地球人スピリット・ジャーナル1.0

地球人スピリット・ジャーナル1.0

2007.05.18
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カテゴリ: レムリア

「ヒマラヤで考えたこと」
小野有五 1999/1 岩波ジュニア新書


 この本はジュニア向けである。そして著者は科学者。

氷河の学術調査に出かけ、すっかりヒマラヤの雄大な自然の美しさに魅せられた著者が、自分も含めた登山客たちのゴミのポイ捨てや心ない環境破壊に胸を痛め、それまでの「地球科学者」ではなく、「地球環境科学者」として、以後かの地の美しい自然環境を守るための運動に献身・奔走してゆく経緯を綴った、感動的体験記。 裏表紙

 チベットやヒマラヤに関する本は何が飛び出してくるか分からない。場合によっては、18禁の表現がでて来る場合もあるし、時には、とても道徳的ではない生き方が賛美される時さえある。もちろんそれらはそれなりの読解力を持って玩味すれば、道に外れておらず、美を礼賛し、新たなる真理の探究に繋がっているのであるが、まぁ、教育段階にある子供達には、はいどうぞ、とはなかなかいえないことも多い。

 ところがこれは岩波ジュニア新書の中の一冊である。図書館でも子供コーナーに行かないとなかなか見つからない本である。旅にでるきっかけ、旅の中の道順、旅の中の風景、説くに山並みや人々の暮らしぶりを撮影した写真に大きく違うところは、ほとんどない。しかし、大きく違うとすれば、著者の「科学者」としての目的や態度だろう。この本は、子供ばかりか、大人こそ読むべき本だと思った。

僕たちがはるばるこんな高いところまで氷河を堀りにきたのは、そこが氷河の涵養域(かんよういき)だからであった。涵養域では、とにかく、とける量より積もる量のほうが多いので、雪がどんどんたまっていく。それが氷に変わっていくのだから、氷河を掘っていけば、だんだん昔の水がでてきて、それを分析すれば昔の気候がわかるのだ。
 ここでだいじなことは、雪のとけかたである。ヒマラヤの5000メートルを越えるような高所では、気温が高いので、雪は太陽に照らされると、そのまま昇華(しょうか)してしまう、と考えられてきた。つまり、低地のような雪の表面が零度になって水になってとけるではなく、昼間でも気温はマイナスになったままの高所では、水にならずに、固体の雪からいきなり水蒸気になって昇華してしまうだろう、と思われていたのだった。
 ところが、ヤラ氷河はちがっていた。氷河の表面には、まだ氷にならない雪が厚くたまっている。その下に向かって掘削していくと、なんと、水が噴き出してきたのだ。あってはならない水が、大量にでてきたのである! 
p97

 こういうことを研究するという名目で人々はヒマラヤまで旅をする。そして、予想通りの結果を導き出すときもあれば、思いがけない発見があったりする。この時も、氷河の涵養域に棲息している「ユスリカ」という昆虫が発見されている。世界的発見だという。

科学の研究とはなんだろうか? 僕たちはまだ知らないことを明らかにしようとして科学の研究をする。地球の自然や環境を知ろうとして、はるばるヒマラヤまでやってくる。だが、その研究をするために、僕たちは逆にヒマラヤの自然や環境を多少なりとも壊してしまったのだ。
 まだ誰も知らないことを初めて見つけるのは楽しい。でもそれは、自分が知りたいから、そうするのである。そのために、まわりはどうなってもいいのだろうか? 言いかえると、科学の研究のためには、何もしても許されるのだろうか?
p138

ランタン村で、僕は変わったと思う。
 それまでのように、何の疑いもなく科学を信じることが、僕にはできなくなった。確かに、僕たちのもっている好奇心は大切なものだ。なにかを不思議と感じ、その謎を追究し、研究していくこと。それは人間のいちばん大切な行為の一つだと思う。思うけれども、たくさんのお金を使い、他のものを犠牲にしてまで、それは、するに値することだろうか。
p155

そうではないはずだ。僕たちがそうやって、いっしょうけんめいに発展させてきた科学は、原子爆弾を産み、フロンをつくり、ダイオキシンをつくった。
 みんな、決して悪意でつくったのではない。けれども、結果としてみると、20世紀の科学がつくり出したものは、とりわけその最先端の科学がつくり出したものは、ことごとく人類を不幸にしているように見える。
p157

僕は、そういう今の科学を、「20世紀型の科学」と名付けたい。それは科学だけでなく、経済学でも哲学でも同じかもしれない。自然が無限であり、環境はいくら壊しても自然に直るものだ、と人類がまだ信じていた時代の科学や学問。それは、この20世紀とともに終わるべき運命にある。いや、現実には、ブレーキをなくした車のように、科学はますます進んでいくだろう。しかし、そうであるならなおのこと、これとはちがった科学、「21世紀型の科学」を、いまこそ発展させなければいけないのだ。
 それは、僕たちがこの20世紀を通じて壊してしまった自然や環境を、できるだけもとにとりもどすための科学、環境の科学である。
p159





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Last updated  2009.02.11 17:43:38
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