地球人スピリット・ジャーナル1.0

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2007.08.17
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カテゴリ: 2nd ライフ

「サステナブル・コミュニティ・ネットワーク」
大江比呂子 2007/04 日本地域社会研究所 単行本 300p
★★★☆☆

 この本のタイトルを聴きなれた日本語に訳せば、「持続可能な地域社会の繋がり」、とでもいうべきものであろう。著者は、推測するのは失礼だが、40代中盤の女性の官僚(あるいは元・官僚)だ。勤務先は(旧)郵政省。この本、別に英語で書かれた本でもないのに、なぜに、こんなカタカナのタイトルになってしまったのだろう。いや、タイトルばかりではない。本文の中にでも、懲りずにどこまでもカタカナ書きを通している。

 彼女はインターネットについては前向きな姿勢をみせているので、ネット用語としてのカタカナ書きはやむを得ないところがある。しかし、一般的な日本社会に対する分析などは、もっともっと日本語で間に合わせてもらわないと、わけがわからないことになってしまう。

 この本、最後の最後になってだが、「郵便局新生--地域間交流のハブ、カタリストとして潜在性」p234、あるいは、「郵便局の新マーケティング戦略を通じた地域秩序の形成・保全への貢献」、「社会的”マーケティング”と郵政事業」などというタイトルがでてくる。早い話が、地域社会における郵便局のあり方、について論じるというアウトラインが暗黙のうちにひかれており、それを欧米の研究などで肉付け権威づけしながら、論文形式にまとめられている、という一冊なのだ。

 そういう論点から、日本社会のこれまでを論じるとするなら、もっと分りやすくなり、その中で郵便局が果たしてきた役割というものの重要性も際立ってくるはずだ。郵政民営化で、日本社会は変わりつつある。小泉の「改革」の真価は、もうすこし時代が経過しなければ、正しい評価をすることはできないだろう。

 日本の社会は明治以降、神社や寺院を一方の核とし、交通至便な位置に行政の末端を置き、あるいは商店街が発生して、圧倒的に多数である農家を包括する形で発展してきた。持続可能な地域社会の繋がり、という意味ではまさに、理想的に機能してきたと言える。

 しかし、1960年代以降の高度成長政策、そして90年代以降のデフレ経済の中で、さまざまな逆転現象がおきてきた。まず、農業が壊滅状況となった。日本から専業農家というものがなくなった。あるいはさらに進んで、いまや農業が「企業」化しつつある。地域の商店が家業であった時代から、中央の巨大資本のスーパーセンターが突然農村の郊外にできる。シャッター商店街として、地域商業はその命脈を絶たれてしまった。それと同じ道筋をいま農家がたどろうとしている。

 そのような農家や農村が形づくってきた基礎が崩れてしまったのだから、いままでの「持続可能な地域社会」は変わらざるを得ない。郵便局もまた変化しつつある。かつて郵便事業は、地域の篤信家が委託される形で、そのネットワークを張り巡らせてきた。ボランティア的精神も要求されただろうが、また法的にも保護されてきた面が多かった。

 その農家や郵便局のネットワークが変化し、あるいは崩壊した後に、何をもって「持続可能な地域社会の繋がり」を作ったらいいのだろう。かつて家族主義といわれた日本企業の就業形態は終身雇用スタイルがほとんどだった。しかし、現在は派遣社員制度がなければ企業は存在できなくなり、社員達は企業への帰属意識を失い、したがって、企業の中にも、「家族的」あるいは「地域社会的」な繋がりはなくなりつつある。

 コンビニエンスストアが地域の核となるかに宣伝されている。酒たばこ、米や一般的な日用品が揃っており、郵便や銀行機能も備えつつある。しかし、企業の論理は、どこまでも冷徹だ。利益率が下がれば、数週間で撤退を決定する。かつての個人商店をシャッター商店街に追いやったコンビニやスーパーが、あらたなシャッター店舗として老朽化していく。

 ここにITを駆使したネットワークが進出する可能性も当然あるが、まだまだ可能性が語られるだけで、本当のことは、これからの事態の推移を見てみないと分らない。町内会や自治会、PTAや同窓会、消防団や婦人防火クラブなどの、ゆるい地域のネットワーク的つながりも、かつてのような「持続可能」な形は保てなくなっている。

 この事態を、悲観的に捉えて、反動的で保守的な先祖返りを望むことは、このブログの趣旨ではない。明確にいうなら、基本的には、一人一人の人間が「個」として存在しうる力強さをもつこと。制度的に、教育的に、経済的に、「個」まで解体された社会的存在としての人間が、あらたに繋がりなおす、という作業を経ないことには、持続可能な地域社会の繋がりは、見えてこないだろう。

 「共感と共鳴を呼ぶ」、「情報社会の地域マネジメント戦略」、「サステナブル・コミュニティ・ネットワーク」。こざっぱりした机上の論議だけでは、動かない。本腰を入れて、自分自身の原寸大の生活を組み込んでいかなければ、単なる空想論議で終わってしまう。この話題について、私は決して楽観はしていない。むしろ悲観的でさえある。しかし、絶望はしていない。これからも機会をとらえて一人分の試みは続けていくつもりだ。





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Last updated  2009.02.10 22:20:22
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