだろう」(UBSウェルス・マネジメント)。22日、スターマー英首相の辞任表明が伝わると、欧州市場では次期政権の財政政策の読み筋が広がった。労働党は従来、福祉など社会サービスの充実を志向する。保守党のトラス元首相による減税政策表明で国債利回りが急騰した「トラス・ショック」の教訓から現政権は左派色を封印して財政規律を重視してきた。英10年物国債利回りは一時5%を超え、今もトラス・ショック時を上回る。4月の利払い費は約100億ポンド(約2兆1000億円)で同月として過去最高だった。後任候補のバーナム前マンチェスター市長は「債券市場に縛られているこの状態を乗り越えなければならない」と発言したことがある。左派色を強めるのか市場が再び制約を課すのか、緊張感が高まってきた。政府と市場の攻防は繰り返されてきた光景だが、金融のプロはショックが起きやすくなる金融環境の変化を訴え始めている。データセンターなど人工知能(AI)投資が増え政府と資金を奪い合うようになった。顕著なのが米国市場だ。米バンク・オブ・アメリカによると2025年には米巨大テック5社が社債を1210億ドル(約19兆円)発行した。20~24年平均の4倍以上だ。英バークレイズは26年の米国社債全体の発行額は前年比12%増の2.46兆ドルと予想する。米ダラス連銀はAI関連の資金調達が債券市場に与える負荷を試算した。米国債の発行が1割強増えるのと同じ衝撃とはじく。新たなクラウディングアウト(押しのけ効果)――。本来、政府支出が金利上昇につながり民間投資を抑制する意味で使われる用語だが現在は逆だ。「AIだけでなく防衛やエネルギー安全保障という大規模な投資需要が同時に立ち上がり、資本需要を押し上げている」(米ゴールドマン・サックスのグローバル為替金利責任者、カマクシャ・トリベディ氏)過去20年、各国の貯蓄が国債市場に流れ金利を押し下げてきた。デジタル経済では設備投資が軽く資金需要も少なかった。カネ余りが政府による財政支出の自由度につながってきた。金融市場は大きな転機を迎えた。米ティー・ロウ・プライスの債券部門最高投資責任者アリフ・フセイン氏は「財政が脆弱な国は『AIクラウディングアウト』がダメ押しになる」と語る。米10年債利回りは足元の4.5%から中期的に6%になりえるとみる。資金はグローバルに動き日本でも金利上昇圧力がかかる。長期金利は一時2.8%を付けた。年末にかけて成長投資や消費減税、防衛費の財源議論が本格化する。国債増発が意識され3%に達するとみる市場関係者が増えている。名目成長率が長期金利を上回っていれば債務は安定しやすい。現状では金利が潜在的な名目成長率とされる3%弱に並ぶ水準になってきた。金利のさらなる上昇を避けたいなら財政支出にはメリハリが必須だ。マネーの奪い合いの環境では、市場が政府の財政規律を疑えば政策の自由度は瞬く間に下がってしまう。◇習氏分からない内容だった。経済を学んだ人は、之を理解するのだろうか、驚異に値する。
2026.08.20
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入院中有はは様々テストをされたが特に異常は無かった。となると入院生活は暇なものになる。***「米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長(当時)は議会のじゅうたんをすり減らすくらい通った。我々もそうすべきだ」。4月、日銀本店。幹部が一堂に会した支店長会議で米州を担当する幹部が訴えると会場は静まり返った。「何も感じなかった人はいないだろう」。出席者たちは言葉の重みをかみしめる。民主主義の原則を重んじるパウエル氏は国民から選ばれた議員らとの対話を何より重視した。トランプとの対立が深まるなかで議会指導部の相互理解は命綱になった。暴走しがちな大統領から独立した政策運営をFRBに委ねたのは、ほかならぬ議会だ。1935年銀行法を巡る議論で当時のFRB議長は大統領が自由にFRB理事を解任できるようにすべきだと主張したが、議会側が止めた経緯がある。日銀と政治の関係は歴史的に揺れてきた。2012年、デフレ脱却を訴えて自民党総裁選を勝ち抜き、衆院選にも勝利した安倍晋三は民意を盾に日銀に物価目標の導入を迫った。当時の白川方明総裁は導入後、途中で辞任した。正副総裁の任期を合わせる名分はあったが抗議と受け止められた。「白川さんは辞めたこと以外は全て正しかった。辞めても政治には何も届かなかった」。日銀内にこんな見方がある。当時はFRB高官からもこんな声が飛んだ。「独立性は大事だ。ただ政治と対立するだけでは独立性を失うことになりかねない」あれから十余年。高市政権下で異次元緩和からの正常化を進める日銀の植田和男総裁は政権への配慮が際立つ。1月に刑事捜査を受けたパウエル氏に連帯の意思を示そうと欧州側から打診された際は、政府側と協議した上で見送ったという。「政府と対立するのは違うが、追従も違う」。行内からはこんな声が漏れた。「お伺い」を立てる姿勢は金融政策でも目立つ。2025年12月と2026年6月の利上げはいずれも決定前に首相と植田氏が首相官邸で会談した。感触を探りに行ったのは明白だ。ホットラインは安定しない。岸田文雄政権下では首席首相秘書官だった嶋田隆氏や官房副長官だった木原誠二氏らと連携があったが、今回の利上げは事実上、高市―植田ラインのみ。「このやり方では首相にダメと言われた瞬間、何もできなくなる」。政府高官はため息をつく。###直面するのは市場の圧力だ。「独立できていない日銀は利上げで出遅れる」。保険会社の運用担当が海外ファンド勢から聞く見立てはほぼ同じだ。インフレを抑えられないという市場の警戒感が長期金利の上昇(国債価格の下落)につながる。自民党の総裁が首相になることの多い議院内閣制の日本と米国は異なる。日本はFRB型とは違う姿を自ら見つけるしかない。独立性は中銀が当然のように持つ権利ではない。政治や市場と対話を尽くして勝ち取る姿勢が求められる。「通貨及び金融の調節における自主性は尊重されなければならない」。こう定めた現行の日銀法施行から30年弱。対立と従属の間にある答えはまだ見つからない。
2026.08.19
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医大に入院カテーテルで心臓ペースメーカーを入れた。成功した用だ。本人には終わったのかどうか感じられない。***殆ど分からないのだが新聞の文章をトレースしてみる。日銀が政策金利1%への利上げを決めた16日の政策決定会合。高市に近い城内実経財相の発言に出席者は息をのんだ。「1%を超える金利に向けては、デフレに後戻りしない『成長型経済』へ変化しているか否かが重要だ」。今回の利上げには表向き口を挟まなかった。「責任ある積極財政」を掲げる高市政権は金利上昇を気にする。国債の利払い費が膨らんで政策の自由度が下がるうえ、企業の投資意欲も減るからだ。5月に補正予算の編成を表明した際、首相は市場に影響しないよう赤字国債の発行総額は増やさないと強調した。「すべて再来週以降の開催になる」。6月上旬、首相官邸で予定されていた経済財政諮問会議などの重要会合が相次ぎ延期となった。本来は政府が成長分野への官民投資額や新たな財政健全化への道筋を示すはずだった。何が起きたのか。原因は投資目標が首相の要求額に届かなかったことだ。内閣府幹部は「官邸の意向と財政健全化の整合性が難航した」と明かす。高市政権は積極財政、金利抑制、為替安定の3つを追う。同時に実現することが難しい「トリレンマ」の政策調整が必要になる。政権が6月の利上げを静観したのは、これ以上の円安進行を避けるためだ。為替相場は利上げを織り込んでいても1ドル=160円台。政府高官は「利上げしなかったら大変なことが起きただろう」と話す。沈黙する霞が関市場が次に注目するのは7月に決まる経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)だ。首相が財政規律と成長戦略を両立させると主張してきた新たな財政運営の指標が盛り込まれる。10年超の財政運営を重視する債券投資家には不安がある。積極財政に必ずしも否定的なわけではない。消費税減税や防衛費増、成長投資といった政策を同時に進めつつ財政規律をどう保つかという全体像が見えないことに原因がある。5月にパリで開いた金融会議。米ブリッジウォーターの幹部が「東京で高市政権の経済運営について聞いて落胆した」と語った。首相官邸や関係省庁、日銀の政策の方向に統一性がないとの理由を挙げた。財政規律に目配りする財務省が積極的に動いている形跡はない。自民党内では「官邸の意向に沿わない官僚を人事で揺さぶっているのではないか」と噂される。夏の幹部人事を控え、霞が関では声を上げにくい空気が漂う。政権発足時に1.6%だった長期金利は一時2.8%に上昇した。霞が関や自民党を抑えられる政権も、グローバルな市場はコントロールできない。新指標の評価によっては政策修正する柔軟性が欠かせない。異次元の金融緩和が始まった2013年以降、歴代政権は株価や為替に関心を払っても金利は気にしてこなかった。24年に「金利ある世界」に戻って2年。首相が金利上昇を意識した政権運営を迫られる「金利ある政治」の時代に入った。+++
2026.08.18
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大阪医大に入院の準備***サウナに入ったら整うと言うがいったいどういったことを言うのだろうか。サウナの幸せ、科学で迫るとのことだ。サウナに入り血糖値を測るテストがある。血圧ではなく血糖値というのが興味深い。サウナで「ととのう」と言うのは、サウナと水風呂、外気浴で得られる多幸感を指す新しい表現だ。急速に広まり、流行語大賞の候補にもなった。では「整っている」時、体では何が起きているのか。研究者らが科学的に解明する試みを始めた。1月下旬、東京都渋谷区のサウナを星薬科大の児玉耕太教授を始め3人が訪れた。サウナファンの児玉さん自身も研究の被験者だ。皮膚の表面で血糖値を測るセンサーや心拍計を体に貼り付け、まずサウナで10分。次に水風呂で3分、その後に5分の休憩。このサイクルを4回繰り返した。私はこの際来る3回繰り返すのが常だった。過去に取得した少数のデータでは、暑いサウナに入ると血糖値が上がり始め、水風呂の後に休憩していると下がる傾向がうかがえた。サウナや水風呂では体を興奮状態にする交感神経が働いて血糖値が上がり、休憩すると安静状態に導く副交感神経が活発化して血糖値が下がる、という仮説だ。興奮後のリラックスが「ととのう」の正体なら、心拍や血糖値の変化から、ととのっているかどうかを把握できるかもしれない。児玉さんは「サウナや水風呂に入る時間などを変えながら計測し、心身共に満たされた状態になる方法を科学的に示せたらよい」と語る。確かな結論を得るため、100人以上のデータ取得を目指している。サウナと水風呂の温度差は「ととのう」状態を生むとしても、血圧を急激に変動させ、失神や心筋梗塞につながる「ヒートショック」を起こすリスクもある。芝浦工業大の古川琢磨准教授(社会熱応用工学)らは「安全なサウナ浴」が重要と考えて研究している。サウナや水風呂で血圧を常時監視できればいいが、腕に巻いて使う血圧計は高温環境で使うようにできていない。そこで、耐熱性が高いスマートウオッチのような機器で血圧の動きを予測する手法の開発を始めた。これまでにセンサーで測ったサウナ利用者4人の皮膚の温度から、体内の「深部体温」を高精度で把握することに成功している。次の課題は、皮膚の温度や深部体温を使って血圧を推定することだ。さまざまな年齢や体格の人のデータを集め、多くの人に使える手法に育てたいという。古川さんは「体の表面の温度を測り、深部体温や血圧が危険な状態に近づいた場合に警告できれば、ヒートショックや熱中症を避けられる」と話している。整うと言うことがどういった状態を示しているのか具体的なデータは無い。現状では身体に感ずる状態を整うという言葉で表現しているだけだ。サウナに要りながら、血糖値を測ったり、心拍数を計測したりといった、データ収集を行い医学的な見地から又、身体の心地よさの感覚を数字をあてはめる事が出来れば完璧といえる。。「サウナに入ると、頭がスッキリして宙に浮いたような感覚になる」「悩み事がどうでもよくなり、圧倒的な多幸感に包まれる」サウナ愛好家(サウナー)たちが口を揃えて語る、この「ととのう(整う)」という感覚。これは単なる「気のせい」や「思い込み」ではない。実は、医学的・脳科学的に説明可能な「脳と身体の劇的な変化」なのだ。STEP 1:サウナ室(交感神経の急上昇)「ととのう」の正体は「極限の緊張」からの「急激な緩和」。脳と体が強烈な安堵感を覚え、深いリラックス状態へと急降下するのだ。STEP 2:水風呂(交感神経のピーク)STEP 3:外気浴(副交感神経へのリバウンド)ここが「ととのう」ための最重要ポイント。DMNとは、ぼーっとしている時でも脳が勝手に過去の失敗や未来の不安をシミュレーションしてしまう脳回路のこと。###その他の言葉としてβ-エンドルフィン(快感・鎮痛)サウナや水風呂の苦痛を和らげるために分泌される。マラソンランナーの「ランナーズハイ」と同じ物質で、多幸感をもたらす。オキシトシン(安らぎ・愛情)ストレスが緩和されることで分泌され、不安を消し去り、他者への感謝や優しい気持ちが湧いてきますセロトニン(精神安定)「ととのう」ことによる自律神経のバランス回復は、別名「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの分泌を促し、うつ気分の改善やメンタルヘルスの向上に寄与します。
2026.08.17
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入院のため日々のコメントは略する。***1.ローレンス・アルマ=タデマ「アントニーとクレオパトラの出会い」エジプトのプトレマイオス朝最後の女王クレオパトラはヴィーナスに扮し、黄金の舟を仕立て、トルコ南部を流れるキュドノス川を遡上してローマの名将アントニーの前にあらわれた。画面中央奥がアントニーである。アントニーの腹心イノバーバスはこのときの出会いをこう語っている。「女王の舟は、磨きあげた王座のごとく/水面(みなも)に燃えるように照りはえ/女王の美しさはどのような賛美の言葉をも/たちまち枯渇させてしまうほどだった/金糸銀糸を織り交ぜた天蓋のなかで、ゆったり身をよこたえる姿は/美の女神ヴィーナスをはるかに凌駕する美しさであった」ローマ軍と戦い、敗れた。「クレオパトラ死す」の誤報に、アントニーは自分の短剣で自死、それを知ったクレオパトラもコブラに胸をかませて自ら命を絶った。2.写本「聖オルバンズ修道院の後援者たち」描かれているのは英国で最初に女王を宣した12世紀のマティルダ。マティルダはヘンリー1世の一人娘で後継者。神聖ローマ皇帝妃として11年間、ドイツで贅沢な日々を過ごした。ヘンリー1世が亡くなったとき、マティルダはアンジューで病の床にある夫を看病していた。そこへ、従兄スティーヴンがイギリス王として戴冠したとの知らせが飛び込んでくる。長男ヘンリー(後の2世)が戦いを継ぎ、1154年、王冠を奪取、プランタジネット王朝が始まる。3.ポール・ドラローシュ「レディ・ジェーン・グレイの処刑」 ヘンリー8世は女子を2人授かるも、女性の登位を恐れ、男子の誕生を祈願して6回結婚。しかし、授かったのはエドワード王子ただ1人。、それからわずか6年後に病の床に倒れると、側近が、狂信的なカトリックの姉メアリーが女王になると国家が乱れると進言したため、エドワードは次期国王指名した。激怒したメアリーは蜂起し、タワー・グリーン広場で処刑された。4.アントニス・モル「メアリー1世の肖像」ハプスブルク家は跡取り娘との結婚で領土を拡大してきた。マクシミリアン1世は、ブルゴーニュ家の一人娘と結婚してブルゴーニュをわが手にと、イングランド女王メアリーに、11歳年下のスペイン王子フェリペとの結婚が浮上した。英国民は恐れた。スペインに飲み込まれるのではないかと「女王はこの国の最も高貴なる王たちと同じく、君主としてのあらゆる絶対的な権利を無条件に持つ」フェリペは王の称号を与えられたが、国事に関する一切の権限を持たず、4年後、メアリーが病没すると、手ぶらで帰国した。5.ロバート・ハードマン「フランスを去るメアリー」 船上のスコットランド女王のメアリー・ステュアート。幼少期から過ごしたフランスへの名残を惜しむ場面である。生後6日で王位を継承した。隣国のヘンリー8世がメアリーとエドワード王子を結婚させて両国を併合しようとしたために、その魔の手を逃れて、フランスのアンリ2世の宮廷に送られた。帰国後、ダーンリーに嫌気が差すと、ボズウェル伯爵と謀って殺害して彼と3度目の結婚をする。祖国を追われ逃亡1587年に処刑された。エリザベス亡きあとイングランド王位に就いたのは、メアリーとダーンリーの子スコットランド王ジェームズ6世だった。6.伝アイザック・オリヴァー「虹の肖像画」70歳を目の前にしたエリザベス1世。王冠には処女のしるしである月形の宝石が飾られている。胴着に刺繡された春の花々。袖に巻きつく蛇は賢明と慎重の、蛇がくわえる赤いハートは正義を司る者の言葉の象徴である。エリザベスは戴冠式の指輪を見せながら言った。「これは、わたしがイギリスと結婚したあかしです。皆さま全てがわたくしの子どもと7.フランツ・クサーヴァー・ウィンターハルター「王室一家」ヴィクトリア女王とアルバート公は正装、着飾った子どもたちが両親を囲み、2人の王女が赤ん坊を優しく見つめている。工業都市は労働者であふれかえった。住宅政策はまるでなく、一部屋に数家族が同居する例も。トイレや下水道の設備は無きに等しく、道路は汚物まみれ、不衛生極まりなかった。資本家達は貴族のように郊外の屋敷で優雅な生活をおくり、道徳の低下が著しかった。依然として労働者階級はほったらかしにされたが、王室のイメージ向上をはかり、中産階級の模範となる必要があった。8,フランシスコ・プラディーリャ・オルティス「グラナダの降伏」画面右には、王冠をかぶり、王者の印である白貂のマントをはおり、白馬に乗る勇ましいイサベル1世が描かれている。約8世紀に及ぶキリスト教徒による国土回復運動「レコンキスタ」が完成した。幽閉に近い身であったが、アラゴン王子と(ひそかに結婚した。エンリケが病没すると、カスティーリャ女王として即位し、2つの王国を結び、スペイン王国を築いた。イサベルの死後、次女フアナがスペイン王位を継承し、フアナの長男カールは神聖ローマ帝国皇帝カール5世として「陽の沈まぬ国」スペイン帝国を築いてゆく。9. 小カール・ヒルシュ「戴冠式の丘のマリア・テレジア」 馬に乗って、剣を振るのはマリア・テレジア。1741年、ハプスブルク家の領土であるハンガリーの首都ブラチスラバに赴き、戴冠したときの様子が描かれている。カールが亡くなり、マリア・テレジアが即位すると、国事詔書を承認していたはずのプロイセンのフリードリヒ2世が富み栄える鉱工業地帯シュレージェン地方の割譲を要求し、予告なしに侵攻してきた。四面楚歌となったマリア・テレジアだが、ハンガリー女王としての威厳を見せる。宮殿の大理石の階段を駆けあがり、議会に乗りこんで議会で訴えた。「すべての人に見捨てられた今、ハンガリー人の勇敢なる忠誠に頼るほかありません」。心を揺さぶられた議員たちは忠誠を誓い、6万人ともいわれる兵力と軍資金の援助を提供した。8年に及ぶ戦争は、マリア・テレジアがシュレージェンを放棄して終結した。10.ウィギリウス・エリクセン「戴冠式のローブをまとうエカテリーナ2世」18世紀後半、ロシアの強大化を進めた女帝エカテリーナ2世はドイツ北部の小貴族出身である。ロシア皇太子ピョートル(エリザヴェータ女帝の甥)の妻になるために帝都サンクトペテルブルク入りした正常な結婚生活が送れなかった。ピョートルの身柄を拘束して殺害し、帝位に就いた。約5000個のダイヤモンドが嵌め込まれ、頂点には、世界最大級の尖晶石が輝き、その上に、ダイヤモンドの十字架が据えられている。96年、エカテリーナは脳出血のために亡くなった。
2026.08.16
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