「デジタル・ナルシス」
情報科学パイオニアたちの欲望
西垣通 2008/12 岩波書店 文庫 281p
Vol.2 No.535 ★★★★☆
★★★★☆
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この本、初版は1991年7月に岩波書店から出ているが、1997年1月に同じ岩波から同時代ライブラリーの一冊として再刊されている。当ブログはその再刊版を読んだのだが、この本はとても人気があるらしく、さらにごく最近2008年12月文庫本として再々刊されている。
図書館の棚の前をうろうろしていると、どうしてもこの人の本は目について、何冊か読んではみたものの、いまいち、アクセルとブレーキの関係で、スピード感が合わなかった。なにか一面的で、悲観的にさえ感じるのだった。だから、この人の一連の本は興味引かれるのだが、あまり評価することはなかった。
しかし、最近、この人は実は小説も書いているということを知った。私は著者のマルチタレント的な面を見逃していたのだ。あらためてこの人の本をなぞってみることにした。
この人のホームぺージのタイトルは 「デジタル・ナルシス」 という。一時は、この本にちなんで著者のニックネームのようなものになっていたらしいから、著者との親和性が高いネーミングなのだろう。このページでごくごく最近2009年02月発行の 「コズミック・マインド」 という電脳神聖喜劇・小説があることが分かった。機会があったらぜひ読んでみよう。 Youtubeでは、NHK教育テレビ視点・論点2007年7月9日放送の 「ウェブ社会をどう生きるか」 を見ることができる。
さて、当ブログは、いつのころからか読書ブログという形態をとり、次第に冊数のカウントも入れることになり、よそ様に倣って、★で評価度も表示するようになってきた。評価の判断基準は、実にあいまいで、面白かったかどうか、内面的なものが挑発されたかどうか、というところでのあくまでの私的な感想でしかない。
最近は、どうもこの単純な評価方法に疑問が生じてきた。一冊の本を読んだとしても、読者のひとりとして、本に対する要求度が高くなってきたようである。つまり、科学、テクノロジーとしてのコンテナ度、表現、芸術、ジャーナリスティックな側面としてのコンテンツ度、そして、意識、スピリチュアリティを合わせ持っているかどうかのコンシャスネス度の、三拍子を求めるようになってきたのだ。
この本から、実験的にこの三つの角度から★マークをつけてみようと思い立った。 科学 、 芸術 、 意識、 の色分けをしてみようと思う。当然、この三分野において、★5を満遍なく取ることができれば、それは当ブログにとっての推奨本とも言える。
振り返ってみて、この三つの基準に満点をとれるような本があったか、というと思い当たらなくもないが、ほんの数冊に留まるだろう。そして、あったとしても、この新しい視点で、再読、再再読をしたうえで評価しなくてはならない。評価と言ってもあくまでその時の気分に大きく左右されるわけだから、極私的であることに変わりがないが、なにを本や読書に求めているのか、自分なりにわかってくるかもしれない。
そのような視点から考えると、この本は極めて得点度の高い一冊であると言える。もちろん、20年近く前にでた本であり、当時のインフラ状況や、周辺科学の発展度において、情報が最新とはとても言い難い。むしろ、お笑いになる部分さえある。しかし、この本が出版された当時に私がこの本にめぐりあい、内容を理解できるほどの読解力をもっていたら、まちがいなく、三分野において満点をつけた可能性が高い。
当時の私は、ここまで守備範囲を広げることはできなかった。興味関心があったとしても、日々の子育てに追われ、自らの生活を成り立たせることに精いっぱいだった。いや、今だって、時代が時代なら、この分野にはあまり首をつっこまなかったかも知れない。
この本がでた1990年前後の時には、まだおとぎ話だったようなネットワーク社会が、20年後の現在、あたり前のように目の前に現出し、好むと好まざるとにかかわらず、生活のなかで、このデジタル・ナルシスの世界を生きていかざるを得なくなった。 情報科学から生命哲学への切り込み。この本はかなり以前にそのきっかけを作っていたと言える。
もしかしたら、、やがて人間は、直接抱擁しあうかわりに、三次元ヴァーチャルアイドルの滑らかな肌を通して、お互いに疑似的セックスをしあうようになるのかもしれない。
こんな異様なサイバースペース未来図を、ただのSFとして笑い飛ばすこともできなくはないだろう。だが、情報機械が本質的にはらむ一種の病理に気づかないのは愚かというものである。
病理があるとすれば、その処方もまた、どこかに存在するはずだ。私は現在、おぼつかない足取りでそれを求めている
この再版版のあとがきは1996年に書かれたものだが、ここで著者が預言していることは、現在は セカンドライフ
などで実際に行われるようになった。すでに21世紀もまもなく10年目になろうとする現在、すでに デジタルネイティブ
という世代さえ生まれてきている。
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