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後悔と心配に胸も焼け付くような思いで龍王に駆けつけ、外階段を上りかけて、たまこは息も止まるほどびっくりした。
部屋のドアの前に、さっき夢に見たばかりの、けれど今はすっかり大人になった、昇一さんが立っているのだ。
しかもその横には、おそらく昇一さんの愛娘なのだろう、小さな女の子が、しっかり昇一さんの手を握り締めて立っている。
―――お父さんに勘当されて、現在は絶縁状態で別居しているはずの昇一さんが、なぜ、今、ここに?!
しかし、それをいぶかしむよりもさきにたまこを驚愕させたのは、その昇一さんの片手が、今にも、二階部屋のドアを開けようとして、ノブに伸びていたからだ。
ぞっ、と背筋が凍りつくような気がした。
――― だめ! 昇一お兄ちゃん、不用意にその部屋に入るのは危険だわ! その部屋に棲みついているのは、あたしたちを忘れて怖ろしい魔物に変わってしまったクロちゃんだったの。 今その部屋に入ったら、お兄ちゃんと、かわいい娘さんまで、猫に変えられてしまう!
慌ててたまこが階段を駆け上がりはじめたとき、上で昇一さんの娘が急に、火のついたように激しく泣きだした。
「だめーっ! パパ、そのお部屋に入っちゃだめ! 中におばけがいるの!」