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「それって、勘当って事?」と聞き返した。 そんな彼に「ああ、そうや!そげな言うことをきけんような子なんか、あんたみたいな子はいらんのや。 どうにでん好きにしたらいいんや。」と、初めて聞く母親の、その、すごく怒った言葉に隠された様な、押さえきれない心の叫びを、精一杯に受け止めて、張り裂ける程に胸を詰まらせながら、「分かった。」と一言で結ぶ事でしか、その場を終わらせる方法を見いだせなかった自分を情けなく思った。 しかも、これほどの犠牲を払ってまでも守らなければならない彼女の過去を一緒に背負わなければ、今後、自分が男としてやって行く為の、未知なる不安をうち消す方法は、他にはないであろうと覚悟を決めた事で、今日のこの話し合いの幕を引く事を、自分の持ち込んだ、不毛の、軽はずみな、この結婚話騒動の責任をとると云う意味での言葉として、その一言の重みを感じながら使うしかなかった。・・・・・つづく
December 31, 2008
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母親はそれを最後に口を結んで、押し黙ってしまった。 そして、手酌で澗の冷めた酒を徳利からグラスへと乱暴に空けると、黙々と飲み始めた。 叔父さんが、「姉さん、そげな飲み方をしなんな、身体に毒やけん。 つまみながら、ゆっくりやらな。」と、言いながら、彼に、「こげえ母ちゃんを怒らしちゃダメやけん、ちゃんと説明せないけんで。」と、真剣に取りなして呉れたのだが、彼には、それ以上の説明が、何としても出来なかった。 母親は、そんな叔父さんの優しさを、るったいないから、もう止めてとでも言う様な表情で「もういいんや。 この子の事は、もう諦めたけん、もいいいちゃ。」と、いまにも眼から零れだすものを押しとどめるかの様に、精一杯の言葉を使って吐き捨てる様に言った。 それを聞いて彼は親としての心が、手の届かぬ歯がゆさと、もどかしさと、悲しみに満ちた様な表情から見て取れる最後の決断を、代わりに言うのが今の自分の役目なんだろうなと・・・・・つづく
December 30, 2008
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そげな事まで、よーく考えてからでないと、結婚なんて、簡単に出来るもんやないんで。 何で、そげな事もわからんでから、結婚なんて言えるんや。 そんな簡単に物事を考える様な事しかできん子に、結婚なんて事を言えるもんやないんで。」と言うばかり。 更には、「こげな話をする為だけやったんなら、何も、帰ってくる事なんて無かったんやないんね。 それも、わざわざ二人で。」と。 そして、「そげえ急ぐ理由は、赤ちゃんでもできたしか、ないんやないんね。」と、それが最後の言葉とでもいうかの様な、寂しそうな表情で、その言葉を吐き出すと、見開いていた眼を力無く落としながら、「そげえまでして、何も言えんごとある様な結婚をしたいんやったら、お母さんは、もうしらんけん!好きにしたら良いんや。」と、本当にガックリと肩を落としたのを見て、彼は、《母ちゃんゴメン!》の言葉しかない自分の、不甲斐なさを痛いほど感じていた。・・・・・つづく
December 29, 2008
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そんな彼に、「ここまで聞いても、あんたはまだ、なんか隠しちょるごとある。 そんなんやったら話し合いなんか出来んで。 なして、こげえして、叔父さんや叔母さんに一緒に居てもろうちょるかが、あんたには、わかっちょらん。 そげな、もののわからん子に何を言うても、つまらんごとあるけど、そん訳を言うちゃげるわ。 お母さんが一人であんた達と話しをすると、カッとして何をするやら判らんけん、こうして居てもろうちょるんやろうが。 そやけど、あんたが、そげえまでして、その彼女を庇うんなら、カッとせんごとならないけんけどな。」と、憤りの感情を自ら鎮めるかの様なセリフを言いながら母親は、「私はあんた達の結婚を反対しているんやないんで。 まだ若いんやけん、二~三年くらい待って、結婚式のお金でも貯めてからしても、良いんやないんねって言うちょるだけやないの。 それやし、結婚すれば、何時赤ちゃんが出来るかもしれんのやで。 そう成ってから、あんたの少ないお給料で、食べさせていけるんね。 二人で働けばっていうはなしかて、そこで変わってしまうんやないんね。・・・・・つづく
December 28, 2008
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ちゃんとしたルールを守れんかったら大人としては、認めてくれんのやけんな。 それからや、何んでこげな急な話になるんかが、私には全然判らんのや。 こんな人がおるとか、こんな気持ちでいるとか、電話で言えんようなら、手紙のひとつも書けば済む事やったんやないんね。 私は、こげな子に育てた覚えは無いんやけんね。本当に。」と、まさしく鬼気迫る様な表情で、言葉の羅列を直接ではないながらも、彼にたたきつける様な勢いと、強い語気でね吐き捨てる様に言うのを聞きながら、こんな剣幕の母親は初めて見るなと、ビックリし、〈お母さんって、こんな人だったんだ。〉と、思いながらも、いちいち言われる事のもっともさに、何も言えない自分がいた事が、情けなくもあり、楯にも成れない自分を、彼は痛みの度数の限界を超える程の感じで、受け止めざるを得なかった。 更に激しく、何故いま急になのかと、しきりに問いただされたのだが、彼は、まさか、本当の事は、彼女を守る為にも言う訳にもいかないので、曖昧な訳の判らない、説明しか出来なかった。・・・・・つづく
December 27, 2008
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叔父さんの家には、別府から母親が連絡をしていたらしく、夕べの支度が出来ていて、叔父さんと叔母さんに同席して貰いながらの話し合いとなった。その席での開口一番は、母親が、それまで溜めていた想いの丈をぶちまける様に「何の連絡も無しに、何で、こげな急な話をする様な事をするんね。 普通の人やったら、来る前に電話の一本も入れたりするで。 それをあんたみたいなのは、結婚するみたいな大事な話をするんやったら、それくらいの事が出来んでどうするんね。 大人に成っちょらんけん、そげな事やないんね。 自分の事ばーかり考えよるけん、こげなやりかたしか出来んのや。 そげな大人にも成っちょらん子が、結婚するとか言うても誰が信用するんね。 お世話になってる社長さんとかには、ちゃんと話して来たんやろうね。 それくらいの事はちゅんと出来たんやろうね。 私だけやったら、どげん事されても文句は言わんけどな。 社会はそうはいかんのやで。・・・・・つづく
December 26, 2008
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〈せめて今日一日は、僕が楯になんなきゃ。〉と、彼はそれわしっかり受け止めなければと思った。竹の籠に入れて、熱そうな温泉の中に数分入れるとできあがる、ハードボイルドな温泉卵をたべたりなどして、かれこれ二時間位の時間を過ごし、その旅館へ戻ると、出迎えた母親が、やや気色ばんだ表情で、「叔父さんや叔母さんにも聞いて貰いながら話をしたいけん、大分へ一緒に行くで。」と、タクシーで大分へ向かうよう、二人を先に車に押し込む様に最後に自分も乗り込み、運単主さんに行き先を告げた。 車中でようやく、母親に向かって、彼女をちゃんと紹介して、彼女も、「初めまして、竹下 和子です。 この度は急なご挨拶で、申し訳ありません。」と口を聞いたが、「東京へ出てから、一回も帰らんかった子が、今日みたいに、突然こげな用事で帰ってくるんやけん、ほんとにビックリするだけや。」と、ややもすると、とんちんかんなともいえる答えが、母親の口から飛び出してきた。・・・・・つづく
December 25, 2008
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そして、少しの沈黙の後、「お母さんが支度するまで、あんた達二人で、温泉地獄巡りでもして来たらどうね。」と、彼女に挨拶をさせる暇も無いまま、そそくさと、地獄巡りをする為にタクシーへと乗り込まされた。澄んだ静かな真っ青色の海地獄。 本当に真っ赤な血の色をしている血の池地獄。 綺麗なグレイカラーの風船玉がボコッボコッと、いまにも、本当の泥の風船玉に成って飛び出さんとでもするかの様にわき出る坊主地獄など。 地獄という名で呼ばれている割には、空気や色など、景色そのものが透き通って感じる事が不思議な感覚である事や、何度か来た事があったはずなのに、初めて体験した様な気さえする事に、戸惑いながらも、何カ所かの温泉地獄をゆっくりと観て周りながら、彼女にもその乾燥を聞いてみると、「私、今日初めて地獄巡りをさせて貰ったけれど、地球って凄いなって思える。」と、重苦しい雰囲気を受け止めながらも、いじらしい程頑張っている様な返事をよこしたので・・・・・つづく
December 24, 2008
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母親を想う心は大切なものではあったが、目の前の彼女を救わなければ、と云う問題は急を要するのだからと、母親への想いを凌駕しているその心を感じながら、この結婚話をなんとしてでも認めてもらうのだと、一途な想いだけを胸に包み込んだ彼がいた。母親の勤め先の旅館にタクシーで直行して、対応してくれた仲居さんに、自分の名を名乗り、母親の名を告げて、呼んで貰った。 取り急ぎ出てきた母親に、「ただいま。 突然なんだけど、話があるから。 この人、竹下 和子さん。 僕、この人と、結婚しようと思って挨拶に、急だけど帰って来ました。」と、顔を見たら何と言おうかと、散々考えあぐねていた事を、一気に、息せき切った様に支離滅裂な、言いたいことだけをしゃべった彼に、「何言いよるんね、こん子は、何年ぶりかに帰ってきちょりながら、お母さんに向かって言う事が、そげな事ね。」と、何事?と、目の前の事態の情報収集をする、その母親の顔が、その頭の中で、必死に言葉を手探っている様にもみえた。・・・・・つづく
December 23, 2008
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彼は、物心がついた時から母親と一緒に暮らした事が無かった。 父親の稼ぎが少ないからとの理由で、母親が住み込みで働きにでたので、一緒にいられなかったのだ。 だから、おばあちゃん子と云う子とになる。 末っ子の彼は、甘やかされて育った。 寝て起きると、お菓子の包みが枕元に置いてあったりした事などが、記憶にある。が、子供心の母親を求めるそれを、悲しい、切ない程の想いが、物心ついてから、ずうっと持ち続けていた事が記憶にある。 そんな記憶が、約束という言葉を使って、頑なな思いをだしている事とは、自分の心でありながら、自分で素直に認めたく無いそれであった。そんな想いを持つ母親に、こんな話しを、いきなり突きつけると云う、自分を許せない事態が起こってしまっているが、後には引けない。・・・・・つづく
December 22, 2008
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強烈な陽の光は、当たった瞬間に真っ黒に日焼けしそうな程だったが、あぁ、九州の夏ってこんなだったんだと、大分を就職の為に東京へ旅立ってから、たった三年しか経っていないのに、すっかり忘れている自分に気付き、ちょっとビックリした。そして、何故か就職の為に東京行きの列車に乗り込む、その時の自分の姿を思い出していた。《見送ってくれた母親が「東京へ行ったら、三年は帰ってきなさんな。」と言ったので、「分かった」と返事をした自分がそこにいた。 そして、就職してからの自分は、その通りの心構えで働いていたので、最初の夏に母親から寮に電話がかかってきて、「お盆休みは帰ってこれるんね。」と聞かれた時、「三年は帰なさんなって、約束したんやけん、帰らんで。」と返事をした。そして、正月休みも、友達は帰省するのに、一人、寮に残っていた。 そして次の夏も、正月も、一人でいた。》だから、三年経ったいま、と言う訳ではないが、そこに自分がいる事に初めて、気が付いた様に・・・・・つづく
December 21, 2008
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彼は、何の事前の連絡も無しに、彼女は実家へ電話を入れ、急遽二人で、九州のそれぞれの実家へと一緒に向かう事にした。 彼の実家は大分。 ブルートレインの[富士]で大分を目指した。母親の勤めている旅館を尋ねる為に別府で下車をした。発車が夕刻で、冷房の効いた社内で過ごして来たので、午前10時に別府駅のホームに降り立った瞬間、彼の目にカッと射し込む8月の太陽の光が強烈にまぶしい。いきなり腕にあせがプツ!プッ!と噴き出してくる。そしてアッ!という間に塩の固まりになる。 東京のジメッとした汗の感触と違って、乾いた熱気がガバッ!と身体中を包み込む様に感じるそれは、熱いというよりも、むしろ、さらりとして、爽やかにさえ感じられ、不思議な程、汗が気持ち良いと感じられた。・・・・・つづく
December 20, 2008
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それなら、結婚式は何とか挙げられるけれど、披露宴を開く余裕は無いから、それはガマンして貰えるかと、彼が彼女に、そう問いかけると、「結婚式を挙げてもらえるだけで、私は幸せだから。」と、頷いて呉れたので、後はウエディングドレス一式とハイヒールをそろえれば良いネ。 というところまで話は進んだ。 ただし、司祭様の説明では、週二時間位を一ヶ月懸けて、キリスト教の勉強をして下さい。 という事だったので、先ずは、その時間を取り、式はその後でという事に成った。 結婚式の話を進めているうちに、彼は大切な事を忘れていた事を、やっと思い出した。自分の親への報告や、会社への説明など、何も考えていなかった事である。 先ず最初に親への報告をしなければと云う事で、彼は母親の気持ちを考えてみたが、多分、連絡をすれば反対されるであろうという予感があったので・・・・・つづく
December 19, 2008
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〈この人と一緒に生きて行こう。 行かなければイケナイ。〉と、自分の昨日までの過去と決別しながら、自分の未来に明るい光が射し込んで来たのを眼ではなく、身体で、電車の揺らす、ゆりかごの様なそれに身を任せている、不思議な安堵感に、【幸せ】だ、との想いを芽生えさせていた。その日から、二人は結婚式を、どうするのかと云う事を考えるのが始まった。先立つものはお金。 その現実的な問題は、大きく二人にたちはだかった。 実際、彼女は一文無しにも等しく、彼は彼で、大して預金がある訳では無かった。 そんな中で、彼女自身がミッション系の高校を卒業した事から、教会式ではという提案に、《じゃあ、教会に問い合わせてみようか。》と、前向きになれた事で、ちょっとホッとする事ができた。 先ずは、その教会を探す事から始まった。 そして、直ぐに飯倉から近い六本木の『聖パウロ教会』を探し出せた事で、結婚式に掛かる費用の問い合わせをした結果、式代は気持ちで、花代とオルガン代だけで良いですヨ。との事。・・・・・つづく
December 18, 2008
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朝、「時間だから起きて!」と、起こされるまで爆睡。 コーヒーを一杯だけ飲んで二人は出勤時間に遅れまいと、大急ぎで支度を整えて、アパートを後にした。彼は、駅へ向かって指す道を下りながら、膝がガクガクするのを強く感じていた。 そして、初めて、眼に飛び込んでくる太陽の光が真っ黄色に見える事を発見したので、その事を彼女に伝えると、彼女は言葉を口にはせず、微笑んで見返すだだった。彼は混んだ電車の中で、揺られだすと、景色を見るどころではなく、たちまちの内に睡魔が襲ってきて、吊革に掴まりながら立ったまま半分は寝ていた。 彼女もまた、睡魔の襲ってくるそれと必死に戦いながら、自分を好きだと、愛してると言って呉れた、隣で吊革に掴まって、立ちながら寝入っている彼の横顔を見て・・・・・つづく
December 18, 2008
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じれた様に、彼女が自分でそれをはずして、「ここを触って、吸って」という言葉にリードされながら、彼は、初めて乳房に触れ、乳首に口を付けた。 その瞬間、それは、酸っぱい様な味がした。 そして、その乳房を触っている彼の右手を、彼女の左手が握りしめ、そのまま下着の中へ導き入れ、彼女の秘密の場所へと誘導して近づけた。 彼の頭の中は、グチャグチャになっているのに、彼女が「ちゃんと触って」と言いながら、触りやすくとでもするかの様に太股をやや開けて、彼にしがみついてくる。 彼が初めて触るその場所は、ヌルッとした感触と熱く感じるほどの暖かさで彼の指を飲み込んだ。 ・・・・・つづく
December 17, 2008
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頭の中で、〈こんな時はキスをするんじゃないか?〉と、自分に話しかけてる彼がいた。 そして、そっと顔を近づけて、唇を合わせようとしたが、その、初めての行為に緊張した彼は自分の眼を閉じてしまったので、その唇は、彼女の鼻の頭に当たってしまった。 涙ぐみながらも「フフッ」と、彼女が笑ったので、照れ隠しに彼はふざける様に、そのまま彼女を抱え込む様に押し倒した。 性に対しての知識こそ有りはしたが、その経験の無かった彼は、その倒れたままの状態から次にどうやれば良いのかと、頭の中はゴチャゴチャで、触ってと言われるがままに、やっと洋服の上から、胸を触る事が出来たくらいだった。 そして、触ってみて初めて女性の胸って柔らかいんだなと云うことが判った。 「服脱がして」と言われて洋服を脱がす事に悪戦苦闘をしながら、最後のブラジャーがなかなかはずせない。 商品としてトリンプなどを扱ってはいるけれど、直接それをはずした事など無かったので、手こずっていると・・・・・つづく
December 16, 2008
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昼間の話の続きに戻して、「今一度、念を押すけれどサ、早くにちゃんとしなきゃぁだヨ。」と、別れ話を早くする様に催促をした。 当然、その話になるとでも予測していたのか、昼間みせた姿よりも真剣な表情で、「私の事って、殆ど何も知らないでしょ?」「ウーン。 でも、大体の事は教えてくれたんじゃないの?」「だって、結婚するって、そんなに簡単に決めても良いの?」「僕はネ! だってサ、ジュンちゃんが二号さんをしてる方が変じゃん! それだったら、僕が結婚って言う事の方が良いじゃん! ジュンちゃんが、その人が好きなんだったら別だヨ! 」「昼間も言ったけれど、そんなんじゃないから! 」「解ってるヨ。僕は、確かに若いから、何も持ってないし、何の準備もしている訳じゃ無いしだけど、結婚してから、段々って事じゃダメなの?」「ううん!そんなんじゃなくって、私が汚れているって事の方が、自分で許せなくて!」と、また、涙ぐみながら一生懸命に答えようとする彼女が愛おしくなり、・・・・・つづく
December 15, 2008
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「こんなとこだけど、良い?」と聞く彼女に、「何とか成る様になったら、東京に引っ越そうよ。それまでは、此処で良いんじゃない?」と言う彼が居た。 「ビールあるけど飲む?」と聞く彼女に、普段アルコールを口にしない彼だけれど、「一緒に飲もうヨ。」と返事をした。 ナッツをおつまみに、何となく気詰まりな様な雰囲気で飲みながら、彼女は、「お願いがあるの。」「何?」「私のこと、ジュンって呼んで!」「良いけど、なんでジュン?」「いままで、そう云うニックネームで呼ばれてたの。」「フーンそう。良いヨ。そう呼ぶネ。 じゃジュンちゃん、あれからお店でどうだった?」「優しい店員さんだから、何も云わずに許して貰えたの。」「良かったじゃん! 心配してたんだ。 僕はサ、結構、チーフや鈴木さんなんかに、お小言言われたんだけれど、頑張って仕事してたから、アッと言う間サ。 後かたづけも、チャッチャッって、手早に出来たし、待たせて悪いから、駅迄かけって、階段かけってサ、必死サ。」と、分かれた後の話をしながら・・・・・つづき
December 14, 2008
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初めて見るその駅は、小さな可愛い駅で、ホームから改札の処まで降りる階段が、転げ落ちるような錯覚を覚える程に、ずいぶんと急な気がした。 改札を出てから、左側に向かって歩く彼女に並んで歩き、何軒かの商店の前を通り過ぎると、また左へ曲がる。 今度は、坂道を登る。 登りながらの道には、街灯がポツンポツンしか無く、「随分寂しい道だよネ。怖くなかった?」などと話しながら、結構高台まで登った。 丘の頂上近くで、やっと、そのアパートが見えてきて、「あそこがそうなの。」と、彼女の指さす先に、ややくたびれたそのアパートが目に入った。 『日の出荘』だと云う、そのアパートの名は玄関が朝日の方にでも向いているのかな? と、暗い中で、その方位を連想させた。 トイレとお風呂が共同使用の六畳一間のアパートだ。彼女の、その部屋は、ベッドがデンッ!と陣取って、入り口の横に、申し訳程度のキッチンがある。・・・・・つづく
December 13, 2008
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そして、店からは、歩けば三分程度の道のりを駅まで駆けて、待ち合わせの新橋駅の階段を一気に駆け上がり、大急ぎで、一番ホームへ駆けて行き、結構待って、待ちくたびれたであろう彼女に、息を切らしながら、「ゴメンネ、遅くなって。」と謝り、今にも発車せんばかりの横須賀線に、慌てて彼女と一緒に乗り込み、横浜へと向かった。 行き先は彼女のアパートへとだ。この時、少しだけれど、寮を初めて無断外泊する事の後ろめたさを枯れは感じたが、〈今日は特別なんだから!〉と、その心を封じ込めた。 だが、この日だけではなく、先行き、この様な無断外泊が何度か続く事で、寮の中で、自分の事が大問題に発展しようなどとは夢にも思わずに、その様に枯れは進んでしまう事になる。 初めて行く場所は、意外と長い時間が掛かる様な気がするものなのだが、時間はあっという間に過ぎて、簡単に横浜に到着し、京急に乗り換えて、各駅しか停まらない井土ヶ谷駅に降り立った。・・・・・つづく
December 12, 2008
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「うん」と頷く彼女に、「じゃ、そうしようヨ。」と云うことで、一応の答えがでた。 「お店の人に休憩時間の事は謝らなきゃダメだヨ。」と、他人の心配をするどころでは無かったが、一応言ってみせた。 「今夜、アパートに来る?」と言う彼女に、「10時に仕事が終わるから、新橋駅の1番線で、それまで待っててネ。」と、仕事に戻ったが、何時間も休憩をしていた事で、チーフや鈴木さんに、かなりブツブツ言われてしまった事には辟易したが、自分が考えも無しに時間を潰してしまったんだから仕方の無い話ではあった。 まさか「彼女と、だべってました。」なんて、言い訳が出来るはずも無いので、黙々と、でも、努めて明るく仕事に取りかかり、何とかかんとか、時間迄こなした。 多分、その時間は、彼の中では、アッという間くらいにしか感じられなかったであろう。 彼に取っては人生初めての告白であり、それに対しての返事をもらえたという、それこそ有頂天に成らなきゃ、そっちのほうがおかしい様な出来事が有ったばかりなのだから。・・・・・つづく
December 11, 2008
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彼にしてみると、やっと答えが出たので、「じゃ直ぐに別れなヨ。」とだめ押しでもするかの様な言葉を彼女に伝えると、その言葉で、彼女はもっと泣き出してしまった。彼女のこうした嬉し泣きと云うものが、彼には、この涙の意味は何だ? と考える事になる。 それくらいの若い判断能力しか持ち合わせてはいないが、人を想うと云う点では、これは最高の部類と言えるのではないだろうか。 ただ、これが、喫茶店というシチュエーションなので、彼には、彼女をいじめているのでは、との周りの反応が痛い程伝わって来た。 が、彼は、冷静を装い静かに受け止めて、彼女が落ち着くまで待つしかないなと思っていた。 彼も、そんな自分がしんじられなかったが、目の前の彼女の姿を見ながら、彼女と共に、自分も一生の決心をしたんだなと云う、自分の気持ちだけは整理できた。 「僕は会社の寮に居るから、結婚したら、君のアパートで暮らすって事で良いの?」と、彼女が落ち着いたのを見て切り出した・・・・・つづく
December 10, 2008
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それでも、「ううん、私みたいな女には、もったいなくて、結婚なんてしてもらったら、バチがあたるんじゃないかと思うの。」と言い続ける彼女に「ちゃんと可愛い人だなって思っているし、愛しているって感じて言ってるんだヨ。 お金の為だけで、そんな事してても未来がないんだから、僕と結婚して、ちゃんとやってけば良いんじゃない? 二人の未来の為に。」と、彼が畳みかけると、「そんな風に心から好きって意ってもらった事なんて一度も無かったから、直ぐには信じられない気持ちなんだけれどもネ。 あなたが本気でそこまで、そう思って言って呉れるのだから、私、本当に結婚して欲しい。」と、彼女の出した結論が、言葉としてハッキリと伝えられた。 その瞬間にも、彼女の中では、〈今まで生きてきて、男性から本気でこんな事を言って貰った事はなかったし、こんなにまで真剣に言って呉れているのを信じなかったら、私は一生後悔する事になるかもしれない。 確かに、いままで有った事よりも、彼の言って呉れている様に、これからの事を考える方が、今は大切なんだわ。〉と、自分の心を確かめる様に、自らが吐き出した言葉をトレースするかの様になぞっていた。・・・・・つづく
December 9, 2008
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彼に取っては、彼女が拘っているほどの意味は無い様に思え、男女関係で、汚れていると云う表現が、ピンとくるほどの事でも無かったのだ。 その事に、それほど拘るなら、そんなふうに成らなければ良いだけの話ではないか。 成ってしまって、取り返しが着かないと思っているのなら、それも間違いではないのか。 人間諦めも肝心だろうが、諦めないという意志も大切なのではないか。 などと、普段考える必要もない様な事を、ムキに成って考える事で、何とかして、彼女の、そんな自分を卑下した様なセリフを、彼の中でうち消そうと。 でも、もしかしたら、彼女の言葉の裏には、愛が存在しているのではないかとも、考えられる一面を見なくてはいけないのかなとか、本当の意味での彼女の真意を、受け止める事が出来ているのであろうかと、有る意味、疑心暗鬼の自分自身をいなめないのが、彼の心ではあったが・・・・・つづく
December 8, 2008
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この不倫とも言うこの様な関係が、それ程、彼に取ってショックでも無かったの事は、実はチーフも、その様な関係の生活をしている事を、割と最近に死っていたからでもある。 仕事の延長線上で、チーフと二人して飲み明かし、彼が帰れない程に酔ってしまって、彼女の部屋に泊めてくれないかと、しつこく頼んだ事で、彼女は仕方なくだが覚悟を決めて枯れを泊めたのだ。 その酔った彼の記憶では、彼女がかなりのシースルーのベビードール姿で横に滑り込んだまでは覚えているのだが、結局何事も無く、寝入ってしまったという事で、翌朝コーヒーを入れながら「男のくせに、私が旦那に隠れてまでして泊めてあげたのに、何にも出来ないだなんて、だらしないわネ。」と、かなり険しい表情で言われた事から、そんな男女関係もあるんだと、察するに至った事なのだが、彼女の言う、汚れたと云う表現を聞いても、身近な人のそんな関係を知っていた事で、それが、そんなに問題なんだろうかと考えるだけで、・・・・・つづく
December 7, 2008
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「でもね本当に愛してるって事じゃないんだよネ?」「今は、そう言い切れるワ。」「僕にとっては、愛してるのとかって言われると、手の出せない話に成るんだけれど、お金だからって云う事だと、なら、良いじゃんて事なんだよネ。」「でも、こんな事聞かされて本当に、それでもって思えるの?」「大丈夫だよ。 それよりも、きちんと相手と話し合って、後腐れの無い様にしなきゃだヨ?ちゃんと出来るよネ。 一人で無理だったら、一緒に行くけれど?」「出来ます!その位自分の事なんだから、自分で出来ます! 」と、キッとした表情をしながら言うので、「解った。じゃあ直ぐに話し合わなきゃだよ!」と、彼もその表情に呼応する様に、ちょっと強く言ってしまった。それでも、まだ、「私みたいな汚れた女は、あなたみたいなキレイな人と結婚なんてしてはいけないと思うの。きっと、あなたには、もっとふさわしい人が現れると思うのネ。」と、週順しているのを、「僕が嫌いなの?」と、繰り返す応答になってしまう二人の会話だった。 そんなこんなを二時間近くもしていた事になる。・・・・・つづく
December 6, 2008
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彼のその言葉を聞いて、彼女は〈真実を伝えてその結果がどうであっても後悔しない!〉と、その覚悟を決めて、その男女関係の一部始終を語り始めた。「前の会社でネ、新人社員の歓迎会の時に、お酒の席の延長みたいに部長さんに誘われて、気が付いたらホテルに連れ込まれてて、抵抗も出来ない位に酔っていた私は、無理矢理犯されてしまったの。 それから、そんな関係が、何年も続いてだんだん社内に噂が広がって、結局私がその会社を辞めなくちゃならなく成って、東京にでて来てR社に入ったの。 私は、そんな事がきっかけだったけれど、その人の事を好きなんだなって、ずっと今まで思っていたのネ。 だけど、ご家族が居るのだから、結婚は無理だなって事は判ってはいたの。 だから、結婚出来るなんて思っても居なかったし、して欲しいとも思って居なかったの。 そうだったから、東京に来てからも、その人とは続いていたの。 お金を毎月貰ってネ。」・・・・・つづく
December 5, 2008
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彼が「その人の事好きなの? 」と、更に聞くと、「好きとかじやなくて、お金だから!」との応えに、彼の頭の中で、〈じゃ、良いじゃん。 愛してるとかなら、どうしようもないけれど、お金なら、働けばなんとかなるし。〉の結論をみたので、「大丈夫だよ。 お金が問題なんだったら、別れられるはずだよネ!」との、彼の返事に、彼女の心に更なる変化が生じて、〈本当の事を全部言ってみて、この人がそれでも良いって、言って呉れるのなら、それを信じる事が私に取って大切な事なのかも知れない。〉と、さっきからの疑問をやや否定する気持ちが芽生えて来て、彼女は意を決して「私みたいな女と結婚して、ほんとに後悔しないの? 」と、もう一度確認するかの様に、涙でグシャグシャに成った眼をして、やや下から見つめながら、そんな思いを込めて必死で聞いた。 そんな表情からは、彼女が真剣に聞いているんだなと云う事が、彼には伝わってきたので、、「うん。本当に後悔しないヨ。」と、ハッキリと強く言葉にして、彼は答えた。・・・・・つづく
December 4, 2008
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その様に言われて、彼女も本当の事を言わなければ、この人の心に申し訳ないとは思いながらも、なかなかその真意を伝える言葉のとっかかりを自分の中で見いだせない居る、そんな自分の心の変化に戸惑いながらも、目の前の、そんな彼にとうとう根負けをして「私ネ、ある人の二号さんをしているの。」と、なかなか言えなかった本当の理由を口にしたが、必ずしも、彼の結婚に同意しようとするつもりがその時点に有った訳ではない。 むしろ逆で、それを言う事で彼が引いて、その話を終わりにする事の方が枯れの為だからと考えて居た。 と、同時に、それに応えるには、自分の過去の事がどれほど重い事なのかと云う事を、彼に申し込まれた結婚と云う言葉に対して、改めて、彼女の心の中で真実と虚像の狭間に居る自分を捜すと云う困難な作業をする事と成り、その事が彼女の中枢神経を麻痺させるかの如くの事態に成っていたのだった。・・・・・つづく
December 3, 2008
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必ずしも癇癪を起こしてしまったそれとは、明らかに違ってはいた。 ただ本当の意味で、結婚と云う事柄を深く考慮したと言える程では無かった事は事実で、彼の思考の中には、自分の親への事や、肝心の彼女自身の事でさえ、殆ど知り得ていないにも関わらずの上で有り、単純かつ未熟な判断をした事は否めないのでは有るが、若干二十歳と云う事から思えば、それも致し方無かったのかも知れない。 単に結婚をする事が有る、と云う事の現実を学んだ事に因る発想にしか過ぎないのだから。 「ううん、そうじゃなくて、私みたいな汚れた女に、そんな言葉を掛けてもらえるのがもったいなくて」と、彼女の言葉は微妙に変化をし始めたが、現実的な判断の方が勝り、涙ぐみながらも、そう答えるので、彼は「自分を卑下する様な、そんな言い方は、よしなヨ! 僕が嫌いなんじゃなきゃ、どんな理由が有るって云うんだヨ!」と、珍しく、しつこく食い下がった。・・・・・つづく
December 2, 2008
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そのあまりにも単純で無防備で、呆れる程の純情な男女関係の感覚に、〈こんな事って、信じられないけれど、この人は私の目の前にいて、本気の眼をして、私に向かって言って呉れている。 騙すとか、騙されるとかは、この人には無いんだろうか? こんなに簡単に女性を信じる事の出来る人って何? どういう人? 〉と、半信半疑ながらも、彼女の中で少しずつだが、心の変化が起き始めて居た。 彼はかれで、進展する見通しも無い様な気がする、そんな話し合いに、少しじれったくなって、「僕が嫌なんだったら、そうハッキリ言えば良いじゃん! 」と、やや語気を強めて言い放ったが、彼の想いの中に有るものは、この少しの間で、あのホットドッグがきっかけで芽生えた【愛】かな? と云う感情を、どう対処すれば良いのかが、自分でも、自分の感情の収拾が着く前に、この様な話し合いに成ってしまった事への戸惑いや、自分へのいらだちが、そうさせてしまったもので、・・・・・つづく
December 1, 2008
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〈この人って、純粋にこんな事を言っている様だけれど、信じられない! こんな純粋ってあるの? それとも結婚詐欺? ううん、私を騙したって意味無いはずだから、ほんとい純粋? 〉と、戸惑いながらも、やや嬉しい気持ちを見つける事が出来たが、自分自身の今の真実の姿を伝えなければ、本当の純粋だとすると、こんな純粋な心を持っている人を駄目にしてしまうかも知れないと、裏腹なそんな事をも観ていた。 その裏腹の心の言葉が、「私、あなたと結婚出来ない。」と言わせたと、彼女が理解するのに、さして時間は掛からない事だった。 彼女の中で、〈こんな事って有って良いの? こんな人って本当に居るの? 私の何処を見てこんな事を言っているの? この人に取っての結婚って何? どうしてそんな簡単にサラッと言えるの? 男女の関係ってそんなに簡単なもんなの? まったく訳が判らない! 〉と、疑問に思いながらも、自分の歩んで来た人生のそれと照らし合わせても、合致しそうに無い。・・・・・つづく
December 1, 2008
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