突然ですが、ファンタジー小説、始めちゃいました

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2009.04.17
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 それから10日もすると、エリダヌスはすっかり元気を取り戻して、身の回りのことはフォーマルハウトの手を借りなくても何でも一人でできるまでに回復した。

 それでもフォーマルハウトは、毎朝エリダヌスの目覚めるころを見計らって着替えや食事を運んでくるのをやめなかった。 エリダヌスがいくら、私はもう大丈夫ですからあなたはご自分の修行に専念なさってください、と言っても聞き入れない。 これが今の私の修行ですからと楽しそうに答えて、朝に夕に、かいがいしくエリダヌスの身の回りの世話をし、共に祈りをささげ、共に食事をし、薬を飲ませて、少しおしゃべりをして帰っていくのを日課にしている。 

 フォーマルハウトはとても聞き上手で、エリダヌスにハザディルのことや旅の話など、珍しい話をせがんでは、小さな子どものように目を輝かせてその話に聞き入った。 が、あの盗賊に襲われた悪夢のような夜の話になると、いつも悲しげに顔を曇らせるのだった。

 「エリダヌス、おっしゃるとおり、この国は呪われた国なのだそうです。 逃げる城壁や蟻地獄の怪物の話は、私も聞いたことがあります。 リュキア王を暗殺したために自身もまた多くの敵の影に脅かされていたというゴルギアスが、城内に敵が侵入するのを防ぐ目的でかけた呪いのひとつといわれています。 でもあれらの呪いはまだ無害なほうで、城壁は前進することをあきらめさえしなければ逃げるのをやめるし、蟻地獄も、相手がどうしても退かないと悟ればあきらめて姿を消すのだそうですよ。 あんなもの、馬鹿げたこけおどしです。 まあ、破壊王と憎まれたゴルギアスの居城にだって、訪ねて来るのは敵ばかりじゃなかったわけですから、あんな子供だましでも客に悪意があるかどうか見極めるくらいの効果はあったんでしょう。 もっともあのおかげで今でもこの国に来る人はほとんどいないのですから、害がないとはとても言えませんけど」
 「言われてみれば確かに、逃げる城壁も蟻地獄も、私たちがこの国に入ることを強く拒否されたようで前進する気力をそぐものではありましたけど、実害はなにもありませんでしたね。 なんだか狐につままれたようだった」 
 「そうなのです。 あれらは外敵に向けた目くらましですから、その正体を知っている者の前には二度と姿を現さない。 だから今回、大切なお客様を驚かさないように、私たちはグルナの港まであなたたちをお迎えにあがろうと予定を立てていたのですが・・・」
 フォーマルハウトが急にしょんぼりとうなだれ、困ったように両手をこすり合わせた。
「・・・ハザディルに使いに出した天馬が、帰って来なかったのです。 自分たちの手落ちの言い訳をするなとお思いになるかもしれませんが、本当に、私たちは、使いに出した天馬がいつまでたっても帰って来ないので、ハザディルの神殿ではもう、汚らわしい呪いの国などに修行者をお遣わし下さる気はないのかもしれないと、半ばあきらめ、半ば失望していたところだったのです」

 フォーマルハウトのこの言葉で、今までこの謎めいた国に対して抱いていた漠然とした不信感が、このとき雪が溶けるように急速に消えていった。 これまで心の隅に重く澱んでいた不安もきれいに消え失せて、エリダヌスは初めて心から笑うことができた気がした。



 フォーマルハウトがほんの少し笑顔を見せた。
「本当ですか? 私たちは、天馬という生き物の性質についても、不安を感じはじめていたんですよ。 天馬は、世界中どこへでも好きなところへ一瞬のうちに飛んでいくことができますが、人になつくということがないのです。 自由奔放で、気位が高く、気まぐれで、とても扱いにくい動物なのです。 けれど、まれに、本当にまれに、人に心を許すことがあるんです。 そのとき、もし天馬と、種を超えた深い友情を育てることに成功すれば、天馬はその人の言うことをよく理解するようになり、何でも言うことを聞くようになるといいます。 今回私たちが、思い切ってハザディルに使いを出したのも、そういう、稀有な幸運に恵まれたと判断したからでもあったのですが、やはりまだ、大切な手紙を運ぶような困難な仕事を成し遂げられるほど深い絆を結ぶには至っていなかったのか、気の遠くなるほど時間がかかっても、国をまたいで旅をする商人たちの手から手へと、手紙を渡し継ぐ方法を選んだほうが良かったのではないか、と、後悔し始めていたところだったのです」
 そう言うとフォーマルハウトは悲しそうにうつむいて、そのまま黙り込んでしまった。

 エリダヌスは、ふと思いついて尋ねてみた。
 「・・・もしかして、あの美しい天馬と、深い友情の糸を結ぶことができた幸運な人というのは、フォーマルハウト、あなた?」

 フォーマルハウトが、小さなため息とともに、うなずいた。





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最終更新日  2009.04.17 21:08:44
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