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ふろぷしーもぷしー
突然ですが、ファンタジー小説、始めちゃいました。
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2010.12.30
カテゴリ： カテゴリ未分類
奥に進むにつれて、襲ってくる光球の数はしだいに減少し、とうとうその攻撃が止んであたりがひっそり静まり返ったころ、長い通路にもようやく終点が見えてきた。
今までに通り抜けてきた地味な石のドアとはだいぶ様子の違う、りっぱな木製の扉だ。 厚い一枚板の表面には、重厚な彫刻 ――― 百合の花を図案化した、古くからある伝統的なシンボルだ。 軍舎内でも時折目にする図柄だが、この紋章にどういう意味があるのかまでは、レグルスも知らない。
アンタレスがいそいそとレグルスを追い越し、その扉に手をかけた。
「こういう、仰々しい扉の向こうには必ず、大物怪物が待ち構えているものだ。 さあ、今度の対戦相手はどんな強敵だ？」
扉を細く開けて、向こうの様子を覗いたアンタレスが、小さくぶるっと身震いして、レグルスを振り返った。
「・・・寒い！ まるで氷室だ。 コンロの次は食糧貯蔵室か？」
「だからコンロじゃないって」
アンタレスの後に続いて、扉の向こうに足を踏み入れた。
かすかに甘い香りが漂っている。
「香炉を盗まれた、なんて、嘘だったのか？ いい香りがしてるじゃないか」
そろそろと奥に進んでみる。
足音が、ずいぶん遠くまでこだました。
広い部屋のようだ。
そして、尋常でなく寒い。 激しい動きでほてった体に、冷たい空気が快いと思ったのはほんの一瞬で、すぐに、急速な冷気に包まれた体は、体温を保とうとして細かく震え始めた。
次第に、暗闇に目が慣れてくると、アンタレスが白い息を吐きながら言った。
「・・・なにも出て来ないな。 まさか、この寒さで俺たちが凍えるのを待っているんじゃないだろうな」
周囲の闇を見回していると、やがて、広い部屋の一番奥に、ぼんやりと何か見えてきた。
大きく豪華な天蓋。
そこから下りた、薄いヴェール。
いや、金糸銀糸極彩色の刺繍を施した豪華な衣装が、椅子の上に飾ってあるのだ。
ふいに、アンタレスがはりつめた声で言った。
「・・・おい、あの椅子に誰か座ってる」
「まさか！ 衣装が飾ってあるだけだろう？」
否定したものの、目を凝らしてよく見れば、なるほどそれは人の姿にそっくりだ。 椅子に座った形で設置された衣装の、頭にあたる部分に、きらびやかに光る飾りのたくさんついた帽子のようなもの。 それがちょうど、うつむいて顔を隠しているように見える。 裾まで覆う長い衣装の足もとには、同じように豪華な縫い取りの施された靴の、つま先の部分だけが見え隠れしている。 床に靴が置いてあるだけなのか。 あるいは、足なのか。
答えて、アンタレスがそろそろと用心しながら椅子に近づく。
「リュキア王とやらの、ミイラだったりして」
そういえば、ああいった豪華な衣装を、レグルスも見たことがあった。
貴人、要人の葬儀のとき、それを取り仕切る神殿の高官が、ああいう衣装を美々しく身につけて荘厳な祈りを捧げ、厳粛かつ絢爛豪華な葬式を演出するのだ。
いっそう激しく体が震え始めたのは、寒さのためか、恐ろしさのためか、よくわからなくなってきた。
今までに通り抜けてきた地味な石のドアとはだいぶ様子の違う、りっぱな木製の扉だ。 厚い一枚板の表面には、重厚な彫刻 ――― 百合の花を図案化した、古くからある伝統的なシンボルだ。 軍舎内でも時折目にする図柄だが、この紋章にどういう意味があるのかまでは、レグルスも知らない。
アンタレスがいそいそとレグルスを追い越し、その扉に手をかけた。
「こういう、仰々しい扉の向こうには必ず、大物怪物が待ち構えているものだ。 さあ、今度の対戦相手はどんな強敵だ？」
扉を細く開けて、向こうの様子を覗いたアンタレスが、小さくぶるっと身震いして、レグルスを振り返った。
「・・・寒い！ まるで氷室だ。 コンロの次は食糧貯蔵室か？」
「だからコンロじゃないって」
アンタレスの後に続いて、扉の向こうに足を踏み入れた。
かすかに甘い香りが漂っている。
「香炉を盗まれた、なんて、嘘だったのか？ いい香りがしてるじゃないか」
そろそろと奥に進んでみる。
足音が、ずいぶん遠くまでこだました。
広い部屋のようだ。
そして、尋常でなく寒い。 激しい動きでほてった体に、冷たい空気が快いと思ったのはほんの一瞬で、すぐに、急速な冷気に包まれた体は、体温を保とうとして細かく震え始めた。
次第に、暗闇に目が慣れてくると、アンタレスが白い息を吐きながら言った。
「・・・なにも出て来ないな。 まさか、この寒さで俺たちが凍えるのを待っているんじゃないだろうな」
周囲の闇を見回していると、やがて、広い部屋の一番奥に、ぼんやりと何か見えてきた。
大きく豪華な天蓋。
そこから下りた、薄いヴェール。
いや、金糸銀糸極彩色の刺繍を施した豪華な衣装が、椅子の上に飾ってあるのだ。
ふいに、アンタレスがはりつめた声で言った。
「・・・おい、あの椅子に誰か座ってる」
「まさか！ 衣装が飾ってあるだけだろう？」
否定したものの、目を凝らしてよく見れば、なるほどそれは人の姿にそっくりだ。 椅子に座った形で設置された衣装の、頭にあたる部分に、きらびやかに光る飾りのたくさんついた帽子のようなもの。 それがちょうど、うつむいて顔を隠しているように見える。 裾まで覆う長い衣装の足もとには、同じように豪華な縫い取りの施された靴の、つま先の部分だけが見え隠れしている。 床に靴が置いてあるだけなのか。 あるいは、足なのか。
答えて、アンタレスがそろそろと用心しながら椅子に近づく。
「リュキア王とやらの、ミイラだったりして」
そういえば、ああいった豪華な衣装を、レグルスも見たことがあった。
貴人、要人の葬儀のとき、それを取り仕切る神殿の高官が、ああいう衣装を美々しく身につけて荘厳な祈りを捧げ、厳粛かつ絢爛豪華な葬式を演出するのだ。
いっそう激しく体が震え始めたのは、寒さのためか、恐ろしさのためか、よくわからなくなってきた。
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