320life

PR

プロフィール

ノマ@320life

ノマ@320life

キーワードサーチ

▼キーワード検索

カレンダー

2023.10.14
XML
テーマ: 読書(8290)
書名


27000冊ガーデン [ 大崎 梢 ]

感想

県立高校の司書・星川駒子。
学校図書館の利用者を増やそうと、孤軍奮闘する毎日だ。
ある日、生徒が本にまつわる謎を持ち込んで来てーーー。
出入りの本屋・針谷さんと、日常の謎解きが始まる!

という内容。
すべて背表紙がひっくり返された本棚の謎。
春雨づくしのレシピが載っている本を探せ。


図書館にまつわる本が好きな人は好きな感じ。
学校図書館が舞台の小説でいうと、

本と鍵の季節 [ 米澤穂信 ]
栞と嘘の季節 [ 米澤穂信 ]
図書室のはこぶね [ 名取佐和子 ]

あたりだけど、この作品も上記3作に近い。日常の謎×本というテーマ。
毛色はちょっと違うけど、

リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ [ こまつあやこ ]

も学校図書館がキーになる。
上記4つは生徒が主人子だけど、この『27,000冊ガーデン』は図書館司書が主人公。

麦本三歩の好きなもの [ 住野よる ]
麦本三歩の好きなもの 第二集 [ 住野よる ]
お探し物は図書室まで [ 青山美智子 ]

らへんは、一般的な「図書館」が登場するし、司書視点もある。

この本を盗む者は [ 深緑野分 ]

は私設図書館だし、

図書館がくれた宝物 [ ケイト・アルバス ]



出版社、本屋、図書館。
本が登場する小説って、どうしてこんなに楽しいのかなあと思いながら読んでいて、「本の中にたくさん実在する本が登場するから」かと思った。
内輪ネタ、あるあるで盛り上がれるというか。
(「中田永一」っていう作家さん、「乙一」の別名義なの?!読んだこと無いけど、別名で書いていること知らなかった。あと、「ちょー」の話で「美女と野獣」って続けるところ最高に好きな内輪ネタ…コバルト文庫、野梨原花南『ちょー美女と野獣』ね!ダイヤモンドにジオラルド!)

これこれこういう作家を読んでいる男の子だ、という描写に、「センス良いね」と評するところなんて、まさにそう。
どういう本を読んでいるかは、どういう本を選ぶかは、その人を表す。

「…私、思ったの。本って、それそのものが密室みたいじゃない?」(略)
「密室ですか」と、疑問の形で話を促す。
「外から完璧に閉ざされていて、中で何が起きているかまったくわからない。知りたかったら表紙をめくり、書かれてある文章を読んでみるしかない。そう思うと、図書館って密室だらけよ。面白くない?」


先輩司書が、主人公に言うこのセリフ。
そうなんだよね。
私は良く、表紙とタイトルから本の中身を想像して、だいたいそれと違いましたっていうところからレビューを書き始める。
扉の向こうは別世界、秘密の花園の鍵穴の向こう。これは王国の鍵。

この本の主人公は、県立高校の司書。
タイトルは、「高校にある図書館蔵書数は、平均27,000冊」というデータから。
学校司書の立場(教員じゃなくて事務員なんだ?!とか)や、年間の購入予算が20万円(え?!)で、保護者から月額200円ずつ集めてるとか、配架と廃棄の話とか、学校ごとの教育目標による図書室運営方針(選書)の違いなど、「へえええ〜」というお仕事内容がたくさんあって面白かった。

ひとつ疑問だったのが「学校司書は事務員」という説明。
私、知らなかったけど「司書教諭」と「司書」以外に「学校司書」という職種があるのね…。
「司書教諭」と「学校司書」及び「司書」に関する制度上の比較 (文科省)

まず、正規職員の「司書」がレアジョブになっている昨今。
公設図書館の司書募集なんて、あれば良い方。ないのが当然、あっても数名。
図書館流通センター(TRC)や、TSUTAYAを運営するCCC株式会社、丸善CHIホールディングス株式会社…。
公設図書館はどんどん民間に委託されていて、委託先では最低賃金程度でアルバイトが多い。

そんな中で、さらにレアジョブなのが正規職員の「学校司書」ですよ…。
これも公立だと会計年度任用職員で、曜日ごとに行く学校が違ったりじゃないですか…。
そんな中、この小説の主人公は、県立高校の学校図書館の専属フルタイム司書(公務員)なのですよ!

私、求人検索して条件見て撃沈。
私は司書と、司書教諭(教員免許資格+司書資格+αの受講で取れる)の免許を持ってるですが、そして出来ればそういう仕事を出来たらと思うんですが、「うーん」となってしまう。
最近語学交換をしている相手に「そんなに本が好きなら、本に関する仕事をすれば?」「好きなことを仕事にしないと、毎日なんのために生きてるの?」というようなことを言われて、「そうなんだけどさあ」となってます。

図書館って、本を貸し出すだけの場所じゃないんだよね。
主人公は、「自分を救ってくれた大切な場所」としての図書館を、今度は「かけがえのない場所を守る側に回りたい」と学校司書を目指した。
学校の中にあって、個人の自由が認められている場所。

学校に本を納入する業者の書店員・針谷は言う。

恵まれている子と、そうでない子。生徒たちには選びようもない、持って生まれた環境のもと、自分の心ひとつで、生きていくしかない。
「ぼくはその話を折に触れて思い出します。そして、伸ばした誰かの指先に、届いてほしいと願いながら本を並べています。本から得られるものは無限であり、それは誰にとっても平等だと思うので。というか、そう信じていたいので」


私も本の森に救われたひとりだ。だから、その場所を守る事ができたらな、と思う。
あなたは本に守られている。その砦の中で、あなたは自由だ。
たとえそこが外界から隔絶された箱庭でも、その中にいる間は、あなたは安らげる。
あなたは本に守られている。大丈夫。
深い森の中には、いくつも外の世界への扉が並んでいる。
あなたはもうその鍵を持っている。

いつでも来て良い。何度でも来て良い。どれだけいても良い。
そんな場所が、ほかにあるだろうか。
赦された場所。

ーーー図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る。

そしてこの本は(公立の図書館であるならば)すべて無料で借りられて、あなたはそれを持ち運べるんだ。
本を携えて、その物語を胸に抱いて、言葉を唇に乗せて。

あなたは本に守られている。
だいじょうぶ。
だからどこへでも行けるよ。


にほんブログ村 にほんブログ村へ

クリック頂くとブログ更新の励みになります!





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2023.10.14 04:12:53
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: