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2017.12.17
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カテゴリ: 探訪 [再録]
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再び、国道1号線の横田橋を渡ります。川原で釣り人の姿を見かけました。


JR三雲駅前を再び通過するのですが、その時 やはり気になったのがこの石標
なぜかというと、京都の北に「萬里小路」という通り名があったからです 。側面にはこれより22丁の妙感寺に墓所があるということがわかります。

後日、調べてみると、前回ご紹介した入手資料に妙感寺のことが多少記載されていました。「雲照山妙感寺は、臨済宗妙心寺派に属し万里小路藤房 (まりこうじふじふさ) が延元年中(1336年頃)に開創した」のだそうです。 (資料1)
この人物、藤原北家勧修寺流、万里小路家の一族で、大納言万里小路宣房の一男。鎌倉時代末から南北朝時代にかけての公卿でした。後醍醐天皇の近臣として「建武の新政」(13333~1335)に参画し、恩賞方筆頭となったのですが、天皇と対立し政権に失望、身を退き出家し、妙心寺に参禅したそうです。京都妙心寺第二世授翁宗弼 (資料2)
病気のために三雲に住み、晩年をすごしたと伝えられ、本堂の裏に藤房の五輪塔が建立されているそうです。 (資料3)
本堂には木像千手観音坐像が祀られていて、この本堂から100mほど山道を登ると、両脇に二童子が彫られた磨崖地蔵菩薩像を祀る祠があるとのこと。機会があれば、この磨崖仏を見仏したいものと思っています。鎌倉時代後期の作のようです。 (資料1,3)

冒頭から脇道に入りました。本道に戻ります。

東海道きずな街道を歩いて行くと、途中でこんな マップと史跡の要点説明のパネル が掲示されています。三雲学区まちづくり協議会が編集発行された資料の案内掲示ヴァージョンというところです。至って便利!

その先に、野洲川に合流する支流に架かる橋があり、その近くで再び 妙感寺への道標 が、 立志神社の道標 と並んで立っています。地図を見ると、この支流に沿って南西方向に延びる道を行けば、これらの寺社を訪れることができるのです。残念ながら今回の探訪対象外です。資料によると、立志神社は「欽明天皇の時代に五穀が実らず民の多くが餓死寸前においやられたので、天皇は全国十二箇所の神社に祈願の勅旨をを使わした。立志神社はその祈願所の一つであると言われている。祭神は國常立神 (くにのとこたちのかみ) 」だそうです。 (資料1)




街道はJR草津線を横断します。その先の線路沿いに道標が出ています。街道はJR甲西駅まではほぼ並行しています。ここにも「歴史探訪・史跡めぐりマップ」が設置されています。親切なおもてなしです。

(みよし) 景観水路 」という掲示です。
農業用水路の多機能化という発想のようです。「この施設は地域の憩いの場として利用してもらえるように石積護岸や階段工、遊歩道を整備した景観水路です。また河川水(農業用水)を利用して耐震性貯水槽40m3を設置しています」と説明されています。

大沙川隧道(東側坑門)
この上が天井川になっています。所在地は湖南市吉永です。
資料から切り出した部分図 (資料1)
JR甲西駅から南西約2.5kmの地点 にあります。

隧道を見上げると。左手に大樹が聳えています。

この南側に位置する山々は明治時代末頃には樹木がほとんど無く、山々を水源とする大沙川、由良谷川、さらに家棟 (やなむね) 川はやまの砂を下流に運び天井川を形成してきたのだとか。それらが旧東海道を横切り、街道交通の障害になってきたのです。
奈良時代に、奈良の仏教寺院や石山寺の造営を行うにあたり、この辺りの山の木々が伐採されて運び出され、その後禿山となったのです。それが天井川形成の原因となって行きます。 (資料1)

隧道の傍に、 吉永の「きずな街道休憩所」 が設置されています。 ここから三雲城址までは約1kmくらい のようです。休憩所には、三雲城址の写真やこの近辺の史跡案内の写真や説明が掲示されています。



大沙川隧道(西側坑門)
この隧道が滋賀県下で最初の道路トンネルとして建設されたのです 。隧道内部側壁に「明治17年4月築造」の刻銘があります。長さ16.4m、高さ4.6m、幅4.4m、半円アーチ断面で、花崗岩切石整層積みの造りです。平均的な切石の大きさは長さ68cm、厚さ30cmだそうです。「大沙川隧道は、建設当初の位置で現存する現役の石造道路隧道としては、日本最古であり、旧東海道の整備を目的に、滋賀県特有の天井川を克服するために設けられた隧道としても貴重である」 (資料4) というものです。


こちら側に 「弘法杉」の標識 があり、 天井川堤防上に立つ弘法杉への上り道があります

天井川の上、大杉が聳える傍に、 が作られています。右の画像がその内部を覗いたもの。

吉永の西隣りの地域が夏見東、そして夏見、夏見新田と続いて行きます。


道沿いで見た説明板です。夏見の里は石部宿の「立て場」の役割を果たしていたのです 。立て場とは「江戸時代、街道で駕籠かきなどが杖を立て、駕籠や荷物をおろして休息した所」 (『現代国語例解辞典』小学館) です。
右の絵は説明板に載る絵です。「伊勢参宮名所図会」から引用しました。 (資料5)


その先には、 「夏見一里塚の跡」を明示する約30cm2の標識が道路の南側に埋め込まれています 。意識していなければ見落としてしまうくらいです。

           この説明板は約70m離れた石部方向(西方向)の位置に立てられています。

この説明板に載せてある石部の道中記絵ですが、ネットで開示されていますので引用します。 (資料6)

道端の 「新田道」の道標 を見つつ進むと、もう一つの隧道が見えました。

     由良谷川隧道(東側坑門)       由良谷川隧道(西側坑門の景色)
こちらは最上段の笠石の中央に「由良谷川」と陰刻された題額がはっきりと読み取れます。

大沙川からは1.5km西側にあります。「長さ16.0m、高さ3.6m、幅4.5m、欠円アーチ断面」の隧道です。明治19年(1886)に建設されたそうです。 (資料4)

甲西駅までの途中に、覆屋の立てられた小祠があります。扉が閉まっていますので、何が祀られているのか不詳。また、路傍に地蔵尊が三体祀られているところもありました。

     最後に訪ねたのが、 地酒の醸造元「北島酒造」 さんです。
お店の構えに情緒がありいいですねえ。

左手の門から構内の一部を拝見し、醸造に使われているお水を試飲させていただきました。また、蔵元のしぼりたての生原酒なども参加者は試飲させていただけるというサービスまであり、ちょっとにぎやかに。蔵元直売でお土産を買う人も・・・・。

「北島酒造」さんのホームページはこちらをご覧ください。

由良谷川隧道からさらに800m、この北島酒造の位置からJR甲西駅への道を通り過ぎた先に、家棟川があります。ここに家棟川隧道があったのですが、昭和54年(1979)に河川改修のため撤去されてしまったそうです。



探訪の終着点、JR甲西駅
ここで数時間の探訪が終了しました。

ご一読ありがとうございます。

参照資料
1) 「東海道(きずな街道)を行く」 三雲学区まちづくり協議会
2) ​ 万里小路藤房 ​ :ウィキペディア

3) 『滋賀県の歴史散歩 上 大津・湖南・甲賀』 滋賀県歴史散歩編集委員会編
  山川出版社
4) 「天井川の里をゆく-大沙川隧道と横田渡-」 当日の配布レジュメ
   9月13日開催 探訪[水の宝]  主催:滋賀県教育委員会・湖南市観光協会
5) ​ 伊勢参宮名所図会  巻之1-5,附録 / [蔀関月] [画] ​              
            第2巻 16コマ目    :「古典籍総合データベース」(早稲田大学図書館)
6) ​ 東海名所 改正道中記 五十五 石部 ​ :「電子博物館 みゆネットふじさわ」

【 付記 】 
「遊心六中記」と題しブログを開設していた「eo blog」が2017.3.31で終了しました。
ある日、ある場所を探訪したときの記録です。私の記憶の引き出しを維持したいという目的でこちらに適宜再録を続けています。
再録を兼ねた探訪記等のご紹介です。再読して適宜修正加筆、再編集も加えています。
少しはお役に立つかも・・・・・。他の記録もご一読いただけるとうれしいです。

補遺
弘法杉 ​  :「ぶらりこなん」(湖南市観光ガイド)

東海名所 改正道中記 ​  :「電子博物館 みゆネットふじさわ」
   資料一覧 このページから一覧リストがはじまります。
 ​ 改正道中記は江戸東京博物館も収蔵品の一部としてネットで開示されています。
  こちらからご覧ください。

天井川 地形判読のためのページ ​  :「国土地理院」
琵琶湖に流入する河川の状況 ​   pdfファイル
妙感寺 ​  :「ぶらりこなん」(湖南市観光ガイド)
妙感寺 ​  「滋賀の風景」:「滋賀県」
三雲城跡・八丈岩(みくもじょうし・はちじょういわ) ​:「ぶらりこなん」(湖南市観光ガイド)

  ネットに情報を掲載された皆様に感謝!

(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)

探訪 [再録] 滋賀・湖東 天井川の里:三雲~甲西 -1 横田渡常夜灯・天保義民碑 へ

探訪 [再録] 滋賀・湖東 三雲城址と八丈岩、夏見城遺跡 へ

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Last updated  2017.12.18 16:34:10
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