BARBARA JEAN ENGLISH / YOU'RE GONNA NEED SOMEBODY TO LOVE (WHILE YOU'RE LOOKING FOR SOMEONE TO LOVE )(ALITHIA 6053)'73
甘茶ソウル百科事典P.68及びBILLY'S SELLECT 017。GEORGE KERRプロデュース、アレンジがBERT KEYES、73年の女性ヴォーカル作品というと、 「SOFT TOUCH / IS THIS THE WAY TO TREAT A GUY (SHOUT 259)」
と全く同じ。ここでもバート・キーズの優雅で甘美なアレンジは健在でストリングスやらグロッケンやらで、しっかりと甘茶な味付けが為されています。まるで遺影のような物悲しさ漂うジャケ同様、悲しみに溢れたメロディも質が高く、心に深く染み入ります。所謂レディ・ソウルということになりますが、節操の有る「がなり」過ぎない彼女の歌唱スタイルにも好感が持てますね。翌年にGENTLEMEN & THEIR LADIESが出したサックス主体のインスト版は後半に男性による甘い語りが入るんだけれども、これを バーバラ版
でも演って欲しかった。
BARRINO BROTHERS / RAIN LP(INVICTUS ST-9811)'73
U.S.BDG #251、甘茶ソウル百科事典P.67。バリノ・ブラザーズがインヴィクタスに唯一残した73年のアルバム「Livin' High Off The Goodness Of Your Love」収録曲。スケールの大きなバラードで、大味かつキャッチーなメロディは馴染みやすい反面飽きやすい嫌いはある。6分38秒と長く、ゆったりとしたテンポの曲だけどリードの迫力あるヴォーカルには終始圧倒され、緊迫感がみなぎっています。爽やかで高揚感のあるコーラスをバックに、大上段に構えた大ナタを力強く振りかざすキコリにように荒削りで男気溢れる歌声は甘茶ソウル、というよりもソウル・ミュージックの醍醐味を大いに感じさせてくれます。
タイトルはずばり「夢」だけど、このDREAMってのも甘茶ソウルの大事なキーワードですね。「WILLIAM HART / FOLLOW EVERY DREAM」、「SPECIAL EDITION BAND/ YESTERDAY'S DREAM」、「CHOSEN FEW / I CAN MAKE YOUR DREAMS COME TRUE」、「MARVIN SIMS / DREAM A DREAM」などなど良曲がいっぱいです。
EBONYS / DETERMINATION (PHILADELPHIA INTERNATIONAL 3510)'71
「IT'S FOREVER」,「YOU'RE THE REASON WHY」といった甘茶ソウル名曲を持つフィラデルフィアのスーパーグループのシングル・オンリー曲。GAMBLE&HUFFの作品でアレンジはBOBBY MARTIN。2003年にリマスターでCD化された1STアルバムにボーナストラックとして収録されました。海賊コンピ「SOUL FROM THE VAULT RARE SWEET DYNAMITE VOL.8」にも収録されているので、当時からマニアには人気の高い曲だったことが伺えます。
INCLINATIONS / CROSS MY HEART (To You) (JANUS 240)'74
シングル2枚だけ残して消えたマイナーグループ、インクリネイションズの2枚目のシングル「Could This Be Love, That I Feel」のB面曲。日本産甘茶ソウルコンピ 「フィラデルフィア・スウィート・ソウル」
にも収録されていました。残された4曲の中でも唯一ファルセットリードなのがこの曲。全体として靄がかかったかのような不思議なムードが漂い、リードやコーラスもかなり脱力ぎみ。派手さはないけれどメロディの出来はよく、サビ直前で聴ける一瞬の胸キュンフレーズが魅力的。ヴォーカルなど個々のパートは弱くても、こうした全体としての調和によって曲に輝きが出るというお手本のような曲です。
O'JAYS / JUST ANOTHER LONELY NIGHT (PI B-50013)'85
フィラデルフィアのヴォーカルグループO'JAYSの85年のアルバム「LOVE FEVER」収録曲。フィラデルフィアの重鎮Kenneth GambleとLeon A. Huffによる作詞作曲プロデュース作品で録音もシグマサウンドと85年とはいえ将にフィリー全開な内容。曲は悪く言えば暗く重い雰囲気で、私自身若い頃はあまり好きな曲ではなかったのだけれど、高齢になった最近はその暗いムードに大人の荘厳で孤高の雰囲気を強く感じ、かなり好きになってきた曲。多層的なコーラスワークとメロディの出来の良さも素晴らしい。甘さという点では少し足りないセミスウィートという感じだけど、チョコレートでいう大人向けのビターチョコといったところですかね。
ブラッドストーンの2NDアルバム「NATURAL HIGH」収録で甘茶ソウル百科事典P.79掲載曲。タイトルヒットが有名ですが、甘茶ソウル的には十歩も百歩も魂の奥まで踏み込んだ濃厚な内容のこちらでしょう。ゆったりと落ち着いた出だし部分はメロディに派手さは無いものの、軽やかなギターカッティングと緩やかなグルーヴが心地よい。そして中盤になってコーラスとテンションの高いファルセットが入ってきて俄然盛り上がってきます。どちらかと言えば淡々とした「NEVER LET YOU GO , BABY」と繰り返すコーラスをバックに、悲壮感と緊迫感いっぱいのファルセット&バリトンがシャウトを交えて壮絶に歌い上げます。
DEBBIE TAYLOR / I DON'T WANNA LEAVE YOU (ARISTA 0144)'75
甘茶ソウル百科事典には未掲載で、U.S.BDG #418の女性シンガーのNOT ON LPのバラード大作。その唱法からディープソウルと言っても差し支えない感じですが、全体に漂う甘い雰囲気は甘茶ソウルのそれ。75年作で「A TOM MOULTON MIX」とあるから、おそらくフィリー録音なんでしょうね。流麗かつ高潔なストリングスに包まれ、咽るように濃厚なフィリー臭に思わず胸がキュンと締め付けられます。別れを惜しむ悲しげな女性の気持ちを表現したメロディも、出だしからサビに到るまで実に情感深く、ダイナミックなラインを描いています。
FIRST KLASS / LOVE ME AGAIN 12"(MYSTERIOUS 101)'85
このグループのことは甘茶ソウル百科事典P.33で「TERRY HUFF&SPECIAL DELIVERY / I DESTROYED YOUR LOVE」のカバーで知られるKLASSとともに紹介されている。それと同一グループかどうかは兎も角、TERRY'S SELLECT 013の「SANDEE' / LET'S STAY IN LOVE」のバックを務めているのは間違いなさそう。そのお皿ともどもこの「LOVE ME AGAIN」は甘百掲載皿の中でも最もレア度が高く、マニア受けの高い甘さを持つ曲であり、そういう意味ではFIRST KLASSは甘茶ソウル界ではかなり重要な位置を占める存在と言えよう。
GLASS HOUSE / LOOK WHAT WE'VE DONE TO LOVE LP(INVICTUS 7305)'71
甘茶ソウル百科事典P.32及びU.S.BDG #250掲載曲で彼等の1STアルバム「INSIDE THE GLASS」収録。インヴィクタスには珍しい甘茶もの。ハイテナー・リードのタイ・ハンターのねっちょりとした歌い方が特徴的ですね。バックの音は小さく控えめで、悪く言えば物足りなく、良く言えば上品な内容。スネアドラムの音だけやけに耳につくんだけど、ギターの甘い音色や崇高な雰囲気を醸すストリングスこそ、もっと過剰に強調して欲しかった。コーラスも申し分け程度しか入ってなくグループもの甘茶好きとしてはバックには少し不満が残ります。
MODULATIONS / WHAT GOOD AM I CD「IT'S ROUGH OUT HERE」'73
ノースカロライナ出身のグループ、モデュレイションズの73年のシングル「I'm Hopelessly In Love」のB面の曲。甘茶ソウル百科事典 MOONY'S SELLECT 067掲載の75年のアルバム「IT'S ROUGH OUT HERE」の再発CDにも収録されています。なお、このアルバムには 「Worth Your Weight In Gold」
、ファルセトが魅力の「Those Were The Best Days Of My Life」といった甘茶ソウルも収録されているので甘茶史上に残る名盤と言えますね。
ニュージャージーのヴォーカル&インストゥルメンタル・グループの唯一のアルバム「THE NIGHTS」は、甘茶ソウル百科事典、U.S.BDGともに未掲載。関西のソウルファンジン「SOUL TO SOUL #59」のベストグループアルバム100選には選ばれていて、なかなか微妙な立ち位置のようです。ジャケは二種類あって左側の方がオリジナル。
PERSUADERS / I'VE BEEN THROUGH THIS BEFORE (ATCO 7012)'75
パースウェイダーズといえば 「Thin Line Between Love And Hate」
が有名ですね。75年のシングル・オンリーのこの曲は甘茶ソウル百科事典、U.S.BDGともにスルーしてしまった曲だけど、真の甘茶者ならばこの曲こそを代表曲に選びたい。ライターは質の高い旨味のあるメロディを書くことで知られるSAM DEESで、アレンジはトムベル(TONY BELL)。
甘茶ソウルにおいて「MAGIC(魔法)」という言葉は最も大事なキーワードの一つ。「TRUMAINS / MR. MAGIC MAN」、「GASLIGHT / IT'S JUST LIKE MAGIC」、「PULSE / DON'T STOP THE MAGIC」など優良曲がゴロゴロあります。魔法という非日常的事象が甘い夢み心地な雰囲気を醸すのに大いに有効ということでしょうね。ロバート・ウインタースの1STアルバムのタイトル曲であるこの曲も、そういったドリーミィーな曲の一つ。「I'M YOUR MAGIC MAN」と女性に語りかけるように歌い上げる所は「白馬に乗った王子様」的意味が濃いのかも知れません。非裏声でクセの無い男性ヴォーカルがムーディーに聴かせる内容なので、 「女性を口説く為の究極のBGMベスト10(スウィート・ソウル編)」
に入れても良かったかも。