「Gの残影」
<1>
小森健太朗 文藝春秋 2003/03 単行本 407p、 改題文庫本
「グルジェフの残影」
2006/07
Vol.2 No.479 ★★★★★
文庫本化された段階で「グルジェフの残影」と改題されているところからみてもわかるように、Gとはグルジェフの暗号。ウスペンスキー、あるいはその側近が主人公であり、グルジェフは脇役。タイトルだけみたのでは、この本なんの本だかわからないが、本格ミステリーマスターズ、というシリーズのミステリー小説ということになろう。作者がしてその手の作家なのだから、あたり前か。
単なるミステリー小説なら、当ブログにはマッチしないが、グルジェフ追っかけの中ではぜひ読みたいと思った一冊。あるいは、この作家のこのテーマならぜひ読みたいと思わせる。
普段、まったく小説も読まなければミステリーもトンと用事のない当ブログではあるが、ついついハマって、最後まで読んでしまった。各種の本から引用したできるだけ史実のはっきりした部分をベースにして、その上に、作者独自の構想と筆致が乗っかっているので、なかなかリアリティがある。何冊かのウスペンスキーものを読むよりも、一冊で大体のことがわかるから、お得な一冊と言えるかも。
ほとんどが実名ででてくるので、こりゃあホントだろうなぁ、と思わないわけでもないが、美に入り細に入り会話などが再現されているので、まさか、ここまでは残っていないだろう、とう感じがしないわけでもない。しかし、違和感もなく、それぞれのキャラクターが浮きあがってくるので、なるほど、さすがに素晴らしい作家だと、納得した。
ミステリーだからネタばらしはしないが、結局殺人事件がおこり、その解決に、グルジェフのエニアグラムが一役買う、というストーリーで、まぁ、この辺は作者の独創だろう。400ページを超える書き下ろしなのに、小説ぎらいの当ブログも、ついつい最後まで読んでしまった。あは。
当時のロシアの状況が背景にあり、その背景のなかで、歴史的人物たちが、生きていた姿が書かれている。ポイントポイントはキチンと書かれているようだ。
巻末につずみ綾の「小森ミステリから神秘の輪(エニアグラム)へ----小森健太朗論」があり、同じ人物が聞き手となるスペシャル・インタビューが続いている。
「インド」
「インド・ボンベイ殺人ツアー」という短編がありますが、あの作品は、インドにいたときに、インドを舞台にしたミステリも書けるんじゃないかと思って、駅の売店でインドの電車の時刻表を買っておいたのを材料に書きました。
p395
インドのどこに行ったのかは書いていないけれど、デカン高原のOshoアシュラムあたりを訪問した可能性はある。というか、ちょっと昔なのできちんと覚えていないのだが、作者とは、どこかのメーリングリストあたりで意見交換をしたことがあったことを思い出した。その時は、たしか彼の処女作にもあたるだろう「コミケ殺人事件」が話題になった。あるいはコスプレとか。私も中学一年から、同級生たちと漫画の肉筆誌を5号まで作った経歴があるので、話題についていけそうかな、と思ったが、ぜんぜんだめだった。時代が違う。
著者の筆の走りっぷりはなかなか素晴らしい。できれば、いつかOshoコミューン殺人事件、とか、密室・瞑想ルームの謎、なんていうテーマで、わくわくさせてくれるような小説を書いてくれると嬉しい。っていうか、もうあるのかも・・・・・。
グルジェフ伝 神話の解剖 2009.01.14
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