突然ですが、ファンタジー小説、始めちゃいました

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2011.06.14
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 アルデバランの傍らに立てかけられた、奇妙な形の武器を見下ろして、ヴェガが言った。


 黙ってうなずいたアルデバランの手を、傍らに座ったヴェガが優しく止める。
 「だが、アンタレスを倒すには、それでも十分じゃないかもしれない。 アンタレスは既に、ミラから魔力を授かって、リシャーナの戦士の力を得たかもしれないんだ。 当たり前の弓では、リシャーナの戦士は倒せない。 目には見えない『リシャーナの鎧』を身にまとっているからな。 俺たちのリシャーナ・ローブにかかっている“保護”系魔法の、最上級の魔法だ。 鋼鉄製の箱の中にいるのと同じだよ。 どんな武器も撥ね返してしまう」

 はっと顔を上げたアルデバランの手から、ヴェガが、そっと矢を取り上げた。
 「“猫目石のかんざし”をミラとアンタレスに奪われてから、俺もいろいろ調べたんだ。 リシャーナの戦士にふさわしくないものがその力を得てしまったとき、どうやったらその力を再び取り上げることができるか」

 ヴェガの手の中で、矢が、次第に、暗い鈍色に変わり始めた。
 「そして、やっと見つけた。 “リシャーナの魔法返し”。 相手の使った魔法と、相反する力を呼ぶ魔法だ。 相手の魔力が大きければ大きいほど効果は絶大だぞ。 たとえば矢にこの魔法をかけると、矢が“リシャーナの鎧”に触れた瞬間、鎧とは逆の力が働いて、双方の力が相殺されてしまう。 矢の触れた部分だけ、鎧が消えちゃうということだな。 鎧の魔法を飲み込んで、魔法返しの魔法も消える。 矢だけが残る。 魔法の鎧を貫通する、魔法の矢というわけだ。 これがあれば、相手がどんな強力な魔力を持ったリシャーナの戦士でも、倒すことができる。 もちろん、魔力のない相手でも」

 不気味な闇の色に変色した矢を、ヴェガが、アルデバランの手に、そっと返した。


 固く唇を引き結んでうなずいたアルデバランに、ヴェガが、弓を手渡す。
 「それと、やつのそばには決して絶対近づくなよ。 あいつの剣は、たとえリシャーナの戦士になっていなかったとしても、恐ろしい殺人剣だ。 普通の、のろまなバルドーラ族にはない、悪魔のようなスピードがある。 小刀を投げつけるという隠し技も持ってる。  狙うのは、やつの弱点、背中だ。 そこを、やつに気取られないくらい、できる限り遠くから狙え。 それから、やつの近くには、ミラもいるかもしれない。 ミラに邪魔されないように、周囲に十分気を配ることも忘れるなよ」

 うなずいて、アルデバランが、立ち上がった。

 「アルデバラン!」
 叫んだプロキオンを、アルデバランは優しく抱きしめ、ちょっと笑って見せた。
 「プロキオン、心配しないで待ってて。 今、俺を動かすのは、恨みや怒りじゃない。 あなたへの愛だ。 “猫目石のかんざし”を手に入れて、この森で、きっとあなたを幸せにする」


lotus flower


 こうしてアルデバランは森を出て行った。
 その後ろ姿を見送ってから、プロキオンはちょっとヴェガを睨んで言った。
 「ヴェガ、うそついたでしょ?」
 「へっ? な、なんのことだろう?」
 そそくさと逃げ出そうとしたヴェガの袖を捕まえて、プロキオンはさらに怖い顔でヴェガを睨んだ。


 「いや、あの、そんなことは、・・・まあ、ちょっと借りたりはしたかも・・・」

 しどろもどろと答えるヴェガの顔を覗き込んで、プロキオンは言った。
 「パンセに頼まれてぼくの様子を見に来たっていうのも嘘だよね。 本当は長老に頼まれて、アルデバランに、リシャーナ族になるための試練を与えに来たんでしょ」

 「いや、その、別に長老に頼まれたってわけじゃないけどさ、リシャーナの戦士は一人いればいいのよ。 ふたりもいたらトラブルのもとだもん。 それにふさわしい人選も、また、森の番人の仕事のうち、ってことさ」

 プロキオンの手をそうっとはずしてから、ヴェガはおおいそぎで、茂みの向こうに逃げて行った。


 優れた狩人で、兄を思う優しい心と、プロキオンを愛する強い心を持ったアルデバランは、きっとすぐにこの試練を乗り越えて、森に帰ってきてくれるだろう。
 アルデバランが、“猫目石のかんざし”を持って帰ってきたら、すぐにリシャーナの戦士になる魔力を授けてあげよう。
 そして、豊かなこの森で、アルデバランとふたり、いつまでも幸せに暮らそう。

 ひとり取り残されたプロキオンの、胸の奥の、どこか深いところに、今まで知らなかった、静かな、あたたかい、満ち足りた幸せが、小さく息づいていた。





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最終更新日  2011.06.14 19:46:22
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