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2013.12.06
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テーマ: 読書(8214)
カテゴリ: 読書
どっかのブログでおすすめしてたので、読んでみました。


グラン・ヴァカンス [ 飛浩隆 ]

これねえ、私は読んでびっくりしたので、これから読む人はネタバレ見ない方がいいと思う。
ミスリードなのか、私が勘違いしたのか、かなり騙されました。
面白いんは面白いよ。
もう本格派SFって感じ。
SF的ガジェットがいっぱい、SF的専門用語いっぱい。
ちょっと小難しくて、ちゃんと理解するのは大変。
そういう雰囲気が好きな人向け。
以下ネタバレ。








ネタバレを気にする方は気を付けて。











ヴァーチャル空間の中の話だと、そういう評判は聞いてたの。
プレイヤーが来なくなったのに稼働を続けるゲームの、NPC(ノンプレイヤーキャラクター)だけの町だって。

で、読んでみると、
のどかな、一昔前のヨーロッパの港町。
友達以上恋人未満の少年と少女。
物理法則に干渉できる「硝視体」(物理法則に準じた基本プログラムに干渉して魔法を起こす、みたいな)。
ある日突然現れた、敵「蜘蛛」。

最初のうちは、ここは「ぼくのなつやすみ」や「どうぶつの森」みたいなのどかなゲーム世界だと思ったの。
都会の喧騒に疲れた社会人が、田舎の自然と純朴な村人と触れ合って癒しを得る、みたいなゲーム。
そんで、少年、少女、魔法のアイテム、敵と戦う、ってなったから、これは昔のSFジュブナイル的冒険活劇なんだろうって、勝手に思い込んじゃったのね。


あれ?

なんか違うような…

これは

「どう森」かと思ったら、

エロゲやないかい!



近親相○もあるよ(^_^;)

って最初の雰囲気に騙された!
思ってたんと違う(^_^;)。
てゆうか、これはミスリードなん?
私が勝手に勘違いしたんかなあ。
いや、悪い意味じゃなくて、意外性があってよかったんだけど。

この「夏の区界」というヴァーチャル空間では、人間はエッチしに来る(来てた)訳。
しかも現実ではできないかなり変態というか、SMというか、肉体的にも精神的にも酷いプレイをする。
そのリアルさを上げるために、のどかな村で純朴に暮らしてる普通の人間という設定で設計されたNPCたち。

ひでえ(^_^;)。

わざわざエロゲにそこまで設定すんのかっていう。
それにそのNPC(作中ではAI)たちには、本人も覚えてないトラウマ設定がしかけてある。
一人ひとりの過去のドラマがある。
それでキャラにリアリティと深みが出るし、行動を抑制、方向付けできる。

「シュガーラッシュ」の女軍曹さんも、結婚式当日に花婿をバグに殺される、というトラウマ持ちだったなあ。
だから、バグに深い憎しみがあるし、また恋をすると相手を失うんじゃないかと恋愛に臆病。
わかる、わかるよ、キャラに深みを持たせたいんだよね。
「シュガーラッシュ」はディズニーだから、そりゃぬるいんだけど、ゲーム世界のNPCが他所のゲームから来た侵略者と戦うっていう話だから、かなりかぶってる。

でさー、「夏の区界」のAIさんは、基本、恐怖とか悲しみとか嫌なトラウマしかないのに、更に「人間」が来ては酷いことしてくんでしょ(強○とか拷問とかそんなん)。
嫌な思い出しかない。
あまりに可哀想。
もう人間なんて来ない方がええやんか。

まあそのキャラ設定は置いといて、話の展開はバトルものになるの。
敵は「蜘蛛」と呼ばれる足がいっぱいある怪獣?
これもプログラムで、「夏の区界」のAIを食べる!
主人公の少年ジュールは、天才という設定で、「硝視体」と蜘蛛の糸のレース編み(プログラム)で、蜘蛛を迎え討つ!

この手のヴァーチャルものって、プログラムを視覚化するのがお約束だよね。
「マトリックス」の縦に流れる蛍光緑の文字とか、床や空中に魔法陣書いたり。
このお話では、何故か編み物なんだな。
プログラムコードはレース編みとして作られる。
アニメにしたら綺麗そう。

で、途中はけっこういい感じなのよ。
蜘蛛をばったばったとやっつけて、愉快痛快、何とかなりそう。
火吹いたり、凍らせたり、ゴーレム?作ったり、魔法バトルみたいで面白いし。
でも敵の親玉のランゴーニってのがチート過ぎて、だんだん劣勢に。
ランゴーニさんの方が上位魔法を使える感じ。

さくっとラストネタバレすると、
結局、みんな負けて終わり。
主人公のジュールだけ残った。

これもびっくりだよ(^_^;)
さっきも言ったように、SFジュブナイル的冒険活劇だと思ってたから、まさかほんとに負けると思わなかったよ。
鬱展開だよ。
カタルシスないよ。
なんだったんだこの話は…(^_^;)。

一応、ジュールが成長し、旅立つって、希望を感じるようなラストではあったんだけど。

私が大好きな大原まり子の「ハイブリッドチャイルド」も、みんな死んで(?)、なんだったんだって話なんだけど、不思議とカタルシスはあったのね。
何が違うんかなあ。
ちょっと最初の思い込み(SFジュブナイル的冒険活劇)が強すぎたのかなあ。
もっとフラットな気持ちで読んだら違ったのかもしんない。

負け戦は負け戦なんだけど、そのキャラ達のやられ方がバラエティに富んでて、一人ひとりにドラマとか見せ場?があって、その情景はぐっと来る。
うーん、ホラーと思えばいいんかなー。
「ベルセルク」の「蝕」に近い?
「ベルセルク」で「蝕」のあとガッツが助かったとこで話終わっちゃったよ、どうすんのこれってとこか?

なんか三部作の一作目だそうで、謎があんまり解明されてない。
それもあってかモヤモヤ。

ランゴーニさんは、全区界の脅威である「天使」と戦ってて、その「天使」に対する武器として「苦痛」を集めてた。
「夏の区界」は、トラウマだらけの苦痛だらけで集めるのにちょうどよかった。
最後は、生き残った「AI」たちを、生きたまま引きちぎって集めて肉団子にして、まとめて時間凍結、ほぼ永遠に「苦痛」しか感じない「苦痛の檻」を作って、ほくほくして持って帰った。

酷い(>_<)。

人間生きたまま肉団子って、小説の方の「幻魔大戦」にあったような気がする。
あと、ゲームの「塊魂」も思い出した。
生き物を集めて武器として使うってアイディアは「マップス」の生贄砲だな。

なんかねえ、この作品は、アンチエヴァかなって思った。
なんでも「エヴァ」に置き換える「エヴァ脳」なんだけど(^_^;)。
「エヴァ」だと、人類補完計画みたいな、いわゆるアイデンティティの融合って、気持ちいいことのように書かれてるじゃん。
人と繋がりあえたら、癒しがある、みたいな。
でも「グラン•ヴァカンス」では、融合は苦しみだ。

人とつながっても、痛みは分かち合えない、むしろ倍になる。

という考え。
まあ言われてみたらそれもそうなんだけどさー。
合体した相手が、無垢で強くて包容力があって私の苦しみを薄めてくれる、とは限らないわなあ。
自分よりもっと傷ついてて不幸で苦しんでマイナスの感情ばっかりの人とつながっちゃう可能性もあるわけで。

この作品には、真の「癒し」はない。
多分プログラムだからなんだろうけど。
人間と違って本当に忘れることはできない、「苦しみ」の記憶は完璧には消せない。
ジュリーという少女は、他のAIを癒すのが役割だけど、他者を癒すたびにその分ジュリーが傷つく。
「苦しみ」の総量は減らない。

世の中、読者をヨシヨシしてくれるぬるい話が多いのに、なんなんだこの残酷さは。
大原まり子には「癒し」がある。
まあいわゆる「母性」ってやつかな。
「大丈夫、なんとかなるよ」って言ってくれる存在かなあ。
飛浩隆には「母」なる存在はないかな。「女」はいるのになあ。
みんな自分のことばっかり。
そこが違うかなあ。

あと、明らかなミスリードがあって、最後にネタばらしがあります。
実は…と驚愕の真相が明らかに!
なんだけど、びっくりはしたんだけど、それがストーリー上にどういう意味があるんかわからんかった。
所詮AIだし、設定として肉親だとしても、だからどうしたって感じ。

それと、やたらとセックス至上主義、恋愛至上主義にちょっと辟易(^_^;)。
もうくどいくらい、エロ描写?っていうか、SM描写というか、誰と誰が好きで、どうのこうの。
そりゃ「夏の区界」のコンセプトがエロゲだから、しょうがないんかなあ。

なんか文句ばっかりになったけど、ヴァーチャル空間のコンピュータ上のプログラムならではの描写は素晴らしく、正に「SFとは一つの絵である」という言葉とおりの作品。
「硝視体」とか「数値海岸」とか「アイデンティティ境界」とか、ちゃんとは理解できないけど、なんとなく雰囲気でわかった気になるかっこ良さげな単語たちもよい。
ジュール少年が旅立つ話、壮大なサーガの序章としては、あのラストでいいんかもしんないし。
SF好きなら読んで損はない一冊です。



----追記(関連項目を追加しました)----

関連項目
「グラン•ヴァカンス」で思い出したもの


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Last updated  2015.04.20 08:56:02
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