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千菊丸2151さんコメント新着
守り猫さま、どうか私にもその方法をお教えください。
この荒ぶる魂たちを鎮める力を、私にもお与えください。
なにとぞ、なにとぞ、今一度お力をお貸しくださいませ!
遠い森の古寺の、守り猫に向かって、声にならない声で叫んだとき、不意に、耳を聾するトラックの轟音が、嘘のように消え失せた。
静寂 ―――
あの寺の、耳を失った守り猫さまの見えない手が、そっと自分の耳に触れた、そのときミケには確かにそれが感じられた。
同時に、次々と襲いかかってくる恐ろしいトラックの幻も消え、あたりは、これまでとは明らかに異なる、あたたかくおだやかな闇にすっぽりと包まれた。
無辺の闇 ―――
ああ、あの、目を失った守り猫さまも、私にお力添えくださっている!
顔を上げたミケの耳に、永遠のしじまの中、荒ぶる魂を鎮めんと、静かな経文が響いていた。
心が洗われるような、美しい経文。 澄み切った声。
無明の闇に差し込む、やわらかくあたたかい、一条の光。
感動にこみ上げてくる涙をぬぐって、ミケも両手を合わせ、守り猫さまの経文に唱和した。
この場所で、永遠にのたうちまわり、もがき苦しむ魂たちの思いを慰めたいと心から願い、とめどなく流れる涙をぬぐうまもなく一心に祈った。
どれほどの時間がたったのか、ふと気がつくと、あたりにはやわらかな空気が満ちていた。
春の陽ざしにも似た、ふうわりとしたあたたかさ。
広大無辺の闇を満たす、荘厳な時間。
穏やかな幸福感とともに、荒ぶる魂が、ゆっくりとミケから離れていくのが感じられる。
――― 調伏成就。
と思った次の瞬間、しかし、闇の彼方からさらに真っ黒な、巨大な憎しみの塊が、急速な勢いでこちらに向かってくるのが感じられた。
ずん、と地を震わせるほど重い空気。
突き刺さるような冷気。
これまでにも増して手ごわい敵、と瞬時に予感した。
ここに集まった怨霊たちを総括する首魁の登場だ。
これを打ち破らなければ、呪いは解けない。
