突然ですが、ファンタジー小説、始めちゃいました

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2011.08.07
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カテゴリ: カテゴリ未分類

 アンタレスが、微笑んでくれる。
 他の誰でもなく、ミラに向かって、ミラひとりだけに向かって、優しい微笑を投げかけてくれる。
 その白い頬には、赤みが差し、瞳は生き生きと、ルビーのように輝いている。

 あの、獣のように強靭で美しいアンタレスが、今、再びミラのもとへ帰ってきてくれた。

 幸せだった。
 軽々と抱き上げてくれたアンタレスの腕から、ミラは、いつまでも降りたくなくて、その首にしっかりとしがみついて離れなかった。

 アンタレスも、何も言わなかった。
 ただ、優しく微笑んで、ミラを抱いたまま、歩き出した。



 神官たちは、まだ誰も、この神殿の頂点に君臨するアナルケル大僧正の死を知らない。
 この神殿のもっとも深いところで、ひそかに、リシャーナの炎が燃え広がりつつあることも知らない。

 数時間後にはその熱が神殿を覆いつくし、やがて一気に巨大な火柱が上がるころには、千年の歴史と威容を誇るこの美しい建物も、ぐにゃぐにゃに溶けて焼け爛れ、あっという間に崩れ落ちてしまうことだろう。

 そうとも知らず今日で最後の鐘の音が、正午を告げて明るく閑々とふりそそぐ中、神殿から森に入ったアンタレスが、狩場を出たところで立ち止まり、腕に抱いていたミラを下ろそうとした。
 「ミラ、おまえのおかげで一命を取りとめた。 救援を感謝する。 ・・・では、家に帰って少し休め。 ここからなら、もうひとりで帰れるだろう?」

 降りようとしないミラに、アンタレスが苦笑して言った。
 「家まで送れというのか? ・・・ヴェガに怒られそうだから嫌だなあ」

 ミラは、アンタレスの首にしっかりしがみついたまま首を横に振った。
 「ヴェガの家になんか帰らないよ! あいつは君を目のかたきにしてるもん。 デネブの家にも帰りたくない。 あいつは狩りをする種族の仲間だもん。 ・・・アンタレス、僕は君の家に行く。 連れて行ってよ」

 一瞬、びっくりしたように押し黙ったアンタレスが、またミラを抱いて歩き始めた。
 「・・・どうして俺の家になんか来たいんだ。 俺が怖くないのか? リシャーナ汁にして食っちまうかもしれないぞ」

 「君はそんなことしないよ。 僕にはわかる。 君はバルドーラ族じゃないもの。 狩りもしなければ肉も食わない。  君はいつも花の匂いがする。 僕たちと同じ匂いだ。 住まいも、この森のどこかでしょ? だから、君の家に行ってみたい」

 ちょっと傷ついたみたいに肩をすくめたアンタレスが、急に、ミラをつかまえた手に力を込めた。
 「よし、じゃ、連れて行ってやる。 走るぞ、ミラ、振り落とされるなよ!」

 だっ、と駆け出したアンタレスの首に、ミラは、きゃあ、とはしゃいだ悲鳴を上げてしがみついた。





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最終更新日  2011.08.07 18:47:13 コメント(2) | コメントを書く


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