<6月6日>(水)
○米朝首脳会談まであと1週間。ということで、世間的には関心が高まるところなんでしょうが、個人的にはそんなに盛り上がっていません。サプライズはないんじゃないですか、だって米朝ともにやりたくて仕方がないんですから、などと答えている。
○そこは世紀の会談なので、見所はいっぱいある。①トランプさんと金正恩の食事会は行われるのか?その場合、どんな料理が出るのか? ②外貨のない北朝鮮の代わりに、金正恩のスイートルーム代を肩代わりしてくれる奇特な人は誰か? ③駐機場にエアフォース・ワンとエアフォース・ウンが並んでいる写真が撮れるか? ④日本のメディアは会場に入れてもらえるのか? 結局、米朝のカメラだけが入るのではないか? などなどなど。
○ちなみに②については、核兵器廃絶団体のICANが払ってもいいと言っているそうです。怪しい団体ですなあ。ノーベル平和賞をもらう団体というのは、だいたいが碌なもんじゃありません。
○米朝首脳会談は、成功も失敗もしないでしょう。アメリカ側から見れば、非核化はできない。CVIDなどとんでもない。せいぜい軍備管理に毛が生えた程度でしょう。それではやる値打ちがない、と軍事の専門家は批判するかもしれない。しかし非核化というのは、本来、核軍縮の専門家が大勢集まって、長い時間をかけなければ実現するものではない。ところが北朝鮮相手の交渉は、当然、トップダウンでなければ進まない。下から積み上げても意味がないのです。
○ドナルド・J・トランプという異色の大統領がいたからこそ、金正恩が前に出てきた。マッドマン対マッドマンだからこそ、今回の会談は成立する。でなきゃ、今までと同じような対立が延々と続いていたはずです。しかるにマッドマン同士で細かな積み上げはできない。そういう逆説の上にかろうじて成立する首脳会談なのです。
○マッドマンその1のトランプさんとしては、ここで何がしかの成果が上がればそれで十分。とにかく前任者ができなかったことを成し遂げれば、彼は満足でしょう。逆に言えば、前任者がもらったノーベル平和賞なんぞに、深い思い入れはないはずです。会談が終わった後は、彼は急速に北朝鮮に対する関心を失うのではないでしょうか。とりあえず核実験とミサイル発射がなくなるのであれば、後はどうでもいいわけですから。
○逆に北朝鮮から見れば、アメリカからの体制保証は得られるかもしれないが、経済援助は得られない。国連の制裁解除だってできないでしょう。ただし中国と韓国は、多少はなしくずし的に協力してくれる。既に中朝国境の中国側の土地は値上がりしているのだとか。その程度のご利益はあるでしょう。
○ただしマッドマンその2の金正恩にとって重要なことは、「核武装と経済建設」という2つの目標のうち、前者は達成したからこれから後者に移ると国内向けに宣言したことです(正確に言えば、前者を達成したものと見なして、後者に移る振りをする、ですけど)。そのためにアメリカのお墨付きを得た、と喧伝することができる。これは祖父や父が果たせなかった夢である。どうだ、控えおろう。
○ということで、トランプ大統領も金正恩委員長もともにこの会談で利益を得る。だったら、やらない理由が考えられない。どちらかが怒り狂って途中で席を立つ、なんて番狂わせは起こりにくいのではないでしょうか。
○それよりも何が起きるかわからないのが、今週6月8~9日にカナダで行われるG7サミットです。議長のジャスティン・トルドー首相は怒り心頭です。5月末の時点(つまり先週)で、NAFTA再交渉は妥結するだろうと彼は考えていた。ところがアメリカが強硬路線に出て、しかも鉄鋼・アルミ追加関税を実施してきた。EUも同様です。
○ちなみに日本は一足お先に追加関税をくらっておりますが、幸いなことに4月の対米鉄鋼輸出は前年同期比13%増(数量ベース!)なので、あんまり実害はおきておりません。こういういい話は、なるべく大きな声でしないようにしましょうね。アメリカ企業が我慢して関税を払ってくれている、ということですから。
○本来、今年のG7サミットは、米朝首脳会談を前に皆で「トランプさん、頑張ってくださいね」と励ます会となるはずであった。それが「G6対1」の深刻な貿易戦争の場となりそうである。こんな風にしたのは、アメリカの自業自得です。先週のG7財務大臣会合では、ムニューシン財務長官が孤立していた。そりゃあ彼はまともな人間なので、言えることといったら「上司に伝えます」というくらいでしょう。貿易の世界では、マッドマンはただの迷惑な存在です。
○ひょっとするとトランプ大統領は、G7サミットをドタキャンしてしまうかもしれません。つまり米朝首脳会談よりも、こっちの方がよっぽど訳が分からない。トランプ劇場も、だんだん危うくなってきたのではないかなあ。マッドマンは局地戦では成果を挙げるかもしれませんが、なにしろ戦略がありませんので。
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