ザ・スーパー・ポップ宣言

フィルズ・フィル (PHIL'S FILL)

フィルズ・フィル (PHIL'S FILL) ウォール・オブ・サウンドの革新的技法

PHIL'S FILL: The Revolutionary Technique of the Wall of Sound

ウォール・オブ・サウンド 音壁の世界(1) へジャンプ

音壁の世界(2) へジャンプ

音壁の世界(3) へジャンプ

音壁の世界(4) へジャンプ

音壁の世界(コンピ) へジャンプ

音壁の世界(コンピ2) へジャンプ

音壁映像の世界 へジャンプ

音壁映像の世界2 へジャンプ

音壁映像の世界3 へジャンプ

ウォール・オブ・サウンド特集 へジャンプ

フィルズ・フィル (PHIL'S FILL) ウォール・オブ・サウンドの革新的技法 へジャンプ

フィルズ・フィル (PHIL'S FILL) ウォール・オブ・サウンドの革新的技法



フィル・スペクターがプロデュースしたロネッツの1964年(実際の録音は1963年9月)のI Wonderは、ウォール・オブ・サウンド創成期の傑作です。とりわけ1分32秒~1分42秒の部分に現れる演奏構造は、ポップスにおける重要な技法のひとつといえるでしょう。この箇所では、ドラムに合わせてピアノ・ギター・ベース・ホーンなどが完全に同じタイミングで「ダン、ダン、ダン、ダッタ、ダンダンダン」とスタッカート連打を4度繰り返し強烈なアンサンブル・ブレイクを生み出します。爆発的連打を伴うこの演奏は、華麗かつ重厚なウォール・オブ・サウンドに更なる快活さと躍動感を与え、緊張感を生み出しながら楽曲の流れに勢いとドラマを持たせる構造的なアクセントとなっています。創造性が高く、独自性の際立ったこの技法の効果は絶大であり、ポップス史における重要な発明と断言して差し支えないでしょう。

この技法は後年、繰り返し引用されており、主に下記の23曲などで同種の演出が確認されています。にもかかわらず、長らく確立した名称が存在しませんでした。また、1981年に大滝詠一氏により効果的に使われて以来、ほぼ日本でのみ使われてきたことを考慮すると、大滝氏の功績が絶大であることは明白です。本来なら偉大な先駆者である大滝氏に是非この技法について命名頂きたかったのですが、惜しくも故人となられてしまいました。そこで今回、この技法を最多の5曲において使用されているウォール・オブ・サウンドの大家である岩崎元是氏に依頼したところ『フィルズ・フィル(PHIL'S FILL)』との名称をご提案いただきました。これは「フィル・スペクター」が生み出した「フィル=音楽の隙間を埋める装飾フレーズ」という意味の技法に由来するものであり、 偉大なる創始者へのリスペクトと、音楽技術的・理論的意味を兼ね備えた極めて適切な命名だと思います。この優れた技法が、名称とともに末永く受け継がれ、更なるウォール・オブ・サウンドの繁栄に繋がるものとなれば、これ以上の喜びはありません。

追記:フィルズフィルの日本における使用例の1番目の大滝詠一と2番目の佐野元春は同じ1981年前半の制作ということもあり、どんな因果関係があるのか不思議に思ってましたが、佐野元春が大滝詠一の収録現場を見学して参考にしていたということのようです。(佐野元春インタビューより)

【フィルズ・フィルの使われている楽曲の例】 (カバーソングを除く)

01 The Ronettes / I Wonder Arranger:Jack Nitzsche Producer:Phil Spector 1964
02 Ike & Tina Turner / Save The Last Dance For Me Arr:Perry Botkin Jr. Prod:Phil Spector 1966
03 大滝詠一 / 恋するカレン 作曲:大瀧詠一 編曲:多羅尾伴内 1981
04 佐野元春 / SOMEDAY 作曲編曲:佐野元春 1981
05 松田聖子 / 風たちぬ 作曲:大瀧詠一 編曲:多羅尾伴内 1981
06 森進一 / 冬のリヴィエラ 作曲:大瀧詠一 編曲:前田憲男 1982
07 大滝詠一 / ペパーミント・ブルー 作曲編曲:大瀧詠一 1984
08 竹内まりや / もう一度 作曲:竹内まりや 編曲:山下達郎 1984
09 成清加奈子 / ハートのピアス 作曲編曲:井上大輔 1984
10 レインボーシスターズ / 悲しきウェザーガール 作曲編曲:木森敏之 1984
11 小林旭 / 熱き心に 作曲編曲:大瀧詠一 1985
12 ERI / 恋はドーナツショップで 作曲:木戸やすひろ 編曲:新川博 1986
13 森末慎二 / BECAUSE I LOVE YOU 作曲編曲:岩崎元是 1991
14 細川たかし / 応援歌、いきます 作曲編曲:岩崎元是 1991
15 薬師丸ひろ子 / 夕暮れを止めて 作曲:楠瀬誠志郎 編曲:清水信之 1991
16 三石琴乃 / MY DOLPHIN BOY 作曲編曲:岩崎元是 1994
17 大滝詠一 / 幸せな結末 作曲:大瀧詠一 編曲:井上鑑 1997
18 金月真美 / 愛の国 作曲:木戸やすひろ 編曲:新川博 1997
19 キンモクセイ / 七色の風 作曲:伊藤俊吾 編曲:キンモクセイ&佐橋佳幸 2002
20 岩崎元是 / 君は夏色の風 作曲編曲:岩崎元是 2008
21 原めぐみ / トビラ~EVERLASTING LOVE~ 作曲:渡辺博之 編曲:土屋剛 2009
22 原めぐみ / トキメキ 作曲:星直哉 編曲:土屋剛 2013
23 MACHICO / 勇気のつばさ 作曲:池毅 編曲:岩崎元是 2016

(追加分 )
24 斎藤和義 /歩いて帰ろう 作曲:斉藤和義 編曲:斉藤和義/松尾一彦 1994
25 日向坂46 / もうこんなに好きになれない 作曲:なかざわけんじ 編曲:田中昇吾 2022
26 Irma Thomas / Long After Tonight Is All Over 1964 1964年10月のJimmy Radcliffe版のカバー。

続きます。

「WALL OF SOUND Fan Community (Music Influenced by Phil Spector)」がスタート!



https://www.facebook.com/groups/1269991761570582

↑フェイスブックで新しいグループ「WALL OF SOUND Fan Community (Music Influenced by Phil Spector)」がスタートしました!ここは、フィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドに影響を受けた楽曲を共有し、楽しむための場所です。誰でも自由に参加、閲覧、投稿が可能で、気軽に交流できます。日本は、大滝詠一氏の影響もあって、世界的にもウォール・オブ・サウンドが盛んに作られている国です。クオリティの高い楽曲が多く存在しますが、残念ながらまだ世界的に広く知られていないのが現状です。そこで、このグループではその素晴らしい音楽を世界中のファンに紹介し、喜びを分かち合いたいと考えました。また、フェイスブックにはフィル・スペクターのファングループはありますが、彼の影響を受けたウォール・オブ・サウンドを扱うグループはこれまでありませんでした。そこで、日本だけでなく世界中からウォール・オブ・サウンドの楽曲や情報を集め、共有する場を作りました。 お気に入りの曲をシェア、情報交換や技術談義、オリジナル楽曲の紹介など ウォール・オブ・サウンドに関することはすべて歓迎です!このグループがウォール・オブ・サウンドのさらなる発展に貢献できれば幸いです。一緒にウォール・オブ・サウンドを楽しみましょう!

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: