「神秘学オデッセイ」
高橋巌+荒俣宏 1982/12 平河出版
大学時代の教授と学生。その時の講義は、「神智学」。1967年ころのことだろう。この本、シュタイナーから始まって、シュタイナーに終わると言っていいだろう。二人を繋ぐもっとも主要なパイプ=シュタイナー。そしてこの本は、何度かに分かれた対談によって構成されている。しかし、この本には、レムリアはでてこない。あえて隠されているのか、そこはサラッと触れずに通り過ぎるのが「通」のシュタイナー・ファンのありかたなのか。
高橋
私たちの世代と、荒俣さんの世代とどのくらい違いますか。20年は違うわけですね。そうしますと私たちの頃、荒俣さんにとっての劇画とか幻想文学にあたるものが何であったかということを考えますと、あまりそれらしいものがないんですが、私の場合には無理に挙げればドイツ・ロマン派とおヘルマン・ヘッセでしたね。ヘルマン・ヘッセの中でもとくに「デミアン」以後の作品、その世界が私にとっては信じられないくらいに特別縁のありそうな世界だったんです。
p8
荒俣
最初はブラバッキー。この人のことは、H・P・ラヴクラフトというアメリカの怪奇小説家との関連でたまたま知っており、「シークレット・ドクトリン」など買いそろえていました。また偶然にシュタイナーの「神秘学概論」の英訳本を入手し、これがめっぽう刺激的だったので、当時はスタイナー、スタイナーといってあちこちに引用したりしておりました。
p3
当時、高橋54歳、荒俣35歳。現代から比べると、思いがけないほどのんびりとした時代であったと思える。
アガルタ
18世紀の神秘思想家ファーブル・ドリヴェに影響を受けたサン=ティーブ・ダルヴェイドルが、啓示をもとに著わした書物「インドの使命」において唱えた秘境的な世界政府。アガルタは六千年前に地中に隠れたが、旧世界の壊滅によって地上に甦り、新しい世界を実現する。世界宗教の経典もすべては、このアガルタの啓示を秘めた暗号にほかならないとする。
p45
シャンバラ
仏教伝来以前すでにチベット地方で広まっていた理想都市信仰と、その伝承。シャンバラが実現されると、東洋と西洋は一体となり美と平和が実現されるという。霊的指導者マハトマはシャンバラの達成のために、折にふれて世界各地に使者を派遣するのだという。近代ロシアの画家リョーリフは、シャンバラに強い影響を受けた代表的な人物である。
p45
この本が出たのが、1982年の12月。中沢新一の
「虹の階梯」
が同じ出版社から前年にでている。
荒俣
私の考えでは、近代以降でてきたスクールという形態は、その起源が非常に古いものであっても、発想と経営の面で近代意識につながるものだと想うんです。ブラヴァッキーがチベットで方法論を学んでヨーロッパに展開したといっても、ひとつの支配命令系統を神秘化します。彼らが好んで使う「見えない支配者」からの通報という支配体制---これは従来のカリスマ的な教祖をフィクションに置き換えることで、これなら超常能力者でなくてもスクールを支配できます。こうした幻想共同体の支配体制はおそらく原始キリスト教期にイエスが用いた方法と同じところがあったのでしょう。イエスも自分は神や預言者を演ずるより、そのエージェント、あるいはメッセージを伝える人物としてふるまいますね。ただし、これはまちがえると詐術にも流用されます。
p178
ベンジャミン・クレーム初めとする、メッセンジャー・ボーイやチャネラーのほとんどの「詐術」は、すでに見破られているのだが、信じやすい人々、騙されたい人々、自らの責任を放棄したがっている人々は常にいる。
ヘッセの水彩画 2007.11.04
ヘルマン・ヘッセ 雲 2007.11.04
わが心の故郷 アルプス南麓の村 2007.11.04
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